更新日:2022/11/04
医療保険と介護保険の特定疾病一覧|訪問看護ではどちらが使える?
この記事では、医療保険が使える特定疾病と介護保険が使える特定疾病を一覧で紹介し、訪問看護でどちらの保険が適用できるのかを解説しました。また、民間の医療保険の特定疾病保障についても詳しく解説しているので、特定疾病保障をご検討の人もぜひご覧ください。
目次を使って気になるところから読みましょう!
医療保険と介護保険の特定疾病とは?
医療保険と介護保険では、特定疾病によって利用できる保険が異なるということを知っていますか?
特に訪問看護においては、介護保険を利用している人でも医療保険へ移行して利用することができる場合があります。
そもそも特定疾病とは、日本の各保険制度において他の疾病と異なる取り扱いをすると定められた疾病のことです。
医療保険では、「厚生労働大臣が定める疾病等」として、訪問看護が必要な重い病気が特定疾病として設定されています。
介護保険では、主に加齢に関わる特定疾病が設定されています。
本記事では、特定疾病によって利用可能となる以下の3つの保険を解説します。
- 医療保険
- 介護保険
- 民間の医療保険
それぞれ保険を利用できる人に条件があるため、ぜひ本記事を参考にしてください。
厚生労働省が定める疾病一覧
厚生労働省は、医療保険が使える特定疾病と介護保険が使える特定疾病をで「厚生労働大臣が定める疾病等」として発表しています。
注意として、各保険によって保険の対象になる病気は異なっているため、自分の患っている疾病が契約している保険の対象か確認する必要があります。
それぞれどちらの保険も使える疾病もあればどちらかしか使えない疾病もあるため、事前にチェックしておくことをおすすめします。
▼「厚生労働大臣が定める疾病等」について
「別表第7:厚生労働大臣が定める疾病一覧」 |
---|
末期の悪性腫瘍 |
多発性硬化症 |
重症筋無力症 |
スモン |
筋萎縮性側索硬化症 |
脊髄小脳変性症 |
ハンチントン病 |
進行性筋ジストロフィー症 |
パーキンソン病関連疾患 (進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類 がステージ三以上であって生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る。)) |
多系統萎縮症 (線 条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症及びシャイ・ドレーガー症候群) |
プリオン病 |
亜急性硬化性全脳炎 |
ライソゾーム病 |
副腎白質ジストロフィー |
脊髄性筋萎縮症 |
球脊髄性筋萎縮症 |
慢性炎症性脱髄性多発神経炎 |
後天性免疫不全症候群 |
頸髄損傷 |
人工呼吸器を使用している状態 |
厚生労働大臣の定める疾病等の訪問看護で医療保険が利用可能
上記の「厚生労働省が定める疾病一覧」に記載されている疾病を患った場合には、現在すでに介護保険を利用している人でも、訪問看護で医療保険を利用することが可能です。
また、要介護(予防)認定者の訪問看護の場合も、医療保険による訪問看護対象となっています。
医療保険による訪問看護の利用可能範囲は以下のとおりです。
- 週4日以上の訪問、1日2~3回の難病等複数回訪問看護での利用可能
- 2か所以上の訪問看護ステーションを利用可能
- 週7日の訪問看護が計画されている場合、3か所の訪問看護ステーションから利用可能、複数名の訪問看護も対応
- 退院日から訪問看護に入ることが可能
介護保険の特定疾病一覧
「厚生労働大臣が定める疾病等」に関する訪問看護は基本的に医療保険を利用することが多いですが、介護保険の適用される特定疾病も存在します。
医療保険では対応できない疾病も存在していますので、介護保険を利用している人は確認しておくことをおすすめします。
介護保険の被保険者2種類
介護保険の被保険者には、2種類存在します。
それぞれの特徴は以下のとおりです。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
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対象者 | 65 歳以上の人 | 40歳以上65歳未満の健保組合、全国健康保険協会、市町村国保などの医療保険加入者 (40 歳になれば自動的に資格を取得し、65 歳になるときに自動的に第1号被保険者に切り替わります。) |
受給要件 | ・要介護状態 ・要支援状態 | ・要介護(要支援)状態が、老化に起因する疾病(特定疾病※)による場合に限定。 |
保険料の徴収方法 | ・市町村と特別区が徴収 (原則、年金からの天引き) ・65 歳になった月から徴収開始 | ・医療保険料と一体的に徴収 ・40 歳になった月から徴収開始 |
介護保険の特定疾病一覧
▼介護保険の特定疾病一覧
特定疾病 | 詳細 |
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がん(末期) | 以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態(注)にあるもの。 ① 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの ② 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診査など)等で進行性の性質を示すもの。 注) ここでいう治癒困難な状態とは、概ね6月間程度で死が訪れると判断される場合を指す。 |
関節リウマチ | 指の小関節から股・膝のような大関節まであらゆる関節に炎症が起こり、疼痛・機能障害が出現する。とくに未明から早朝に痛みとこわばりが強い。筋、腱にも影響し筋力低下や動作緩慢が顕著になる。 |
筋萎縮性側索硬化症 | 筋萎縮・筋力低下、球麻痺、筋肉の線維束性収縮、錐体路症状を認める。それに反して感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡は原則として末期まで認めない。 |
後縦靱帯骨化症 | 靭帯の骨化は頚椎に最も多く、頚髄の圧迫では手足のしびれ感、運動障害、腱反射亢進、病的反射出現等の痙性四肢麻痺となる。胸髄圧迫では上肢は異常なく、下肢の痙性対麻痺となる。 |
骨折を伴う骨粗鬆症 | 脊椎圧迫骨折 … 腰背部痛を伴う脊柱の変形が特徴的である。軽微な外傷後もしくは誘因なく急性の腰痛を生じ寝たきりになることが多い。 大腿骨頚部骨折・転子部骨折 … 転倒等の後に、大転子部の痛みを訴え起立不能となる。膝の痛みを訴える場合もある。転位の少ない頚部骨折の場合、歩行可能な場合もある。 |
初老期における認知症 | アルツハイマー病病 … 初期の主症状は、記憶障害である。また、意欲の低下、物事の整理整頓が困難となり、時間に関する見当識障害がみられる。 中期には、記憶の保持が短くなり、薬を飲んだことを忘れたり、同じ物を何回も買ってくるようになる。後期には、自分の名前を忘れたり、トイレがわからなくなったり、部屋に放尿するようになる。また失禁状態に陥る。薬物治療で進行の遅延効果が得られる場合がある。 血管性認知症 … 初発症状として物忘れで始まることが多い。深部腱反射の亢進、足底反射、仮性球麻痺、歩行異常等の局所神経徴候を伴いやすい。一般に、記憶障害はかなりあっても、判断力は保持されており、人格の崩壊は認められない。 レビー小体病 … 進行性の認知症。リアルな幻視体験が特徴。パーキンソン症状が先行する事もあり、薬物治療で効果が得られる場合がある。 |
進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病 | パーキンソン病は、パーキンソン症状を中心とし、薬剤などの治療効果が高いものが多い 進行性核上性麻痺は、異常な姿勢 (頚部を後屈させ、顎が上がる)や、垂直方向の眼球運動障害(下方を見にくい)といった多彩な症状を示す 大脳皮質基底核変性症は、パーキンソン症状と大脳皮質症状(手が思うように使えないなど)が同時にみられるなど、症状や病状の進行に差が見られる。 |
脊髄小脳変性症 | 初発症状は歩行のふらつき(歩行失調)が多い。非常にゆっくりと進行。病型により筋萎縮や不随意運動、自律神経症状等で始まる。最終的には能動的座位が不可能となり、寝たきり状態となる。 |
脊柱管狭窄症 | 腰部脊柱管狭窄症…腰痛、下肢痛、間欠性跛行を主訴とする。 頚部脊柱管狭窄症…両側の手足のしびれで発症するものが多い。手足のしびれ感、腱反射亢進、病的反射出現等の痙性四肢麻痺を呈する。 |
早老症 | 若年者で老人性顔貌、白髪、毛髪の脱落とともに肥満の割に四肢が細い。若年性白内障、皮膚の萎縮と角化、足部皮膚潰瘍、四肢の筋肉・脂肪組織・骨の萎縮、血管・軟部組織の石炭化、性腺機能低下症、糖尿病、髄膜腫等を認める。 |
多系統萎縮症 | 多系統萎縮症(MSA)は臨床的に、①起立性低血圧、排尿障害、発汗低下など自律神経症状、②筋肉のこわばり、ふるえ、動作緩慢、小刻み歩行などパーキンソン症状、③立位や歩行時のふらつき、呂律が回らない、字がうまく書けないなどの小脳症状、を様々な程度に組み合わせて呈する疾患である。 |
糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症 | 糖尿病性腎症 … 糖尿病の罹病期間が長い。糖尿病に伴う蛋白尿を呈する。また、高血圧と浮腫を伴う腎機能障害を認める。 糖尿病性網膜症 … 主な症候は視力低下。末期まで視力が保たれることもあり、自覚症によると手遅れになりやすい。 糖尿病性神経障害 … 下肢のしびれ、痛み等を認める。 |
脳血管疾患 | 脳出血 … 発症状況と経過は一般に頭痛、悪心、嘔吐をもって始まり、しだいに意識障害が進み、昏睡状態になる。半身の片麻痺を起こすことが多く、感覚障害、失語症、失認、失行、視野障害等が見られる。 脳梗塞 … 発症状況と経過は、アテローム血栓症脳梗塞やラクナ梗塞では、夜間安静時に発症し起床時に気が付かれ、症状が徐々に完成することが多く、心原性脳塞栓症では、日中活動時に突発的に発症して症状が完成することが多い。 |
閉塞性動脈硬化症 | 問診で閉塞病変に由来する症状-下肢冷感、しびれ感、安静時痛、壊死 等があるかどうか聞く。視診により下肢の皮膚色調、潰瘍、壊死の有無をチェックする。触診ですべての下肢動脈の拍動の有無を調べる。 |
慢性閉塞性肺疾患 | 肺気腫…ほとんどが喫煙者で、男性に多い。体動時呼吸困難が特徴的であるが、出現するのはある程度病変が進行してからである。咳、痰を訴えることもある。 慢性気管支炎…喫煙者に多く、慢性の咳、痰を認める。体動時呼吸困難は、感染による急性増悪時には認めるが、通常は軽度である。身体所見では、やや肥満傾向を示す人が多いといわれる。 気管支喘息…発作性の呼吸困難、喘鳴、咳(特に夜間・早朝)が、症状がない時期をはさんで反復する。気道閉塞が自然に、または治療により改善し、気流制限は可逆的である。その他、気道過敏症を示す。 びまん性汎細気管支炎…呼吸細気管支領域にびまん性炎症により、強い呼吸障害をきたす。初期には肺炎球菌、インフルエンザ桿菌等が感染菌となりやすく、痰、咳、喘鳴を呈し、長引くと菌交代現象を起こし、緑膿菌感染になり重症化しやすい。 |
両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 | 初期の場合は、歩行し始めの痛みのみであるが、次第に、荷重時痛が増え、関節可動域制限が出現してくる。 |
引用:「厚生労働省 介護保険制度について」「主治医意見書記入の手引き」
第2号被保険者の特定疾病は介護保険が利用可能
介護保険の利用可能者は、厚生労働省によって以下のように定められています。
- 1)65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、罹患率や有病率(類似の指標を含む。)等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの。
- 2)3~6ヶ月以上継続して要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病。
特定疾病の覚え方
民間の医療保険の特定疾病保障を解説
民間の医療保険には、「特定疾病保障保険」が存在しています。
特定疾病保障保険とは、保険会社の定める「所定の状態(特定疾病)」もしくは死亡時に保険金を受け取ることができる保険のことです。
特定疾病と死亡保障の両方に備えることのできる保険ですが、その分保険料が高額な特徴があります。
以下で詳しく解説していきます。
特定疾病保障の概要
特定疾病保障保険とは、生命保険会社が定めた「所定の状態」に罹患した場合、保険金が支給される保険です。
定期保険・終身保険の両方のタイプが存在しています。
「所定の状態」は各保険会社によって定められているため、自身が契約している保険会社の補償範囲を確認しておく必要があります。
支給される特定疾病保険金を受け取った時点で、契約は消滅します。再度別の疾病に罹患したとしても、同じ保険で保険金が支給されることはないため注意が必要です。
特定疾病保険金を受け取ることなく死亡した場合は、死亡保険金を受け取ることができます。
満期保険金は無いため、疾病罹患時もしくは死亡時のみ保険金を受け取れるということを覚えておきましょう。
基本的に三大疾病保障を含んでいる場合が多いため、三大疾病保障と死亡保障のいずれも準備したい場合におすすめの保険です。
特定疾病の要件
特定疾病保障保険で保険金を受け取ることのできる「所定の状態」は基本的に各保険会社によって定められていますが、例として以下のような要件があります。
▼特定疾病の要件の例
特定疾病 | 要件 |
---|---|
がん (悪性新生物) | ・がんの保障開始後に初めてがんにかかったと医師によって診断確定されたとき |
急性心筋梗塞 | ・契約後に急性心筋梗塞になり、医師の診療を受けた初診日から60日以上労働が制限される状態が継続したと医師によって診断されたとき ・急性心筋梗塞の治療のための手術を受けたとき |
脳卒中 (くも膜下出血・脳内出血・脳梗塞) | ・契約後に脳卒中になり、医師の診療を受けた初診日から60日以上、言語障害・運動失調・まひなどの神経学的後遺症が継続したと医師によって診断されたとき ・脳卒中の治療のための手術を受けたとき |
特定疾病保障のメリット・デメリット
民間の医療保険である特定疾病保障保険ですが、メリットとデメリットの両方が存在しています。
▼特定疾病保障のメリット
- まとまった保険金を受け取れる
- 三大疾病に備えられる
- 死亡保障に備えられる
- 基本的に保険料は掛け捨て
- 保険金を受け取れるのは1度だけ
- 保険金の支払い条件が厳しい
特定疾病保障のメリット
特定疾病保障のデメリット
基本的に保険料は掛け捨て
医療保険の特定疾病保障に関するQ&A
ここからは、医療保険の特定疾病保障に関するよくある質問にお答えしていきます。
よくある質問 | 回答 |
---|---|
介護保険と医療保険の併用できますか? | 医療保険と介護保険は、原則併用することはできません。 どちらも利用できる場合であっても、どちらかの保険を選択する必要があります。 |
別の病気で入院中、特定疾病にかかった場合は保障されますか? | 特定疾病に罹った時点で、保障されます。 別の病気で入院していたとしても、特定疾病保障保険の要件を満たせば保険金を受け取ることが可能です。 |
検査入院の場合、医療保険の特定疾病特約はおりますか? | 医師の指示による検査入院の場合は、治療を目的とした入院として入院給付金を請求することが可能な場合があります。 契約している保険会社によって支払われるため、特約に入院給付金がついているか確認してください。 |
切迫早産は女性特定疾病特約に該当しますか? | 保険会社によって異なりますが、該当する可能性があります。 女性特定疾病特約には、妊娠・出産にかかわる症状として切迫早産が含まれていることが多いです。 契約している保険会社の要件を確認してください。 |
医療保険と介護保険の特定疾病に関するまとめ
本記事では、医療保険と介護保険の特定疾病に対する保障や訪問看護、民間の特定疾病保障保険について解説し、特質病保障に関するよくある質問にお答えしました。
特定疾病は医療保険か介護保険のどちらを利用するのかわからないという人も多く、対象となる疾病も複雑なものが多いです。
民間の医療保険に加入する場合、保険会社によって保障内容や保障対象が異なるため、1人で選ぶのは難しいという人も多いのではないでしょうか?
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