更新日:2020/07/27
離婚後の学資保険は養育費に含まれる?財産分与とは?養育費問題を解説
学資保険は養育費に含まれるのか、養育費の代わりになるのでしょうか?今回は、離婚後の学資保険は養育費に含まれるのか、財産分与の対象になるのか解説します。また、学資保険の名義変更の注意点も解説します。子どもの教育資金を確保するために財産分与や公正証書なども把握しておきましょう。
目次を使って気になるところから読みましょう!
学資保険は養育費に含まれる?離婚後に生じる問題とは?
子どもの教育資金として、学資保険を積み立てている方は多いと思います。
しかし、夫婦で学資保険に加入した後に離婚してしまう場合もありますね。
万が一離婚したらその学資保険は養育費に含まれるのでしょうか?また、財産分与の対象になるのでしょうか?
やや古いデータではありますが、平成20年の時点で年間25万組の夫婦が離婚しているというデータがあり、今や離婚が他人事ではなくなってきていると言えます。(厚生労働省 離婚の年次推移)
そのため、離婚した際に学資保険をどう扱われるのかしっかり把握しておく必要があるでしょう。
この記事のポイントは、
- 離婚後の学資保険が養育費の代わりになるか
- 学資保険は財産分与の対象になるか
- 離婚後の学資保険で注意したい養育費問題
- 離婚後の養育費減額は起こりうるか
学資保険は離婚後、養育費の代わりにはならない!
結論から申し上げると、学資保険は離婚した際の養育費の代わりにはなりません。
学資保険も養育費も「子どもを育てるのにかかるお金」であることには変わらないのになぜ?と思われるかもしれませんね。
ではこれから、養育費の定義をおさらいした後に、なぜ学資保険が養育費の代わりにならないのかを説明します。
養育費の定義とは?
養育費とは、未成熟な子どもが自立するまでに必要となる教育費・医療費などを指します。
親として、子どもの心身の健やかな成長を支えることは当然の義務であり、結婚中は婚姻費用、離婚後は養育費として、両親で分担するものと考えられています。
この考えは以下の3つの法的根拠より成り立ちます。
- 婚姻費用分担(民法760条)
- 夫婦間の扶助義務(民法752条)
- 子の監護費用(民法766条1項)
平成23年の民法改正により、離婚する際の取り決め事項として、面会交流および養育費の分担が明文化されました。
なお、養育費の算出には裁判所が設定する養育費算定表を活用することもできます。
また参考までに、養育費の不足を補うものとして児童扶養手当というものがあります。
受給額は親権者の収入や子どもの数、受け取っている養育費の額などによって異なり、毎年1回「現況届」を提出することによって、指定の口座に振り込まれるという流れです。
受給を希望する場合には、親権者からお住まいの市区町村役場で申請書と必要書類を提出し、認定を受ける必要があります。
手続きの不明点や自分が受給要件を満たしているかなど、不安な点は窓口で相談されることをおすすめします。
学資保険を理由に養育費減額は行えない
では、学資保険の支払を養育費に充てると考えて養育費の減額ができないのはなぜでしょうか。
学資保険は子どもの教育資金として加入するものではありますが、大学進学など、決まったタイミングで受け取ることが前提のお金です。
そのため日々の生活費である養育費と同じように扱うことはできません。
学資保険は養育費に対して、いわば”プラスアルファ”という位置づけです。
また学資保険は契約者の一存で途中解約もできるので、契約者が父親で親権者が母親であれば、支払が途中でやめられてしまうリスクもあります。
これらのことから学資保険は養育費の代わりになるとは考えられず、学資保険を理由に養育費の減額も行えません。
とはいえ、養育費を含む離婚時のお金の取り決めは、あくまでも当事者たちの合意によって自由に決められるものですので、最終的には相手との交渉次第ということになります。
学資保険は離婚したら財産分与の対象になる?
では、学資保険は財産分与の上ではどのような扱いになるのでしょうか。
財産分与とは、結婚している間に夫婦で築いてきた財産を清算し、それぞれ個人のものとして分割することを言います。
分割の割合は「夫婦それぞれの貢献度合いに応じて」ということになっていますが、現代では、原則的に2分の1ずつということで確立されています。
ここでいう財産とは預貯金だけでなく住宅なども含まれ、学資保険も分与の対象になります。その分割の方法について、これから解説していきます。
学資保険は夫婦の財産!財産分与の対象になる
財産分与されるのは、離婚時における「夫婦共有の財産」であり、共有かそうでないかは、名義に関わらず実質的に判断されます
学資保険は、子どもの教育資金を貯めるという夫婦共通の目的のために築き上げた共有財産ですので、契約者がどちらの名義であるかに関わらず財産分与の対象となります。
なお共有財産とみなされないのは「婚姻前から片方が有していた財産」と「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」であり、これらは特有財産と呼ばれます。
学資保険の財産分与の方法
学資保険は、加入したままの状態では分けることが不可能です。
そのため学資保険を財産分与する際には
- 学資保険を解約して、解約返戻金を分割する
- 学資保険を継続し、解約返戻金にあたる金額を分与
のどちらかの方法をとることになります。
まず解約する場合は、解約返戻金という目に見える形の現金を分割することになりますので、お金の清算としてはスムーズです。
ただし、学資保険は長期の加入を前提として返戻率が組み立てられていますので、中途解約すると元本割れしてしまうことがほとんどです。
また、一旦解約した後に親権者があらためて学資保険に加入しようとしても、子どもの年齢制限により受け入れられない可能性があることも覚えておいてください。
学資保険を継続する場合は、契約を引き継ぐ方の親が保険金をすべて受け取ることになります。
そのため離婚時点で解約した場合の解約返戻金を算出し、その半額を相手に渡すことで財産分与とされます。
この際大切なこととして、契約者を親権者名義に変更することがありますが、この点については後ほど詳しく解説します。
学資保険を養育費の特別費用に充てるかどうか
特別費用(特別の費用)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
子どもを育てるには、日々の生活費や学費の他に、入院などをした場合や進学のタイミングなど、一時的に大きなお金が必要になることがあります。
その際の費用を特別費用といい、養育費とは別に設定されますが、養育費算定表では特別費用に言及されていないため、離婚する双方の協議によって取り決める必要があります。
学資保険の契約者が非親権者として養育費を払う立場であれば、学資保険をこの特別費用として活用することが可能です。
ただし学資保険は保険金受け取りのタイミングが決まっており、特別費用が必要となるタイミングと一致するとは限らない点には注意しましょう。
離婚後の学資保険、注意したい養育費問題
親権者=契約者に名義変更をしておく
公正証書を結んでおくこと
公正証書とは契約や遺言などについて、法務大臣に任命された公証人が作成する公文署のことをいい、離婚する際の取り決め事項についても多く利用されます。
公正証書を結んでおくメリットは高い証明力と強制力です。
これによって、私的な約束事では曖昧になりがちな養育費や財産分与などについて、しっかりと守り切る義務が生じ、養育費を払う側にとっても受け取る側にとっても安心なのです。
逆に公正証書を結んでおかないとどのようなことが起こるのでしょうか。
平成28年の厚生労働省のデータによると、母子世帯の母親が離婚した夫から現在も養育費を受けている割合は、わずか24.3%にとどまっています。
月々の支払いをもしも途中でやめられてしまえば、親権者と子どもの生活が苦しくなることは言うまでもありません。
参考:離婚後の養育費減額は起こりうる?
離婚した後に、一度取り決めた養育費の減額ということはあるのでしょうか。
先にご紹介した養育費算定表は、親権者・非親権者それぞれの年収と、子どもの人数・年齢を元に設定されているため、これらに該当する事柄に変更があった場合には、養育費の見直しが認められる可能性もあります。
具体的には
- 非親権者がリストラに遭い定収入がなくなった
- 親権者が就職して収入が大きく増えた
- 親権者が再婚をして、再婚相手の収入により生活レベルが上がった
まとめ:学資保険は養育費に含まれない!名義変更も忘れずに
- 学資保険は養育費の代わりにはならない
- 学資保険は財産分与の対象になり、契約の続行・解約どちらの方法もある
- 離婚後も学資保険を継続するのであれば、契約者の名義変更をしておくことが重要
どちらも子どもためのお金には違いのないことから、学資保険と養育費は同一視されがちとなっています。
しかし、学資保険と養育費では必要となる期間と使途目的が異なり、養育費の取り決めの際に学資保険の支払いをもってその代わりにすることは、原則的にできません。
また学資保険を継続するのであれば、契約者を非親権者のままにしておくのはリスクの高いことです。可能な限り、親権者名義に変更しておくことをおすすめします。
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