事業承継を支援する法律?経営継承円滑法の支援内容・認定方法を解説

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事業承継を進めるにあたって多額な費用と税負担に不安や苦労している方は少ないと思います。その場合、事業承継の費用や税負担を支援してくれる制度である「経営継承円滑法」を活用しましょう。本記事では、経営承継円滑法の支援内容や認定方法についてまとめています。

▼この記事を読んでほしい人
  • 事業承継を今まさに行っている人 
  • これから事業承継を予定している経営者や後継者
  • M&Aなどの方法で事業承継する手続きを控えている人
▼この記事を読んでわかること
  • 「事業承継円滑化法」について4つの支援内容について
  • 支援をうけるための認定内容や申請方法について
  • 事業承継するときの注意点など

内容をまとめると

  • 事業承継には相続や贈与に伴う相続紛争の未然防止、承継にかかる資金調達が必要といった課題がある
  • 経営承継円滑化法をうまく利用すれば事業承継をスムーズに行える 
  • 事業承継がうまく行けば経営も安定して行うことができる 
  • 資産運用について悩んだらお金のプロであるFPに相談するべき 
  • FP相談サービスで迷ったらマネーキャリアがおすすめ

経営承継円滑法は事業承継の資金支援や税負担を軽減するための法律


「経営承継円滑化法」は中小企業のスムーズな事業承継をサポートする基礎的な法律として2008年10月に施行されました。


現在の正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」であり、これまで複数回にわたり改正されています。


国がこの法律を定めた目的は、事業継続することで雇用を守り、地域の活性化につなげたいからです。


事業承継とは経営者から後継者に、事業のバトンパスをすることです。


中小企業の経営者は自分で保有している株式の割合が高いと言われています。そこで相続が発生するとさまざまな課題がでてきます。


事業承継の際のよくある不安

  • 事業承継をするうえでの経営が不安
  • 事業承継についての資金はどうすればよいか
  • 会社の保有株式のスムーズな受け渡しができるか

 そんなとき「経営承継円滑化法」の認定を受けることで、スムーズな事業の引継ぎが行えます。

 

これから経営承継円滑化法についてどんな支援内容があるのか、認定はどんな手続きをするのか見ていきましょう。

経営承継円滑法の認定を受けた場合の4つの支援について


ここでは「経営承継円滑化法」について認定を受けた場合の4つの支援を見ていきます。


なぜ、認定を受けたほうがいいの?

認定を受けるとなにが、優遇されるの?


こういったギモンを解決するためにしっかりと内容を理解することが大切です。


主な4つの支援策は以下の通りです。

  1. 税制支援 (贈与税・相続税の納税猶予および免除制度)の前提となる認定
  2. 金融支援 (中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法などの特例)の前提となる認定
  3. 遺留分に関する民法の特例  
  4. 所在不明株主に関する会社法の特例の前提となる認定


次に1つずつ細かい点を見ていきましょう。

①税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)

経営承継円滑化法の認定を受けると贈与税・相続税を納める期間をのばしたり、場合によっては免除できたりします。


税制支援での優遇は以下のとおりです。

  • 法人は「非上場株式会社の自社株式」を贈与、相続するときに優遇される 
  • 個人事業者は「事業用資産」を贈与、相続するときに優遇される


平成30年度の税制改正では、中小企業の背中をつよく押すために事業承継税制が大きく改正されています。

大きな改正点は、10年間限定(期限:2027年12月31日)で優遇幅が大きくなった点です。
内容改正前改正後
納税猶予する対象の割合80%100%
  • 納税猶予する非上場株式などの制限を廃止(総株式数の3分の2までという決まりを廃止)
  • 納税猶予する割合の引上げ(80%から100%へと改定)
「認定を受けること = 優遇された税金が適用されること」になるので今後、事業継続するうえで大きな影響を受けます。

金融支援(中小企業信用保険法の特例・日本政策金融公庫法等の特例)

事業承継にさまざまな資金が必要となるという課題があります。

  • 株式や事業用資産を買取りたいが資金が足りない
  • 経営を引継いだけど、取引先の支払条件などが厳しくなった
  • 資金が必要だが、経営者保証は受けずに会社だけで借入れをしたい

そんな時は、都道府県知事の認定をうけることで融資と信用保証の特例という形で金融支援を行います。


1.融資

個人が対象です。

(法人の経営者・個人事業主以外)


借入先

  1. 日本政策金融公庫
  2. 沖縄振興開発金融公庫の融資制度

※細かい融資条件については、近くの金融機関へ問い合わせが必要です。


2.信用保証

法人経営者・個人事業者・個人がすべての人が対象です。


原則として信用保証協会には通常の保証枠とはべつに、特別枠が用意されています。

通常枠特別枠
普通保険2億円+2億円
無担保保険8,000万円+8,000万円
特別小口保険2,000万円 +2,000万円 

※個人については、本特例で通常枠のみ適用となります。

遺留分に関する民法の特例

事業承継円滑化法は、「遺留分に関する民法の特例」についても定めています。


遺留分とは、最低限保証されている相続人のとり分のことです。


原則として法定相続分の50%が遺留分となります。


なぜ遺留分に関する民法の特例が必要なのか?

適用しないと何が困るのか?


その答えは、相続が発生したときに相続人と起こりうる紛争を事前に防ぐためです。


つまり特例を適用していないと、相続人から法律で定められた金額を要求されたときに抵抗できないからです。


特例の主なポイントは次のとおりです。


除外合意(相続の計算に入れないことの合意)

  • 遺留分の主張ができない
  • 相続紛争のリスクを抑えられる
  • 後継者に集中的に株式を引継げる


固定合意(相続する際の株式の価額を前もって固定すること)

  • 後継者が経営努力によって株式が値上がりした場合でも遺留分に影響しない
  • 保有株式が上昇しても、相続人より遺留分(値上がり分)を請求されない

所在不明株主に関する会社法の特例

所在不明株主に関する会社法の特例について見ていきます。


所在不明株主とは、株主名簿に名前はあるけど連絡がつかず、住所もわからくなった人のことをいいます。


現在まで抱えてた事業承継に関してのハードル 

  • 株式の競売や売却は、所在不明株主に通知を送って5年以上経っていること
  • またその所在不明株主が剰余金を5年間継続して受けとらないこと 

以上の2点を満たさないと、保有している株式の競売や売却(自社での買取りもできない)ができないことが、事業承継をすすめる上での大きなハードルとなっています。


所在不明株主に関する会社法の特例で変わるポイント 

会社法で定められている、「通知を送って経過した期間」と「配当をうけ取らない期間」を「5年から1年」へ短縮しました。


この特例によってスムーズな事業承継の手続きを行うことができます。

経営承継円滑法の改正について【2018年から2027年までの特例制度】


経営承継円滑化法の基礎となる法律は2008年の10月に施行されています。


当初、法律は施行されたものの、経営者から後継者への事業承継はスムーズに進んでいませんでした。


なぜでしょう?


その理由は、「手続きの煩雑さ」に加えて「納税猶予の制度」がとても複雑だったからです。


そこで事態を重く見た政府は、事業承継を進めるためにさまざまな施策(複数回の改正)を行っています。


ここでは、経営承継円滑化法の改正内容と、改正による4つの影響を見ていきます。

経営承継円滑法の改正内容について

2008年に始まった経営承継円滑化法ですが、当初の手続きはとても複雑でわかりにくい内容でした。


その結果、2013年時点における事業承継税制の認定を受けた事業者の数は、わずか195件でした。


そこで2013年と2017年にも、経営承継円滑化法の改正を行います。


  • 事業承継税制を適用できる範囲に、親族以外が承継できることを追加
  • 相続時精算課税の併用を可能にする対応を追加

そして2018年、経営承継円滑化法の再改正を行います。


大きな改正点は、10年間限定(期限:2027年12月31日)で以下2点の優遇幅が大きくなった点です。


  1. 納税猶予する非上場株式等の制限を廃止(総株式数の3分の2までという決まりを廃止) 
  2. 納税猶予する割合の引上げ(80%から100%へと改定)

経営承継円滑法の改正による4つの影響について

では、経営承継円滑化法の改正によってどんな影響があるのか?


そのギモンに対する答えが、以下の通りです。


【経営承継円滑化法の認定を受けた場合】

  • 事業承継の対象者がふえる(最大3名まで承継できる、親族以外も可)
  • 非上場の株式の取得元がふえる(代表者以外の人からの贈与で、非上場株式を取得できる)
  • 従業員の数を、一定数以上に保つ要件が緩和されます(5年間平均8割の雇用維持が満たせない場合でも、納税猶予ができる)
  • 相続時精算課税制度の適用される範囲が広がります(相続人でなくても、後継者がその年の1月1日に20歳以上であり、贈与する人が60歳以上であれば特例制度が利用できる)

改正による特例を利用することで、事業承継のパターンが増えます。


加えて手続きの大幅な改正で、事業承継がよりスムーズになります。


その結果、経営承継円滑法の認定を利用する事業者がふえることが予想されます。

円滑法に基づいた事業承継支援①事業承継税制


ここでは、事業承継税制について見ていきましょう。


事業承継税制とは、経営承継円滑化法にもとづき認定を得て、贈与税や相続税の納税を猶予してもらう制度です。


会社や個人事業の後継者が、前の経営者より株式や事業用資産を取得した時にかかる税金について猶予してくれます。


この事業承継税制は、大きく分けて2つの種類があります。

  • 法人事業承継税制(非上場会社の株式等が対象)
  • 個人版事業承継税制(個人事業の資産が対象)


それでは、これから事業承継税制について、具体例や手続きの要件などを確認していきましょう。

事業承継税制は相続税と贈与税を猶予・免除する【具体例を紹介】

事業承継税制を利用すると、どれくらい効果が期待できるのか?


スムーズな事業承継を支援するために、相続税・贈与税において税制の特例があります。


主な条件と、納税額の目安は以下のとおりです。


相続税

現経営者の相続または遺贈により、後継者が相続または取得した自社の株式において100%相続税の納税猶予および免除されます。


贈与税

現経営者からの贈与により、後継者が取得した自社の株式において100%猶予されます。


10年間限定(期限:2027年12月31日)で以下2点の優遇幅が大きくなった点です。

  • 納税猶予する非上場株式等の制限を廃止(総株式数の3分の2までという決まりを廃止) 
  • 納税猶予する割合の引上げ(80%から100%へと改定)


【具体例】(本税制の適用により一定の効果が期待できる)

取得者種類金額
後継者A自社株式7億円
非後継者Bその他財産3億円
合計-10億円


【後継者Aの納税額】

認定を受けない場合は、約2億8,000万の納税です。


認定を受けた場合は、約4,000万(納税猶予できる税額が約2億4,000万円)の納税になります。


両者を比較すると納税猶予できる金額の大きさがわかると思います。


事業承継したあとの経営に直接的に関連するので、しっかり理解して活用しましょう。

納税の猶予を受けるために必要な3つの要件【会社・前経営者・後継者】

納税の猶予を受けるためには、会社・前の経営者・後継者という3つの要件を満たす必要があります。


会社の要件

【相続税・贈与税共通】

  • 中小企業者であること
  • 上場会社または風俗営業会社ではないこと
  • 従業員が1人以上いること
  • 資産保有型会社などに該当しないこと

※資産保有型会社とは2種類あります。(一部、例外もあり)

1.資産保有型会社(すべての資産の割合のうち事業に関係ない資産が70%以上ある会社)

2.資産運用型会社(すべての収入金額に対して事業に関係ない運用収入が75%以上ある会社

前経営者の要件

【相続税・贈与税共通】

  • 会社の代表者であったこと。
  • 相続や贈与時に筆頭株主であること、かつ、現経営者と現経営者の親族などで、すべての議決権数の50%以上を持っていること


【贈与税】

・贈与するときには代表を退任していること(役員として給料をもらう状態は可)


後継者の要件

【相続税・贈与税共通】

  • 相続や贈与のときに、筆頭株主であり後継者と後継者の親族などですべての議決権数の50%以上を持っていること
  • 親族以外の後継者も、本税制をうけることができます


【相続税】 

・相続がはじまる直前に役員であり、開始して5ヶ月後には代表者であること。 


【贈与税】 

・贈与したときに20歳であること。さらに贈与の時点で3年役員を経験し、かつ代表者であること  

納税の猶予を受けるための手続き方法

ここでは納税の猶予を受けるための具体的な手続き方法を確認していきます。


【相続税の納税猶予を受ける手続き方法】


提出先は都道府県庁です。(会社の本社がある都道府県庁です)


  1. まずは相続の開始があります。
  2. 相続がはじまって、8ヶ月目までに申請します。審査後、認定書が交付されます。
  3. つぎに認定書の写しと相続税の申告届などを税務署へ提出します。さらに納税猶予額と利子の金額に見合う担保を提供します。

例)1億円の納税猶予の場合 = 1億円分の非上場株式(特例を受ける株式すべて)を担保として提供します。

つまり、納税を待ってもらう代わりに、特例を受ける非上場株式すべてを税務署へ預けるのです。


また、納税猶予がはじまると都道府県庁と税務署へ報告書などを提出します。


【提出する場所・報告書】
申告期限後5年都道府県庁へ年次報告書を出す(年1回)
申告期限後5年税務署へ継続届出書を出す(年に1回)
5年経過後税務署へ継続届出書を出す(3年に1回)


【贈与税の納税猶予を受ける手続き方法】


提出先は都道府県庁です。(会社の本社がある都道府県庁です) 


  1. 贈与の実行があります。 
  2. 贈与を行った翌年の1月15日までに申請が必要です。
  3. つぎに認定書の写しと贈与税の申告届などを税務署へ提出します。さらに納税猶予額と利子の金額に見合う担保を提供する。

納税猶予がはじまった場合の手続き方法は、相続時と同様です。

納税の猶予を受けるために必要書類

ここでは、納税猶予を受けるための必要書類を確認していきます。


認定時

主な作成書類は、「認定申請書」です。


添付書類は以下のとおりです。

  1. 定款および株主名簿の写し
  2. 登記事項証明書 
  3. 遺言書または遺産分割協議書の写し
  4. 相続税の見込額が書かれた書類 (※贈与税においては、贈与契約書の写しなどが必要になります)
  5. 従業員の人数がわかる資料
  6. 貸借対照表、損益計算書等など
  7. 上場会社又は風俗営業会社でないことの誓約書 
  8. 被相続人、相続人および株式を持っている親族の戸籍謄本又は抄本

1.2.5.6は納税猶予時も、同じように提出します。


納税猶予時

主な作成書類は、「相続税の申告書」です。また、「非上場株式の明細」と「相続税計算がわかる資料」を作成します。 


  1. 都道府県知事からの認定書写し 
  2. 都道府県庁へ提出した認定申請書の写し 
  3. 後継者の戸籍謄本又は抄本 
  4. 遺言書又は遺産分割協議書の写し及び
    相続人全員の印鑑証明書 ※
    (遺産分割協議書に押印したもの) 

納税の猶予を続けるために必要な要件

一度納税猶予が認定されたとしても、継続して猶予を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。


もし、要件を満たせなかった場合は、猶予を受けている税額の全額または一部の納付が必要となります。


しっかり理解して、対策していきましょう。


納税猶予を続けるために必要な要件は以下のとおりです。


申告してから5年以内

  • 後継者が会社の代表者であること
  • 雇用の80%以上を5年間平均して維持すること
  • 後継者が株主のなかで1番多く株をもっていること
  • 猶予対象株式を保有していること
  • 資産管理会社にあてはまらないこと

この要件を満たせなかった場合は、全額納付となります。


「雇用80%以上を5年間平均して維持すること」については、平成29年の改正により要件が緩和されています。


例)従業員が4名の場合、5年間の平均人数が3名以上であれば要件をクリアできるようになっています。


【見直し前】

4人×80%=3.2人→4人以上(単数切り上げ)


【見直し後】

4人×80%=3.2人→3人以上(単数切り捨て)

5年経過後

5年経ったあとは、大きく要件が緩和されています。
  • 猶予対象株式をもっていること 
  • 資産管理会社にあてはまらないこと

少なくなったとはいえ、この要件を満たさない場合も、猶予されていた税金が全額納付となるので注意が必要です。

納税猶予額が免除となるケース

条件によっては納税猶予の税額が免除されるケースもあります。


相続税は、後継者が亡くなったときに免除されます。


贈与税は、現経営者(贈与する人)または後継者(贈与される人)が亡くなったときに免除されます。

【注意点】

  • 現経営者が亡くなったとき、贈与税の猶予は免除されますが、相続が発生したものとされ、相続税が発生する可能性があります。
  • ただし、後継者がしっかり手続きをすることで相続税を猶予してもらう制度への切替えが可能となります。


「相続税と贈与税共通」で税額が免除されるケースはの以下のとおりです。

・申告期限後から5年経ってあと、猶予継続贈与したとき

・申告期限後から5年経ったあと、「破産開始手続きの決定または特別生産の命令などを受けたとき


※猶予継続贈与とは


贈与・相続手続き納税猶予手続き
1代目2代目へ-
2代目1代目より受ける済…②
3代目2代目より受ける…①済…③

2代目が納税猶予しているとき(②)に、3代目へ株式などを贈与すること(①)を猶予継続贈与と言います。 


3代目が猶予継続贈与(①)を受けて、新たに納税猶予の手続き(③)をします。結果、不要となった2代目の納税猶予税額(②)が免除されます。

円滑法に基づいた事業承継支援②金融支援

ここからは、事業承継支援のうち金融支援について見ていきましょう。


  • 株式や事業用資産を買取りたいけど、資金がない
  • 仕入れ先や取引している銀行の条件が少し厳しくなったから資金繰りを楽にしたい


このような悩みを抱えている事業者の人は少なくないと思います。


でも大丈夫です。


円滑化法に基づいて都道府県知事の認定を得ることで、事業承継する際のさまざまな金融支援(資金繰りのための対策)をうけることができます。


金融支援については、会社を運営する上での資金繰りに大きく影響があるので、しっかり理解していきましょう。

金融支援の種類【融資と信用保証】

金融支援の種類は大きくわけて2種類あります。


都道府県知事の認定を受けることが必要です。認定後は融資、信用保証の特例を利用することができます。


融資

1つ目が融資です。認定から融資までのながれです。

円滑化法に基づき認定を受けたあと、融資を利用できるのは個人です。

中小企業者は、2つ目の信用保証を利用することになります。

  1. 経営承継円滑化法に基づく認定をうける
  2. 個人(会社の代表者、個人事業者以外の人)は、日本政策金融公庫または沖縄振興開発金融公庫から融資の制度を利用することができます。
  3. 都道府県により融資の細かい条件については違います。近くの支店に確認しましょう。

信用保証

2つ目は信用保証です。

信用保証とは中小企業者が必要な資金を金融機関から借りるときに、信用保証協会(各都道府県にあり)が公的な保証人になるということです。

  1. 経営承継円滑化法に基づく認定をうける
  2. 中小企業者または個人が、金融機関からお金を借り入れる場合には、原則として信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意されています。

※注意点として個人には別枠は、ありません。通常枠のみが適用されます。


【中小企業者の場合】


通常枠
別枠
普通保険2億円
+2億円
無担保保険
8,000万円
+8,000万円
特別小口保険2,000万円
+2,000万円 


【個人の場合】


通常枠
普通保険2億円
無担保保険8,000万円
特別小口保険2,000万円

円滑法に基づく認定手続き

円滑法に基づき融資(借り入れ)や信用保証を利用するには、都道府県知事より認定を受ける必要があることはわかったと思います。


では、認定手続きをするための申請書はどうなっているのか?

どんな内容を書いたらいいのか?


ここでは実際の認定手続きについて見ていきましょう。


ちなみに申請書を提出する先は、各都道府県の担当課になりますので合わせて確認しましょう。


認定申請書の主な記載すること

1.事業承継を行うこととなった原因を書きます。 

前経営者が亡くなった、代表者の退任があったなど


2.事業活動を継続していくうえで支障となっている理由を書いていきます。  

  • 申請する人が、他の人が持っている株式を取得する必要があること。   
  • 申請する人が、申請する人以外が保有している事業用資産を取得する必要があること。
  • 申請する人の売上高が減少することが予想されること。   
  • 仕入先からの取引の条件が悪くなったこと。
  • 取引している銀行との間に支障があること。  

注意点

  • 「都道府県知事の認定」を受けること=スタートラインです。
  • 認定とはべつに金融機関において、借り入れするための審査をする必要があります。


申請書については、中小企業庁が「認定手続きのマニュアル」を公表しています。


マニュアルの沿って会社の内容を記入していくことで出来上がります。細かい点やわからないことがあれば、各都道府県の担当課に連絡しながら進めていきましょう。

金融支援の3つの資金類型について解説

金融支援についての資金が必要になるパターンは大きくわけて3つあります。


1.経営承継したあとに必要になる資金

【具体例】

  • 事業承継者が自社の株式や事業で利用している資産を買取る場合
  • 事業承継者が相続税を支払う場合
  • 贈与税を納める場合
  • 仕入先や取引している銀行の条件が悪くなった場合(信用保証のみ対応できる)

融資信用保証
中小企業者
中小企業者の代表者

2.これから承継する場合(他の中小事業者の経営を承継する場合)

【具体例】 

  • 2つ目は、M&Aにより他の会社の株式や事業用資産を買うために資金が必要になります。

この制度は新たに2018年7月に設けられています。

融資信用保証
中小企業者
(これから他の中小企業者を承継しようとする)
事業を営んでいない個人
(これから他の中小企業者を承継しようとする) 

3.借り換え資金が必要な場合(認定日から経営の承継の日までの期間)

  • 3つ目は、現経営者の保証が付されている借入れを借り換えるための資金が必要になります。(経営者保証は不要) 

この制度は2020年10月に新設されたものです。

融資信用保証
中小企業者(会社)

どのパターンにあてはまるのか判断できない場合や、申請書の書き方について不明な点がああれば、各都道府県の担当課へ問い合わせると確認できます。


金融支援の申請方法について

金融支援の申請方法について確認していきます。

  1. まず、都道府県知事より経営承継円滑化法に基づく認定をもらいます。
  2. 自社の事業承継によりどのパターンで金融支援が必要なのか確認します。
  3. 認定に必要な書類をまとめ、都道府県の担当課へ提出します。
  4. 無事認定されるとと、認定書を受け取ります。
  5. 認定書の写しと、借り入れに必要な書類を準備して、金融機関や信用保証協会へ申込みます。
  6. 金融機関や信用保証協会による審査を受けます。
  7. 審査結果が承諾されると、融資実行が行われます。
以上が、金融支援の申請方法の大まかなながれです。

大切なポイントとしては2点です。
1点目に都道府県知事の認定が必要だということです。
2点目に、認定とはべつに金融機関の借り入れの審査があるということです。

円滑法に基づいた事業承継支援③遺留分に関する民法の特例

ここでは、事業承継支援のなかで、遺留分に関する民法の特例について見ていきます。


  • 後継者に会社の株式と事業で使う資産を引継いだけど、相続で揉めないか不安
  • 相続までに株式(自社)の価値が上がったら、予想外の遺留分の主張を受けたらどうしよう

これらの不安を解消するのが、遺留分に関する民法の特例です。


遺留分に関する民法の特例を利用することで、相続による紛争や株式・事業用資産の適切な配分(後継者への集中継承)が期待できます。


その結果、後継者へスムーズな事業承継ができます。

遺留分とは相続人への最低限の相続の権利保障

遺留分とは、相続人が最低限もらえる権利を保障することです。


民法では「遺留分」を設定することで、遺族が平等に相続することや生活の安定を確保できるようにしています。


どんな時に遺留分を請求できるか

他の相続人が多くの財産を取得したことで、自分が相続した金額が本来もらえるはずだった財産の金額(遺留分)を下回った場合に請求できます。

遺留分の金額は、法定相続分の2分の1です。(原則)

例)財産が1000万円として相続人が2人(2分の1ずつ相続する)場合
(遺留分は相続人それぞれ250万円ずつとなります。)

1,000万円(財産)× 1/2(相続分) × 1/2(遺留分) = 250万円(遺留分請求できる額)


実際に相続した金額遺留分として請求できる金額
他の相続人900万円0
自分100万円250万円


 上記のように自分の遺留分は250万円で、相続した金額が100万円だと、150万円足りないです。その場合、150万円について、請求することができます。

相続人が複数いる場合には注意が必要

事業承継においては、当然ながら後継者へ自社の株式や事業用資産を、集中して相続したい思いがあります。

継承者以外から遺留分を侵害されたとして支払いと求められた結果、やむなく自社株式や事業用の資産を売却するといったケースがあり、事業承継にとっては大きなマイナスとなります。

そういった問題を解決するために「遺留分に関する民法の特例」は定められています。

遺留分による紛争や自社株式・事業用資産の分散防止するための2つの対策

ここでは、実際に遺留分による問題(紛争や自社株式・事業用資産の分散)を防止するための2つの対策を確認していきましょう。


1.除外合意

【内容】

後継者が引継ごうとしている自社の株式と事業用資産を相続する対象から除外することです。


【結果】

除外合意することで、後継者が前経営者から自社の株式と事業用資産の価額について、他の相続人は遺留分による支払いを求めることができなくなります。


その結果、相続の紛争を防ぐとともに、集中的に株式を引継ぐことができます。

2.固定合意

【内容】

財産に含める金額を事前に決めておく手続きです(合意したときの価額を採用する)


さらに、合意した時より株式の価額が上がったとしても、上がった分については請求できないという決まりです。


【結果】

固定合意をすることで、ほかの相続人の遺留分の金額に影響しなくなります。もし経営努力によって株式の価額が上がったとしても、相続時に予想外の「遺留分の請求」を受けることが無くなります。


例えば、3,000万円から6,000万円へ株式が値上がりした場合

  • 固定合意時の株式の値段は3,000万円
  • 値上がりした3,000万円について遺留分の請求はできない


3.遺留分放棄という方法もあるが利用しにくい

民法では、ほかの相続人が前もって遺留分を放棄できる制度があります。


しかし相続人ひとりひとりが家庭裁判所へ申請手続きが面倒くさいため、利用しにくいのが実情となっています。

民放特例を受けるために行うこと

民法特例を受けるためのポイントは以下のとおりです。


まず、それぞれの経営承継(会社経営・個人事業)の条件を見ていきましょう。

会社経営の承継パターン
会社・中小企業者であること
・合意した時に3年以上事業継続している非上場企業であること
前代表者・過去または合意した時に代表者であること
後継者・合意した時に会社の代表者
・前代表者より贈与により、議決権数の50%以上を保有していること
(推定相続人でなくても対象となる)
個人事業経営の承継パターン
前代表者・合意した時に3年以上事業継続している個人事業者
後継者・中小企業者であること
・合意した時に個人事業者であること
・前代表者からの贈与などにより事業用資産を取得したこと

推定相続人全員の合意を得て合意書を作成

民法の特例を受けるには、前代表者の推定相続人すべてと後継者とのあいだで、合意書作成をする必要があります。


経済産業大臣の確認

後継者は合意して1ヶ月以内に「遺留分に関する民法の特例にかかる申請書」を必要書類を添えて、経済産業大臣へ申請します。


家庭裁判所の許可

経済産業大臣の確認書の交付を受けた後継者は、1ヶ月以内に家庭裁判所へ申し立てを行い、「許可」を受ける必要があります。

手続きの流れとその要件について解説

「手続きの流れ」と「要件」について解説します。


まず手続きの流れです。会社経営者と個人事業者の場合があります。


会社経営者の場合

  1. 株式の生前贈与
  2. 合意
  3. 経済産業大臣の確認(2.の合意後、1ヶ月以内に申請)
  4. 家庭裁判所の許可(3.の確認後、1ヶ月以内に申立て)
  5. 合意の効力発生


個人事業者の場合

  1. 資産の生前贈与
  2. 合意
  3. 認定支援機関の確認(合意する資産が、前代表者が事業で使っていたか、また後継者が事業で使うことを確認する)
  4. 経済産業大臣の確認 (2.の合意後、3.の確認後、1ヶ月以内に申請)
  5. 家庭裁判所の許可 (4.の確認後、1ヶ月以内に申立て)
  6. 合意の効力発生


次にそれぞれの要件について確認します。


経済産業大臣が確認すること

  • 今回の合意が事業承継をスムーズに行うためにされているか
  • 申請した人が後継者の要件に当てはまっているか
  • 合意対象の株式を除いたときに後継者の議決権の50%を下回るか(会社のみ)

家庭裁判所が許可する要件

  • 合意が関わる人全員の本意であること


今回の民法の特例を受けると同時に、贈与税の猶予制度も利用できます。

ただし、「民法の特例の確認」と「納税猶予制度の確認」は別の手続きなので注意が必要です。


上のように贈与税の猶予制度を利用したあとに、前代表者に相続が発生すると、相続税の猶予制度への切り替えが可能です。


切り替えた場合は、贈与税は支払いは免除され、相続税の猶予制度を利用することができます。

対象資産と特例が利用可能なケースについて(個人事業主)

個人事業主民法特例で対象となる資産は以下の通りです。

対象となる資産

・前経営者の事業に利用されていた資産であること
・前経営者から自分以外に贈与があった日の前年の事業所得にかかる青色申告書(貸借対照表上)に計上されているものをいいます。  

  1. 宅地等
  2. 建物
  3. 減価償却資産(構築物、機械装置、標準税率が課税される営業用車両など)

利用可能なケース

個人事業者が遺留分に関する特例を利用するには、事業用資産を100%贈与する必要があります。

ケース①特例を利用できる

前経営者の100%所有している土地・建物 = 後継者に100%贈与

ケース②特例を利用できる

前経営者の70%所有している土地・建物 = 後継者に70%贈与 

ケース③特例を利用できない

前経営者の100%所有している土地・建物 = 後継者に70%贈与 

円滑法に基づいた事業承継支援④所在不明株主に関する会社法の特例

円滑化法に基づいた事業承継支援のなかで、所在不明株主に関する会社法の特例があります。


  • 通知をおくっているけど5年経過しないと、手続き(株式売却など)ができない…
  • 事業承継はもう始まるから、会社法で決まってる5年も待ってられない…


このように事業承継する際に所在不明株主がいると、株式取得に時間がかかりスムーズに手続きができないケースがあります。


しかし、経営承継円滑化法の認定を受けることで、所在不明株主の株式取得の手続きを「5年から1年」へと大幅に短縮できます。


1つずつ詳しく見ていきましょう。

所在不明株主とは株式名簿に名前はあるが連絡が取れず所在不明な株主を指す

所在不明株主とは、株主名簿に名前はあるけど連絡がつかず、住所もわからくなった人のことをいいます。 


次のような不安を抱える中小企業者の問題を解決する為に、定められた特例です。 

現在まで抱えてた事業承継に関してのハードル

  • 株式の競売や売却は、所在不明株主に通知を送って5年以上経っていること 
  • またその所在不明株主が剰余金を5年間継続して受け取らないこと 

 以上の2点を満たさないと、保有している株式の競売や売却(自社での買取りもできない)ができないことが事業承継をすすめる上での大きなハードルとなっています。


所在不明株主に関する会社法の特例で変わるポイント

事業承継のニーズが極めて高い株式会社に限り、都道府県知事の認定を受けることと、一定の手続き保障(※)を行うことで特例を受けることができます。


※会社法では株式会社が利害関係人に3か月以内に異議を述べることができることなど定めています。方法は官報などで公開して、所在不明株主に個別で知らせる必要があります。


会社法で定められている、「通知を送って経過した期間」と「配当をうけ取らない期間」を「5年から1年(会社法の特例)」へ短縮しました。 


 この特例によってスムーズな事業承継の手続きを行うことができます。

経営承継円滑法に基づいた認定の要件2つについて

経営承継円滑化法での「会社法の特例」を利用するためには、2つ認定要件を満たしたうえで、都道府県知事の認定を受ける必要があります。


中小企業庁が公表している申請マニュアルをご確認の上、各都道府県の担当課に申請書を提出しましょう。認定の有効期限は原則2年です。


経営困難要件

申請した経営者が、健康面やそのほかの理由で安定して経営するのがむずかしく、事業運営を続けていくことに支障が出ている場合


【具体例】

  • 代表者の年齢が満 60 歳を超えている場合 
  • 代表者の健康状態が業務をするにあたって支障がある場合 
  • 代表者以外の重要人物の病気や事故など  
  • 周りの環境の急激な変化による業績が悪くなったなど


ただし、以上の具体例にあてはまらなくても、さまざまな事情を総合的に考慮して認定が必要であると判断することがあります。


円滑承継困難要件

特定の株主の住所が不明であり、経営を現代表者以外(後継者)にスムーズに承継させることが難しい場合


■認定申請日において会社の後継者が決まっている場合 

所在不明株主の保有株式の議決権割合    

(A)株式譲渡の手法:1/10 超 かつ「1ー要求される割合」超 

(B)株主総会特別決議に基づく手法等:1/3 超  


■認定申請日時点において株式会社事業後継者が未定の場合 

所在不明株主の保有株式の議決権割合    

(C)原則:1/3超    

(D)例外:1/10超かつ特例適用分が経営株主等と加算して9/10以上

認定申請時に必要となる添付書類について

認定申請時には以下の必要書類を提出します。


詳細は認定申請マニュアルを参照しましょう。


認定申請書の写し 

認定書申請書のコピーを提出します。 

登記事項証明書 

3ヶ月以内に取得したものを提出します。 

定款の写し 

認定申請する日における定款のコピー(原本証明付き)を提出します。 

株主名簿の写し 

認定申請する日における株主名簿のコピー(原本証明付き)を提出します。

誓約書

申請する人が上場会社などに該当しないことを誓約します。 

その他参考書類 

事案ごとに必要になる書類があります。例えば認定申請する日に、会社の後継者が決まっていれば、承継にかかる明確な合意証などを提出します。

法人のお金に関する相談ならマネーキャリアの無料相談がおすすめ

ここまで事業承継円滑化法に基づく認定方法や支援内容について書いてきました。


とはいえ、内容が少し難しかったという不安があると思います。


 結論から言うと、そのような方はお金のプロであるFP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおすすめします。


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まとめ:経営承継円滑法によって事業承継をスムーズに進められる

結論です。


経営承継円滑化法によって事業承継をスムーズに進められる。これにつきます。


この知識があれば、いざ事業承継を行うとき慌てずに冷静に対応することができます。


しかし、法律によって優遇された制度があるにもかかわらず、自社でなんとか乗り切ろうとするだけではさまざまな問題が出てくることが予想されます。


ですので、以下の人に役に立てて欲しい内容です。

  • 事業承継を今まさに行っている人
  • 今後事業承継を予定している後継者
  • M&Aなどの方法で事業承継する手続きを控えている人など
日本においては中小企業者が全事業者の9割以上を占めると言われ、中小企業者のなかで事業承継の問題に悩まされる人も年々増えてきています。

そんな事業承継にかかる問題の解決策として、本記事が参考になれば幸いです。

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