介護医療保険料控除で最大19万節税!対象や上限額をわかりやすく解説

平成24年度より、生命保険料控除に「介護医療保険料控除」が新設されました。これら税控除制度を利用すれば最大19万円節税可能なので忘れずに確定申告しましょう。新設された介護医療保険料控除を中心に保険料控除について上限額や対象、計算方法をわかりやすく解説します。

介護医療保険料控除とは?どんな商品が対象なのか


生命保険に加入している方は、年末調整や確定申告で控除を受けることができます。この制度を生命保険料控除制度と言います。


この制度をうまく活用することで、所得税や住民税を減らすことができます。積極的に活用している方も多いでしょう。


実は平成24年(2012年)度から、生命保険料控除制度に介護医療保険料控除という区分が新設されています。生命保険料控除制度を最大限に活用するためには、この新しい区分についての理解が必要不可欠です。


そこで今回は介護医療保険料控除について、以下のポイントを中心に解説していきます。

  • 介護医療保険料控除とは何か、どんな保険が対象なのか
  • 介護医療保険料控除の計算方法、控除上限額
  • 介護医療保険料控除の申請方法

介護医療保険料控除をうまく活用すれば、制度全体で最大19万円もの節税が可能になります。ぜひこの記事の知識を役立てて、あなたも19万円の節税にチャレンジしてみてください。

介護医療保険料控除は生命保険料控除の一種!最大で12万節税可能


生命保険料控除制度は、契約している保険の内容によって「一般生命保険料控除」と「個人年金保険料控除」のいずれかの区分で控除を受ける仕組みでした。

区分対象の保険
一般生命保険料控除終身保険、学資保険、介護保険、医療保険など
個人年金保険料控除条件を満たした個人年金保険


ところが平成24年(2012年)度から、この2つの区分とは別に「介護医療保険料控除」が追加されました。一般生命保険料控除の対象とされていた介護保険医療保険が、別区分になったのです。  

区分対象の保険
一般生命保険料控除終身保険、学資保険など
介護医療保険料控除介護保険、医療保険など
個人年金保険料控除条件を満たした個人年金保険


その結果、制度全体の控除額は所得税で最大12万円、住民税で最大7万円となりました。

介護医療保険料控除はどんな保険商品が対象になるのか

すでに軽く触れていますが、介護医療保険料控除の対象となる保険は、病気の治療や介護に関するものになります

  • 介護保険
  • 医療保険
  • がん保険
  • 就業不能保険
また対象となる保険であっても、契約内容によっては介護医療保険料控除ではなく、一般生命保険料控除の対象になることもあります。加入している(しようとしている)保険が対象になるのかは、保険会社に確認してみるのが確実でしょう。

なお、一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、以下のような保険が対象となります。
(いずれも、要件を満たしている必要があります)
  • 一般生命保険料控除の対象:終身保険、定期保険、学資保険、がん保険(介護医療保険料控除の要件を満たさない場合)、個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約が付帯されていない場合)など
  • 個人年金保険料控除の対象:個人年金保険(個人年金保険料税制適格特約を付帯している場合)

介護医療保険料控除を受けるにあたっての条件・受取人との関係性

介護医療保険料控除の対象となる保険契約を紹介しましたが、対象であれば何でも控除が受けられるわけではありません


少々ややこしいですが、介護医療保険控除の対象となる保険契約については、保険料を支払う人と保険金を受け取る人の関係が定められています。


具体的には、以下のいずれかである必要があります。

  • 受取人と保険料を支払う人が同じであること
  • 受取人が保険料を支払う人の配偶者であること
  • 受取人が保険料を支払う人の親族(6親等内の血族と3親等内の姻族)であること
また以下のような保険も対象外となりますので、注意してください。
  • 5年未満の契約
  • 貯蓄型で5年未満の契約
  • 怪我の保険(傷害保険)

介護医療保険料控除の上限額・計算方法|新旧制度で違うことに注意

介護医療保険料控除の対象となる保険について理解したところで、続いて具体的な控除額の計算方法について見ていきましょう。


すでに軽く説明した通り、介護医療保険料控除は平成24(2012)年度から新設された新しい区分です。実はこのタイミングで、控除額の計算方法も変更されています。


ここからは変更前を「旧制度」、変更後を「新制度」として、計算方法と上限額について説明していきます。

旧制度の上限額・計算方法|介護医療保険料控除は含まれない

旧制度は、介護医療保険料控除が新設される前の制度です。したがって介護医療保険料控除の対象となる保険は、一般生命保険料控除の対象として扱われます


以下は、旧制度の区分です。

区分名対象の保険控除限度額
(所得税/住民税)
一般生命保険料控除終身保険、介護保険医療保険など5万円/3.5万円
個人年金保険料控除条件を満たした個人年金保険5万円/3.5万円

新制度が適用される前(2011年12月31日以前)から契約が続いている保険は、旧制度の計算方法を使って区分ごとに控除額を求めます


以下は、所得税の計算方法です。

払込保険料所得税の控除額計算式
2万5,000円以下払込保険料の全額
2万5,000~5万円以下払込保険料 × 1/2 + 1万2,500円
5万~10万円以下払込保険料 × 1/4 + 2万5,000円
10万円超5万円(一律)

各区分の控除額上限は5万円で、旧制度全体としては10万円が上限となります。


次に、住民税控除の計算方法です。所得税と同様、区分ごとに計算します。

払込保険料住民税の控除額計算式
1万5,000円以下払込保険料の全額
1万5,000~4万円以下払込保険料 × 1/2 + 7,500円
4万~7万円以下払込保険料 × 1/4 + 1万7,500円
7万円超3万5,000円(一律)

各区分の控除額上限は3万5,000円で、旧制度全体としては7万円が上限となります。

新制度の上限額・計算方法|介護医療保険料控除が含まれる

新制度は、介護医療保険料控除が新設された後の制度です。

区分名対象の保険控除限度額
(所得税/住民税)
一般生命保険料控除終身保険など4万円/2.8万円
介護医療保険料控除介護保険医療保険など4万円/2.8万円
個人年金保険料控除条件を満たした個人年金保険4万円/2.8万円

新制度が適用される2012年1月1日以降に契約したか、それ以降に契約更新をした保険は、こちらの新制度の計算方法で区分ごとに控除額を求めます。


以下は、所得税の計算方法です。

払込保険料所得税の控除額計算式
2万円以下払込保険料の全額
2万~4万円以下払込保険料 × 1/2 + 1万円
4万~8万円以下払込保険料 × 1/4 + 1万円
8万円超4万円(一律)

各区分の控除額上限は旧制度よりも若干少ない4万円ですが、新制度全体としては若干増えて、12万円が上限となっています。


次に住民税の計算方法です。

払込保険料住民税の控除額計算式
1万2,000円以下払込保険料の全額
1万2,000~3万2,000円以下払込保険料 × 1/2 + 6,000円
3万2,000~5万6,000円以下払込保険料 × 1/4 + 1万4,000円
5万6,000円超2万8,000円(一律)

各区分の控除額上限は2万8,000円ですが、新制度全体としては旧制度と同じで、7万円が上限となります。

新旧制度両方が当てはまる場合の控除について

複数の保険に加入している場合、昔から加入している保険と、最近加入したばかりの保険が入り混じってしまうケースがあります。具体的には、以下のようなケースです。


<Aさんが加入している保険>

  • ①2010年から未更新の一般生命保険契約(旧制度対象、所得税控除額5万円)
  • ②2015年に加入した一般生命保険契約(新制度対象、所得税控除額4万円)
  • ③2010年から未更新の個人年金保険契約(旧制度対象、所得税控除額3万5,000円)
  • ④最近加入した介護医療保険契約(新制度対象、所得税控除額4万円)
このような場合、区分ごとの控除額上限は、旧制度契約の控除額が4万円を超えるかどうかで変化します。

旧制度契約の控除額がその区分の控除額上限
4万円以上5万円
4万円未満4万円
上で例として挙げているAさんのケースに当てはめて考えると、各区分の控除額は以下のようになります。
区分旧制度契約の控除額控除額上限
一般生命保険料控除①5万円
(4万円以上)
5万円
個人年金保険料控除③3万5,000円
(4万円未満)
4万円
介護医療保険料控除なし4万円
なお全体の控除額上限は、新制度の12万円が適用されます

上記の場合だと、各区分の合計が12万5,000円(5万円+3万5,000円+4万円)になるので、最終的な控除額は上限の12万円となります。

介護医療保険料控除など保険料控除の申請方法

介護医療保険料控除などの保険料控除を利用するには、年末調整確定申告で申請する必要があります。


ここからは年末調整と確定申告、それぞれでの保険料控除の申請方法を簡単に紹介します。

会社員の場合|基本は勤務先に書類提出すれば年末調整で還付される

会社員など、会社から給料をもらっている方の場合、年末調整で申請を行います。


具体的には、10月から11月までを目処に保険会社から送られてくる保険料控除証明書」と共に、必要書類を会社に提出するだけです。


早ければ12月中に、保険料控除をはじめとする各種控除を加味した上での還付金が支払われます。


なお医療費控除や住宅ローン控除を利用するなどの理由で確定申告をする場合は、そちらで申請しても構いません。また年末調整で保険料控除の申告を忘れてしまった場合も、確定申告をすることで控除を受けることができます。

自営業の場合|自分で確定申告を行う必要がある

自営業の方の場合、確定申告の一環として申請することになります。


確定申告書の中に生命保険料控除の記入欄がありますので、そこに必要事項を記入すればOKです。提出の際は、保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」を添付する必要があります。


なおマイナンバーカードを利用した電子申請(e-Tax)の場合には、保険料控除証明書の添付を省略することができます。その代わり、原則5年間は保険料控除証明書を保管する必要がありますので、うっかり捨ててしまわないように注意してください。

介護医療保険料控除を受けるにあたってのQ&A

ここからは、介護医療保険料控除に関するQ&Aを紹介します。


以下の3つの質問をピックアップしていますので、申請時の参考にしてみてください。

  1. 介護医療保険料控除の書き方を詳しく知りたい
  2. 保険料控除申告書の記入欄に書ききれない場合はどうしたらいい?
  3. 介護医療保険料控除を利用した貯蓄性の高い保険商品はある?

介護医療保険料控除の書き方を詳しく知りたい

年末調整で介護医療保険料控除を申請する際は、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除書(以下、保険料控除申告書)」の該当欄に、必要事項を正確に記入する必要があります。


記入すべき内容は、保険会社から送られてくる保険料控除証明書に記載されています。どこに何を記入するかは、以下を参考にしてください。

記入欄記入すべき内容
保険会社等の名称加入している保険の保険会社名
保険等の種類保険料控除証明書に記載されている保険の種類(「個人医療」など)
保険期間又は年金支払期限保険料控除証明書に記載されている保険期間(「10年」「終身」など)
保険等の契約者の氏名保険料控除証明書に記載されている契約者の氏名
保険金等の受取人
(氏名)
保険料控除証明書に記載されている受取人の氏名
保険金等の受取人
(あなたとの続柄)
あなたから見た受取人の続柄
あなたが本年度中に支払った保険料等の金額保険料控除証明書に記載されている申告額(介護医療申告額)
(a)の金額の合計額記入済みの「支払った保険料等の金額」を合計した金額
Cの金額を計算式Ⅰ(新保険料等用)に当てはめて計算した金額保険料控除申告書の下部に記載されている「計算式Ⅰ(新保険料等用)」にしたがって計算した金額

保険料控除申告書の記入欄に書ききれない場合はどうしたらいい?

加入している保険の数が多く記入欄に書ききれない場合には、勤務先の年末調整担当者に対応方法を確認してください。個人個人でバラバラの対応をしてしまうと、担当者の方が困ってしまう可能性があるためです。


また、記入分だけで区分ごとの保険料上限に達してしまう場合は、そのままで提出しても問題ありません。


なお、区分ごとの保険料上限は以下の通りです。

  • 旧制度:10万円
  • 新制度:8万円

介護医療保険料控除を利用した貯蓄性の高い保険商品はある?

残念ながら現状(2021年1月現在)では、介護医療保険料控除の対象となる貯蓄型の保険は存在していません


一般的な終身保険や学資保険などは一般生命保険料控除の対象となるため、貯蓄を兼ねたい場合にはこちらを検討してみると良いでしょう。


貯蓄という意味では、個人年金保険も当てはまります。しかしすでに説明している通り、控除を受けるためには個人年金保険料税制適格特約を付帯している必要がありますので、注意してください。

まとめ:新設された介護医療保険料控除を有効に利用しよう

最後に、介護医療保険料控除のポイントをまとめます。

  • 介護医療保険料控除は、生命保険料控除制度の1区分
  • 支払った保険料に応じて控除額が求められる
  • 年末調整か確定申告で申請できる
繰り返しになりますが、介護医療保険料控除は平成24年度に新設された、生命保険料控除制度の新たな区分です。一般生命保険料控除から独立したことで、制度全体として受けられる所得税の控除額上限が増えています。

生命保険料控除制度は年末調整の一環として申請できる、とても手軽な節税方法です。対象となる保険に加入している方や加入を検討している方は、ぜひ介護医療保険料控除を有効に活用してください。

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