保険料控除や医療費控除の仕組み・申告方法についてプロが徹底解説!

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あなたは生命保険料控除や医療費控除について正しく理解できていますか?控除って難しくてわからないという方も多いのではないでしょうか。これらの控除についての基本的な説明から具体例を用いた計算方法まで、保険のプロであるFPがくわしく解説します。

▼この記事を読んでほしい人
  • 生命保険料控除についてくわしく知りたい方
  • 医療費控除・セルフメディケーション税制についてくわしく知りたい方
  • 所得税・住民税の節税対策に興味のある方

内容をまとめると

  • 生命保険料控除は一般生命・介護医療・個人年金の3つに分かれる
  • 旧制度・新制度どちらの保険であるかによって控除の計算方法や上限額が異なる
  • 医療費が対象の医療費控除と、OTC医薬品が対象のセルフメディケーション税制がある
  • 「控除や税制がわからなくて不安」という場合は保険のプロに相談しよう
  • 顧客満足度93%のマネーキャリアがオンラインで無料相談できておすすめ

生命保険料控除・介護医療保険料控除の仕組み


生命保険料控除
とは、保険料として年間に支払った金額の一部を所得から控除できる所得控除のことをいいます。


生命保険料控除を受ければ所得から一定金額を差し引けるので、所得税・住民税を軽減することができます


生命保険料控除の対象となるものには以下の3つがあります。

生命保険料控除の対象具体的な保険の種類
一般生命保険料生存または死亡に起因して支払われる保険金・その他給付金に係る保険料
定期保険、終身保険、養老保険、学資保険など
介護医療保険料病気やケガでの入院・通院などにともなう給付部分に係る保険料
医療保険、がん保険、介護保険、就業不能保険など
個人年金保険料個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険に係る保険料

表にもあるとおり、医療保険は介護医療保険料の対象となります。


控除額については、平成24年前後で「旧制度」と「新制度」に分けられており、計算方法や限度額が異なります。


生命保険料控除の上限額をまとめると次の表のようになります。

生命保険料控除の対象
旧制度
所得税 / 住民税
新制度
 所得税 / 住民税 
一般生命保険料50,000円 / 35,000円40,000円 / 28,000円
介護医療保険料×40,000円 / 28,000円
個人年金保険料50,000円 / 35,000円40,000円 / 28,000円
合算適用限度額100,000円 / 70,000円120,000円 / 70,000円


介護医療保険料は新制度で新たに細かく分類されたもので、旧制度では対象外となります。

また、保障期間が5年未満の生命保険などの中には、生命保険料控除の対象とならないものもあるので注意しましょう。

【注意】介護医療保険料控除の旧・新制度の控除額の違い

平成24年1月1日より前に契約した保険を旧制度、それ以降に契約した保険を新制度と分類されるということは先ほど説明しました。


ではさらにくわしく、旧制度・新制度の控除額の違いについてここでは解説します。


旧制度の場は一般生命保険料と個人年金保険料の2つ、新制度の場合は一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つについての控除額となります。

旧制度の場合

旧制度の一般生命保険料・個人年金保険料の控除額について説明します。


所得税の控除額は、次のように計算されます。

年間払込保険料額控除額
25,000円以下払込保険料全額
25,000円超 
50,000円以下
払込保険料×1/2+12,500円
50,000円超 
100,000円以下
払込保険料×1/4+25,000円
100,000円超一律50,000円

(参照:
No.1140 生命保険料控除 - 国税庁


住民税の控除額は、次のように計算されます。

年間払込保険料額控除額
15,000円以下払込保険料全額
15,000円超 
40,000円以下
払込保険料×1/2+7,500円
40,000円超 
70,000円以下
払込保険料×1/4+17,500円
70,000円超一律35,000円

(参照: 生命保険と税金 - 生命保険文化センター)  


旧制度においては、医療保険や介護保険の保険料区分は分類されていないので、一般生命保険料のうちに含まれます。  

新制度の場合

新制度の一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の控除額について説明します。


所得税の控除額は、次のように計算されます。

年間払込保険料額控除額
20,000円以下
払込保険料全額
20,000円超 40,000円以下払込保険料×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下払込保険料×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円


住民税の控除額は、次のように計算されます。

年間払込保険料額控除額
12,000円以下払込保険料全額
12,000円超

32,000円以下
払込保険料×1/2+6,000円
32,000円超

56,000円以下
払込保険料×1/4+14,000円
56,000円超一律28,000円


ちなみに、すでに加入している保険の保険料の区分が3つのうちどれにあたるのかや、新旧どちらの制度の保険なのかを確認するには、1年に1度保険会社から送られてくるハガキや書面で確認することができます

保険料控除を利用する際の3パターンの計算例

ここまで旧制度・新制度それぞれの計算方法について説明してきました。


本章では、具体的な計算例を用いて、実際にどのように計算すれば良いのか確認していきましょう。


パターンは次の3つとなります。

  1. 旧制度のみの保険に加入している場合
  2. 旧制度・新制度両方の保険に加入している場合
  3. 新制度のみの保険に加入している場合
それでは早速その計算例について見ていきましょう。

パターン①:旧制度対象の契約のみで申告

 旧制度のみの申告をする場合の計算例を見てみましょう。


例えば、旧制度の保険契約の年間支払保険料が、

  • 一般生命保険料 : 年間12万円
  • 個人年金保険料 : 年間12万円
である場合の所得控除について計算します。


[旧制度]一般生命保険料・個人年金保険料の控除額  

所得税の控除額は「旧制度の場合」の表を見ると、年間払込保険料が「100,000円超」にあたりますので、控除額は「一律50,000円」となります。


また、住民税の控除額は、年間払込保険料が「70,000円超」にあたりますので、控除額は「一律35,000円」となります。


この計算は一般生命保険料・個人年金保険料それぞれに適用されます。

よって、

  • 一般生命保険料の控除額 : 所得税50,000円、住民税35,000円
  • 個人年金保険料の控除額 : 所得税50,000円、住民税35,000円
それぞれの控除額はこのようになります。


控除額の合算

それぞれの控除額が計算できたので、合算していきます。


上記の「生命保険料控除の上限額」の表でいくと、旧制度の合算適用限度額は「所得税100,000円/住民税70,000円」となっています。


所得税の控除額の合算は、

一般生命保険料の控除額50,000円 + 個人年金保険料の控除額50,000円

=100,000円 ≦ 合算適用限度額である10万円


合算適用限度額の10万円以内になるので、控除額は10万全額となります。


住民税の控除額の合算は、

一般生命保険料の控除額35,000円 + 個人年金保険料の控除額35,000円

=70,000円 ≦ 合算適用限度額である7万円


合算適用限度額の7万円以内になるので、控除額は7万円全額となります。

パターン②:旧制度対象の契約と新制度対象の契約の両方で申告

旧制度と新制度の両方適用して申告する場合の例を見てみましょう。


例えば、旧制度の保険契約の年間支払保険料が、

  • 一般生命保険料 : 年間12万円
  • 個人年金保険料 : 年間12万円
新制度の保険契約の年間支払保険料が、

  • 介護医療保険料 : 年間5万円
である場合の所得控除について計算します。


両方の契約がある場合は、それぞれの契約ごとに新旧の表に当てはめて計算をしていきます。


[旧制度]一般生命保険料・個人年金保険料の控除額  

まず、旧制度の場合です。


一般生命保険料・個人年金保険料の年間払込保険料は、それぞれ12万円です。


所得税の控除額は「旧制度の場合」の表を見ると、年間払込保険料が「100,000円超」にあたりますので、控除額は「一律50,000円」となります。


また、住民税の控除額は、年間払込保険料が「70,000円超」にあたりますので、控除額は「一律35,000円」となります。


よって、

  • 一般生命保険料の控除額 : 所得税50,000円、住民税35,000円 
  • 個人年金保険料の控除額 : 所得税50,000円、住民税35,000円 

それぞれの控除額はこのようになります。  


[新制度]介護医療保険料の控除額

次に、新制度の場合です。


介護医療保険料の年間払込保険料は5万円です。


所得税の控除額は「新制度の場合」の表を見ると、年間払込保険料が「40,000円超 80,000円以下」にあたりますので、控除額は「払込保険料×1/4+20,000円」となり、

50,000円 × 1/4 +  20,000円 = 32,500円

このように計算されます。


また、住民税の控除額は、年間払込保険料が「32,000円超 56,000円以下」にあたりますので、控除額は「払込保険料×1/4+14,000円」となり、

50,000円 × 1/4 + 14,000円 = 26,500円

このように計算されます。


よって、

  • 介護医療保険料の控除額 : 所得税32,500円、住民税26,500円

新制度の保険契約の控除額はこのようになります。    


控除額の合算

これで新旧それぞれの控除額が計算できたので、合算していきます。


上記の「生命保険料控除の上限額」の表でいくと、合算適用限度額は新制度が適用されますので、「所得税120,000円/住民税70,000円」となります。 


よって 所得税の控除額の合算は、

一般生命保険料の控除額50,000円 + 個人年金保険料の控除額50,000円 + 介護医療保険料の控除額32,500円

= 132,500円 > 合算適用限度額である12万円


合算適用限度額の12万円を超えているので、控除額は上限の12万円となります。


住民税の控除額の合算は、  

一般生命保険料の控除額35,000円 + 個人年金保険料の控除額35,000円 + 介護医療保険料の控除額26,500円

= 96,500円 > 合算適用限度額である7万円


合算適用限度額の7万円を超えているので、控除額は上限の7万円となります。

パターン③:新制度対象の契約のみで申告

新制度のみの申告をする場合の計算例を見てみましょう。  


例えば、新制度の保険契約の年間支払保険料が、

  • 一般生命保険料 : 年間12万円
  • 個人年金保険料 : 年間12万円
  • 介護医療保険料 : 年間5万円
である場合の所得控除について計算します。


[新制度]一般生命保険料・個人年金保険料の控除額

所得税の控除額は「新制度の場合」の表を見ると、年間払込保険料が「80,000円超」にあたりますので、控除額は「一律40,000円」となります。


住民税の控除額は、年間払込保険料が「56,000円超」にあたりますので、控除額は「一律28,000円」となります。  


よって、

  • 一般生命保険料の控除額 : 所得税40,000円、住民税28,000円
  • 個人年金保険料の控除額 : 所得税40,000円、住民税28,000円

それぞれの控除額はこのようになります。 


[新制度]介護医療保険料の控除額

所得税の控除額は「新制度の場合」の表を見ると、年間払込保険料が「40,000円超 80,000円以下」にあたりますので、控除額は「払込保険料×1/4+20,000円」となり、

50,000円 × 1/4 + 20,000円 = 32,500円

このように計算されます。


住民税の控除額は、年間払込保険料が「32,000円超
56,000円以下」にあたりますので、控除額は「払込保険料×1/4+14,000円」となり、

50,000円 × 1/4 + 14,000円 = 26,500円

このように計算されます。


よって、

  • 介護医療保険料の控除額 : 所得税32,500円、住民税26,500円

控除額はこのようになります。


控除額の合算

それぞれの控除額が計算できたので、合算していきます。  

上記の「生命保険料控除の上限額」の表でいくと、新制度の合算適用限度額は「所得税120,000円/住民税70,000円」となります。

よって所得税の控除額の合算は、

一般生命保険料の控除額40,000円 + 個人年金保険料の控除額40,000円 + 介護医療保険料の控除額32,500円

= 112,500円 ≦ 合算適用限度額である12万円

合算適用限度額の12万円以内になるので、控除額は11万2,500円全額となります。

住民税の控除額の合算は、

一般生命保険料の控除額28,000円 + 個人年金保険料の控除額28,000円 + 介護医療保険料の控除額26,500円

=82,500円 > 合算適用限度額である7万円

合算適用限度額の7万円を超えているので、控除額は上限の7万円となります。

生命保険料控除の2パターンにおける申請方法

ここまでは生命保険料控除の計算方法についてくわしく解説しました。


本章では、生命保険料控除の申請方法について説明します。


働き方によって異なっており、

  1. 会社員の場合
  2. 自営業者の場合
この2パターンとなります。


では解説していきます。

パターン①:会社員

会社員や公務員など被用者である方は、年末調整で生命保険料控除を申請します。


具体的には、加入している保険会社から年に一度送られてくる「保険料控除証明書」を、「給与所得者の保険料控除申告書」に添付し勤務先に提出するという方法です。


会社員などの場合、所得税は給与天引きという形で納めています。

年末調整で控除を申請すると、その分が所得から引かれて課税所得は少なくなるため、再計算され源泉徴収されていた所得税が還付されます。


また住民税の場合も同様に、控除により課税所得が少なくなることで翌年の住民税が減額されます。


年末調整で申請しそびれた場合には、確定申告することもできます

パターン②:自制業者

自営業の方は、確定申告によって生命保険料控除の手続きをします。


年末調整と同様に、確定申告の場合も「保険料控除証明書」の提出が必要です。  


確定申告で記入する「第一表」には、最終的な生命保険料控除の金額を記載します。

「第二表」には、実際に支払った年間払込保険料の金額を区分ごとに記載しましょう。


確定申告の時期は原則、毎年2月16日~3月15日となっています。

生命保険料控除を受けたい場合は忘れずに申告しましょう。

医療費控除の仕組み


ここまでの章では生命保険料控除について説明してきましたが、ここからは医療費控除について解説していきます。


医療費控除も同じ所得控除のうちのひとつです。


医療費控除とは、申告する人やその人と生計を共にする家族などが1年間に支払った医療費の一部を所得金額から差し引くことができるというものです。

年間の医療費控除の上限額は200万円です。


医療費控除の対象となる「医療費」には以下のようなものが当てはまります。

  • 医師または歯科医師による診療費、治療費
  • 治療または療養に必要な医薬品の購入代金(風邪をひいた場合の風邪薬など)
  • 介護保険等制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
  • 助産師医よる分娩の介助費用 など

(参照:医療費控除の対象となる医療費 - 国税庁


では、医療費控除のくわしい特徴について確認していきましょう。

年間10万円の超過分が医療費控除の対象額になる

1月1日から12月31日までの1年間における医療費が10万円を超えた場合に、医療費控除は申請することができます。


申請対象となるのは10万円を超えた部分の金額です。


例えば年間の医療費の総額が14万円だった場合、

14万円 ー 10万円 = 4万円

医療費控除の対象となるのは4万円です。


しかし以下でくわしく説明しますが、4万円全てが控除されるのではないことに注意してください。

支払われた給付金・保険金は差し引かれる

公的医療保険制度を利用した場合や、民間の生命保険から給付金保険金などを受け取った場合には、その金額はかかった医療費から差し引かなければなりません


具体的には、次のようなものです。

  • 民間医療保険の入院給付金、手術給付金
  • 出産時に受け取った出産育児一時金 
  • 高額療養費制度を利用して受け取った還付金  など

例えば上記の例の続きで、年間の医療費の総額が14万円で給付金などが2万円あった場合、

14万円 ー 2万円 ー 10万円 = 2万円

医療費控除を申請する金額は2万円になります。  

医療費控除の計算方法

ここまでの医療費控除の特徴を踏まえて、医療費控除の計算式を確認してみましょう。


計算方法は、

  • 所得が200万円未満の場合
  • 所得が200万円以上の場合
の2通りに分かれます。


それぞれ以下でくわしく説明します。

所得200万円未満の場合の計算方法

先ほど、医療費控除を申請できるのは年間の医療費が「10万円」を超えた部分だと説明しました。


しかしこれには例外があります。


所得金額が200万円未満の方は、医療費が10万円に満たない場合でも、所得金額×5%」を超えていれば、その超過分の金額を控除できます


例えば、年間の所得金額が100万円の人の場合、

100万円 × 5% = 5万円

となり、年間の医療費が5万円を超えていれば、その超過分が医療控除の申請対象になります。


以上のことをまとめると、所得金額が200万円未満の場合の計算式は、

年間の医療費の総額 ー 保険金などの補てん金額 ー 所得金額×5%

=医療費控除額(上限200万円)


となります。


所得200万円以上の場合の計算方法

所得金額が200万円以上の方の場合は、前述の通り10万円」を超えた金額が医療費控除の申請対象となります。


よって、所得金額が200万円以上の場合の計算式は、

年間の医療費の総額 ー 保険金などの補てん金額 ー 10万円

=医療費控除額(上限200万円)


となります。

医療費控除を利用できる人

医療費控除は家庭内で合算して申請することができます


具体的には、生計を一にする(=生計を共にしている)配偶者や子ども、親族などが支払った医療費についても、まとめて申請することができるということです。


別居している家族であっても、生活費や学資金などを常に送金していれば「生計を一にする」とみなされます


したがって家族が、単身赴任で別居している場合や、大学に通うため下宿している場合などでも、医療費控除を合算して申告できる対象者となります。


健康な人であれば医療費はなかなか10万円以上もかからないのかもしれませんが、家族の医療費も合算すれば医療費控除を受けられるかもしれません。

医療費控除の対象となる治療・薬剤

医療費控除の対象となる「医療費」がどういったものなのかは上述の通りですが、ここではもう少しくわしく紹介します。


医療費控除の対象となるのは、

  • 医師に支払う診療費・治療費
  • 治療のためのあん摩マッサージ指圧、はり、お灸などの費用
  • 入院中に病院から提供される食事代
  • 通院・入院のための交通費(公共交通機関)
  • 分娩・入院費、妊婦健診の自己負担費用
  • 虫歯の治療 、金歯・入れ歯、ブリッジの費用 、治療としての歯列矯正
  • 医師の処方箋により購入した医薬品 、病気やケガの治療の為に購入した市販薬
  • 特別養護老人ホームの施設サービス費、居宅介護サービス費
など、このようなものになります。


特徴としては、病院や歯医者で主に病気の治療を目的とするものが対象になります。


購入した市販薬も対象となりますが、これも病気やケガの治療の為に購入したもの(風邪薬など)が対象となります。


人間ドックや健康診断などの費用は基本は対象となりませんが、健康診断の結果、重大な疾病が発見され引き続き治療を受ける場合などは医療費控除の対象となります。


(参照:医療費控除の対象となる医療費 - 国税庁介護サービス費 - 国税庁

医療費控除の対象外である治療・薬剤

これとは逆に、医療費控除の対象とならないのは、 

  • 美容整形費
  • 疲れをとるため、リフレッシュ目的でのマッサージ・はり・お灸など 
  • 定期健診や人間ドック費用(体の異常が見つからなかった場合)
  • 自家用車で通院した場合のガソリン代、駐車代
  • 里帰り出産のための交通費 
  • 美容のための歯列矯正費 
  • 疲労回復・健康増進・病気予防などのために購入したビタミン剤や栄養ドリンク代 

など、このようなものになります。


上記の例とは対照的に、手術や治療であっても、美容目的のものやリフレッシュ目的のものは対象とならないのが特徴です。


また購入した市販のものでも、薬ではなくビタミン剤や栄養ドリンク代は対象とならない点に注意が必要です。


(参照:医療費控除の対象となる医療費 - 国税庁

医療費控除の申請方法

医療費控除を受けるためには、確定申告が必要です。


生命保険料控除の場合は会社員であれば年末調整で申請できましたが、医療費控除の場合は会社員であっても確定申告が必要となりますので注意してください。


医療費控除の確定申告は、

  1. 「医療費控除の明細書」「確定申告書」を税務署窓口や国税庁ホームページから入手し作成
  2. 必要書類が揃ったら管轄の税務署へ提出

という流れでできます。


加入している健康保険組合や協会けんぽなどから発行される「医療費通知」を添付すれば、明細書を簡略化することができる場合もあります。


還付金は、申請してから約1ヶ月〜1ヶ月半後に指定した銀行口座などで受け取れます。


平成29年以前の申請方法では、年間に支払った領収書などを全て保存して提出する必要がありましたが、現在は手続きが簡略化され、領収書の提出は不要となりました。

セルフメディケーション税制について


平成29年からの手続きの簡略化に伴い、新たに「セルフメディケーション税制」が導入されました。


「セルフメディケーション」とは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」です。


高齢化が進む日本では医療費の増大が問題となっています。

医療費が増える、すなわち国の社会保障費が増えると、国の財政はさらに悪化してしまいます。


この現状を食い止めるため、セルフメディケーション税制が導入されました。


国民がセルフメディケーションを意識することにより、

  1. 個人で健康管理ができる
  2. 病気が予防される
  3. 医療機関への受診が減る
  4. 医療費の増加を防ぐ

という流れで医療費が削減されることが期待されています。

仕組み

セルフメディケーション税制とは、健康の維持増進や疾病の予防の取組を行う個人が、スイッチOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品のうち、医療用から転用された医薬品)を購入した際に、その購入費用について所得控除を受けることができるというものです。 

(参照:
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について - 厚生労働省


OTC医薬品は、薬局やドラッグストアで処方箋がなくても購入できます。


セルフメディケーション税制の対象となるOTC医薬品には、パッケージに「セルフメディケーション税控除対象」と記載されたマークが付いていますので、購入する際には確認してみましょう。  

医療費控除との違い

医療費控除との違いをまとめると、以下の表のようになります。

医療費控除セルフメディケーション税制
対象額年間10万円以上
(所得が200万円未満の場合、所得の5%)
年間1万2,000円以上
控除額の上限200万円8万8,000円
対象となる費用医療費などOTC医薬品の購入費
控除を受けるための条件なし「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っていること


対象額や控除額の上限などの金額も異なりますが、セルフメディケーション税制の方には控除を受けるための条件があるという点が特徴です。


これはセルフメディケーション税制が、国民が健康の保持増進や病気の予防を積極的に個人で行うことで医療費の増大を防ぐという目的をもっているためです。


具体的な条件の内容については以下でくわしく説明します。

対象額

年間で1万2,000円以上の対象OTC医薬品を購入した場合に、1万2,000円を超えた金額を所得から控除できます


医療費控除の場合と同様に、セルフメディケーション税制においても、確定申告する本人と生計を共にしている家族の分も合わせて計算して申告することができます。


医療費控除の場合は対象額は10万円で、そこまで病院にかからないという方でも、市販の医薬品ならよく購入しているという方であれば、セルフメディケーション税制の控除を利用できるかもしれません。


普段から市販の医薬品を購入した際には、レシートなどを保管しておくと良いでしょう。

保障範囲

前述の通り、セルフメディケーション税制では個人の健康増進や病気の予防を目的としていますので、治療の「予防」のためのものです。


医療費控除の場合は「予防」のための費用は対象外となるので、ここが医療費控除と大きく違うところだといえます。


セルフメディケーション税制では、日常生活で体調にちょっとした異変があったときに買うOTC医薬品(風邪薬、鎮痛剤、せき止め、下痢止めなど)が対象となっています。

適用条件

セルフメディケーション税制の控除を受けるためには、「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行なっていることが条件となります。


具体的には、

  • 人間ドック、健康診断などの健康保険組合等が実施する健康診査
  • 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
  • 定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種などの予防接種 
  • 事業主健診などの勤務先で実施する定期健康診断
  • 特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導 
  • 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
これらのものとなります。

(参照:セルフメディケーション税制の概要・手続など - 国税庁


このような健診などの受診率を高めることが、国民全体の健康増進につながり、社会全体の医療費の抑制につながると考えられているためこのような条件が設定されています。

セルフメディケーション税制と医療費控除の使い方

医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか利用できないため注意が必要です。


例えば、本人や生計を共にしている家族が、

  • 病院や歯医者をよく受診する
  • 出産を行った
  • 日頃からデイケア(通所リハビリテーション)を利用している

などの場合は、医療費などが年間10万円以上となる可能性がありますので、医療費控除を利用すると良いでしょう。


または、本人や生計を共にしている家族が、

  • 普段からあまり病院にかからない
  • ちょっとした不調は市販薬で様子を見るようにしている
  • 日頃からよく市販薬を購入している
などの場合は、医療費控除よりもセルフメディケーション税制を利用できる可能性が高いので、そちらを検討してみましょう。


では、医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらも申請できる場合は、どちらを選択したらいいでしょうか。


医療費控除の方が控除額が大きい場合

それぞれの対象額が、
  • セルフメディケーション税制:10万円以上
  • 医療費控除:18万8,000円超
である場合は、医療費控除を選択した方がお得になります。

セルフメディケーション税制は控除額の上限が8万8,000円です。

つまり、セルフメディケーション税制の対象額が10万円以上であったとしても、8万8,000円までしか申請できません。

よって、医療費控除が18万8,000円超である場合には、医療費控除額が必ずセルフメディケーション税制の控除額の上限(8万8,000円)より大きくなるので、医療費控除の方を選択した方が良いでしょう。

比較して控除額が大きい方を選択する場合

それぞれの対象額が、
  • セルフメディケーション税制:1万2,000円~10万円
  • 医療費控除:10万円~18万8,000円以内
である場合は、両者を比較して控除額が大きい方を選択して申請しましょう。

実際に2つの計算例を見てみましょう。

[例1]
それぞれの対象額が、
  • セルフメディケーション税制:3万円
  • 医療費控除:15万円
である場合、セルフメディケーション税制の控除額は、

3万円 ー 1万2,000円 = 1万8,000円

医療費控除の控除額は、

15万円 ー 10万円 = 5万円

1万8,000円 > 5万円 となり、医療費控除の方が控除額が大きいので、この場合は医療費控除を選択するとお得です。

[例2]
それぞれの対象額が、
  • セルフメディケーション税制:10万円
  • 医療費控除:15万円
である場合、セルフメディケーション税制の控除額は、

10万円 ー 1万2,000円 = 8万8,000円

医療費控除の控除額は、

15万円 ー 10万円 = 5万円

8万8,000円 > 5万円 となり、セルフメディケーション税制の方が控除額が大きいので、この場合はセルフメディケーション税制を選択するとお得です。

医療費控除のワンランク上な使い方を5つのポイントで紹介!


医療費控除を申請しようと思ったら、次の4つのポイントを日頃から気にしておくことで、より申告作業をスムーズに行うことができます。


そのポイントとは、以下の通りです。

  1. 医療費はできるだけその年中に支払う
  2. 家族単位で医療費控除を使う
  3. 一家の働き手が医療費控除を利用する
  4. 5年前までの申告し忘れをチェックする

ではくわしく確認していきましょう。

ポイント①:医療費はその年中にできるだけ支払う

医療費控除の対象となる期間は1年間で、1月1日〜12月31日に支払ったものとなります。


医療費が年間に10万円を超えないと医療費控除は利用できません。

よって控除を利用したい場合は、なるべくその年の医療費が10万円を超えるように意識しておかなければなりません。


年が改まれば、翌年の医療費控除として計算することになります。

特に年末が近づいてきたら年が改まる前に受診してしまうなど、早めの受診を心がけましょう。

ポイント②:家族単位で医療費控除を使う

前述の通り、医療費控除は申告する本人だけではなく、その本人と生計を共にする家族の分も合算して申告することができます


1人で10万円以上の医療費がかかることはなかなかないかもしれませんが、家族の分も合わせれば10万円以上かかる可能性は高くなります。


家族の病院や歯医者にかかった際の領収書、介護サービスを利用した際の領収書は、各自が捨てたりしないようまとめて保管する場所を決めておくと良いでしょう。

ポイント③:一家の働き手が医療費高尾を利用する

家族の分もまとめて医療費控除の申告をする際は、一番所得の多い人が申告するようにしましょう。


所得税の税率は所得が高くなるほど上がります。


税率が高い人の方が控除を受けて還付される金額も多くなりますから、医療費控除を利用するメリットは大きくなります。


参考として、以下は所得税の速算表の一部です。

課税される所得金額税率控除額
1,000円 から 1,949,000円まで5%0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで23%636,000円

(参照:所得税の税率 - 国税庁

ポイント④:5年前までの医療費の申告し忘れをチェック

医療費控除は、申告漏れがあった場合でも5年間まではさかのぼって申告することができます


過去5年分までは、「多額の医療費の領収書が出てきた」という場合であっても申告すれば大丈夫なので、あきらめずに手続きしましょう。


該当の年に確定申告をしていなかった場合は、新たに確定申告をしましょう。


確定申告はしたが医療費控除だけし忘れていたという場合などは、「更生の請求」という手続きをして、すでに提出した確定申告の書類を訂正すれば大丈夫です。

まとめ:医療保険に関する不安や疑問があればプロに相談しよう!

ここまで生命保険料控除、医療費控除についてくわしく解説してきましたがいかがでしたか?


税制や控除については、勉強して知識がある人でなければ難しいと感じてしまいますよね。


細かいところについては、やはり保険のプロに相談するのが早くてわかりやすいと思います。


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