養育費を払わない父親の割合は?未払い率や払わないとどうなるか解説

子供がいる家庭が離婚をした場合に問題となる、養育費を払わない父親の割合や養育費の取決めをしている割合、払わない場合に罰則があるのかについて詳しく解説します。また、母子家庭が養育費を払わない父親に対し、支払いをしてもらうために行うべき対策等もご紹介します。

離婚後に養育費を払わない父親の未払い率の割合は?


どんなに愛し合って結婚した二人でも、いつの間にかすれ違い離婚に至ることもあります。


離婚したときに問題となる子供の養育費ですが、払う約束をしても実際に支払われなかったときはどうすればいいのか、気になるところです。


実は養育費は子供に対する親の当然の役割なのですが、未払いのままにしている父親の割合はとても高くなっています。


この記事では離婚後に養育費を払わない父親の未払い率について、以下の様に解説しています。

  • きちんと養育費を受けとっている母子家庭の割合はどのくらいか
  • 払わないときの罰則はあるのか
  • 養育費を払わない、または減額が認められる場合とは
  • 離婚公正証書の大切さ
  • 未払いに対処する方法

養育費をもらえるかどうかは、子供によい環境をつくってあげられるかどうかに大きく関わります。きちんとした対処ができるよう、この記事を参考にしてください。

養育費を継続的に受領できている母子家庭の割合は約2割

平成28年度 全国ひとり親世帯等調査の結果によると、養育費を継続的に受け取っている母子家庭の割合は24.3%、全体の約2割にとどまっています。


現在は受け取っていないが、過去に受け取ったことがあると答えた割合が15,3%なので、合わせると約4割が受け取ったことがあり、離婚などから月日が経つうちにだんだんと払われなくなってしまうということが伺えます。


離婚から年数が経たないうちほど継続して受給していると答えた家庭の割合が高く、最初の頃は順調に受け取れていても、時間が経つと相手の事情などで支払いが滞ってしまう実態があるのでしょう。


母子家庭の平均的な年収が約240万円であることを考えると、養育費を受けられず経済的な余裕がない家庭が多いのではないかと予測されます。

養育費を一度も受け取ったことがない母子家庭の割合は約5割

一度でも養育費を受け取ったことがあると答えた家庭が4割あったのに対し、離婚成立後に一度も受け取ったことがないという家庭は56%でした。


2人に1人は貰ったことがないということになります。離婚のときにきちんと取り決めをした割合は42.9%、していない家庭は54.2%でした。


きちんともらいたいけれど、相手と話がまとまらなかったり、そもそも話をしたくない といった事情であきらめてしまう人がたくさんいるということです。


自分達で話し合いが持てないときは、第三者の協力を仰ぐなどができるといいですね。

離婚後に養育費を払わないと罰則はあるのか

お子さんを育てるためにはある程度のお金がかかります。


通常夫婦であれば二人の協力関係の下でお子さんを育てていくことになりますが、離婚してしまうと実質一人ですべての面倒を見ることになり、その負担はかなり大きなものです。


親は子供を扶養する義務がありますから、離婚したとはいえ自分の子供の面倒は見なくてはいけないはずですが、法律上の罰則などはあるのでしょうか。


以下ではそれぞれの場合に分けて詳しく見ていきます。

養育費を払わなくても法的罰則はない

養育費は子供に対する親の義務であり、親は自分と同程度の生活を子供にさせるように努力する必要があります。


民法766条には、親には子供の生活などの面倒を見ること、子供に対する生活保持義務があるということが明記されています。


離婚して親権者ではなくなっても親であることには変わりなく、子供には自分と同水準の生活をさせる努力が必要であり、養育費を払うことで自分の生活水準が下がるとしても仕方のないことなのです。


ですが、民法やその他の法律上、払わない事に対する罰則等の規定はありません。そのため逃げ得になってしまう現状もありました。

裁判などで取り決めを行い養育費の債務名義がある場合

当人たちだけの話し合いで離婚を決める協議離婚で養育費の取り決めをした割合は37,8%ですが、家庭裁判所などが関与する調停離婚審判離婚裁判離婚といった場合では79,6%が取り決めをしています。


また、文書が作成してある割合は73.3%です。


このとき、公正証書や判決書、調停調書などで債務名義の形になっていれば、すぐに強制執行ができるので、給料や財産を差し押さえられることになります。


債務名義とは、債権が回収されないときに強制執行できることを記載した文書です。債務名義のある養育費が払われないときは、申し立てすることで、裁判所が取り立ててくれるのです。


養育費の強制執行に関しては別の記事でより詳しく解説しているので、そちらを参考にしてください。

養育費の債務名義がない場合

離婚のときに合意の文書は作成しても、債務名義までは作っていない事もあるでしょうし、そもそも取り決めをしていない事例もたくさんあります。


当事者間の文書のなかに「必ず払う」などいった文章を盛り込んでも、債務名義がないときは、文書に反して払わなかったからといってすぐに財産が差し押さえられることはありません。


私的文書には強制執行する力はないのです。この場合は家庭裁判所に調停を申し込む等の措置を取れば、強制執行力のついた調書などが作成され、差し押さえが実行できるでしょう。


ただ、調停には時間や費用がかかりますので、できる限り離婚当初の時点で債務名義を作成しておくのが一番です。

養育費を払わない場合も離婚後の子供との面会交流に影響はない

離婚の当事者間で、「養育費を払う代わりに子供に面会させる」、「払わない場合は面会させない」といった取り決めをすることは珍しくありません。


何も面倒をみないのに親とは言えない、面倒を見てくれるなら合わせてあげてもいいといった当事者の心境は、理解することができます。


しかし、実は養育費を払うかどうかは、子供との面会には直接的な影響を及ぼさないのです。


子供は親に会う権利があります。両親が離婚してしまっても、それは親同士の問題であり、子供には親であることに変わりはありません。


払う払わないの問題と、子供が親に会いたい気持ちは切り離して考える必要があるのです。

養育費を払わないでもよくなる、または減額となる事例

基本的には子供が成人するまで親は子供を扶養する必要があり、勝手にやめるということは本来はできません。


しかし、離婚後の人生において変化が訪れ、親や子供の生活や環境が変わったときは、養育費についても変動が起こることがあります。


例えば母が再婚して母子家庭ではなくなったときや、父が再婚して新しい子供ができたときなどです。


収入や環境が変化したからといって当然に払わない、または減額が認められるわけではなく、特に債務名義があるときは相手との話し合いが必要となります。


話し合いがまとまらないときは家庭裁判所調停を申し立てる事になるでしょう。


以下では、払わなくてもよくなる、または減額が認められる場合について、詳しく見ていきます。

離婚後に母親が再婚をして子供が再婚相手と養子縁組をした場合

母親が子供の親権者として育てている場合、父親には離婚後も親としてその子の生活を支えることが求められます。


母親が再婚すると、子供には新しい父親ができます。


もし、この再婚相手と子供が養子縁組をした場合、子供を養育する人物の第一順位は母親と養父になり、二人に子供を支える経済力がないときには実の父親が子供の扶養義務者となります。


再婚相手に十分な収入があれば、実の父の扶養義務は発生しない事になりますので、養育費を支払わなくてもよくなる可能性があるのです。


再婚相手と子供が養子縁組をしない場合は、養育義務者は実母と実父のままですが、母親の収入が再婚相手と合算されて増えるとの見方から減額になる可能性があります。

離婚後に父親が再婚をして再婚相手との間に子供ができた場合

母親ではなく、子供を引き取っていない父親が再婚して子供ができたときはどうでしょうか。


父親は再婚することにより、新たな妻と子供を養う義務が発生します。実の子を養育する義務があることに代わりはありませんが、養育する人数が増えることになるので、負担も増えると考えられ、養育費の減額が認められる可能性があります。


家族が増えたので、一人当たりに使える金額も減るだろうというイメージです。


他にも失業してしまったり、給与が大幅に下がったりといった理由があると、減額が認められることがありますが、どの場合でも弁護士や裁判所を通して話し合いをすることになります。

離婚をするなら養育費の内容は離婚公正証書に残すこと

離婚をするときに養育費について決めているのは780組で割合はおよそ4割、そのうち文書として残しているのは572件で割合は約7割ほどになります。


強制執行のできる公正証書を作成しているのは455件で、割合は取り決め全体の6割弱です。


離婚するにもエネルギーが必要で、相手と早く別れたい、話もしたくないという理由から、きちんとした書類を残さぬまま離婚してしまうことも多いです。


しかし、養育費はお金に関する重要な事項で、子供のためを考えると疎かにするべきではないでしょう。


費用はかかりますが、公正証書を作成し、養育費についての取り決めをはっきりさせておくことはとても重要で、相手が支払いを渋ったときにも直ちに対応できるというメリットがあります。

養育費未払いの場合の対処法とは

養育費の未払いは母子家庭に大きな影響を与えており、貧困層の増加にも拍車をかける要因となります。


養育費は子供に対する扶養義務に起因しており、払わないで済むというものではありませんが、話もしたくない相手に連絡することに躊躇し、諦めてしまう人も少なくありません。


今までは公正証書だけでは相手の財産を調べることなどができず、結局逃げられてしまうことが多かったのですが、2020年4月からは法律が改正され、これまでより強制執行がやりやすくなります。


もし、未払いで困ったときは、以下の方法を試してみてください。ご自分で対応することが難しいときには、第三者に依頼することも必要です。

対処法①:元配偶者に直接連絡する

まずは連絡がとれるのであれば、自分で直接連絡してしまうのが一番です。


相手が単純に忘れていただけだったり、こちらの状況を理解してくれたりすれば、払ってくれるか、払う努力をしてくれるでしょう。


もし、相手に何か事情があるときは二人で相談して解決策を話し合うきっかけにもなります。養育費を時効にさせないという意味でも、直接連絡することはとても有効です。


債務名義があるのなら強制執行について話をしてもいいですし、なくても法的措置を取ることは可能ですので、しかるべき対応をする事を伝えましょう。


考えを改め、きちんと支払いをしてくるかもしれません。

対処法②:弁護士に内容証明郵便を送ってもらう

自分で連絡することが難しいとき、自分で話せる自信がないときは、弁護士に依頼をしましょう。


どの弁護士に頼めばよいのか分からないときは、自治体での無料相談をしていることがありますので、利用してみることをおすすめします。


弁護士に依頼すると、相手に対して支払い義務があること、そしてそれを滞納していること、それでも払わないときにはしかるべき措置を取ることなどなどを記載した内容証明郵便を送ってもらう事ができます。


それまで未払いだった相手も、裁判沙汰になるのならきちんと支払おうと思うことも多く、第三者を介することで、冷静な判断をすることができる可能性があります。

対処法③:家庭裁判所から履行勧告・履行命令を出してもらう

弁護士に内容証明郵便を送ってもらっても何の音沙汰もないときは、家庭裁判所に調停の申し立てをします。


債務名義がないときは強制執行をすぐにすることはできませんが、履行勧告履行命令などを相手に対して出してもらうことができます。


履行勧告や履行命令は、強制執行に比べれば軽い命令ですが、裁判所からの命令が来たとなれば、払おうと考える人もいるでしょう。


差し押さえをすることまでは出来ませんが、裁判所からの通知は少なからず影響を与えるはずですので、債務名義が無くても未払いで困っているのならば利用してみましょう。

対処法④:強制執行を申し立てる

最終的には養育費の未払いは強制執行を申し立てることで解決できます。


債務名義がない場合は、調停で話し合いを行い、まとまらなければ裁判所の裁量で取り決めをしてもらえます。


相手が話し合いに応じなくても、代理人を通じて調停は行われ、そこで決められた金額については強制執行が認められますので、調停が終わっても払わないときには給与や財産を差し押さえすることができるようになります。


養育費は普通の債務とは異なり、もし債務者が破産したようなときでも失権にはなりません。


裁判や調停を行うのは大変ですが、お子さんのためにも諦めてしまうことのないようにしてください。

離婚後に養育費を払わない未払い率の割合はについてまとめ

ここまで離婚後に養育費を払わないことについて、その割合や対処法などの解説をしてきましたが、いかがでしたか。


この記事のポイントは以下の様になります。

  • 養育費を継続的に受け取っている家庭の割合は全体の約2割、全くもらったことのない家庭の割合は約5割となっている
  • 払わないことに対する罰則はないが、債務名義があれば強制執行され、財産や給与を差し押さえられる
  • 離婚後に再婚したときなどは、状況に応じて払わない、または減額される可能性がある
  • 離婚する時は費用はかかるは公正証書を作成しておくことで、その後の未払いにすばやく対処できる
  • 相手が払わないときは、まず自分で連絡する、弁護士に相談する、家庭裁判所で命令してもらう、強制執行の申し立てをするなどの対処をする
養育費を払わない元配偶者の割合は、昔に比べれば減ってきてはいますが、依然として高い割合で未払いとなっています。


泣き寝入りをしないためにも、相手とよく話し合いをすることや、第三者に介入してもらうことがポイントです。


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最後までお読みいただきありがとうございました。

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