事業承継・引継ぎ補助金って何?適用条件や経費上限について解説

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事業承継やM&Aを進めるにあたって中小企業の方は事業承継・引継ぎ補助金を利用することで事業承継にかかる費用などの負担を軽減できます。本記事では事業承継・引継ぎ補助金の利用条件や申請方法またその利用例について徹底的に解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。


▼この記事を読んでほしい人
  • 事業承継を検討している中小事業者・個人事業主
  • 事業承継に関する経費が気になる方
  • 承継を実行する際に国の支援を受けたい方

▼この記事を読んでわかること
  • 事業継承・引継ぎ補助金制度が利用できる
  • 申請には条件があり、利用できない場合もある
  • 補助金にはいろいろなタイプがある

内容をまとめると

  • 事業継承・引継ぎ補助金は事業再編等の際に役立つ制度
  • この補助金の利用には様々な条件の他、申請に期限がある
  • 概ね引継ぎ実現に補助金交付は頼りとされている
  • 事業承継に関してのお金の悩みなら、何回でも無料のマネーキャリアFP相談が最適
  • マネーキャリアは顧客満足度93%、スマホやPCで簡単に予約ができます!

事業承継・引継ぎ補助金は事業再編・統合を支援する制度


こんにちは、マネーキャリア編集部です。


先日、事業承継・引継ぎを検討している方からこんな相談がありました。


「現在、我が社では事業承継・引継ぎを検討しているが、このような事業再編や統合を支援する国の制度はあるのだろうか?」とのことです。


事業承継を通して、経営の革新等を目指す事業者は多いことでしょう。しかし、事業承継等を行うにはそれなりの費用がかかってしまいます。


そんなときに活用できる制度が「事業承継・引継ぎ補助金」です。この制度では引継ぎにかかる経費の一部が補助されます。


しかし、この補助金制度の利用には条件があり、申し込み前に良く確認しておくべき点もあります。


今回はこの事業承継・引継ぎ補助金のポイントや仕組み、申請方法やその流れ、支援事例そして注意点等を解説します。


事業承継の際に事業承継・引継ぎ補助金を利用するため、本制度の特徴や申請方法を知っておきたい方のお手伝いとなれれば幸いです。

事業承継・引継ぎ補助金の制度のポイントについて解説

事業継承・引継ぎ補助金は、事業承継のため経営者交代やM&A(外部の会社への承継)を目指す会社が利用できる制度です。


補助金を申請する場合は、いろいろなポイントを押さえておく必要があります。補助金の交付条件をしっかりと把握し、スムーズに手続きを進めましょう。


こちらでは、

  • jGrantsで電子申請
  • 補助金の交付条件
  • 負担する保険料も補助対象
  • 令和3年度の本制度の変更点
以上を解説します。

jGrantsを利用した電子申請が必要

交付申請をするにはjGrantsを利用します。このjGrantsとはデジタル庁が運営する補助金の電子申請システムのことです。


ただし、jGrantsを利用するには「gBizIDプライム」というアカウントが必要となります。1~2週間程度で発行されます。すぐに利用できるわけではないので注意しましょう。


gBizIDプライムが作成できるのは

  • 会社代表者
  • 個人事業主
です。

こちらのアカウント作成には書類提出が必要です。
  • 登録申請書
  • 印鑑証明書
  • 代表者印(個人事業主は実印)
を準備しましょう。

なお、アカウントをメールアドレス1つで複数取得することは認められていません。複数の事業を営む場合、事業毎にメールアドレスを準備し、アカウントを作成します。

補助対象者・対象事業・対象経費について

補助対象者は中小企業・小規模事業者に限定されます。対象となる業種は限定されておらず、製造業・卸売業・小売業・サービス業いずれも申請可能です。


本制度は「経営革新」と「専門家活用」に分かれ、対象となる事業は

  • 経営革新:新商品の開発または生産、新役務の開発または提供等
  • 専門家活用:株式譲渡、事業譲渡、株式譲渡+廃業、事業再編+廃業等

となります。


さらに主な対象経費は次の通りです。

分類対象経費
経営革新人件費、外注費、委託費、設備費、謝金、旅費、廃棄費用等
専門家活用謝金、旅費、廃棄費用、外注費、委託費、システム利用料等

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局「事業承継・引継ぎ補助金公募要領」


なお、専門家活用の委託費で、仲介業務に係る相談料や着手金、成功報酬、M&Aの手続進行に関する手数料等がかかった場合、「M&A支援機関登録制度」に登録済の登録FA・仲介業者が支援したものを補助対象経費とします。

表明保証保険契約にかかる保険料も対象になる

事後的に表明保証条項違反がわかり、発生した損害等を補償目的とする保険契約等の保険料も対象です。契約に関するトラブルをサポートする保険へも補助金が利用できます。


表明保証とは

  • 事業承継を希望する会社:事業承継に応じた会社へM&Aの対象・目的物が存在することを表明、かつその内容を保証
  • 事業承継に応じる会社:法律上M&Aの対象が承継できる旨を表明

することを意味します。


最終合意契約の表明保証条項をサポートする保険に支払った保険料が、補助金交付の対象となります。具体的に

  • 買い手支援型→買い手が手配した保険に係る保険料
  • 売り手支援型→売り手が手配した保険に係る保険料
が該当します。

新事業展開等要件と生産性向上要件がなくなる

令和3年度当初予算から、事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)を申込む際に、新事業展開等要件または生産性向上要件を満たす必要がなくなりました。


例えば経営革新で補助金を得たくても、「新事業展開や生産性向上を行う余裕がない。」という理由で、本制度の利用を諦めていた事業者の方々でも、申込がしやすくなっています。


ただし、たとえご自分の会社が事業承継を望んでいたとしても、実質的な承継を行っていないと事務局が判断した場合、補助金の対象外となる点に注意しましょう。


実質的な事業承継と認められない例としては

  • グループ内の事業再編
  • 物品・不動産等のみを保有する事業承継等にとどまる

等があげられます。

事業承継・引継ぎ補助金の申請類型「経営革新」について解説

本補助金制度のタイプの1つに「経営革新」があります。経営革新は事業承継やM&Aを機に、会社の事業の再構築や販路開拓に挑戦する費用が補助されます。補助率・補助上限は次の通りです。

経営革新割合・金額
補助率
補助対象経費1/2以内
補助上限250~500万円以内(上乗せ額:200万円以内)

費用の全額が補助されるわけではありません。しかし、その費用負担を軽減することができる制度となっています。


ご自分の会社が経営革新のために負担した設備投資費用や人件費、店舗・事務所の改築工事費用等を対象に補助金が交付されます。


更に、経営革新タイプには「経営者交代型」「M&A型」があります。


こちらでは

  • 経営者交代型の特徴
  • M&A型の特徴

以上を解説します。

経営者交代型について

経営者交代型は、一定の資格要件を有する経営者の交代または事業譲渡が補助金交付の対象です。


補助金を申し込むには、次の要件全部を満たす必要があります。

  1. 事業承継を契機に、経営革新等へ取り組む
  2. 産業競争力強化法に基づき認定市区町村または認定連携創業支援事業者から特定創業支援事業を受ける等、一定の実績や知識等を有している
  3. 地域の雇用そして経済全般の事業等、創業を契機に、引き継いだ経営資源を活用し経営革新等に取り組む
経営者交代型の補助率・補助上限は次の通りです。
項目割合・金額
補助率補助対象経費1/2以内
補助額100万円~250万円以内
上乗せ額(廃業費)+200万円以内
補助金は費用負担前に受け取ることができず、事業が完了して精算後の支払いとなります。

M&A型について

M&A型は、M&Aで経営資源を承継した事業者に対し補助金が交付されます。外部の会社への承継を行う場合に最適な方法です。


補助金を申し込むには、次の要件全部を満たす必要があります。

  1. 事業再編・事業統合等を契機に、経営革新等へ取り組む
  2. 産業競争力強化法に基づき認定市区町村または認定連携創業支援事業者から特定創業支援事業を受ける等、一定の実績や知識等がある
  3. 地域の雇用そして経済全般の事業等、創業を契機に、承継した経営資源を活用し経営革新等に取り組む
要件2と要件3は経営者交代型と全く同じ内容です。

M&A型の補助率・補助上限は次の通りです。

項目割合・金額
補助率補助対象経費1/2以内
補助額100万円~500万円以内
上乗せ額(廃業費)+200万円以内
補助上限額が500万円と、経営者交代型より250万円高く設定されています。

補助金は費用負担前に受け取ることができません。対象となる事業が完了して精算後に支払われます。申し込んでも、すぐに補助金は交付されないので注意しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の申請類型「専門家活用」について解説

本補助金制度には経営革新の他に「専門家活用」があります。事業引継ぎ時、士業専門家を活用した場合に補助金が交付されます。補助率・補助上限は次の通りです。

専門家活用割合・金額
補助率補助対象経費1/2以内
補助上限50~250万円以内(上乗せ額:200万円以内)

なお、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合(例:交渉が決裂してしまった等)、補助上限額125万円以内に縮減されてしまいます。


専門家活用では、M&Aのために負担したM&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンス(調査)に関わる専門家の費用等へ補助金が交付されます。


更に、経営革新タイプには「買い手支援型」「売り手支援型」があります。


こちらでは

  • 買い手支援型の特徴
  • 売り手支援型の特徴

以上を解説します。

買い手支援型

事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の「買い手」が対象です。


経営資源を譲受した後、

  • シナジー(相乗効果)を活かした経営革新等の実施
  • 地域の雇用、その経済全体を牽引する事業等の実施
の2つが見込まれることを要します。

「見込まれる」ことが条件のため、仮に引継いだ事業が軌道にならなくても補助金を返還する必要はありません。

補助率・補助上限は次の通りです。

項目割合・金額
補助率補助対象経費1/2以内
補助額50~250万円以内
上乗せ額(廃業費)-
M&Aは買い手・売り手の交渉で契約が締結される以上、交渉が上手くいかない場合もあります。引継ぎができなかったときは、補助上限額125万円以内に減らされます。

ただし、満足な補助額が受け取れないからと、無理に売り手の事業承継を行うのは妥当と言えません。売り手の事業を承継し、ご自分の会社にとって後々大きな負担とならないか、シナジーは十分期待できるのかを冷静に検討しましょう。

売り手支援型

事業再編・事業統合等に伴う経営資源を譲り渡す予定の「売り手」が対象です。


要件は次の通りです。

  • 地域の雇用や、地域経済全体を牽引する事業等を行っていて、事業再編・事業統合で、第三者へ継続されることが見込まれる
補助率・補助上限は次の通りです。

項目割合・金額
補助率補助対象経費1/2以内
補助額50~250万円以内
上乗せ額(廃業費)+200万円以内
こちらもクロージングできないと、補助上限額125万円以内に縮減されます。

売り手の場合は廃業費が最大200万円上乗せされる可能性があります。ただし、引継ぎができなかったとき、上乗せ額分は補助対象外となってしまいます。

売り手も満足な補助額が受け取れないからと、相手方と無理に事業承継契約を締結するのは妥当と言えません。買い手がご自分の会社の事業をしっかり引き継いでくれるのか、よく吟味してM&A交渉をクロージングしましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の電子申請方法について解説

本制度は基本的にjGrantsを用いた電子申請となります。ただし、補助金交付がいつでもすぐに申し込めるわけではありません。


まずは電子申請のため、前述したようにgBizIDプライムのアカウント取得が必要です。


こちらでは

  • jGrantsとは
  • gBizIDの交付申請
以上を解説します。

電子申請方法を解説【jGrantsの概要】

jGrantsデジタル庁が運営する補助金の電子申請システムのことです。このシステムが利用できれば、無料で24時間365日電子申請手続きが可能です。


jGrantsを利用した補助金申請の手順は次の通りです。

  1. 申請したい補助金を検索(今回は事業継承・引継ぎ補助金)
  2. gBizIDでログイン
  3. 必要事項を入力し申請
gBizIDのアカウントを取得しないと補助金申請はできません。

利用可能なブラウザは次の通りです。
  • Windows:chrome、firefox、edge(InternetExplorerモード除く)
  • macOS:chrome、firefox、safari
  • Android:chrome

gBizIDの申請方法について

jGrantsの利用には「gBizIDプライム」というアカウントが必要となります。こちらの申請に必要な書類等は次の通りです。

  • 印鑑(登録)証明書の現本:発行日より3カ月以内
  • 申請書:法人代表者印または実印を押印
  • メールアドレス
  • SMSが受信可能な電話番号

なお、メールアドレスとSMSが受信可能な電話番号は共に、法人代表者または個人事業主のものでなければいけません。


申請書・印鑑(登録)証明書を「GビズID運用センター」に送付し、申請が承認されるとメールが送信されます。アカウントは1~2週間程度で発行されます。

事業承継・引継ぎ補助金交付までの流れについて解説

経営革新と専門家活用では手順が異なってきます。どちらの補助金を利用するかで、事前の相談や確認、審査を経るべき機関が違います。申請前に交付までの流れを良く把握しておく必要があります。


なお、いずれの場合も事務局へ進行状況の報告、実績報告が必須となります。対象事業を実施すれば、自動的に補助金が交付されるわけではないので注意も必要です。


こちらでは

  • 経営革新の流れ
  • 経営革新の申請スケジュール
  • 専門家活用の流れ
  • 専門家活用の申請スケジュール

以上を解説します。

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)の交付までの流れ

補助金の交付には、申請の他に状況報告・実績報告を事務局に行い、補助金申請へ進みます。交付までの手続きには

  • 認定経営革新等支援機関:国から認定を受けた商工会議所・金融機関等
  • 事業承継・引継ぎ補助金事務局
が関わります。


手順は次の通りです。

  1. 認定経営革新等支援機関へ経営相談
  2. 支援機関が確認書を発行
  3. 当該企業・個人事業主がjGrantsで事務局に交付申請
  4. 事務局が交付決定
  5. 当該企業・個人事業主が状況・実績報告
  6. 事務局が確定通知
  7. 補助金交付を希望する企業・個人事業主が申請
  8. 事務局から補助金が交付される
  9. 企業・個人事業主は事業化状況報告等を行う

経営革新の場合、いきなり事務局へ申請するのではなく、認定経営革新等支援機関への相談からはじめることになります。相談の際、認定を受けた支援機関へ自社の現状について報告したり、申請の際の不明点等をたずねたりします。


また、当該支援機関で自社の資格要件や、補助事業計画の内容、補助対象経費内訳をチェックし、問題がなければ、確認書が発行されます。

事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)の申請スケジュール(2021年度)

2021年度の申請スケジュールは次の通りです。

  • 公募期間:2021年9月30日〜2021年10月26日
すでに公募期間は過ぎていますが、毎年一次募集・二次募集という形で実施されています。再び公募する可能性は高いです。

事業承継・引継ぎ補助金事務局等の更新情報をこまめにチェックしておきましょう。

なお今回は経営革新の補助対象事業となる事業承継について
  • 2017年4月1日~補助事業期間終了日
  • 2021年12月31日
のいずれか早い日までと限定されています。申請の際は公募条件をよく確認しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の交付までの流れ

専門家活用の場合は認定経営革新等支援機関が関与せず、事業承継・引継ぎ補助金事務局とのやり取りとなります。


手順は次の通りです。

  1. 補助金の交付を希望する企業・個人事業主が、jGrantsで事務局に交付申請
  2. 事務局が審査をする、変更が要求される場合もあり
  3. 企業・個人事業主は遂行状況・実績を報告
  4. 事務局が確定を通知
  5. 企業・個人事業主が補助金申請
  6. 事務局から補助金が交付される
経営革新よりプロセスは簡素化されています。ただし、こちらの場合はクロージングが上手くいかないと、補助額の上限に影響が出てしまいます。

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の申請スケジュール(2021年度)

2021年度の申請スケジュールは、経営革新と同様で次の通りです。

  • 公募期間:2021年9月30日〜2021年10月26日
期間は過ぎていますが、再び公募する可能性は高いです。

なお今回は専門家活用の補助対象事業期間が、
  • 交付決定日~2021年12月31日
までとなります。専門家活用に関して、事前着手は認められないので注意が必要です。そのため、補助金の公募に合わせてM&Aのスケジュールを組むことが重要となります。

専門家(M&A仲介業者・弁護士等)へは、補助金の利用を検討していることも告げて、交渉のスケジュール調整を図っておきましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の制度に関する注意点を解説

本制度は申請すれば必ず補助金が交付される仕組みとなっていません。対象となる期間・事業・経費が明記され、それらに該当しないを補助金が受け取れません。


こちらでは

  • 中小企業基本法第2条の定義とは
  • 対象外の法人・組合
  • 補助対象外となるケース
  • 補助対象経費の注意点

以上を解説します。

中小企業基本法第2条に基づいた定義を確認

補助金の交付には、中小企業者等であることが要求されます。その定義は、資本額・出資総額または従業員数が下表の通りになることです。

業種資本額・出資総額従業員数
製造業、建設業、運輸業その他~3億円~300人
卸売業~1億円~100人
サービス業~5,000万円~100人
小売業~5,000万円~50人

業種によって資本金額や従業員数の条件がかなり異なります。現在のご自分の会社の現状を良くチェックし、中小企業者等へ該当するのか否かを把握しましょう。


申請後に該当しなかったことが発覚したら、交付が認められないばかりか、それに費やした時間や労力がもったいないです。

中小企業者に含まれない法人・組合8種類

前述した条件に該当すれば、全ての法人が中小企業者扱いされるわけではありません。次の法人・組合は対象から除外されています。

  1. 前述した条件に該当しない法人
  2. 社会福祉法人
  3. 医療法人
  4. 一般社団・財団法人
  5. 公益社団・財団法人
  6. 学校法人
  7. 農事組合法人
  8. 組合
「1」の法人はその他、
  • ゴム製品製造業:資本金3億円以下または従業員900人以下
  • ソフトウエア業・情報処理サービス業:資本金3億円以下または従業員300人以下
  • 旅館業:資本金5,000万円以下または従業員200人以下
も対象から除外されます。

「8」の組合には農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等があげられます。

一方で個人の場合、前述した資本金額や従業員数に該当すれば、個人開業医の医師、個人農家であっても中小企業者等となります。

補助対象外となる中小企業等【2つのケースを紹介】

たとえ中小企業者等に該当していても

  • 資本金または出資金5億円以上の法人が、直接・間接に100%の株式を保有
  • 交付申請時、直近過去3年分の各年または各事業年度課税所得の年平均額が15億円超
のいずれかに当てはまると対象外となってしまいます。いずれのケースも、資金に余裕がある中小企業等と言えます。

対象外となる理由としては、主要株主となっている法人から潤沢な引き継ぎ等の支援を受けることが期待できる、15億円もの課税所得があれば重い費用負担とはならない、と考えられるためです。

事業承継・引継ぎ補助金の補助対象経費の注意点

補助対象経費と事務局から認定してもらうためには、次の点へ注意しましょう。

  • 使用目的が対象となる事業の遂行に必要と判断できる
  • 対象期間内に契約・発注を行い支払った経費
  • 証拠書類等によって金額や支払いの事実等が確認できる経費
そのため、補助対象事業に不必要と判断された経費や、必要であったとしても対象期間外に支払った経費、証拠書類等がない経費は除外されます。

申請前によく経費の内容や時期を確認、証拠となる書類を作成・収集し、事務局へ提出することが必要です。

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事業承継・引継ぎ補助金「見積取得」について解説


本制度を利用する場合は、公正・公平な補助金の交付を行うため、原則2者以上から見積を取得しなければいけません。この方法なら、不正な補助金取得を防ぐことにつながります。


こちらでは、

  • 見積取得の注意点
  • 相見積取得が不要なケース

以上を解説します。

見積取得の注意点について

期間終了後、実績報告で提出される証拠書類に関しては

  • 対象事業の遂行のために必要な経費か
  • 対象期間内に費用が発生、支払いが行われた
  • 法令・内部規程等に従い適正か
  • 経済性・効率性を考慮した経費か
に注意し、慎重なチェックが求められます。

そして、補助金を交付してもらうためには、その経費の妥当性を証明するため、「相見積」が必要です。こちらは、業務上の価格見積もりで、複数業者等へ見積もりを出させ、比較することです。

この相見積を取得しない場合、一定の場合を除き補助金の対象となる経費として認められません。

相見積取得が不要な条件とは

相見積はやむを得ない事情で用意できないケースもあります。

  • 選定先以外の2者以上に見積を依頼したものの、全ての業者等から断られた
  • レーマン表の金額以下の仲介費用
  • システム利用料で複数のM&Aマッチングサイト(成功報酬のみ)へ登録、成功報酬申請
  • 仲介業者と専任条項付委任契約締結(2021年9月17日以前)、対象期間中の基本合意や最終契約の中間報酬または成功報酬
これらの場合、相見積は不要です。

見積もりが断れた場合ならば、業者等が見積を断った内容の確認できるもの(通知書やメール等)を添付します。

また、M&A仲介業者等との契約を今一度よく確認し、報酬の内容について相見積が不要か否かを把握しておきましょう。

①買い手支援型×経営資源の引継ぎ実現の支援事例

こちらではいろいろな事業承継・引継ぎのケースで利用された、補助金交付の実例を見ていきましょう。まずはM&Aで買い手側となった会社が実現した引継ぎのケースです。


こちらでは、

  • サービス業A社の実例
  • 小売業B社の実例
  • サービス業C社の実例

以上を解説します。

サービス業(売上高2,612千円)

M&Aによる経営資源引継ぎの実施へ、補助金制度(専門家活用)が利用された事例です。


(1)買い手A社

  • サービス業:ITサービス業、広告代理店業
  • 目的:IT・Web集客の支援事業を行い学習塾の顧客が多く、更なる事業拡大を目指す
(2)売り手企業
  • サービス業:学習塾運営
  • 目的:Web集客が上手くいかず、IT化する教育に対応できない
M&Aにより双方の利害が一致、株式譲渡の最終契約が締結されました。買い手A社は本制度を申請、交付が認められました。内容は下表の通りです。

成果内容
引継ぎの形態株式譲渡
補助金使途
事務業務請負費、システム利用の成約手数料

小売業B社(売上高942,151千円)

後継者不在に悩む企業の引継ぎの実施へ、補助金制度(専門家活用)が利用された事例です。


(1)買い手B社

  • 小売業:視聴覚補助具の製造・販売
  • 目的:多様な商材の提案活動ができる地域商社を目指し、シナジー効果を高める
(2)売り手企業
  • 小売業:電化製品販売・施工
  • 目的:代表者が高齢で後継者が不在、事業承継を検討
M&Aにより双方の利害が一致、クロージングに達しました。買い手B社は本制度を申請、交付が認められました。内容は下表の通りです。

成果内容
引継ぎの形態株式譲渡
補助金使途案件の発掘や調査、交渉費用

サービス業(売上高4,358千円)

引継ぎを希望する売り手とのM&A交渉のため、補助金制度(専門家活用)を利用した事例です。


(1)買い手C社

  • サービス業:飲食コンサルティング
  • 目的:飲食関連マーケティング等のサービスのノウハウを活かし、飲食店経営に進出したい
(2)売り手企業
  • サービス業:美容業・飲食業
  • 目的:コロナ禍で需要減、事業承継の際は全ての従業員の雇用・処遇の維持を希望
双方の利害が一致、M&Aが成立しました。買い手C社は本制度を申請、交付が認められました。内容は下表の通りです。

成果内容
引継ぎの形態株式譲渡
補助金使途着手金、成功報酬、デューデリジェンス費用

②売り手支援型 × 経営資源の引継ぎ実現の支援事例

買い手の補助金の活用の他、M&Aで売り手側となった会社が実現した引継ぎのケースもあります。後継者不在、経営者の高齢で事業承継を決意した方々が多いです。


こちらでは

  • 製造業D社の実例
  • 建設業E社の実例
  • サービス業F社の実例

以上を解説します。

製造業(売上高404,780千円)

将来的な廃業を視野に入れたものの、金融機関の薦めでM&Aを利用した事例です。


(1)売り手D社

  • 製造業:樹脂製品製造
  • 目的:代表者の子息は会社継承を拒否し独立、他社に事業を承継してもらいたい
(2)買い手
  • 製造業:製品製造
  • 目的:新規受注の獲得、企業拡大を目指す
D社の事業承継および従業員の雇用は全員維持され、補助金交付も認められました。内容は下表の通りです。

成果内容
引継ぎの形態株式譲渡
補助金使途着手金・成功報酬

建設業(売上高319,596千円)

新型コロナウイルス感染拡大の影響で受注が減少、事業承継のためM&Aを利用した事例です。


(1)売り手E社

  • 建設業:土木建築工事
  • 目的:経営者が高齢で後継者も無く、従業員全員雇用・既存取引先との取引継続を前提に事業承継したい
(2)買い手
  • 建設業:総合建設業
  • 目的:事業エリアの拡大、受注増加のため買収を検討したい
E社の希望が認められ事業承継を達成、補助金交付も認められました。内容は下表の通りです。

成果内容
引継ぎの形態株式譲渡
補助金使途M&A成功報酬

サービス業(売上高227,909万円)

映像制作事業がコロナの影響で継続不能となり、事業譲渡を行った事例です。


(1)売り手F社

  • サービス業:映像制作業
  • 目的:映像制作自体ができない環境で継続困難、後継者も不在で他社へ事業譲渡したい
(2)買い手
  • サービス業:映像制作業
  • 目的:自社の関連会社である衣料品販売企業とのシナジー効果で売上拡大を目指す
売り手F社の従業員は全員雇用継続となり、買い手は映像技術を使ったECサイトでの販売等で売上拡大につながりました。

成果内容
引継ぎの形態事業譲渡
補助金使途成功報酬

③買い手支援型 × 経営資源の引継ぎ促進の支援事例

買い手による引継ぎが、順調にいくよう支援するための費用も本補助金制度の役割です。M&Aアドバイザリー費用や委託費等が主に交付対象となります。


こちらでは

  • 運輸業G社の実例
  • サービス業H社の実例
  • サービス業I社の実例
以上を解説します。

運輸業(売上高319,706千円)

事業基盤の拡大のため事業譲受に関心を持ち、経営資源の引継ぎを促すための支援が必要と判断、本補助金制度を利用した事例です。

  • 買い手:運輸業G社
  • 事業:一般貨物・軽貨物の運送
  • 目的:コロナ禍の影響は軽微で、業容拡大の好機と認識
G社の課題である慢性的な人材不足の解消、新規の得意先開拓をスピーディに解消しうる手段として事業譲受を検討しています。現在、専門家を活用しデューデリジェンスを実施、M&Aの交渉成立を目指しています。

補助金交付が次の内容で認められました。
  • 補助金の使途→労務デューデリジェンス費用

サービス業(開業初年度のため売上高記載なし)

フィットネス事業の譲受を打診され、スムーズな引継ぎを促すための支援が必要と判断、本補助金制度を利用した事例です。

  • 買い手:サービス業H社
  • 事業:フィットネス事業
  • 目的:知見を活かし、買収した事業の立て直しを図る
H社は売り手の顧客や取引先、従業員との関係も維持しつつ、地域経済の発展にも寄与したいと考えています。専門家を立てつつ、交渉の成立を目指しています。

補助金交付が次の内容で認められました。
  • 補助金の使途→M&Aアドバイザリー費用

サービス業(売上高162,298千円)

認可外保育園の保育事業者から買収を行い、今後の拡大発展を加速させるため、本補助金制度を利用した事例です。

  • 買い手:サービス業I社
  • 事業:児童福祉業
  • 目的:保育園を6園運営し、今後も拡大発展を目指したい
I社は、当社が有する「認可保育園」「家庭的保育園」「企業主導型保育園」への転換ノウハウを活用し、地域の保育事情の改善を目指しています。

補助金交付が次の内容で認められました。
  • 補助金の使途→アドバイザーへの委託費

④売り手支援型 × 経営資源の引継ぎ促進の支援事例

売り手による事業承継が、順調にいくよう支援するための費用も本補助金制度で活用できます。M&Aに関する買い手候補の選定費用、基礎資料作成の着手金等が主に交付対象となります。


こちらでは

  • 製造業J社の実例
  • 卸売業K社の実例
  • 卸売業L社の実例
以上を解説します。

製造業(売上高1,286,537千円)

コロナの影響で飲食業界の消費激減が影響し取引は減少、事業継続を他社に託すため、本補助金制度を利用した事例です。

  • 売り手:製造業J社
  • 事業:清酒の醸造および販売
  • 目的:自社ブランドを承継してくれる相手の探索
J社はM&A仲介会社の協力を受け、現在国内の同業他社を中心に、事業継続を託す買い手の探索を行っています。

補助金交付が次の内容で認められました。
  • 補助金の使途→候補先の探索費用、資料作成の着手金、企業評価料

卸売業(売上高71,505千円)

工事数の激減に伴う受注数減少が原因で先行き不透明となり、事業引継ぎを他社に託すため、本補助金制度を利用した事例です。

  • 売り手:卸売業K社
  • 事業:建設機械の販売・レンタル・修理
  • 目的:会社・従業員の引継ぎ先をFA・仲介会社の協力を受けつつ探索
コロナウイルスの影響で公共工事・民間工事が減少、自力での事業継続(成長)が難しいと考え、事業と従業員を託す買い手の探索を行っています。

補助金交付が次の内容で認められました。
  • 補助金の使途→仲介業者への業務委託の着手金

卸売業(売上高140,126万円)

皮革業界全域で需要が減少、自社の資金繰も悪化し事業譲渡を決断、本補助金制度を利用した事例です。

  • 売り手:卸売業L社
  • 事業:天然皮革の卸売
  • 目的:経営者が高齢、後継者不在により事業譲渡を進める
コロナの影響下で皮革業界が大きなダメージを受け、廃業も視野に、従業員の雇用継続・培ってきた天然皮革のノウハウの事業承継先を探しています。

補助金交付が次の内容で認められました。
  • 補助金の使途→仲介業者への業務委託の着手金

まとめ:事業承継・引継ぎ補助金の交付条件や流れについて

この記事では、事業承継・引継ぎ補助金の内容、注意点や実例等を解説してきました。


本制度が利用できれば、事業再編等による自社の経営革新、専門家活用の費用負担を軽減する効果が得られます。


この記事では次の内容を紹介しました。

  • 事業承継・引継ぎ補助金は経営革新・専門家活用に分かれる
  • どちら選ぶかで申請のプロセスが異なる
  • 対象事業や経費は募集の際に明記されているので良く確認する
  • M&Aの買い手・売り手も本制度のサポートが期待できる
事業承継・引継ぎ補助金は、常時募集している制度ではありません。しかし、毎年何回かに分けて募集は継続されています。事務局等のホームページをこまめにチェックすることが大切です。

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