持株会社を利用した事業承継って何?【メリット・デメリットを解説】

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持株会社を利用した事業承継のスキームが用いられるケースが増えてきています。本記事では、持株会社を利用した事業承継の仕組みからメリット・デメリットについてまとめています。事業承継を進める前にどのスキームが一番自社にあっているのかを検討してみるといいでしょう。

▼この記事を読んでほしい人
  • 事業承継において持株会社を利用したスキームを検討している人
  • 事業承継においてメリットを得たい人
  • 持株会社を用いた事業承継の手順を知りたい人
▼この記事を読んで分かること
  • 持株会社を利用した事業承継において注意点もあるが、税効果の他、株式の相続や遺留分における問題がなくなるなどメリットが多い
  • 株式の相続や遺留分での問題がなくなる、先代の経営者は現金を取得できる、税金対策になるといったメリットがある
  • 後継者の出資による新会社設立~持株会社の取締役会での承認手続きまで5ステップ

内容をまとめると

  • 事業承継において持株会社を利用したスキームが増えてきている
  • 株式会社以外のスキームには、相続による承継贈与による事業承継株式譲渡による経営権の承継がある
  • 事業承継において持株会社を利用するメリットとして、株式の相続や遺留分での問題がなくなる先代の経営者は現金を取得できる税金対策を挙げられる
  • 事業承継において持株会社を利用するデメリットとして、譲渡所得税がかかる相続税がかかる金融機関への返済が必要になる課税上の問題に発展する恐れがあるを挙げられる
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  • 持株会社を利用した事業承継の手続きは5ステップで完結
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事業承継において持株会社を利用したスキームが増えてきている


こんにちは。マネーキャリア編集部FPの西田です。


先日、50代の方から次のような相談を受けました。


「最近、「〇〇ホールディングス」といった社名をよく聞きます。事業承継において持株会社を利用したスキームが増えてきているのでしょうね。持株会社化にはメリットも多い反面、金融機関からの借り入れが必要などといったデメリットもあると聞いたのですが、実際のところどうなのでしょうか?」


近年、事業承継において持株会社を利用したスキームが増えています。持株会社化によって、税効果事業承継手続きの簡略化などのメリットがあるため、事業承継にかかる負担を軽減できるため注目されているのです。


しかし、持株会社化による事業承継は、ビジネスがうまくいっていることを前提にした制度であることからも、全ての企業が活用できるわけではありません。加えて、金融機関への返済が必要になるといった注意点もあります。


本記事では、事業承継において持株会社を利用したスキームについて徹底解説していきます。持株会社化による事業承継のメリット・デメリット、手続きの流れなどを分かりやすく説明していきます。


本記事が、事業承継において持株会社を利用したスキームを検討されている方の参考になりますと幸いです。

持株会社の意味について解説【事業承継においてのスキーム】

そもそも、持株会社とはどのような会社なのでしょうか。


本記事では、持株会社の意味についてまずは説明していきます。


持株会社はホールディングスと呼ばれることもあります。持株会社(ホールディングス)とは、他の株式会社を支配下におくことを目的に、株式を保有している会社です。


持株会社の事業は、他の株式会社の株式を多数保有し、それらの会社の事業活動について指針を決めることが主となっています。


持株会社には二種類あります。

  • 純粋持株会社 自ら事業活動を行うことはせず、他の株式会社の株式を保有する
  • 事業持株会社 事業活動を行いながら、他社の株式を保有する
持株会社には、他社の株式を保有することを主としている企業と、自ら事業活動を行う傍ら、他社の株式を保有している企業があります。

持株会社とは他の会社を支配する目的でその会社の株式を保有する会社のこと

持株会社とは他の会社を支配する目的で、その会社の株式を保有している会社のことを言います。


親会社である持株会社の下には複数の会社(子会社、グループ会社)があります。持株会社は事業を自ら行うことはせず、子会社、ないしグループ会社の戦略立案、意思決定を主に行っています。


対して、持株会社の下にある会社(子会社、グループ会社)は、企業戦略を立てたり、意思決定をしたりすることはあまりありません。親会社の方針に従って事業を行います。

持株会社を設立することの主な3つのメリット

持ち株会社を設立することでさまざまなメリットを得られます。ここでは、主な3つのメリットを見ていきましょう。


持株会社を設立することの主な3つのメリットは以下の通りです。

  1. 責任分散によるリスクヘッジ
  2. 事業単位における制度の独立化
  3. M&Aと事業承継に効果的
持株会社を設立することの主な3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。

責任分散によるリスクヘッジ

持株会社はリスクヘッジにおいて効果的です。なんらかのトラブルが発生し、企業の信頼が急落したり、損害賠償責任が発生したりといった状況に陥った場合でも、他のグループ企業の業績に影響を与えることなく処理できます。

事業単位における制度の独立化

持株会社は子会社に対して、それぞれ単独で採算させることができます。独立採算制をとることで、各事業の責任を明確にすることができるのです。

持株会社は、各事業の内容に適した労働条件を設定することもできます。例えば、不動産業と飲食業など、労働条件が全く異なる事業を一つの会社ですすめると人事が混乱してしまうでしょう。持株会社として会社を分けることによって、各事業に最適な規則や人事を定めることができます。

M&Aと事業承継に効果的

持株会社はM&Aにも効果的です。事業譲渡の場合、グループ全体に影響を与えることなく、売却したい事業だけを切り売りできます。


持株会社化しておくことで、敵対的買収を受けた際には持株会社は自社を守りやすくなります。持株会社が買収されたとしても、子会社には独立性を保持することが認められるため、影響を最小限に抑えられます。


事業承継においても持株会社化がメリットになります。複数の会社を経営する経営者にとって、持株会社化により株式の譲渡が単一化されるため、承継をスムーズにできるようになるのです。

持株会社を設立することのデメリット

持株会社化によって得られるものはメリットだけではありません。


持株会社を設立することによって、以下のデメリットが生じることが想定されます。

  • グループ会社において部門が重複し、コスト増
  • 社員間でのトラブル

持株会社化によって生じるだろうデメリットについて、詳しく説明していきます。


グループ会社において部門が重複し、コスト増

グループ会社で部門が重複し、コストが増大すると考えられます。持株会社化によってかかりうるコストをおさえるためには、子会社間で部門を共有するなどの工夫が必要です。


社員間でのトラブル

持株会社を設立することで、社内での人間関係にも大きく影響します。グループ会社ごとに社風や運営形態も異なります。そのため、グループ間において考え方の違いでもめごとに発展したり、意見の食い違いが元となりトラブルに発展したりすることも懸念されるのです。


そのため、持株会社化する際は経営者層からの合意はもちろんですが、社員、ないし現場の理解を得ることがとても重要になります。

持株会社の設立方法について解説

持株会社の設立方法は主に3種類あります。

  1. 抜け殻方式
  2. 株式交換
  3. 株式移転

以下、持株会社の一般的な設立方法として知られる3つの方法について解説していきます。


抜け殻方式

抜け殻方式は事業会社から持株会社への移行においてに使われることの多い方法です。会社分割、事業譲渡などによって事業会社を新たに設立し、元の会社は持株会社になります。 


株式交換

株式交換は上場企業などを完全子会社する時に選ばれることの多い方法です。事業会社の株主が保有する株式を親会社の株式と交換することにより持株会社を設立します。


株式移転

株式移転では、元の事業会社の株主には持株会社の株式の交付を行います。これにより、新規に持株会社を設立させることができます。元の事業会社は完全子会社となります。

持株会社の事業承継におけるスキームの流れと図解

持株会社を利用した事業承継は、以下の流れで行います。

  1. 後継者が出資し、新会社の設立を行う
  2. 新会社は金融機関から融資を受ける
  3. 融資によって得た資金を元にして、既存の事業会社における先代経営者の株式を買い取る
  4. 新会社は既存会社の株式からの配当を原資とし、融資の返済を行う

後継者は100%の株式を保有する持株会社を通じて、既存の事業会社の経営について権利を得ることができるのです。

持株会社以外の事業承継における3つのスキーム

持株会社以外の事業承継におけるスキームには、どのようなものがあるのでしょうか。

持株会社以外の事業承継における3つのスキームは以下の通りです。

  • 相続による承継
  • 贈与による事業承継
  • 株式譲渡による経営権の承継
上記3つのスキームについて詳しく見ていきましょう。

相続による承継

後継者の候補が経営者の親族の場合、相続によって自社株式の承継を行い、会社の経営権を引き継ぐケースもあります。あるいは、先代経営者に万が一のことがあり、親族内承継を急遽選択しなければならないケースもあるかもしれません。


後継者が相続する自社株式は、相続税評価額において高額な場合も、換金は難しいと言われています。後継者が経営権を得るためには、相続税を支払う必要があるため、後継者にとって税負担は非常に重くなることが予想されるでしょう。


また、他の相続人に保障されている財産にまで手が及んでしまう可能性もあるため、事業承継を進める際は注意してください。

贈与による事業承継

生前贈与という事業承継の方法があります。生前贈与を利用することにより、贈与税が発生しますが、相続税の発生を回避させることもできます。


贈与税には受贈者1人につき一年間で110万円の基礎控除が定められています。この制度を利用し、自社株式を少しずつ贈与していくという方法は効果的でしょう。

株式譲渡による経営権の承継

後継者に自社株式を譲渡し、経営権の承継を行う方法もあります。相続、贈与についての税負担者は後継者になりますが、株式譲渡では税の負担者が先代経営者となります。


相続、ならびに贈与では最高税率が55%の累進課税となる一方、株式譲渡における税率は20%程度におさまっています


株式譲渡による経営権の承継は税制面での優遇が多いですが、後継者は株式を買い取らなければいけないため、かなりの資金が必要になると言えるでしょう。

事業承継において持株会社を利用するメリットについて解説

事業承継において持株会社を利用することで得られるメリットは少なくありません。実際のところ、どのようなメリットがあるのでしょうか。

事業承継において持株会社を利用するメリットとして、

  • 株式の相続や遺留分での問題がなくなる
  • 先代の経営者は現金を取得できる
  • 税金対策になる
を挙げられます。

以下、事業承継における持株会社化のメリットについて詳しく見ていきましょう。

株式の相続や遺留分での問題がなくなること

相続が発生した場合、先代経営者に後継者の他に相続人がいる場合は、その遺留分が問題となるでしょう。


持株会社方式における事業承継は、既存の事業会社の株式を後継者自身ではなく、後継者が設立した持株会社が引き継ぐことで、先代経営者の持株に対する相続は発生しません。


事業承継では後継者に対して株式の相続を一任しない場合、後継者は承継後の会社経営を円滑に進めることができなくなり、事業、しいては経営が不安定になります。先代経営者の持株は、平等に分散せず後継者に引き継がせるようにしましょう。

先代の経営者は現金を取得できること

先代経営者は持株会社に株式を譲渡し、譲渡代金を受け取ることによって、現金を取得できます。事業会社に価値がある場合は、当然のことながら譲渡代金も高くなるでしょう。


受け取った譲渡代金は、先代経営者の老後の資金などにあてることもできます。

税金対策になる

株式の移転にはかなりの資金が必要です。また、譲渡によって生じる譲渡益は課税対象になります。 


対して、持株会社化することによって、以下のメリットがあるため税効果があります。


相続税評価額の計算

含み益に法人税率を掛け合わせた額が控除されます。これにより、利益の蓄積による株価の上昇の抑制を期待できるでしょう。


株式評価における純資産価額算定

株式評価において純資産価額算定上含み益に対する37%が控除の対象になります。控除によって、株式上昇が約3分の2に抑制されます。


類似業種比準価額を評価要素の活用により事業持株会社化することで、一定の事業用資産を保有していれば、株式保有特定会社に該当しない状態で、類似業種比準価額を評価要素に利用できます。利益のない時期は、持株会社の評価が下がることもあるかもしれません。

事業承継において持株会社を利用するデメリットについて解説

持株会社を利用した事業承継はメリットだけではありません。ここでは、持株会社化によるデメリットについて解説していきます。


事業承継において持株会社を利用するデメリットとして、

  • 譲渡所得税がかかる
  • 相続税がかかる
  • 金融機関への返済が必要になる
  • 課税上の問題に発展する恐れがある
を挙げられます。

それぞれのデメリットについて以下詳しく解説していきます。事業承継におけるデメリットを確認し、トラブルを事前に回避するようにしましょう。

譲渡所得税がかかること

株式の譲渡によって、先代経営者に対して譲渡所得税が課されるケースもあります。譲渡所得税は譲渡益に対して約20%となります。


譲渡所得税とは、株式を取得した時に支払った金額より大きい金額で譲渡したことで、譲渡益が出た際に課税される税金です。


譲渡益は、事業承継時の譲渡代金から先代経営者が株式を取得した時の金額を控除したお金のことを言います。

相続税がかかること

先代経営者には譲渡代金が支払われます。


先代経営者が譲渡代金を使わずに亡くなった場合、後継者が相続する際に相続税が課税されます。

金融機関への返済が必要になること

持株会社方式による事業承継では、持株会社は金融機関から融資を受け、融資を返済していかなければなりません


事業会社は持株会社に配当を行い、持株会社は配当を原資にして融資を返済していくことも可能です。しかし、持株会社は事業会社での法人税支払い後の利益から配当を受け、これを元にして融資の返済をしていきます。事業会社には、持株会社に継続して配当するだけの利益を上げることが求められるのです。

課税上の問題に発展する恐れがある

「課税のみ」を目的にして持株会社化する企業も中にはあります。


しかし、税金対策のみを目的に持株会社化した場合、国税庁から問題視される可能性も少なくありません。


事業承継において対策を行いたい方は、専門家に相談するようにしてください。

持株会社を用いた事業承継の手順について解説

持株会社を用いた事業承継は、手続きの大変さについてもよく言われることです。しかし、手続きを一つずつ確認しながら進めていけば、問題なく完了させることができるでしょう。

持株会社を用いた事業承継は、

  1. 後継者による出資によって新会社設立
  2. 金融機関からの融資
  3. 先代経営者の株式を持株会社へ譲渡
  4. 譲渡承認の手続き
  5. 持株会社の取締役会での承認手続き

という順序で進めていきます。


各手順について詳しく解説していきますので、持株会社を用いた事業承継をこれから行う方はぜひ参考にしてみてくださいね。

①後継者による出資によって新会社設立

後継者が出資を行い、新会社を設立します。設立した会社は承継対象会社を将来的に子会社化することになります。


後継者は、子会社が挙げた利益によって、出資分を回収していくことになりますので利益を継続的に生み出さなければなりません。

②金融機関からの融資

先代経営者から承継会社の株式を買い取るため、銀行などの金融機関に融資のお願いをしましょう。


借入額が莫大な金額になることもあるので、返済できるかどうか注意する必要があります。

③先代経営者の株式を持株会社へ譲渡

先代経営者が保有している承継対象会社の株式を持株会社に譲渡してください。持株会社が株式を保有することで、先代経営者は現金を受け取ることができます。

④譲渡承認の手続き

既存の事業会社が株式の譲渡に承認が必要な場合に限り、株式譲渡の承認手続が必要になります。


譲渡承認の手続きが必要な会社かどうかは登記簿を確認してください。登記簿に「当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければならない」と記載がある場合、譲渡承認の手続きが必要になります。


日本における非上場企業のほとんどが株式譲渡承認の手続きが必要です。譲渡承認手続きが必要になることをあらかじめ念頭に入れておくと良いでしょう。

⑤持株会社の取締役会での承認手続き

取締役会で持株会社設立について株式移転を承認します。あわせて、『株主総会招集』を決定する他、株式移転計画を作成してください。



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ここまで持株会社を利用した事業承継について解説してきました。


持株会社を利用した事業承継は聞き慣れない制度でもあるため、実際に利用したくてもハードルが高いと感じる方や、手続きを行う上で不安を抱える方も少なくないでしょう。


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まとめ:持株会社を用いた事業承継を利用するメリット・デメリット

持株会社化することによって、税効果の他、金銭面でお得になることも多いです。大企業だけではなく、中小企業においても持株会社を用いた事業承継を利用することで得られるメリットは多くあるでしょう。

しかし、持株会社化にはメリットともにデメリットがあることも忘れてはいけません。持株会社化によって、譲渡所得税所得税がかかる他、金融機関への返済が必要になるため利益を継続的に上げることが求められます。

また、税金対策のみを目的にした持株会社を用いた事業承継は、税務署からお尋ねが入ることもあるので注意しましょう。

自社の持株会社化を検討されている事業主や経営に関わる方は、メリット・デメリットをしっかりと踏まえた上で意思決定を行うようにしてください。

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