事業承継税制で贈与税や相続税の負担を軽減【相続税の場合を解説】

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事業承継の際には莫大な税金(相続税や贈与税など)がかかり、そのための納税資金を準備していると経営危機に陥る恐れもあります。そんな時は事業承継税制を利用して支払うべき税金をゼロにしましょう。本記事では相続税の場合の事業承継税制についてまとめています。



▼この記事を読んで欲しい人

  • 事業承継を行うにあたって納税が心配な人
  • 事業承継税制の一般措置と特例措置の違いについて理解したい人
  • 事業承継税制において猶予・免除されるまでの流れを知りたい人
  • 事業承継税制で猶予・免除を受けるための要件を知りたい人
  • 事業承継税制の猶予・免除についてメリット・デメリットを理解したい人


▼この記事を読んでわかること

  • 従来の制度である一般措置と新しい制度である特例措置の特徴
  • 事業承継税制の活用で相続税や贈与税が猶予・免除されるための条件や一連の流れ
  • 事業承継税制を利用することによって得られるメリットやデメリット
  • 納税が猶予されていたにもかかわらず納税をしなければならなくなるケース
  • 事業承継税制について心配事や悩みがある場合の相談先について

内容をまとめると

  • かつては事業承継税制は一般措置のみだったが、利用できる範囲が狭かったためより多くの人が活用できるように特例措置ができたが期間限定のため早めに手続をするべき
  • 事業承継税制の猶予や免除を受けるためには要件を満たしていなければならないため、自分の会社が要件を満たしているか事前に確認するべき
  • 事業承継税制の活用はメリットとデメリットの両方を併せ持っていることからそれぞれを十分理解した上で活用することが大切
  • 事業承継税制について不安を感じた場合は法人相談のプロであるマネーキャリアにおまかせ
  • マネーキャリアへの相談はオンラインで完結し、納得できるまで何度でも無料で行えるため、困ったらまずは気軽に相談することがおすすめ

事業承継税制によって相続税や贈与税が猶予・免除される



事業を立ち上げてがむしゃらに働き続けたとしても、どこかのタイミングで自分ではない他の人に事業を任せなければならないタイミングが訪れます。


事業を自分以外の人に託すとなった場合、事業承継を行い事業そのものや会社で保有している財産などを後継者隣る人に承継することになりますが、その際税金が発生します。


相続税や贈与税といった国に収めるべき多額の税金が発生するため頭を悩ませている事業者もいるでしょうが、事業承継税制を活用することによって納税が猶予、場合によっては免除されるのです。


相続税や贈与税といった避けては通れない納税を猶予、場合によっては免除になるとは一体どのようなことでしょうか。


以下では事業承継税制について説明します。

事業承継税制「特例措置」と「一般措置」の違いを解説



納税の悩みを解決する手段として事業承継税制という制度がありますが、この制度には「特例措置」と「一般措置」の2種類があります。


事業承継税制には2種類あるということで自分はどちらの措置を活用することができるのか分からないという人もいるでしょう。


特例措置は言葉にある通り、あくまで特例であるため誰でも該当するわけではありません。


以下では特例措置と一般措置の違いを見ていくと共に、満たすべき必要条件なども確認していきましょう。

従来の事業承継税制「一般措置」

これまであった事業承継税制が一般措置と言われているものです。


会社の後継者が先代から自社の株式などを譲り受け得た場合、定められた要件をクリアしているケースに限って贈与税・相続税の納税を猶予するという方法です。


さらに自社の株式などを譲り受けた後継者がさらに次の代へと承継する時に、以前猶予されていた分の税金が免除されるという流れになります。


従来の一般措置の場合は事業承継税制が適用される範囲が狭く、厳しい制限があったため該当する条件を満たすことが難しいという特徴があります。


事業承継税制の対象となる株式について以下のような厳しい条件が儲けられていました。


  • 発行済株式の全部が事業承継税制の対象にはならない。発行済み株式の全体の2/3まで
  • 相続税の猶予割合は80%まで


また事業承継税制を使うためには1人の経営者から1人の後継者への贈与・相続でなければならないと定められていたことから、後継者が複数人いる場合はこの制度は使うことができません。


また会社の雇用も条件の1つとして見られています。


事業承継においては従業員の8割の雇用を維持することが必要とされていたため、5年間の平均で8割の雇用が維持できなかった場合は事情に関わらず、事業承継の制度を利用するにふさわしくないということで「制度適用外」となりました。


その結果、猶予されていた分の税金を納税する必要がでてくるのです。

平成30年度の改正による事業承継税制「特例措置」

平成30年度に税制が改正されたことによって一般措置の内容が大幅に変更された特例措置が登場することになりました。


特例措置の登場によってより多くの人が事業承継税制の恩恵に預かることができるようになったと言えます。


具体的には株式の贈与・相続のタイミングでキャッシュとしての負担なしに承継できるようになったのです。


キャッシュとしての負担なしというのは具体的には全株式が事業承継税制の対象とされ、相続税も100%猶予されるようになったということです。


さらに後継者は3人まで贈与・相続ができるようになったため、会社の事情で複数人の後継者を選択する場合でも柔軟に対応できるようになりました。


また、一般措置では雇用8割のラインを維持できない場合全額納税という措置でしたが、特例措置の場合は仮に雇用8割に満たないとしても猶予は受けることができます。


このように措置としての幅が広がり、該当する人が増えた措置と言えますがこの特例措置は期間限定のため、対象期間内に継承できるかどうか確認する必要があります。


2018年1月から2027年12月までの期間限定の特例であるため、該当する人は対象期間内に事業承継の手続きがきちんとできるように事前準備が大切になります。

非上場株式等の事業承継税制で相続税が猶予・免除となるプロセスを解説



制度の条件に当てはまるからと何もせずに自動的に納税が猶予・免除されるわけではありません。


相続税の猶予・免除の恩恵を受けるためには少し煩雑ではありますが、必要とされる一連の手続きをこなさなければならないのです。


  1. 「特例承継計画」をたて、都道府県知事に提出した後確認を受ける
  2. 現経営者から後継者へ相続を進める 
  3. 相続税を申告するまでにの間に申告書を作成し提出する
  4. 納税猶予期間中の非上場株式等を保有し続ける
  5. 後継者が死亡した後、免除届出書や免除申請書を提出する

相続税の猶予・免除を受けるためには避けては通れない手続きであり、期限内に決められた手続きを行わない場合ペナルティが課せられる可能性もあります。

事業を後の代に承継するにあたって後の代の後継者のためにも相続税は猶予してもらいたい、可能であれば納税を免除してほしいと視野に入れている人は必要な手続きの期限や提出物の不備には十分気を付けるようにしましょう。

あらかじめプロセスを理解し、いつまでに何を行えば良いのか把握しておくことが第一でしょう。

「特例承継計画」の策定・提出・ 確認

相続税の猶予や免除を受けたいと考えた場合、手続きが必要です。


相続税の猶予・免除を受けるためには「ただ得だから」「猶予・免除されたいから」という理由だけでは不十分であり、その猶予・免除を受けたいと考える理由やその根拠について客観的に示し理解を得る必要があります。


客観的なデータとして示し、理解を得るために必要なものとして作成する書類が「特例承継計画」と呼ばれる計画書であり、これを提出し認定を受ける必要があります。


具体的に特例承継計画とはどのようなものかというと、誰を会社の後継者として定めたのか、事業承継をするまでどのような経営で進めていくのかといった今後の予定や計画についてまとめた計画書です。


作成した特例承継計画は特定経営革新等支援機関(税理士や商工会などの専門家)に見せて意見などをもらわなければ意味をなしません。


特定経営介革新等支援機関の意見や考えを記したものはお墨付きがもらえたものとして認められるため、この書類を都道府県知事に提出し、確認を受けます。


提出の期限は原則2024年3月31日までですので作成や提出には時間的余裕をもって取り組むようにしましょう。

相続の開始

客観的なデータで理解を得るために特例承継計画を作ったことで、都道府県知事からの事業承継に関わるお墨付きをもらった後は実際の相続にとりかかりましょう。


現在の事業者から後継者に対して相続行ったタイミングで都道府県知事から円滑化法の認定を受けるためには申請を行う必要がありますが、好きな時にいつでも申請ができるわけではありません。


申請については相続開始から8ヶ月以内という期限がありますので期限内に申請を忘れずに行うようにしましょう。


「初めて特例措置を受ける場合」「2度目以降の特例措置を受ける場合」と措置を受けられる条件は多少異なるため、注意して下さい。


初めて特例措置適用を受ける場合、相続が行われたタイミングが「平成30年1月1日から令和9年12月31日の間」ということが満たすべき条件です。


再び特例措置の恩恵を受けたいという場合の条件は「最初の相続の日から経営承継期間末日までの間に相続税の申告期限が来る相続」です。


事業承継の措置を受けた経験がある人も猶予・免除が受けられる可能性もありますが、条件が厳しくなりますので、猶予・免除を受けたいと考えている人は条件をご確認下さい。

相続税申告までの間に申告書の作成・提出を行う

相続税を申告するまでの間に申告書を作成し、提出する必要があります。


相続税の申告期限までに事業承継税制の適用を受けることについて書いた相続税申告書、さらにそれに付随する一定の書類を税務署に提出しなければなりません。


付随する一定の添付書類は認定申請書の写しや定款・株主名簿の写し、登記事項証明書や従業員数証明証や経理に関する書類など会社の事業についてや規模、関わっているメンバーを示す書類です。


その他場合によっては後継者の戸籍謄本や遺言書、印鑑証明書を提出する場合もあります。


それと同時に納税が猶予される相続税の額・利子税の額に見合う位の担保を提供することになります。


相続税の申告の期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。


相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に所轄の税務署に相続税の申告をしなければなりません。


所轄の税務署は一般的に元経営者の住所を所轄する税務署とされています。

納税猶予期間中の非上場株式等の継続保有

納税の猶予を受けられる期間、非上場株式を変わらず持ち続けることについては、申告で非上場株式についてを伝えたした後も変わらずに保有し続けることによって納税は猶予され続けるのです。

しかし、申告した後もただ保有し続けるだけでは納税の猶予とはならないばかりか、定められたルールを守らなかった場合も猶予が打ち切りとなることがあるので気をつけましょう。

非上場株式等の事業承継税制の対象である非上場株式を理由なく他人に譲り渡すなどの行為を行った場合には、納税を猶予してもらっている相続税の全部もしくは一部の利子と一緒に納める必要があるのでご注意下さい。

非上場株式を他人に譲渡したために相続税の全部もしくは一部について利子と一緒にあわせて納める場合は、納税が猶予される期限がこの日と定められてから遅くとも2ヶ月以内に納めるようにしましょう。

納税については猶予ではなく免除となるケースもあるように、例外的なケースもあることを覚えておくといいでしょう。

事業承継税制にあてはまる非上場株式が経営者から後継者へと贈与されることもあります。

生前に贈与を受け取った後に、贈与を受ける側である後継者が非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の適用を受けられるという贈与の「免除対象贈与」の場合では、納税が猶予されていた分が免除されることになるのです。

後継者の死亡後「免除届出書」・ 「免除申請書」の 提出

後継者が亡くなったことで納税が免除されることがあります。


不幸にも後継者が死亡してしまった場合は「免除届出書」「免除申請書」を提出すると猶予されていた相続税の納税が猶予から免除に切り替わります。


相続税の免除届出書は指定された事項を全て記入し、納税地を所轄する税務署へ提出してください。


期限については特段の定めがなく「遅滞なく提出」とされていますが、スムーズな手続きのためにもなるべく早く提出するようにしましょう。


死亡以外で相続税の納税が免除されるケースとしては次の通りです。


  • 経営承継期間の間にやむを得ない理由で会社の代表権がなくなってしまったが、代表権がなくなった日以後に免除対象贈与があった
  • 経営承継期間が終わった後に免除対象贈与を行った
  • 経営承継期間が終わった後に破産開始手続きが決定された
  • 特例経営承継期間が終わった後に事業の継続が困難となってしまい他人に会社を譲渡した、もしくは解散した

このようなことが起きた場合は相続税の納税が免除されることになるため、必要書類の提出を忘れずに行うようにしましょう。

事業承継税制による相続税の納税猶予を受けるための要件について確認



事業承継税制による相続税の納税の猶予を受けるためには必要な要件を満たしている必要があります。


要件としては


  • 会社
  • 相続人(後継者)
  • 被相続人(先代の経営者)
  • 提供する担保
があります。

相続税の納税が猶予されるかどうかはこれらの要件を満たしているかどうかによって変わってくるため、事業承継税制の相続税納税の猶予を受けたいと考えている人はあらかじめ確認しておく必要があるでしょう。

非常に細かく設定されていますが、相続税の納税を猶予するに足りる理由が必要であることから、相続税の納税を猶予するに足りる理由を客観的に証明するためにも、以下に記したこれらの条件を十分に満たしている必要があります。

会社の主な要件

事業承継税制による相続税の納税の猶予を受けるためには会社の要件も見ていく必要があります。


事業承継税制を受けることを希望している会社が次の条件のいずれにも当てはまらないことが必要です。


  • 上場会社
  • 中小企業者ではない
  • 風俗営業会社
  • 資産管理会社

つまり、それほどまでに大きくはない会社で風俗営業などを行っていない一般的な会社であれば、会社としての要件を満たすことができると言えるでしょう。

 中小企業者の定義は中小企業庁のホームページで確認することができます。 

 資産管理会社とは、資産保有型会社や資産運用型会社のことです。

  • 資産保有型会社
    有価証券や自ら使用していない不動産や現金などといった資産保有割合が総資産額の70%以上の会社
  • 資産保有型会社
    特定の資産からの運用収入が総収入金額の75%以上の会社

しかし定められたある一定要件を満たす場合は上記のような資産管理会社だとしても事業承継税制で相続税納税の猶予を受けることができる場合もあります。

後継者である相続人の主な要件

後継者である相続人の要件としては細かく定義されています。


  1. 相続開始日翌日から5ヶ月経過する日に会社代表権がある
  2. 相続開始時に後継者・後継者と特別の関係がある人、かつ総議決権数の50%超の議決権数がある
  3. (後継者1人)相続開始のタイミングで後継者が持っている議決権数が、後継者と特別の関係がある人の中でも最も多くの議決権数を持っている
  4. (後継者が2人、3人)総議決権の10%以上の議決権数を持ち、さらに後継者と特別の関係がある人の中で最も多い議決権数を持っている
  5. 相続開始の直前、会社役員だった
しかし上記5には例外があるのでご注意下さい。

5の項目においては被相続人である先代経営者が70歳未満で死亡した場合、後継者が都道府県知事の確認を受けた特例承継計画に書かれている人であるケースはこの要件に該当しないものとして扱われます。

「特例承継計画に書かれている人」の場合とは相続開始直前にその特例処刑計画の確認を受けていることが必要です。

先代経営者である被相続人の主な要件

先代経営者は「相続する側」と「相続をうける側」であれば「相続する側」、いわば被相続人であると言えます。


この事業承継税制で確かに先代の経営者であると認められるためには次の条件を満たす必要があります。


  • 会社の代表権があった
  • 相続開始直前で被相続人・被相続人と特別の関係がある人で総議決の50%を超える議決権数を保有、かつ後継者以外の人の仲で最も多くの議決権数を持っている

原則として上記の条件を満たす必要はあるのですが、相続開始の直前においてすでに法人版事業承継税制の適用を受けているという場合はこれらの2つの条件は不要であり、仮に条件を満たさない場合だとしても先代経営者と認められます。

被相続人であるとみなされるためには代表権や議決権がカギとなってきます。

会社の代表権を持ち重要事項決定や代表となるべき時に代表として活躍していたかどうか、先代経営者としてきちんと働いていたかどうかをみるためにも議決権の割合を重要視する傾向にあります。

担保提供

担保提供については、担保であれば何でもいいというわけではありません。


担保というからには担保として有効な価値のあるものを提供しなければ意味はないと言えるでしょう。


猶予される分の相続税・利子税に見合う価値のある担保を税務署へ提出する必要がありますが、この制度が適用される非上場株式の全てを担保として提供した場合、「納税が猶予される相続税と同等の価値がある金額の担保」「利子税に見合う金額の担保」が提出されたとみなします。


担保そのものの提供はもちろんですが、相続税申告書の提出期限として定められている日までには納税が猶予されている相続税分の価値がある担保を提供しなければなりません。


また、担保を提供するためには所定の書類の提出が必要となりますので、事前に全て準備を進めておく必要があります。


定められている日までに準備をしなければならないとされていますが、株券の発行や供託のための手続きといったことは時間がかかることが予想されるため、相続税申告書の提出期限まですべての書類が揃わないこともあります。


その場合は、期限内までに期限内までに書類が揃わない場合はあらかじめ所轄の税務署に相談しましょう。

事業承継税制による相続税の免除を受けるための要件について確認



はじめは事業承継税制の制度の活用によって相続税の納税を猶予されたものの、定められた要件を満たすことによってその後納税が免除されるということもあります。


納税が猶予された人の中で免除して欲しい人の全員が納税免除されるということはありえませんが、条件を満たしている場合に限り免除されることもあるということは頭に入れておきましょう。


事業承継税制による相続税免除の恩恵を受けるためには定められた要件をクリアしていることが重要です。


  • 後継者の死亡
  • やむを得ない理由により会社の代表権を有しなくなった場合
  • 経営承継期間の経過後に「免除対象贈与」を行った場合 
  • 会社における破産手続開始の決定などがあった場合
  • 事業の継続が困難な一定の事由が生じた際会社を譲渡・解散した場合

後継者の死亡

「元経営者という立場であり相続をする側の人」と「会社の新たな後継者として相続を受ける側の人」がきちんと揃うことによって事業承継税制の猶予の恩恵を受けられるものであって、仮にどちらかが欠けても成立しないのです。


そのため、後継者の死亡によって会社の将来を担う後継者が不在となた場合は事業承継税制の中では猶予は始めからそもそもなかったものとなります。


事業承継税制を利用した後継者、つまり相続人の方が死亡してしまったケースでは納税は数年後に行えば良いと猶予された分が「免除」に切り替わります。


以前事業承継税制を利用したという相続人が万が一のことで死亡してしまった場合、納税については「猶予」から「免除」に切り替わります。


さらに事業承継税制で定められた条件を満たすことができた場合、さらに次の後継者の分の納税は猶予されることになるのです。


後継者が死亡した場合は手続きをしないと免除にはならないことは押さえておくべきでしょう。


後継者死亡時には「免除届出書」「免除申請書」を提出する必要がありますので、忘れずに行うようにして下さい。

やむを得ない理由により会社の代表権を有しなくなった場合

経営承継期間の中でやむを得ない理由で会社の代表権を持つことがなくなった場合も納税が猶予されている相続税の納付が免除に切り替わります。


やむを得ない理由であれば猶予されていた分は免除になるということですが、すべての理由がやむを得ない理由として認められるわけではなく、ある程度の決まりがあります。


それでは「やむを得ない理由」とはどのような理由でしょうか。


「やむを得ない理由」については以下の通りです。


  1. 精神保健・精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳(1級)の交付を受けた 
  2. 身体障害者福祉法の規定により身体障害者手帳(1級・2級)の甲府を受けた 
  3. 介護保険法の規定により要介護認定(要介護状態区分が要介護5)を受けた 
  4. 上記1−3の理由と類すると認められる理由

これらの事由に該当する場合は会社の代表権をなくすだけの「やむを得ない理由」があると認められ、これまで猶予だったものが「免除」に切り替わると言えるでしょう。

経営承継期間の経過後に「免除対象贈与」を行った場合

「免除対象贈与」とは字の如く、「贈与」されたが納税については「免除の対象」となっているという贈与を指します。


贈与されたものについての納税は贈与されたものの価値が高ければ高いほど高額になってしまい、場合によっては数百万円から数千万円の贈与税がかかってしまいます。


いくら贈与で価値のあるものを受け取ったとしても税金で多額の納税をしなければならないため、手元に殆ど残らないということも無きにしもあらずです。


そのような場合こそ、事業承継税制を活用するのです。


贈与を受けた側が納税の義務があることから、手続きについても贈与を受けた側が行います。


1代目経営者から2代目経営者へと受け継がれた財産について、2代目経営者が次の3代目経営者へと託し、3代目経営者が贈与税特例措置を受ける事になった場合、2代目経営者から3代目経営者へ行われた贈与については免除対象贈与と言えます。


この場合は2代目の経営者が所定の届出を提出することによって納税が猶予されていた税が免除となります。

会社における破産手続開始の決定などがあった場合

会社が支払不能に陥っていたり、多大な債務を抱えていたとしても突然破産開始手続開始が決定されるわけではありません。


 破産開始手続の決定は破産手続を開始することについての申立が地方裁判所にされたタイミングで開始されるものとされていて、破産開始の申し立てができる人を破産申立権者といいます。


 誰でも希望すれば破産申立権者になれるわけではなく、債権者、債務者、準債務者、監督官庁のみ破産申立権者になれるという決まりがあります。


申立ては最高裁判所規則で定める内容を記載した「破産手続開始の申立書」という書面で行うことになります。 

 

手続きによって破産開始手続開始が認められた場合、財産の管理や処分は破産した本人で行えなくなります。 


管理や処分に関しては破産管財人が行うようになる他、破産者である会社は通常の場合続けることが不可能であるとみなされ解散することになります。 


破産手続開始によって会社の存続自体も困難であり、相続税の納税は免除すべきという考え方から、会社における破産開始手続の決定があった場合は免除されるということです。

事業の継続が困難な一定の事由が生じた際会社を譲渡・解散した場合

事業の継続が難しいとされる出来事や理由によって会社を他人に譲渡したり解散した場合も相続税は免除されます。


「事業の継続が難しいとされる出来事や理由」とはどのようなことを指すのでしょうか。


  1. 過去3年間のうち2年以上赤字
  2. 過去3年間のうち2年以上売り上げが減り続けている
  3. 有利子負債が売り上げの6ヶ月分と同じ、もしくはそれを上回っている
  4. 類似業者の上場企業の株価が前年株価を下回る
  5. 心身の故障で後継者による事業継続が難しいとされた(譲渡・合併のみ)
以上のような内容にあてはまる場合「事業の継続が困難な一定の事由」と認められ、会社を譲渡したり解散した場合には相続税が免除されるということです。


提出期限は上記の申請事由が生じることになった日から2ヶ月以内です。


申請事由が生じる事になった日から2ヶ月以内に必要書類をまとめて相続税の納税地を所轄する税務署に提出しなければなりません。


申請日から6ヶ月以内に書面で相続税が免除となるか否かの結果を通知することになっていますが、万が一不服がある場合は通知を受け取った日の翌日から3ヶ月以内に再調査請求や審査請求をすることができます。

事業承継税制を受ける2つのメリット



事業承継税制は企業の事業承継を国としてバックアップするために事業承継を行う際の贈与税や相続税といった納税の負担を軽くしようという働きかけです。


この事業承継税制は平成30年度の改正でその後10年間に限定されていはいるものの大きく拡充されたため、活用できる範囲が広がりました。


この事業承継税制を受けるメリットとしては

  • 相続税や贈与税を支払わなくても良い
  • 特例は期間限定で行われるものであることから、その期間内の事業承継を促しやすい
があります。

以下では事業承継税制を受けることで享受することができる2つのメリットについて解説していきます。

相続税や贈与税を払わなくて良い

事業承継税制を活用することによって、相続税や贈与税などの税金を納めなくて済むということは納税する立場から言えば非常にありがたいことでしょう。


事業を後世にも残したい、そのためには後継者に仕事を継がせたいと考えている人は多いものの、実際に承継するとなると莫大な金額や税金がかかってしまいます。


税金を納めなければならない、納税は義務とわかっているものの、事業承継を行うことで数百万円、会社規模によっては数千万円のキャッシュが税金として引かれてしまうということは痛手になってしまうことは想像に難くありません。


後継者に対して贈与をした場合でも納税の免除を受けられるというメリットがあります。 


贈与税は免除され、特例で得た株式は先代経営者が亡くなったことによって「相続で得たもの」としてみなされます。


相続税の課税対象となるものの所定の手続きを行うことで相続税の納税が猶予され、後継者の死亡または後継者に相続税の納税猶予を行いながら贈与することによって納税は免除されます。

特例は期間限定だから事業承継を促しやすい

事業承継税制の特例は期間限定ということで決められた期間内に行わないことには事業承継税制のメリットがなくなってしまいます。


対象となる贈与や相続は平成30年1月から令和9年12月の10年間の間に行わなければなりません。


さらに付け加えると、上記の10年間の間に行えば良いということではなく、平性30年4月から令和5年3月までの5年間の間にどのような承継を行う予定かを記した特例承継計画を作り知事に提出、その内容の確認を受ける必要があるのです。


この期間内に行わなければ納税の猶予・免除を受けられないことになってしまうということで「期間限定」「納税の猶予・免除」を理由として後継者側から先代の経営者に事業承継についての話題が出しやすく、事業承継を促すことが容易になると言えます。


早めに前倒しに行うことによってメリットがある、加えて期間限定であることから「今やらなければならない」という気持ちにさせるため事業承継を促しやすいと言えるでしょう。

事業承継税制によって生じる3つのデメリット



事業承継税制は期間内に手続きを行うことによって相続税や贈与税の納税について猶予・免除されるというメリットもありますが、万能な制度ということではありません。


当然デメリットとなる部分もあるので、事業承継税制を活用する際のデメリットについても事業承継税制を活用する前に知っておく必要があります。


事業承継税制によって生じてしまう3つのデメリットは


  • 納税猶予期間が長期にわたる 
  •  取り消し事由に該当すると税額に加えて利息も払わなければならない
  • 複雑な制度であるのに専門家が少ない
ということが挙げられます。

以下ではこれらのデメリットについて説明し、デメリットと上手に付き合っていくための方法も説明していきます。

納税猶予期間が長期にわたる

事業承継税制におけるデメリットとして第一に納税猶予期間が長期にわたることが挙げられます。


事業承継税制を受けるためには申請書や特例承継計画を提出した後にも多くの手続きを行う必要があります。


相続や贈与が発生したという旨の申告書から始まり、申告後5年間は連続で提出しなければならない報告書、5年目以降は3年毎に届出書を提出するなど行わなければならない手続きは山積みです。


さらに、これらの手続きが1つでも欠けてしまった場合にはすぐさま納税猶予は取り消されてしまうことになります。


これまで猶予されていた納税額に加えて利子税も納める必要がでてくるため、長きにわたる納税猶予期間中は手続きを忘れるわけにはいきません。


長期間にわたって、相続税の納税猶予を受けているということで10年近い長期間納税のプレッシャーを感じながら過ごすことになるということを覚悟して置かなければなりません。

取り消し事由に該当すると税額に加えて利息も払わなければならない

事業承継税制の利用中に取り消し事由に該当してしまった場合はこれまで猶予されていた税金に加えて利息を支払わなければならなくなります。


取消事由に該当するケースとしては①特例承継期間5年間における取消事由②特例承継期間+その後も継続する取消事由の2種類があります。


①特例承継期間5年間における取消事由


  1. 上場会社、性風俗営業会社
  2. 贈与・総奥開始の日の従業員数の8割以上という人数要件を5年間平均で維持できなかった
  3. 特別関係会社が性風俗営業会社である
  4. 後継者以外の株主が拒否権つき株式を持っていた
  5. 後継者が取得した株式の議決権に制限を加えた
  6. 後継者が会社代表者でなくなった
  7. 後継者グループで過半数の議決権がなくなった、もしくは後継者が後継者グループの中の筆頭株主ではなくなった
  8. 先代の経営者に代表権が戻る(贈与税の納税猶予の場合)

②特例承継期間+その後も継続する取消事由

  1. 資産保有型会社、資産運用型会社
  2. 事業年度の総収入金額=ゼロ
  3. 資本金・資本準備金の減少
  4. 会社の解散や合併で消滅、分割型分割で会社が分割、株式交換などによって子会社化
  5. 定められた期限までに税務署に然るべき報告をしなかった、もしくは虚偽の報告をした
  6. 税務署に事業承継税制の適用をやめる内容の届出書を提出
  7. 後継者が対象株式を譲渡・贈与

複雑な制度であるのに専門家が少ない

事業承継税制については複雑な手続きや該当する条件に合致しているかどうかということも含めて複雑な手続きであるにも関わらず専門家と呼べる人が少ないということも問題として挙げられます。


専門家が少ない理由としては事業承継税制を受ける税理士の手間や報酬といった問題や長期間にわたる業務内容ということも含まれています。


相続税の納税猶予額は多額になることから、事業承継税制を引き受ける税理士のプレッシャーや責任は多大なものとなります。


仕事内容や責務に見合うだけの報酬を受け取らないことには引き受けられないという考え方をする人が多いと見られます。


また、長期間にわたる業務内容ということについては事業承継の先代の経営者から後継者に引継ぐ、またさらに後継者からその先の後継者に引継ぐ…といった長期にわたる付き合いのことを指します。


事業承継は相続などが関係してくるため、税理士と会社との付き合いが数十年単位となってしまうことは避けられず、通常の税務業務よりも複雑かつ長期、そして税理士自信が仕事を続けていけるかという問題も発生します。

納税が猶予されている相続税を納付する必要がある場合について解説

納税が必要となるのは「特例経営承継期間内」「特例経営承継期間経過後」の2つ



事業承継税制によって納税は猶予されていますが事情によっては後日納付する必要がでてくることがあります。


「特例経営承継期間内」「特例経営承継期間経過後」と分けて考える必要があります。


後継者に非上場株式が贈与された後に「免除対象贈与」であると認められた場合はある程度の納税猶予税額が免除されることもあります。


「免除対象贈与」とは非上場株式にかかる贈与税の納税について猶予・免除の適用を受けることができる贈与のことです。


しかし、納税が猶予されている相続税と利子税を納税することになった場合は、納税猶予の期限が確定事由にあてはまった日から2ヶ月たつまでに納税しなければなりません。

「特例経営承継期間内」と「特例経営承継期間経過後」の概要を解説

猶予されていた相続税について納付しなければならないケースは以下の表の通りです。


納税猶予された分を納める必要があるケース(特例)経営承継期間内(特例)経営承継期間の後
事業承継税制の適用を受けた非上場株式についてその一部を譲渡
相続税全額+利子税譲渡した分に対応する相続税と利子税
後継者が会社の代表権を有しなくなった相続税全額+利子税
会社が資産管理会社に該当した相続税全額+利子税相続税全額+利子税
一定基準美における雇用平均が、相続時の雇用×0.8を下回る
(しかし一般措置の場合は相続税全額+利子税)

表の「ー」の部分は引き続き納税が猶予されるケースです。


特例経営承継期間内に雇用の平均が相続時雇用平均×0.8の数字を下回った場合は、事業承継税制を受けるために、「下回ることとなってしまった理由」を報告書にまとめ、知事あてに提出・確認を受けなければなりません。


この時点で提出した報告書と確認書の写しは継続届出書と一緒に提出する必要がありますのでなくさないようにしましょう。

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現在の事業を後継者に託すことを考えた際、相続時の税金の猶予や免除を受けられるメリットがある事業承継税制について興味を持つこともあるでしょう。


しかしながら事業承継税制は制度が複雑であり、自分の会社に適用することができるのかどうか、どのように活用すべきか迷いが生じることがあります。


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まとめ:事業承継税制で相続税をゼロにしよう



事業承継税制は相続税や贈与税が猶予・免除されるということもあり後継者へ事業を引継ぎたいと考えている人にとっては渡りに船の制度でしょう。


一般措置と特例措置の2種類があることや、適用についてはいくつか条件があることから、自分の会社に適用することができるかあらかじめ調べておく必要があると言えます。


会社にとって多額の納税は悩みのタネとなりますが、それらが猶予・免除されることによって税金の心配が軽くなるというメリットもありますが、手続きの面や専門家不足などデメリットもあります。


しかしながら、上手に活用することで税金対策をしながら事業承継もできるということですので活用できる人は事業承継税制で相続税をゼロにしましょう。


メリットやデメリットなども十分に考慮した上で事業承継税制を活用していくことをおすすめします。


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