医療保険の契約者変更を行う場合、どんな税金がかかるのかチェック

医療保険の契約者変更では権利を受け継いだということになるので、基本的に税金が発生します。しかし、医療保険の契約者変更があってすぐに税金がかかるというわけではなく、保険金が支払われるタイミングで税金が発生する仕組みになっています。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

医療保険の契約者変更に伴う各種の税金の扱いについて

子どもがまだ学生の間に、親が医療保険をかけ、その保険料を親が払う場合や、収入のない(少ない)奥様の医療保険を夫が支払っているという方は意外と多いものです。


しかし、「子どもが成人し、独立したから」「妻と離婚し、保険料を払うのは不本意」といった理由から、契約者変更の変更を行うケースも少なくはないはずです。


そのようなケースにおいて、「それまで払っていた保険料について税金的な問題はないの?」「子どもや妻がその保険を引き継いだとして、税金がかかるのはどんな場合?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?


そこで、この記事では、


  • 医療保険の契約者変更を行うのはどんな場合?その手続き方法は?
  • 医療保険の契約者変更を行った場合、税金がかかるのはどんなケース?
  • 契約者変更に関係する税制改正について

について解説していきます。

この記事を最後まで読んでいただくと、「医療保険における契約者変更と、税金に関わる基礎知識」についてご理解いただけるはずです。

ぜひ最後までお付き合いください。

医療保険で契約者変更を行うケース

医療保険の契約においては、基本的に契約者・被保険者(保険にかかる人)・受取人はすべて同じ人になるようにします。


しかし、そうでないケースもあり、一番多いと考えられるのが、「まだ学生である子どもの医療保険を親が契約者として契約し、保険料を払っている」というケースです。


しかし、「子どもが就職し独立をした」といった場合には、契約者変更を親から子に引き継ぐ場合もあります。


契約者を変更する手続きを「契約者変更」といい、医療保険での契約者変更の方法は保険会社やプランによって異なるようです。


契約者が変わる場合は、本人確認の必要性や、保険料の入金方法などの変更が必要となるため、様々な書類や、新しく契約者となる人がしなくてはならない手続きがでてきます。


契約者変更を行いたい場合は、保険会社へ連絡を入れ、まずは相談してみることが重要です。

まずは保険会社の所定の手続きを進める

医療保険において、契約者変更を行いたい場合は、保険会社から指示のある手続きに従って、その手続きを行えば良いので手順自体は明白です。


契約者変更においては、新しく契約者となる本人の、書類への自書や本人確認書類等が必要となりますので、手続き当日に不足がないように、事前に指示を受け、準備しておくようにすると良いでしょう。


ここで問題になるのが、契約者変更に伴う税金についてです。


契約者変更を行うことにより、税金が発生するようなケースでは、その税金についての申告等の手続きは、個人で行わなくてはなりません。


そのため、医療保険の契約者変更において、どのような税金がどのように関わるのかを把握しておいて、然るべき手続きを踏むことが大切です。

医療保険の契約者変更を行った際に影響のある税金について

医療保険の契約者を変更するにあたって、税金がかかるとは思っていない方も多いと思われますし、税金の種類はあまりにも多いため、医療保険のどの部分に税金がかかるか分からないというケースもあるかもしれません。


医療保険の契約者変更おいて関係してくる税金は主に贈与税、所得税、相続税の3つです。


この3つに関して医療保険との関係を把握しておけば、安心して手続きを取ることができます。


ここからは、そんな「医療保険の契約者変更に関わる税金」についてわかりやすく解説していきます。

権利を受け取った時点の税金の扱い

医療保険における契約者変更において、一番多いケースは「学生の間、親が医療保険をかけてくれていて、独立を期に自分で払っていくようにする」というケースです。


医療保険を親などから譲り受ける場合、それまで支払っていた保険料の権利を受け取ることになります。


これは見ようによっては贈与のように考えられるかもしれませんが、この段階では権利を受け取っただけなので贈与税はかかりません。


医療保険の権利だけを持っていても受け取る額が確定していない(お金の移動が明確でない)ので税金の計算ができないということです。

権利が保険金の支払いに繋がると税金も発生

医療保険を契約者変更しただけの段階では贈与税がかからないものの、その後保険を解約して解約返戻金や満期保険金を受け取った際には税金がかかってきます。


そこでかかってくる税金の種類は「所得税」になります。


つまり、医療保険という商品にお金を払い、解約によってその中に貯まっていたお金を受け取ったとみなされて税金がかかるということです。


そのうち、親が負担していた保険金額から発生した分には「贈与税」がかかります。


それまでの保険料を間接的に贈与してもらったと見なされるということです。


逆に言えば、解約返戻金や満期保険金が貯まらない(いわゆる掛け捨て)タイプの医療保険であれば、契約者変更後解約しても税金はかからないということになります。

医療保険の契約者変更に伴う税金のかかり方と税制改正

医療保険において、契約者変更をした時点では税金はかかりませんが、その後に保険金を受け取った際に贈与税がかかることはあまり知られていませんでした。


契約者変更という手続き自体はそれなりに行われていましたが、それを税務署が把握できていなかったケースがほとんどでああったためです。


つまり、税務署側からすると、契約者変更にともなう税金の徴収漏れが多くあったということになります。


そこで、税務署側は平成27年度の税制改正によって、保険会社は契約者変更があった際の払込保険料の記載を義務付けるようになりました。

税制改正による影響について

それまでは、契約者変更があった場合でも、保険会社は税務署への届出義務はなく、納税者が申告するか、税務署が調査しない限り、契約者変更を正しく把握することは出来ませんでした。


しかし、平成27年度の税制改正により、平成30年1月1日以後の契約者変更に関して、医療保険会社は税務署への支払い調書と呼ばれる調書を提出するように義務付けられました。


これによって、税務署は契約者変更や、全契約者がそれまでに支払った払い込み保険料も把握できるようになったわけです。


この仕組みが始まる前から契約者変更に関する納税の義務自体は存在するので、制度が大きく変わるわけではありませんが、今までよりも税金の扱いを意識しておいたほうが良いといえます。

契約者変更の理由で税金が変わる

医療保険において契約者変更を行う場合はその変更理由によっても税金の取り扱いが変わります。


つまり、契約者の死亡によって変更するのか、それ以外の理由で変更するのかで扱いが異なるということです。


契約者の死亡であれば解約返戻金相当額が、死亡以外の場合であれば保険金の支払い時に契約者の払込料が税務署への調書に掲載される仕組みとなっています。


もし、契約者変更の理由が契約者の死亡であった場合、解約返戻金相当額が相続財産として「相続税」の対象になります。


それ以外の場合は、その解約返戻金を受け取った場合に、それまで払っていた保険料に相当する分に関しては贈与税が、変更後、新しい契約者が払っていた保険料に相当する部分には所得税がかかってくるということになります。

契約者が亡くなると相続税扱いに

契約者が死亡してしまったことにより医療保険の契約人変更を行う時には税金の中でも相続税がかかります。


具体的にいうと、亡くなった方が、被保険者の体を使って、保険という商品の中に財産を貯めていたとみなされるわけです。


ですので、前の契約者が死亡したことにともなう契約者変更の場合、解約返戻金の権利を故人から相続したという扱いになるのです。


直接的に故人からお金を受け取るわけではありませんがある程度おおきな額になると税金を納付しなくてはならなくなります。


ただし、相続税を納付する場合、この解約返戻金の部分だけに税金がかかるかどうかという問題ではなく、亡くなった方の全財産にこの解約返戻金も含んで、相続税が計算されますので、注意が必要です。

保険金を受け取る際に税金がかかる

契約者の死亡以外の理由で医療保険の契約者変更を行った場合、その時点ではお金が発生していないので税金がかかりようがありません。


また、契約者変更後、保険金の支払があったとしても、税務署側は契約者変更の情報がなく、贈与や相続にあたるかどうかの把握が難しく、税金を徴収することが出来ませんでした。


しかし、平成27年の税制改正により、平成30年の1月1日以降、保険会社は契約者変更の履歴やそれまでに払い込んだ掛け金の詳細などを税務署側に提出することが義務付けられました。


これにより、ある程度の金額を超えて保険金を受け取ったケースでは、贈与税や相続税の申告、納税を迫られるケースが増えてくるということになります。


繰り返しになりますが、権利を譲り受けた段階ではないので注意が必要です。

困った時は保険会社に相談

医療保険の契約者変更に対し、そこから一定額以上の保険金を受け取った際に、税金がかかってくるかもしれないというのは、保険に加入している人からすると頭の痛い問題です。


なぜなら、これだけ多くの人が保険に加入しているにもかかわらず、税金の知識に明るい人は非常に少ないからです。


しかし、それほど深く悩む必要はありません。


保険会社側には、保険に関する税務の専門家が存在することがほとんどだからです。


税制改正や制度改正によって新しい制度がスタートする際には、それに関するわかりやすい告知資料が配布されることがほとんどです。


また、困ったことや気になることがあれば、保険担当者やカスタマーセンターなどに問い合わせをすれば、丁寧に答えてくれる体制を整えていることがほとんどです。

まとめ:医療保険の契約者変更にかかる税金

ここまで、「医療保険の契約者変更と税金の関係」を中心に解説してきましたが、いかがでしたか?


この記事のポイントは、


  • 医療保険の契約者変更は、契約者死亡や子どもの独立など多岐にわたる
  • 契約者変更の手続きには、新契約者の理解や手続きへの参加が必要となる
  • 契約者変更において税金がかかるのは、変更時ではなく、解約や保険金を受け取った時である
  • 平成27年の税制改正によって、税務署側が契約者変更を把握しやすくなった

でした。



医療保険においては、一般的に契約者・被保険者・受取人は同一人物であるとされており、それ以外の場合、意外なところで税金の対象になることがあり、契約者変更に対する課税もその一つです。


医療保険の名義変更と税金についての知識を知ることで、納得して保険契約や名義変更を行うことにつなげましょう。


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