人材開発支援助成金の申請と受給対象をわかりやすくご紹介!

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従業員のキャリアアップ訓練に伴い事業主が利用できる「人材開発支援助成金」という助成金制度があります。今回はこの人材開発支援助成金が対象となる訓練の内容や助成金の金額、さらに助成金制度を利用するメリットやデメリットなどについても説明していきます。





▼この記事を読んで欲しい人
  • 人材育成に伴い人材開発支援助成金の利用を考えている事業主
  • 労働者訓練の実施を計画している事業主団体に属する方
▼この記事を読んでわかること
  • 人材開発支援助成金が支給される対象者や要件、金額など
  • 人材開発支援助成金を利用するメリットやデメリット
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内容をまとめると

  • 人材開発支援助成金は従業員のキャリアアップにつながる訓練を支援する助成金制度
  • 人材開発支援助成金の受給には申請が必要であり受給までには長期間かかる
  • 人材開発支援助成金は申請の煩雑さや訓練そのものによる人手不足などのデメリットがある
  • 旧「キャリア形成促進助成金」からはコースの統合など様々な点が変更されている
  • 人材開発支援助成金についてもっと詳しく知りたい方は「マネーキャリア」の利用がおすすめ!最適な生命保険を無料オンライン相談で提案してくれます!
監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

目次を使って気になるところから読みましょう!

人材開発支援助成金とは


人材開発支援助成金とは、労働者がより専門的な知識や技術を身に付けるための「職業訓練」において、その訓練に必要な費用を事業者に助成するしくみです。

職業訓練を助成金付きで受けられることで、社員として働いている従業員がさらなるスキルを習得し、より良いキャリアを目指すことが可能となります。

人材開発支援助成金には、
  1. 特定訓練コース
  2. 一般訓練コース
  3. 教育訓練休暇付与コース
  4. 特別育成訓練コース
  5. 建設労働者認定訓練コース
  6. 建設労働者技能実習コース
  7. 障害者職業能力開発コース
以上7つのコースがあります。

メインとなるのは、1の「特定訓練コース」が主に若年者の正社員を対象とした訓練、2の「一般訓練コース」が1に該当しない正社員を対象とした訓練、そして4の「特別育成訓練コース」が正社員ではなく契約社員を対象とした訓練です。

ちなみに3の「教育訓練休暇付与コース」は有給休暇取得により教育訓練を受けた従業員、5の「建設労働者認定訓練コース」は中小建設会社の従業員、6の「建設労働者技能実習コース」は主に建設会社の従業員を対象としており、7の「障害者職業能力開発コース」は障害者を対象とした職業訓練における事業者への助成金となります。

人材開発支援助成金の種類とその違い


最初に人材開発支援助成金における7つのコースを紹介しましたが、具体的にそれぞれのコースでどのような違いがあるのかが重要です。


そこで次からは、

  1. 特定訓練コース
  2. 一般訓練コース
  3. 教育訓練休暇付与コース
  4. 特別育成訓練コース
  5. 建設労働者認定訓練コース
  6. 建設労働者技能実習コース
  7. 障害者職業能力開発コース
これらのコースについて詳しく説明していきます。

①特定訓練コース

特定訓練コースの「若年人材育成訓練」は、

  • 雇用契約から5年以内
  • 35歳未満の正社員
上記の2点に当てはまる人を対象とした、いわゆる「若年者」を対象とした職業訓練となっています。

特定訓練コースでは、実訓練時間が10時間以上となった場合に、「人材開発支援助成金」として訓練費用の一部が事業者に助成されます。

基本の助成額は次のとおりです。
中小企業中小企業以外
経費助成(OFF-JT)受講料の45%受講料の30%
賃金助成(OFF-JT)760円(1時間)380円(1時間)
経費助成(OJT)665円(1時間)380円(1時間)
ただし、
  • 前年度の生産性および3年度後の生産性と比較して6%以上の伸びがある
  • 前年度の初日から3年度後の末日までの期間で事業主都合での解雇者がいない
以上2つの生産性要件を満たしている場合は、
中小企業中小企業以外
経費助成(OFF-JT)受講料の60%受講料の45%
賃金助成(OFF-JT)960円(1時間)480円(1時間)
経費助成(OJT)840円(1時間)480円(1時間)
助成額が以上のように変わります。

このうち「OFF-JT」に属する職業訓練の場合は、次のように「経費助成」の助成額に上限が設けられています。
中小企業中小企業以外
20時間以上100時間未満15万円10万円
100時間以上200時間未満30万円20万円
200時間以上50万円30万円
※通信制での訓練の場合は実訓練時間にかかわらず、中小企業が30万円、大企業が20万円となる。

②一般訓練コース

一般訓練コースは「特定訓練コース」の条件に当てはまらない正社員を対象とした職業訓練となっています。


一般訓練コースでは実訓練時間が20時間以上となった場合に、「人材開発支援助成金」として訓練費用の一部が事業者に助成されます。


基本の助成額は次のとおりです。

中小企業中小企業以外
経費助成(OFF-JT)受講料の30%受講料の30%
賃金助成(OFF-JT)380円(1時間)380円(1時間)

このように一般訓練コースは「特定訓練コース」と異なり、中小企業と中小企業以外での金額の区分けがありません


また「OJT」訓練は助成対象外となります。


そして、

  • 前年度の生産性および3年度後の生産性と比較して6%以上の伸びがある
  • 前年度の初日から3年度後の末日までの期間で事業主都合での解雇者がいない
以上2つの生産性要件を満たしている場合は、

中小企業中小企業以外
経費助成(OFF-JT)受講料の45%受講料の45%
賃金助成(OFF-JT)480円(1時間)480円(1時間)
以上の助成額に変わります。


一般訓練コースにおける助成額の上限は次のとおりです。

中小企業中小企業以外
20時間以上100時間未満7万円7万円
100時間以上200時間未満15万円15万円
200時間以上20万円20万円

上限に関しても、中小企業と大企業では金額に違いはありません。

③教育訓練休暇付与コース

教育訓練休暇付与コースは、有給制度を用いて職業訓練を行った人が対象となるコースです。


より詳しく条件を挙げると、

  1. 教育訓練のために利用できる有給制度がある
  2. 1の有給制度を実際に労働者が利用して取得した
上記の2点に当てはまる場合に、「人材開発支援助成金」の対象となります。

ちなみに職業訓練を目的とした有給制度にも2つのケースがあり、
  • 教育訓練休暇制度:必要な休暇が数日である場合
  • 長期教育訓練休暇制度:必要な休暇が30日~数カ月に及ぶ場合
このように必要とする休暇の日数により制度が異なります。

まず、「教育訓練休暇制度」を利用した場合の助成額は次のとおりです。

通常生産性要件を満たす
経費助成30万円36万円
賃金助成なしなし
次に、「長期教育訓練休暇制度」における助成額は次のとおりです。
通常生産性要件を満たす
経費助成20万円24万円
賃金助成6千円6千円
そして生産性要件の条件をクリアするには、
  • 3年度前の生産性と比較して6%以上の伸びがある
  • 3年度前の生産性と比較して1~6%未満の伸びがある(金融機関からの事業性評価が必要)
以上いずれかの要件を満たしている必要があります。

④特別育成訓練コース

特別育成訓練コースは、有期契約労働者(契約社員など)に対して行う職業訓練です。


特別育成訓練コースの「一般職業訓練」では、実訓練時間が20時間以上となった場合に、「人材開発支援助成金」として訓練費用の一部が助成されますが、「育児休暇中訓練」の場合は条件が10時間以上となります。


まず、経費助成額は次のとおりです。


一般職業訓練・
有期実習型訓練
(大企業)
中長期的キャリア形成訓練
(大企業)
200時間以上100時間未満10万円
(7万円)
15万円
(10万円)
100時間以上200時間未満20万円
(15万円)
30万円
(20万円)
200時間以上30万円
(20万円)
30万円
(50万円)

次に、賃金助成と実施助成額です。

一般職業訓練・
有期実習型訓練

(大企業)
中長期的キャリア形成訓練
(大企業)
賃金助成(OFF-JT)760円(1時間)
(475円)
760円(1時間)
(475円)
実施助成(OJT)760円(1時間)
(665円)※
ー※

※中小企業等担い手育成訓練に関しては、賃金助成のみ(同額)となる

※OJTは「有期実習型訓練」および「中小企業等担い手育成訓練」が対象


ただし、

  • 前年度の生産性および3年度後の生産性と比較して6%以上の伸びがある
  • 前年度の初日から3年度後の末日までの期間で事業主都合での解雇者がいない

以上2点の生産性要件を満たしている場合は、助成額が次のとおりとなります。

一般職業訓練
有期実習型訓練
(大企業) 
中長期的キャリア形成訓練
(大企業)
賃金助成(OFF-JT)960円(1時間)
(600円)
960円(1時間)
(600円)
実施助成(OJT)960円(1時間)
(840円)※
ー※

※OJTは「有期実習型訓練」および「中小企業等担い手育成訓練」が対象


ちなみに特別育成訓練コースにおける助成には、

  • OFF-JT:1200時間まで(中長期的キャリア形成訓練の場合は1600時間)
  • OJT:680時間まで(中小企業等担い手育成訓練の場合は1020時間)
以上のように助成対象となる訓練時間に上限があります。

⑤建設労働者認定訓練コース

建設労働者認定訓練コースは、建設業で働いている労働者を対象とした認定訓練です。


基本的には1日1時間以上の技能実習を行った場合に「人材開発支援助成金」の助成対象となります。


助成額は、

  • 経費助成:助成対象経費とされた額の6分の1相当
  • 賃金助成:1日あたり3,800円
上記のとおりとなっていますが、
  • 3年度前の生産性と比較して6%以上の伸びがある
  • 3年度前の生産性と比較して1~6%未満の伸びがある(金融機関からの事業性評価が必要)
以上2点の生産性要件を満たしている場合は助成額が「1,000円」割増となります。

助成額の上限は「1,000万円」です。

⑥建設労働者技能実習コース

建設労働者技能実習コースは、建設業で働いている労働者が有給制度を利用して認定訓練を受けるコースです。


事業者が「人材開発支援助成」を受けるには、1日1時間以上、合計10時間以上の技能実習が必要です。


助成額は雇用保険者の人数によって変わります。


まず経費助成額は、

  • 20人以下:支給対象費用の4分の3
  • 21人以上(35歳未満):支給対象費用の10分の7
  • 21人以上(35歳以上):支給対象費用の20分の9
  • 助成建設労働者の技能実習:支給対象費用の5分の3
上記の金額となります。

次に賃金助成額は、 
  • 20人以下:1日あたり8,550円
  • 21人以上:1日あたり7,600円
上記のとおりですが、「建設キャリアアップシステム」技能者情報登録者は、
  • 20人以下:1日あたり9,405円
  • 21人以上:1日あたり8,360円
上記の金額に変わります。

さらに、
  • 3年度前の生産性と比較して6%以上の伸びがある
  • 3年度前の生産性と比較して1~6%未満の伸びがある(金融機関からの事業性評価が必要)
以上2点の生産性要件を満たしている場合は、
  • 20人以下:1日あたり2,000円
  • 21人以上:1日あたり1,750円
上記の金額分が助成額に割増されます。

⑦障害者職業能力開発コース

障害者職業能力開発コースは、

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神障害者
  • 発達障害者
  • 高次脳機能障害がある
  • 難治性疾患を有している
上記のうちいずれかに該当する人、およびハローワークから職業訓練が必要であると認められた人が対象となります。

障害者職業能力開発コースにおいては、
  • 訓練期間が6カ月・訓練期間が700時間(1日あたり5~6時間)
  • 訓練時間のうち実技が半数以上の時間を占める
この要件を満たしている場合に「人材開発支援助成」の対象となります。

このコースにおいて助成される費用は、
  1. 施設または設備の設置・整備または更新に伴う費用
  2. 運営費
この2つの費用です。

まず1の「施設または設備の設置・整備または更新に伴う費用」(長いため「A」と表します)の助成額は、
  • 障害者職業能力開発訓練事業を行う訓練科目ごとの「A」:費用に4分の3を乗じた額
  • 初めて助成金の対象となる訓練科目ごとの「A」:上限5,000万円まで
  • 訓練科目ごとの「A」:上限1,000万円まで
上記のとおりです。

次に2の「運営費」の助成額は、重度の障害があると認められる場合は
  1. 1人あたりの運営費:5分の4を乗じた額に、重度障害者等である訓練対象障害者のうち、訓練時間80%以上の受講者人数を乗じた額
  2. 訓練時間の80%以上を受講していない人の、1人あたりの運営費:1に5分の4を乗じた額に、訓練時間数を分母、訓練受講時間数を分子にして算出された率を乗じた額
上記のとおりであり、それ以外の障害者が対象である職業訓練においては
  1. 1人あたりの運営費:4分の3を乗じた額に、重度障害者等である訓練対象障害者のうち、訓練時間80%以上の受講者人数を乗じた額
  2. 訓練時間の80%以上を受講していない人の、1人あたりの運営費:1に4分の3を乗じた額に、訓練時間数を分母、訓練受講時間数を分子にして算出された率を乗じた額
このようになります。

重度障害者とそれ以外の障害者におけるわかりやすい違いは、1人あたりの運営費に乗じる数字が「5分の4(重度障害者)」と「4分の3(重度障害者以外)」で異なるという点です。

人材開発支援助成金の申請方法は?支給されるまでの流れを確認


人材開発支援助成金を受給するためには、必ず申請が必要です。


おおまかな申請の流れは、

  1. 訓練計画の策定
  2. 労働局へ「人材開発支援助成金訓練実施計画書」の提出(1カ月前まで)
  3. 提出した計画書に基づく訓練の実施
  4. 労働局へ「人材開発支援助成金支給申請書」の提出(2カ月以内)
  5. 審査に通過後、人材開発支援助成の支給
このようになります。

2および4の書類はそれぞれ設定された期限を必ず守る必要があり、書類は郵送かオンライン形式で提出します。

ただし訓練コースごとに申請様式は異なるので、こちらにPDF形式でまとめられているリストを確認、印刷して活用しましょう。

その他申請に関して不明な点がある場合は、厚生労働省によるQ&Aをご覧ください。

法人の補助金に関してわからないことがあれば法人保険の専門家に無料相談!


今回取り上げているような事業者が活用できる補助金に関して、事業主は必ず把握しておくべきですが、説明を見ただけでは難しい点やわからない点が多いため、この分野に関して専門的な知識を持つ、プロと呼べる相手に相談したい、と思われるかもしれません。


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令和3年に改正された!人材開発支援助成金の変更点とは


人材開発支援助成金制度は、令和3年からいくつかの点で内容が変更されています。


厚生労働省の公式ウェブサイトに記載されている主な変更点は、

  • 「業種転換後に従事する職務」関する訓練が助成対象となる
  • 特定訓練コースの「労働生産性向上訓練」に、ITSSレベル4または3となる訓練の位置付け
  • 特定訓練コースにおける中高年齢者雇用型訓練への助成が終了
  • 特定訓練コースにおける若者雇用促進法に基づく認定事業主への助成率加算を終了
  • 特定分野認定実習併用職業訓練の企業連携型及び事業主団体連携型での申請方法を終了
  • 福島県所在の事業主に対する東日本大震災復興のための特例措置終了
  • 事業主団体等が申請する場合の様式の一部を事業主が申請する場合の様式へ統合
  • 特別育成訓練コースのOFF-JT訓練の実施方法について、公共職業訓練施設等以外の者が実施する同時双方向型訓練についても認可
  • 有期実習型訓練実施前に行うキャリアコンサルティングについて、テレビ電話等での実施が認可
  • 長期教育訓練休暇制度で「120日以上」の休暇取得が支給要件だったところを「30日以上」に緩和
以上のとおりです。

人材開発支援助成金の4つのデメリット


事業主が従業員の職業訓練に伴い「人材開発支援助成金」を利用することには一見メリットしかないようにも思えますが、いくつかあるデメリットも無視できません。


次は人材開発支援助成金を利用することのデメリットについて、

  1. 申請から受給までかかる時間
  2. 助成金交付の可否は研修終了後に決定
  3. 研修で人手不足が発生
  4. 助成金の申請手続きが煩雑
これらの点を説明していきます。

デメリット①:申請から支給まで時間がかかる

人材開発支援助成金は申請すればすぐに受給されるというものではなく、申請から支給までかなりの日数を要するため、直近で事業資金を補填する方法として活用するのは難しいでしょう。


助成金を受け取るまでに、

  1. 計画
  2. 書類の提出
  3. 訓練の実施
  4. 申請書提出
  5. 審査・支給
簡単に挙げればこれが申請プロセスとなりますが、実際のところ申請から助成金の支給までには半年、長ければ1年ほどかかる場合があります。

ただしこの「時間がかかる」という点は他の事業者向け補助金にも共通しており、人材開発支援助成金に限ったデメリットではありません。

デメリット②:研修終了後に助成金交付が決まる

人材開発支援助成金の申請から支給までのプロセスをもう一度確認していただけるとわかりますが、実際に助成金交付が決まるのは、職業訓練が終了した後です。


しかも、申請すれば100%交付されるというわけではありません。


書類に不備があったり、従業員解雇等の理由により助成の条件を途中で満たさなくなったりすると審査に通過することができず交付が遅れたり、それどころか交付されない可能性もあります。


そもそも、実施しようとしている事業者が要件をクリアしていなければ、助成金の支給対象になりません。

デメリット③:研修により一時的に人手不足に陥る

従業員が職業訓練・研修を実施するということは、それがたとえキャリアアップに確実につながるものだとしても、研修期間中は人手不足となるかもしれません。


とりわけ社員が有給を利用して受けるタイプの訓練の場合は、普通に「連続で3カ月以上」などの長期間休暇となるため、少なからずマンパワーが不足する事態に陥る可能性はあるでしょう。


オフィスワークか、または建設業なのかによっても異なりますし、いわゆる「代えが効かない人材」が「OFF-JT」で社外で訓練を受けるケースにおいては、該当リスクが高まることが予測されます。


このため一時期的に発生する人手不足をどのようにして解消するか、それも訓練計画と併せてプランニングする必要があるでしょう。

デメリット④:申請手続きが煩雑

これは他の助成金申請にも共通している点ですが、とりわけ人材開発支援助成金の申請手続きは煩雑です。


訓練コースごとに定められた必要書類をすべて用意しなければならないだけでなく、

  • 計画書類は訓練の1カ月前まで提出
  • 申請書類は訓練後2カ月以内に提出
このような提出期間のルールもあります。

書類の不備などを避けるためにも、事業主は場合によっては社会保険労務士などに申請代行を依頼する必要性、それに伴う金銭的負担も発生するかもしれません。

人材開発支援助成金の注意点


人材開発支援助成金の利用にはメリットだけでなくデメリットもあるという点を説明しましたが、その他にも当制度の仕組み上、注意しておかなければならない点があります。


次は人材開発支援助成金の注意点について、

  1. 法人税と所得税
  2. キャリアアップ助成金との併用不可
  3. 助成金申請対象者が退職した場合
これらの点を説明していきます。

注意点①:法人税や所得税がかかる

人材開発支援助成金はその名のとおり「助成金」を法人が受給する制度のため、他の補助金・助成金と同様に「雑収入」となり、法人税や所得税の対象となります。


しかも人材開発支援助成金はすぐに支給されるお金ではないため、すぐに勘定することができず、決算期が変わる場合は一時的に「未収入金」として計上する必要があります。


その場合は助成金が振り込まれた段階で借方を「預金」、貸方を「未収入金」などとして計上します。

注意点②:キャリアアップ助成金との併給可能

人材開発支援助成金とよく似た助成金に「キャリアアップ助成金」というものがありますが、人材開発支援助成金と併給できる可能性があります。


人材開発支援助成金が基本的に正規労働者(正社員)を対象としているのに対して、キャリアアップ助成金は非正規労働者(パート・アルバイトなど)が対象です。


そのため、有期契約労働者が対象である「特別育成訓練コース」の訓練によって、実際に正社員に登用(キャリアアップ)されるなどのケースでは、両方の助成金における受給条件をクリアすることで併給できる場合があります。

注意点③:助成金申請対象者が退職しても受給可能

訓練対象者が退職しても、助成金が受け取れるケースがあります。


まず、人材開発支援助成金の対象となる事業者には、

  • 労働局長の受給資格認定を受けた事業主である
  • 訓練期間中の労働者に対して賃金を適正に支払う事業主である

このような要件が求められています。


その要件の中に「職業訓練計画を提出した日の前日から起算して6カ月前の日から、申請書提出日までの間に、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合で離職させた適用事業主以外の者であること」というような要件が定められています。


どういうことかというと、申請日から直近6カ月以内に会社都合で従業員を退職させている場合は助成金を受給できません


ただし、対象者の退職理由が会社都合ではなく自己都合である場合は、変わらず助成金を受給できる可能性があります。

人材開発支援助成金とキャリアアップ助成金の違い


人材開発支援助成金における注意点の部分で「キャリアアップ助成金」について少し紹介しましたが、あらためて人材開発支援助成金との違いを把握しておきましょう。


まずは、次の表をご覧ください。

人材開発支援助成金キャリアアップ助成金
対象者正規雇用労働者非正規労働者
支援目的・正規雇用者のスキルアップ
・現職からさらなるキャリアアップ
・企業としての発展 など
・非正規社員の正規雇用
・企業の非正規労働者に対する処遇改善
など

実際にはほかにも様々な違いがありますが、特に大きな違いだけ列挙しています。


先ほど言及したとおり、

  • 人材開発支援助成金:正規雇用労働者が対象
  • キャリアアップ助成金:非正規雇用労働者が対象
このように対象者の明確な違いがあります。

また、人材開発支援助成金は主に「正社員がより上のキャリアを目指す」ことでさらに企業が発展することが目的となりますが、キャリアアップ助成金は正社員ではなくパートタイム労働者や派遣社員などが正規雇用されることを促進するのが大きな目的です。

「キャリア形成促進助成金」からの変更点


人材開発支援助成金は2016年4月から始まりましたが、以前は「キャリア形成促進助成金」という名称でした。


内容も大幅に変更されていますが、どのような点が変更になったのかというと、

  1. 助成メニューが統合
  2. 生産性要件の導入・助成額の引き上げ
  3. 助成対象時間の要件を緩和
  4. 導入コースでの大企業への助成を廃止
  5. 事業主団体の訓練について特定訓練コース・一般訓練コースの要件を満たすすべての訓練が助成対象に変更
  6. 東日本大震災に伴う特例措置の延長(現在は廃止)
主に上記の点が旧制度から変更されています。

このうち、1および2の変更点について詳しく説明していきます。

変更点①:コースが統廃合された

キャリア形成促進助成金では、それぞれのコースが

  • 重点訓練コース
  • 雇用型訓練コース
  • 一般型訓練コース
  • 制度導入コース
大まかにこの4コースに分類されていましたが、そのうちいくつかの訓練が整理・廃止され、
  • 訓練関連:特定訓練コース・一般訓練コース
  • 制度導入関連:キャリア形成支援制度導入コース・職業能力検定制度導入コース
このように整理統合されました。

たとえば、旧キャリア形成支援における、
  • 成長分野等・グローバル人材育成訓練
  • 中長期的キャリア形成訓練
  • 育休中・復職後等人材育成訓練
  • 一般団体型訓練
  • 教育訓練・職業能力評価制度
  • 事業主団体助成
これらの訓練・制度が統合により整理・廃止されています。

変更点②:新たに生産性要件が導入された

人材開発支援助成金から新たに、労働生産性を基準として助成額の引き上げを行う「生産性要件」が導入されました。


訓練コース紹介部分ですでに何度も挙げているように、

  • 生産性が3年度前より6%以上の伸び
  • 生産性が3年度前より1%以上(6%未満)の伸び ※金融機関から事業性評価を得ている
これらの要件をクリアすることで助成額が引き上げられます。

ちなみにこの「生産性」はどのように計算されるのかというと、
  1. 付加価値(営業利益・人件費・減価償却費・動産不動産賃借料・租税公課の合計)
  2. 雇用保険被保険者数
「1」÷「2」で求められます。

申請に必要な書類


最後に、人材開発支援助成金(特定訓練コース・一般訓練コース)を事業主が申請する場合に必要な書類をまとめます。


【計画・計画変更に伴う書類】

  • 人材開発支援助成金 事業主訓練実施計画届
  • 年間職業能力開発計画
  • 訓練別の対象者一覧
  • OFF-JT講師要件確認書
  • 人材開発支援助成金 事前確認書
【支給申請に伴う書類】
  • 人材開発支援助成金 事業主支給申請書
  • 賃金助成・OJT実施助成の内訳
  • 経費助成の内訳
  • 専門実践教育訓練の経費負担額に関する申立書
  • 専門実践教育訓練の受講証明書・受講修了証明書
  • OFF-JT実施状況報告書
  • 出向先事業主・事業主団体等振込確認表
  • 育児休業期間中訓練実施結果報告書
  • 海外訓練実施結果報告書
それぞれの書類様式は、こちらから改めてPDF・Excel形式でダウンロード・印刷できます。

人材開発支援助成金に関するまとめ


今回は人材開発支援助成金について取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。


充実した雇用の促進、そしてより高い技能・能力を有する人がキャリアアップを図り企業が成長するための支援制度である「人材開発支援助成金」を、事業者はフル活用できます。


利点だけでなく、実際に申請してから受給するまでのプロセスにはいくつもの難点があることや、メリットだけでなくデメリットがあることも知っておくなら、必ず今後に役立つでしょう。


「人材開発支援助成金」についてより詳細に知りたい方はプロに相談してみましょう。

マネーキャリアは法人の方も無料で相談可能な為、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。


ほけんROOMではこの記事以外にも役立つ記事を多数掲載していますので、ぜひご覧ください。

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