事業承継って何?【事業承継の承継するもの・承継先・進め方を解説】

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事業承継とはなんでしょうか?中小企業などの経営者の方には事業承継について理解を深めた上で進めないと大きな失敗に繋がりかねません。本記事では事業承継について詳しくまとめており、事業承継で押さえておくべき基礎知識を学ぶことができます。ぜひ最後までお読みください。

▼この記事を読んで欲しい人
  • そもそも、事業承継のことがわからない方
  • 自社の承継先を迷っている方
  • 事業承継に関わる税金について知りたい方

▼この記事を読んでわかること 
  • 事業承継の大まかなプロセス
  • 自社の状況にあった様々な承継先
  • 事業承継に関わる税金

内容をまとめると

  • 事業承継は、時間がかかる上にプロセスも多い
  • 最近は親族内よりも、親族外への事業承継が多くなっている
  • 承継先ごとにメリット・デメリットがある
  • 事業承継について相談したい場合は、オンラインで無料相談できるマネーキャリアがオススメ!

事業承継って何?【事業承継の概要や進め方と注意点について】




「そろそろ引退するから、誰かに自分の事業を引き継いでほしい」

「誰に自分の事業を引き継げばいいのだろうか」


会社を経営してから何十年と経ってきた頃、上記のように思うかもしれません。


そこで、今回は事業承継とは何なのか?から今の中小企業の状況などについて解説していきます。


事業承継のやり方については、会社によって様々な方法があるので一概にこれというのは存在しません。


むしろ、今の状況を踏まえた上で最適な事業承継のやり方を選択し、今回紹介するステップを確実に踏めば、事業承継の成功率は高まります。

事業承継とは会社の経営を後継者に引き継ぐこと

まずは事業承継とは何かについて説明します。


事業承継とは、「何らかの理由で、いまの経営者が会社の事業や会社そのものを、家族や従業員などに引き継ぐこと」をいいます。


とはいえ、会社の事業や会社そのものと言われてもいまいちピンとこないと思います。


そこで、ひとまずは以下の3項目が引き継がれると考えてください。


  • 経営:経営権や傘下の従業員を引き継ぐ
  • 資産:株式や、事業用資産を引き継ぐ
  • 知的資産:技術や技能、特許、ブランドなどを引き継ぐ
もっとも、実際に引き継がれるものは、それぞれの事業承継のケースによって異なります。

経営権はあるが、株式は別の人に引き継ぐかもしれないですし、その逆も然りです。

また事業承継は単に経営権を他の人に譲るだけではなく、譲った後に廃業や利益悪化の問題がおきないように必要なものを引き継ぐことが重要です。

事業承継にはさまざまな形があるものの、基本的には以下のような流れで行われています。

  1. 経営状況や経営課題の明確化
  2. 経営の改善
  3. 具体的な計画を立てる
  4. 事業承継を実行する
詳しくは後述しますが、事業承継を進めるには多くの準備が必要となります。

この準備には経営自体の改善も含まれるため、準備だけで10年以上かかる可能性もあります。

ですので、経営者は誰かに事業を譲ると決めた時点で早めにかつ綿密に計画し、行動しなければなりません。

後継者や従業員の負担を減らすことにつながるという意味でも、事業承継の準備を万全に整えることが成功のコツといえるでしょう。  

中小企業における事業承継の現状と問題点とは




まずは中小企業における事業承継の現状と問題点について、みていきましょう。


事業承継をしたいといっても、現状を理解しているのとしてないとでは大きな違いがあります。


ここでは、下記の3つの視点で解説していきます。


  • 日本の企業では99%以上が中小企業である
  • 中小企業の経営者は高齢化している
  • 中小企業における事業承継の傾向について 

日本の企業では99%以上が中小企業である

現在、日本の企業の99%以上が中小企業となっています。


これは日本の企業のほぼ全てといっても過言ではありません。


2021年度の「中小企業白書」によると、8割弱が小規模企業となっており、ここに中規模企業を加えると9割以上という結果が出ています。


実際に企業そのものの数で言うと、2016年には359万社になっています。


これは1999年の485万社と比べて、かなり減少していますが、理由としては2008年のリーマンショックによるものです。


特にリーマンショック以降の2009年から2012年にかけては、実に35万社もの小規模企業が倒産に追い込まれている状況となっています。

中小企業の経営者は高齢化している

また問題となっているのが、経営者の高齢化です。


高齢化社会と言われている中で、中小企業の経営者も例外なく高齢化が進んでいます。 


2013年では、60代以上の高齢者は80.5%だったのに対し、2018年度では81.7%と少しではありますが増えています。


また80代に絞ってみると、2013年は21.6%。2018年度は28.1%と大きく上がっています。


この上昇理由については、やはり後継者が見つからないために、そのまま自分が事業を継続せざるを得ないのが原因と考えられます。


しかも、高齢化社会の中で事業を引き継いでくれる後継者が見つからないため、そのまま事業を継続できずに倒産というケースも少なくはありません。


経営者からしてみれば、会社を存続させることは、もちろん重要です。


しかし、それ以上に今までに積み重ねてきた知的財産も若い世代に引き継ぐことも、重要だと考えられます。 

中小企業における事業承継の傾向について

高齢化社会が進むに連れて、事業承継の傾向自体も変化してきました。


中小企業庁のサイトにある、事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)によると、以前は親族の範囲内で会社や事業を引き継ぐケースがほとんどでしたが、今では、M&Aを含む第三者に引き継ぐケースが増えてきました。


内容を分析すると、経営者として長く働いてきた場合は、親族が事業を継ぐケースがかなり多い傾向にあります。


対して、在任期間が短ければ、M&Aや外部からの経営者へ事業を引き継ぐケースが多くなっています。


さらに、60代以上の経営者のうち、実に半数以上が自分の代で事業をたたむことを予定していると回答していることから、上記に比例して中小企業の倒産も増えている理由がわかります。

中小企業が抱える事業承継の問題とは

では、現在多くの中小企業が抱える事業承継の問題はなんでしょうか。


経営者の中には、自分の事業を継続するかどうかを考える経営者が現れます。


親族内で後継者がいればいいのですが、後継者がいない場合には後継者候補を探したり、教育する必要があります。


経営者が若ければ問題はありませんが、高齢になってくるとそうもいきません。


後継者がいないからといって廃業をするにしても廃業コストはかかりますし、廃業となった場合に取引先や従業員にも迷惑がかかります。


上記の通り、後継者候補の選別や教育コストを考えると、事業承継には多くの時間がかかるというのが問題になります。

事業承継をする理由は何?【中小企業の人材・後継者不足】

次に、そもそも事業承継をする理由について、みていきましょう。


事業承継をする理由は、会社ごとに様々なケースがありますが、下記の3つの観点から解説していきます。


  • 企業の後継者がいない
  • 人材の不足
  • 自社株問題 

企業の後継者がいない

まず1つ目にして最大の理由が、企業の後継者がいないという点です。


2019年に東京商工リサーチが行った調査によれば、約19万ある会社のうち半数以上が後継者が決まっていないという結果が出ました。


なぜ後継者がいないかといえば、後継者に会社の債務を個人として保証したり、個人所有の不動産を担保として提供されたりするリスクを背負わされる可能性があるからです。


また、経営者自身の価値観の変化により、子供には親とは違う仕事を選び、経営者自身も子供には好きなことをしてもらうのが当たり前になっているのも理由の1つです。


さらには、少子化にも拍車がかかり、そもそも子供がいないことから、ますます親族内の事業承継は厳しくなっているのが現状です。 

人材の不足

2つ目の理由が、人材不足によるものです。


というのも、経営者からしてみれば、経営能力の高い人材を後継者として選びたいからです。


その点で言えば、大企業のほうが経営能力の高い人材を確保するのには困りません。


しかし、中小企業の場合、常に深刻な人材不足に陥っているため、経営者レベルの人材を確保するにも一苦労です。


中小企業庁のサイトでも、2013年以降は全業種で人手不足の企業の割合が半数以上となってきました。


とはいえ、単に人がいればいいというわけではなく、経営者として未熟な人間を教育することも重要となります。


人を変えるだけでなく、後継者としてふさわしい人材となるような教育も含めた事業承継が必要となるのです。  

自社株問題

3つ目の理由として、自社株の継承問題があります。


中小企業では、株を所有している=経営を任されているになるので、自社株を後継者に譲渡することも考えなくてはなりません。


ちなみに、上場企業であれば、株は経営者以外にも所有している株主が大勢いるので、経営者は株主から経営を任されているという関係が成り立ちます。


話を戻すと、自社株を後継者に譲渡する場合、相続税の負担や個人保証などの課題を解決しなくてはいけません。


これは第三者に引き継ぐ場合も例外ではなく、引き継ぎのための資金をどうするかは頭の痛い問題と言えるでしょう。


従って、中小企業の事業承継では単に経営者を変えるだけでは経営権を引き継ぐことはできないため、この自社株問題を解決しながらスムーズに事業承継を進めることが重要です。 

事業承継で承継すべき3つの経営資源について解説




次に事業承継で承継すべき3つの経営資源について、解説していきます。


事業承継は、経営者を交代したり株を譲っただけでは成立しません。


後継者が後を継いだ後でも、経営がうまくいくように、そして今まで以上に成長できるようにするためにも、すべての経営資源をしっかりと引き継ぐようにしましょう。


経営資源は主に下記の3つになります。


  • 経営権を持つ人の承継
  • 事業に必要な資産の承継
  • 会社が持つ独自の知的資産の承継
それぞれ解説していきます。 

経営権を持つ人の承継

まず人の承継についてですが、これはすなわち経営権の承継のことです。


誰を後継者にするかについては、できるだけ早いうちに決めるように行動することを求められます。


特に親族や従業員に引き継ぐ場合は、経営者としての教育に時間をかけたいところです。 


また中小企業においては、経営者そのものに事業のノウハウや取引先とのコネクションが集中しています。


そのため会社の経営や業績は、経営者自身の気質による傾向があります。


ただ先程も書いた通り、少子化や経営者の価値観の変化から親族内で後継者を見つけることが困難なため、第三者へ事業を譲ることも視野に入れている会社が増えています。 

事業に必要な資産の承継

次に事業に必要な資産の承継について見ていきましょう。

資産の承継とは、その事業を行うために必要なお金や資産を後継者に譲ることをいいます。

「資産」と一口に言っても、下記のように様々な資産があります。

  • 株式
  • 設備や不動産などの事業用資産
  • お金
中小企業では、株主=経営者になるので、経営を引き継ぐために譲る株式についても譲るタイミングがあります。

このタイミングによっては、株を譲った際に発生する税金が大きく変わるので、税金対策を含めた承継方法を考えなくてはなりません。

やはり、お金を引き継ぐために考慮すべき点はいくつかありますので、早いうちに税理士などの専門家に相談するほうがいいでしょう。 

会社が持つ独自の知的資産の承継

次に会社が持つ独自の知的資産の承継について見ていきましょう。


知的資産とは、先程のように形があるものではなく、無形の資産のことをいいます。


無形の資産とは、その会社の強みと言ってもいいでしょう。


具体的には、従業員や事業に必要なスキル、特許やブランドがあげられます。


また経営に対する考え方や、顧客とのつながりも知的財産としてみなされるものになります。


この無形の資産をしっかりと引き継ぐためには、「自分の会社の強みや価値はどこから来るのか」をしっかりと理解する必要があります。


その上で、後継者に対して共有することが最も重要です。  

4つの事業承継先についてメリット・デメリットとともに解説

次は主な事業承継先について、それぞれメリット・デメリットを解説していきます。


事業承継のケースはそれぞれですが、自分の会社の状況にあわせて、適切な事業承継先を探してみてください。


  • 親族内承継
  • 社内承継
  • 第三者への承継
  • M&Aによる承継
それぞれ解説していきます。 

事業承継の承継先の傾向【親族内・親族外・第三者・M&Aへの移行】

まずは承継先の傾向について、みていきましょう。


最近の主流として、親族内での承継よりも親族外への承継が増加しています。


中小企業庁のサイトにある、「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会」中間報告によると、20年以上前では親族内承継が9割で、親族外承継は1割にも満たない状況でしたが、最近では親族内承継が7割強、親族外承継が2割となっています。


理由としては、経営者の価値観の変化があります。


具体的には、自分の子供には自分の道を自由に歩んでもらえばいいというのと、自分が引退するまでに後継者教育が終わらないなどの理由により、親族内よりも親族外を希望する経営者が増えているという状況です。

親族内承継

まずは親族内承継について、みていきましょう。


親族内承継とは、文字通り経営者の親族の中から後継者を選ぶ方法です。


2019年の中小企業白書によると、2,565社の中小企業のうち、半数以上が親族内承継を選んだというデータも出ていることから、もっとも一般的な方法といえます。


親族内承継の一番のメリットは、社内からも社外からも後継者として納得されやすいことです。


やはり、事業承継の中ではもっとも一般的ですし、世間体からしてみても家族で事業を切り盛りしているというのは何となく真っ当なイメージをもてます。


また、贈与や相続によって、株式を後継者にスムーズに渡せるのも大きなメリットです。


税法や民法では家族間の相続に控除などのメリットもあるので、引き継ぎに支障をきたすことも少ないでしょう。


デメリットは、やはり親族の中で経営者たる実力を持っている人がいるとは限らないことです。


基本的には、親族の中で子供や兄弟など、1〜2人を後継者として選定しますが、その中で経営者としての素質を持っているかはわかりません。


だからといって、経営者としての実力もない人に継がせた場合は、社内からの反発も大きいため事業に支障をきたすことでしょう。


また、仮に経営者の資質をもっていたとしても本人に事業を継ぐ意志があるとは限らないのです。


先程もお伝えしたとおり、本人が親とは別の仕事をしたい場合もあるので、よく話し合ってみるといいでしょう。  

社内承継

次に社内承継について、みていきます。


社内承継とは、社内の従業員や役員を後継者として選ぶ方法です。


さきの親族内承継は、そもそも後継ぎがいないか、いたとしても経営者としての資質が無いとできない方法です。


なので、上記の理由があれば社内承継で後継者を探す他ありません。


社内承継のメリットとしては、経営や実務のスキルをしっかり備えている人間を後継ぎとして選びやすいことです。


やはり、長い間会社に貢献している人材であれば、一通りのスキルは習得しているので、親族内承継と比べるとスキルのない人を後継ぎにするというリスクは少ないでしょう。


また、会社の経営コンセプトも理解しているので、社内からの反発も起きにくいです。


実務スキルも会社の経営コンセプトも理解している人間であれば、後継者としての教育コストも少なくなるのも大きな魅力の1つです。


デメリットは、後継者候補に自社の株式を購入できるだけの資金がない点です。


実は自社の株式を継承するだけでいえば、有償無償問わず譲渡することはできるのですが、どちらにせよお金がかかります。


有償であれば、株式を購入できるだけの資金がいりますし、無償であれば贈与税の納税資金が必要となります。


どちらにせよ、後継者に資金力がなければ事業承継を行うのは難しいでしょう。


なお、社内に後継者としてふさわしい人物がいない可能性もあるという点では親族内承継と同じデメリットを抱えてるといえます。 

第三者への承継

次に第三者への承継について、みていきます。


第三者への承継は、親族内にも社内にも後継者候補がいない場合に行います。


この方法は、先代の経営者あるいは家族が株主としていることを前提に行われることが多いです。


第三者への承継によるメリットは、会社外から後継者候補を探すことができる点です。


親族内承継や社内承継に比べて、経営者としての資質を持つ人材を幅広く探すことができるので選択肢がかなり広がります。


運が良ければ、優秀な経営者に会社を譲ることも可能でしょう。


また、先代が株主になるという前提で言えば株式の譲渡も必要ないのでお金がかからないのもメリットといえます。


デメリットは、肝心の第三者に経営者としてのふさわしいかの見分けがつきにくいことです。


選択肢が広がるということは、それだけ出会う人が多いということになりますので、大勢の中から経営者としてふさわしい人物を探すのは困難でしょう。


また縁もゆかりもない第三者である以上、社内の反発がある可能性が無いとも言えません。

M&Aによる承継

最後はM&Aによる事業承継をみていきましょう。


M&Aは他の誰かに譲るという意味では、先程の第三者承継と似ています。


しかし、M&Aでは会社そのものを他の会社や経営者に売ることによって、事業承継を達成することをいいます。


第三者承継のように幅広い選択肢を持ちながら、会社を売った際の利益が得られるのが大きなメリットです。


逆にデメリットは、自分が希望している買い手を探すのが困難なところでしょう。


一口にM&Aと言われても、様々な方法がありますので、今回は以下の4つを紹介します。


  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 合併
  • 会社分割


株式譲渡

自社の株を譲渡する事によって、経営権を移す方法です。


メリットは、後述する方法の中でも最もかんたんに手続きが行える点です。


本来であれば、煩雑な手続きを踏まなければ株式の譲渡は行えないのですが、中小企業同士であればお互いが合意していれば譲渡は比較的スムーズに行なえます。


デメリットは、帳簿外の債務や必要のない事業まで引き継ぐ可能性があることです。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の一部あるいはすべてを譲渡する方法です。


ここで言う「事業」とは、単に事業そのものの意味だけではなく、その事業で使う資産や負債、組織をも意味します。


つまり、それぞれの事業の中で引き継ぎたいものだけを選ぶことができるので、先の帳簿外の資産やいらない事業を引き継がなくてもいいのです。


そして、売り手にとっては採算の取れない事業を売ることができるので、その売却資金を元でに主力の事業に集中したり、新規の事業を始めることも可能です。


したがって、売り手にも買い手にもメリットのある方法になります。


デメリットは、事業ごとに契約を結ぶので手続きが煩雑になりやすい点があげられます。 


また、売り手側に競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)が課せられることもデメリットになります。


競業避止義務とは、要するに一定期間、同じ地域で同じ事業を行うことができない義務のことです。

合併

合併は、複数の会社の資産・負債を1つにまとめる方法です。


合併には「吸収合併」と「新設合併」の2つの方法があります。


「吸収合併」は複数の会社が、他の1つの会社に全てを引き継ぐ方法であるのに対して、「新設合併」は新しく作った会社に資産全てを引き継ぐ方法になります。


メリットは、組織を完全に一体化できることによって、事業や従業員をコントロールしやすくなる点です。


また、会社ごとに存在する同じ部門も一体化することによって、重複していた分のコストカットができる点も大きなメリットです。


ただし、デメリットは4つの方法の中で一番手続きが複雑でかつ多いという点があげられます。


具体的には、


  • 官報への広告
  • 株主への通知
  • 株主総会の決議
などがあげられます。

したがって、大企業であるならまだしも中小企業でやる方法としてはあまり向かない方法と言えるでしょう。

会社分割

会社分割は、会社の部門の一部を切り離し、その事業を他の会社に渡す方法です。


会社分割も合併と同じく、「吸収分割」と「新設分割」の2種類が存在します。


内容もほぼ同じで、合併では単位が「会社」であるのに対して、会社分割では「事業」が単位となります。


メリットは、事業譲渡のような個別契約は必要がないので、手間なく引き継ぐことが可能となる点です。


また、採算の取れない事業だけを売ることによって、企業価値が高まるのもメリットの1つといえるでしょう。


デメリットは、特別決議が必要になる点と株式譲渡と同様、帳簿外の資産や不要な資産をも引き継がなくてはならない点です。  

事業承継で失敗してしまう理由について解説

ここからは事業承継で失敗してしまう理由について解説していきましょう。


よくある例として、下記の3つがあります。


  • 後継者の人選・育成ミス
  • 親族内で相続争いが起きてしまう
  • 社内への周知ができていない
それぞれ解説していきます。 

後継者の人選・育成ミス

そもそも、後継者を選ぶということはとても難しいことです。


先程もふれた通り、親族内承継では、そもそも子供がいないのと経営者と子供の価値観の変化により、後継者候補にさえあがらないことがあるからです。


また、後継者がいたとしても、経営者としての資質やスキルがなければ経営状況の悪化により、事業承継そのものが失敗に終わることもあります。


さらには、後継者への教育も欠かせません。スキルはもちろんのことですが、後継者としての立ち振る舞いもしっかりできていなければ失敗に終わるでしょう。


これは親族外でも例外ではなく、会社のコンセプトに合う人間かどうかも見極めなくてはいけません。


後継者にスキルがあり、会社が今まで以上に利益を出せるようになったとしても、従業員たちがその経営者を後継者として認めなければ、経営を続けることは困難です。


したがって、後継者の人選ミスは会社の経営を左右するといってもいい難しい問題なのです。

親族内で相続争いが起きてしまう

また事業承継の際には、親族内で誰にどれくらい相続させるのかも悩みのタネとなります。


相続争いだけならまだしも、相続争いがキッカケで社内で派閥が発生し本業に支障をきたすという問題も少なくありません。


この為、今まで順調だった事業の経営がうまくいかなくなり、事業承継が失敗に終わることもよくあります。

社内への周知ができていない

また会社を誰に継いでもらうかを、どの時点で社内に周知するのかも難しい問題です。


もちろん事前周知は必須ですが、上場企業に事業承継する場合、早いタイミングで周知してしまうと、思わぬところで情報が漏れてしまう可能性も少なくありません。


その結果、今までとの取引先との仕事が切られてしまうケースもあります。


また周知の方法によっては、従業員からの反発も起こり退職してしまうリスクもあります。


従業員の立場からしてみれば、単に書面だけで周知をするのでは納得いかないでしょう。


社長自ら説明する場を設けるなどの周知の方法を考えることは重要です。

M&Aに向けた準備ができていない

事業承継をする際に、M&Aを選んだ場合には事前の準備が肝心です。


というのも、M&Aでは譲渡先を探すというのは容易ではなく、かと言って誰でもいいというわけではありません。


いくら譲渡先が見つからないといって、妥協で決めてしまうと自社の経営コンセプトとは違う会社になってしまう可能性もあります。


結果、売上が落ち込んだり社内の雰囲気が悪くなったりして、事業承継が失敗となるでしょう。


M&Aには限りませんが、事前準備を徹底することで、上記のような自体は避けられます。 

事業承継の失敗によってどうなるのかを解説

次に、もし事業承継が失敗した場合にどうなるかについて、みていきましょう。


あまり考えたくはないのですが、事業承継が失敗してしまうケースは少なからずあります。


そこで、実際に事業承継が失敗してしまうとどうなるかについて、下記の3つの観点から解説します。


  • 業績が悪化する
  • 人材が減ってしまう
  • 廃業してしまう 

業績の悪化する

一番わかり易い例として、業績の悪化があげられます。


今までとの取引先との関係がうまくいかなくなったり、従業員のやる気が落ちたりなどの影響で売上が下がります。


人選ミスなどにより、業績が悪化するのは避けたいところです。 

人材が減ってしまう

次に、今まで勤めていた社員が退職してしまうこともあります。


事業承継の結果、社内での派閥争いが起きたり売上が悪化した場合には、後継者が責任をとって辞めることも少なくありません。


また後継者が提唱した経営コンセプトに合わない社員が、会社を辞めることも考えられます。

廃業してしまう

事業承継が失敗した結果、最悪の結末が廃業です。


正直なところ、業績の悪化や従業員の退職は、後継者が変わった直後の一時的なトラブルとしてよくある話です。


経営者が慣れてくれば、今まで以上に売上や事業の拡大にも繋がっていくでしょう。


しかし、売上の悪化や従業員の退職に歯止めがきかない場合には、廃業に追い込まれる可能性もあります。


廃業という最悪の結果を避けるためにも、次にあげるポイントを抑えておくことが重要です。

事業承継を確実に成功させるためのポイントを解説




では、事業承継を確実に成功させるためにはどうすればいいでしょうか。


ここでは、事業承継を確実に成功させるためのポイントを下記の3つの観点で、みていきます。


  • 前もって入念な準備が必要
  • 相続によるトラブルの対策を講じる
  • 資金調達と税金対策  

前もって入念な準備が必要

事業承継は、思った以上に時間がかかります。


そもそもの後継者探しから始まり


  • 後継者の教育
  • 相続問題
  • 税金対策
など様々なタスクがあります。

親族や社内に後継者候補がいた場合には、教育などの準備が必要となってきます。

教育には時間も労力もかかるため、早めに準備することに越したことはありません。

また、第三者相続やらM&Aを選択した場合には、後継者を探すことから始めなければいけません。

選択肢はあるものの、自社とマッチする経営者は稀有な存在となるので、やはり時間はかかるでしょう。

事業承継には、思った以上に時間がかかることから数年間の準備期間を設け、早めにかつ入念な準備を心がけましょう。

相続によるトラブルの対策を講じる

事業承継の方法として、親族内相続を選択した場合避けられないのが相続の問題です。


特に事業承継の準備期間中に、経営者が亡くなった場合には親族が後継者として選ばれる可能性が多いでしょう。


そもそも、相続する人が一人であれば何も問題はないのですが、相続人は複数いることのほうが多いです。


では、相続で何が問題になるかというと相続される財産と誰が経営者になるかという点です。


財産であれば、相続人同士で話し合って財産を分割すれば済むことです。


しかし、経営者の椅子は1つしかありません。誰が経営者になるかによって、社内分裂することも少なくありません。


いずれにしても、相続問題は経営者が健在のうちに解決したい問題です。 

資金調達と税金対策

事業承継を達成するためには、資金調達の問題や税金対策も避けられるない問題です。


原則として、事業の経営権を譲るには後継者に株式を譲渡しなければなりません。


譲渡先が親族であれば、贈与税と相続税がありますし、第三者やM&Aが譲渡先であれば所得税や法人税、消費税などがあります。


いずれにせよ、税理士などの専門家を通さずに行ってしまうと、思った以上に税金がかかってしまうケースも少なくありません。


また、第三者への譲渡であれば、譲渡先に相応の資金が必要となります。


しかし、実はどちらのケースであったとしても優遇される税制や国の補助金制度があるのです。


前準備さえ怠っていなければ、事業承継がスムーズになされることでしょう。 

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事業承継の進め方について詳しく解説【5つのステップ】

ここまでで、事業承継を成功させるポイントを見ていきました。


では、実際に事業承継の進め方について、詳しく解説していきましょう。以下5つのステップで解説していきます。


  1. 経営状況や後継者における課題発見
  2. 事業承継のための企業価値向上
  3. 事業承継計画の策定またはM&Aのマッチング
  4. 事業承継の実施
  5. 事業承継後の取り組み  

経営状況や後継者における課題発見

まずは、自社の経営状況と事業承継をするために解決すべき課題を把握しましょう。


経営状況の把握とは、自社の商品力がどれだけのものかを調べることはもちろんのこと、キャッシュフローについても把握しておくべきでしょう。


後継者にどうやって強みを伸ばしてもらうか、逆に弱点をどうやって改善していってもらうかなどのコンセプトを考えてもらうことが重要です。


なお、経営状況をどう把握するかについては、自社株の評価も有効となります。


また、事業承継をするための課題については、今までに解説してきた下記の点について考えてみましょう。


  • そもそも、後継者候補がいるのか
  • 後継者候補として、ふさわしいスキルを身につけているか
  • M&Aなどの方法も考えられるのか
他にも、相続問題や資金問題など解決すべき問題はありますが、状況に応じて優先順位をつけながら解決までのプロセスを把握することが大事です。 

事業承継のための企業価値向上

現状がわかったところで、次は事業承継に向けて自社の企業価値を高めるための施策を検討しましょう。


事業承継ガイドラインによると、最近は親族内承継の数が大きく下がっています。


後継者候補がそもそもいないのも問題ですが、後継者候補自身が会社の将来や経営状況に対して不信感を持っていることが大きな原因です。


そこで、現経営者がすべきことは自社の経営状況に何か問題があれば改善し、後継者がこの会社なら継いでもいいという状況を作り出すことが大事です。


また、親族内ではなくM&Aの場合は自社にそもそも買い手がつかなければ話にならないので、第三者から見ても買いたいと思わせるような企業にする必要があります。


では、企業価値を高めるためにはどうすればいいかというと、


  • 主力事業の競争力強化
  • 財務状況の改善
  • 会社内の体制を確認 

の3つの施策が有効です。

事業承継計画の策定またはM&Aのマッチング

企業価値を高めたら、次は本格的に事業承継の手続きを実施していきます。


事業承継の手続きは親族内承継・社内承継とM&Aとでは異なります。


まず親族内・社内承継では、事業承継計画を作成します。


計画といっても、そこまで難しいものではありません。いつまでに事業承継を行い、誰に何を承継するかを現経営者と後継者とで決めるといいでしょう。


M&Aの場合は、買い手とのマッチングを行います。


マッチングは、自分でやるにはマッチング後の交渉や契約が面倒なので、仲介業者や金融機関等に依頼するのがセオリーです。


そこで、まずは仲介業者との契約を締結し、希望条件をもとに候補者のリストや提案資料を作成します。


そして、資料を元に買い手を探します。


買い手が見つかれば、条件交渉などの手続きをすすめることによって最終的な契約が行われるようになります。

事業承継の実施

ここまで完了したら、あとは資産や経営権の移譲を行うだけとなります。


親族内・社内承継であれば、計画どおりに自社株を譲渡し、後継者への教育を開始します。


M&Aも同様に、自社株の譲渡や必要な手続きを完了させましょう。


この手続きには、税理士や弁護士などの専門家のサポートを受けながら実施することで、手続き上のミスを減らすことが可能です。

事業承継後の取り組み

ここまでで事業承継は終わりますが、事業承継後に経営状況の悪化や廃業はあってはならないことです。


そこで、事業承継後でもスムーズに経営ができるように、また事業のさらなる成長や発展を目指せるようにするための取り組みが必要となります。


まず、親族内・社内承継では、後継者による事業の見直しが必要です。


今までの会社の強みは活かしつつも、新たな市場を開拓したり新製品を作るなど行うといいでしょう。


M&Aの場合は、PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる事業と経営の統合プロセスが必須となります。


PMIの目的は買い手側の企業にあわせて、人員配置や役員の構成を変更させることによりコスト削減などのメリットを享受することです。

事業承継にかかる税金について解説




ここまでで、事業承継が行われるまでのプロセスを見ていきました。


次は事業承継に関係する税金について、下記の4つの内容をみていきます。


  • 相続にかかる税金
  • 贈与にかかる税金
  • 株式譲渡にかかる税金
  • 事業譲渡にかかる税金

相続にかかる税金

まずは相続にかかる税金について、みていきます。


親族内承継では、相続か贈与により自社株の引き継ぎを行うのが一般的です。


相続では、自社株を引き継いだ段階で相続税が課税されます。


流れとしては、まず後継者含む全相続人の総額を計算し、その総額を相続人それぞれの割合に応じて振り分けます。


この割合については、相続人が配偶者なのか兄弟なのかによって変わります。 

贈与にかかる税金

相続税と同じく、贈与税も自社株の引き継ぎの際に課税されます。


課税方式には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。


暦年課税は、1年間に贈与された財産の総額から、基礎控除110万円を引いた金額に税率をかけることによって税額を決める方式です。


相続時精算課税は、2,500万までの贈与については非課税となる方法ですが、2,500万円を超えると超えた分に対して一律20%の税率がかかります。


基本的には、60歳以上の父母か祖父母から、20歳以上の子供か孫に贈与する際に適応できます。


なお、この制度によって贈与された財産は相続財産に加えられ、すでに払った贈与税は相続税から控除されます。

株式譲渡にかかる税金

次に株式譲渡にかかる税金をみていきましょう。


M&Aでは、自社株の全てを買い手に売ることによって、経営権を譲渡することが可能です。


株式譲渡では、売る側にも買う側にも一定の税金がかかります。

売り手側は、譲渡所得に対して税金がかかり、内容は個人か法人かで変わります。


まず個人の場合、譲渡所得に対して所得税と住民税が課税され、法人の場合は譲渡益に対して法人税が課税されます。


一方で、買い手側は基本的に課税されることはありません。


しかし、時価とあまりにも乖離した金額で譲渡される場合は贈与税か法人税が課税される場合があります。


この線引きについては、非常に難しいところではありますので税理士などの専門家に相談するといいでしょう。

事業譲渡にかかる税金

最後に事業譲渡にかかる税金について、みていきましょう。


事業譲渡においても、税金は売り手と買い手によって変わります。


売り手であれば、譲渡益に対して法人税等を課税され、個人事業主であれば所得税が課税されます。


譲渡する資産が、建物などの課税資産であれば、さらに消費税が課税の対象です。


買い手側は、基本的に売り手から預かった消費税の納税代行のみとなります。


ただし、譲渡された資産の中に不動産がある場合、登録免許税と不動産取得税が加算されるので注意しましょう。

事業承継の公的支援公的支援はどんなところがある?

最後に事業承継の公的支援について、みていきましょう。


事業承継の公的支援には、税制などの制度や公的機関もあるので、ぜひ活用しましょう。 


代表的な下記の3つについて解説します。


  • 事業承継税制
  • 事業引き継ぎ支援センター
  • 補助金制度

事業承継税制

事業承継税制とは、相続税と贈与税の納税猶予を受けることができる制度になります。


これは、事業承継円滑化法の認定を受けた非上場株式を贈与か相続によってもらった場合、ある条件を満たせば相続税と贈与税の納付が免除されるという内容になっています。


都道府県知事の認定さえ受けられれば、贈与でも相続でも対象となります。

事業引き継ぎ支援センター

事業引き継ぎ支援センターは、後継者のいない中小企業などの事業引継ぎを支援する機関になります。


全国に設置されており、無料相談はもちろんですが、事業承継におけるセカンドオピニオンとしても活用することができます。


また、全国の事業引継ぎ支援センターのネットワークを利用することにより、遠い地域の会社とのマッチングも可能となっています。

補助金制度

事業承継に関連した補助金制度には、「事業承継・引継ぎ補助金」と「経営資源引継ぎ補助金」の2種類があります。


それぞれ詳しく解説します。


事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、経営者が変わるのをキッカケに、経営体制を抜本的に見直す事業者を対象とした補助金となっています。


事業承継・引継ぎ補助金には、Ⅰ型「後継者承継支援型」とⅡ型「事業再編・事業統合支援型」の2種類が存在します。


Ⅰ型であれば事業承継をキッカケに、経営体制を抜本的に見直す中小企業あるいは小規模事業者が対象です。


また、Ⅱ型については事業再編・事業統合等に伴い経営資源の引継ぎを行う中小企業あるいは小規模事業者が対象となっています。


限度額はどちらに該当するのかによって異なるので、確認した上で申請しましょう。


経営資源引継ぎ補助金

経営資源引継ぎ補助金は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念される中小企業に対する補助金です。


対象は経営資源引継ぎに関する売り手・買い手が対象となっています。


2020年第3次補正予算案と2021年当初予算案に盛り込まれてはいましたが、2020年10月に2次公募が行われてからは公表されていないため、今後の動向に注意が必要です。


事業承継に活用できる補助金であるため、公表されればうまく活用して事業承継を進めていきましょう。 

まとめ:事業承継を始める前に事業承継について理解しよう

昔のように、自分の子供が後を継いでくれるというのが当たり前ではない時代において、自分の会社を誰かに譲るというのはものすごく時間がかかり困難な問題です。


事業承継は、後継者を探すことから始まり、後継者となるように教育をし、後継者が後を継いだ後でも廃業や業績悪化という事態に陥らないためにもサポートをすることが重要です。


今回みてきた、事業承継を成功させるポイントやそのプロセスをしっかりと踏めば、事業承継の成功率はあがっていきます。


また事業承継は自分ひとりでできるものではありません。


贈与や相続における税金対策については税理士等の専門家を頼らなくてはいけませんし、事業承継そのものの支援については公的サポートにも頼らなくてはいけません。


無理して一人でやろうとせずに、わからないことがあればぜひマネーキャリアへ相談してみてください。マネーキャリアでは法人の方も無料で相談可能な為、この機会に利用してみてはいかがでしょうか。


ほけんROOMでは税務や会計に関する記事を多数掲載しておりますので、興味のある方は合わせてご覧ください。

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