保険から受け取った後遺障害保険金は非課税?課税される場合とは?

「お金が入ったら税金を支払う」というのが一般的な考えですが、後遺障害保険金を受け取った場合も支払う必要があるのでしょうか?税金は利益に対してかかるものなので保険金でも利益に該当しないものは非課税となります。後遺障害保険金と税金について理解しておきましょう。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

交通事故などで後遺障害保険金を受け取ったら税金はかかるの?

後遺障害保険金とは保険加入者(被保険者)が傷害を被り後遺障害になった場合、障害の程度に応じて生命保険・傷害保険等から支払われるお金を指します。

後遺障害を負ったご本人や家族にとって、後遺障害保険金は経済的な困窮を避けるためのお金としてたいへん頼りになりますよね。

しかし、基本的に後遺障害保険金は非課税であるものの、ケースによって課税対象になる場合があります。

どんな場合に課税対象となるか、不安になることもあるでしょう。

そこで今回は、後遺障害保険金を受け取った場合の税金について

  • 後遺障害保険金と税金について
  • ケースによっては後遺障害保険金が課税対象になる場合
  • 後遺障害保険金を受け取ったら確定申告が必要かどうか
以上のことを中心に解説していきます。 

この記事を読んでいただければ、後遺障害保険金の特徴、どんなケースで課税対象となり得るかについて知ることができると思います。 

ぜひ最後までご覧ください。 


被保険者が受け取る後遺障害保険金は非課税

交通事故等でケガをしてしまうと、ケガの状況によりその後も身体に影響を及ぼしてしまうことがあります。

これを後遺障害と言いますが、具体的には次の要件を全て含む状態を指します。

  • 医学上、治療の効果がこれ以上期待できない状態となること
  • 保険加入者(被保険者)の身体に残された症状が、将来にわたり回復できない状態であること
  • 保険加入者(被保険者)の身体の機能に重大な障害が残り、または身体の一部が欠損した状態にあること

後遺障害を原因として受け取った保険金に税金はかかりません。

以下では、どのような保険金が非課税なのかを説明します。

入院・手術保険金なども非課税

障害保険金をはじめ通院・入院保険金(給付金)や手術保険金(給付金)等は、金額にかかわらず非課税となります。

なぜなら、法令で損害保険契約に基づく保険金や生命保険契約に基づく給付金は、身体の傷害に基因して支払を受けるものは課税対象とならないことが明示されているからです(所得税法施行令第30条第1号)。

【注意】死亡保険金を受け取った場合、所得税などの税金がかかることも

いわゆる保険加入者(被保険者)本人に支払われる保険金(給付金)は、身体の傷害に基因して支払を受けるものである限り非課税です。

しかし、死亡保険金に関しては受取人が誰かによってかかる税金が異なります

下表を参考にしてください。

課税パターン(1)(2)(3)
契約者
被保険者
受取人相続人(子・妻等)
税金相続税所得税・住民税贈与税

後遺障害保険金だけでなく「高度障害保険金」も税金はかからない

後遺障害保険金のみならず、身体に重大な障害(両目の失明、両手・両足の欠損等)が残った場合に保険会社から支払われる「高度障害保険金」も、もちろん身体の傷害に基因して支払を受ける保険金のため非課税です。

こちらでは、保険金の受取人が本人でなくても非課税なのかどうかを解説します。

本人だけでなく生計を一にする他の親族が受け取った場合も非課税

障害を受けた本人や配偶者その他生計を一にする親族が受け取る場合、保険金全額非課税になります。

この「生計を一にする親族」とは誰かについてですが、親族は配偶者の他、子・父母等の六親等内の血族、三親等内の姻族を指します。

一方、“生計を一にする”とは次のように定義されます。

  • 親族が本人と同居している場合、独立した生計を営んでいると認められる人を除く
  • 勤務先や修学のため、または療養等の都合で同居していない親族でも、休暇などの場合、その家族のもとで暮らすことを常としていたり、この親族間で常に生活費等の送金が行われていたりする場合

つまり、本人と同居している場合でも、生計を一にすると認められないことや、同居していなくても生計を一にすると認められる場合があります。

保険金受取人と保険料負担者が異なっている場合でも贈与税がかからない

本人や配偶者、その他生計を一にする親族であるなら、保険金受取人と保険料負担者が異なっている場合でも、身体の傷害に基因して支払を受けるものであることに変わりはありません。(所得税法施行令第30条第1号)

「【注意】死亡保険金を受け取った場合、所得税などの税金がかかることも」で前述したように、それぞれ契約者・被保険者・受取人が異なっても、死亡保険金の場合のように贈与税が発生することはありません。

死亡保険金の相続についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

後遺障害保険金・高度障害保険金を使う上での注意点

傷害保険の場合、原則として事故の日より180日以内に後遺障害を負った時、次の計算式で保険金が計算されることになります。

後遺障害保険金額×所定割合(程度に応じて4%~100%)


ほとんどのケースでは所定割合が100%の場合なら、保険契約時に設定した保険金全額が受け取れます。

ただし支払われる後遺障害保険金の金額は、保険期間を通じ、死亡・後遺障害保険金額を限度としているため、所定割合が100%で保険金を受け取ってしまうと、その後ケガが原因となって被保険者本人が死亡した場合でも、死亡保険金を受け取ることができません。

また、後遺障害保険金・高度障害保険金を受け取ることができる場合、いかなる扱いをしても税金がかからないと一概に言えません。

また、受け取った保険金は然るべき目的に使う必要があります。

こちらでは、保険金を扱う際の注意点について説明します。

後遺障害保険金などを使い切らないうちに相続が発生すると残額は税金の課税対象になる

後遺障害保険金・高度障害保険金は受け取る時点では税金がかかりません。

しかし受け取った保険金の残金を受取人の口座等へ保管したままの状態にしておくと、受取人が亡くなった際、金融資産として税金をとられることになります。(相続税)

この場合でも、被相続人(受取人本人)の遺産全額が控除額の(基礎控除3,000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内に収まるならば、相続税はかかりません。

保険金を本人の生活費・介護費用など以外には使用できない

受け取った保険金は、障害を負った本人のために、本人に関連する生活費・介護費用等に充てるべきものです。

この保険金を活用して、親族は介護資金を賄うことが想定されています。

そのため、多額の保険金を受け取ったからといって、家族の住宅取得資金や遊興費等に使うことはできません。

後遺障害保険金を受け取っても税金がかからないので確定申告は不要

確定申告は自営業者・自由業者等が、税金を支払う必要のある報酬等の利益が発生した場合、税務署へ申告しなければなりません。(毎年2月16日から3月15日まで)

そのため、税金が発生しない後遺障害保険金等は申告する必要がありません。

ただし、「医療費控除」を申告したい場合には注意が必要です。医療費控除については次の通りです。

医療費控除

医療費控除は所得控除の1つであり、1年間に支払った医療費を申告すれば所得税・住民税の負担が軽減されます。

ただし、年末調整では控除を受けることがでず、控除を望む場合は確定申告をする必要があります。

なお、医療費控除のみを申告したい場合は、確定申告期間に限定されず還付申告でも構いません。

○医療費控除と受け取った後遺障害保険金等

医療費控除は1年間に支払った医療費の全額が控除対象となるわけではなく、医療費から

  1. 10万円(所得金額が200万円未満の人:所得金額×5%の金額)分、および
  2. 入院給付金や手術給付金等を受け取った場合には、その金額分も差し引かれます。
  3. ただし、後遺障害保険金は参入する必要はなし

まとめ

後遺障害保険金を受け取った場合の税金について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 

今回の記事のポイントは 

  • 後遺障害保険金は、障害を負った本人や配偶者、その他生計を一にする親族のいずれが受け取る場合でも税金はかからない
  • 受け取った保険金を受取人の口座等へ保管したままの状態にしておくと、相続が発生した場合、その残金に相続税がかかることもある
  • 後遺障害保険金を受け取っても税金がかからないので確定申告は不要だが、医療費控除を申告する場合には、支払った年間の医療費から受け取った保険金分は差し引く必要がある
でした。 

後遺障害保険金は、障害を負った本人(被保険者)の介護費用等のために活用されるべき保険金ですので、大切に使用することが求められます。

ほけんROOMでは、保険について気になったときに役立つ記事は多数掲載されています。

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