更新日:2019/02/03
名義保険に気を付けよう!生命保険金を受け取る際の注意事項
保険料の支払いと生命保険金を受け取る人が違う場合には注意が必要です。この場合には税金がかかり、税務署に名義保険と指摘されるかもしれません。しかし、どの税金の種類がかかるのかご存知ですか?今回は、生命保険金受取時の名義保険の注意点と名義変更について解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
なぜ名義保険に注意する必要があるの?
生命保険を契約する一番の目的は、残された家族にお金の面で迷惑や心配を残したくないからというものではないかと思います。
しかし、そんな思いで加入している生命保険の保険金に税金がかかるということを知らない方は意外と多いかもしれません。
そんな中、「名義保険に税金がかかるって聞いたけど、どういうこと?」「契約の仕方でかかる税金の種類が違ってみたいだけど、仕組みがよくわからない」といった疑問をお持ちになる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで、この記事では
- そもそも名義保険ってどういうもの?
- 名義保険はどんな理由で税金がかかるの?
- 保険のかけ方で税金の種類が変わってくるってどういうこと?
- 名義保険はどうやってばれるの?
2018年1月に名義保険のチェックが厳しくなりました
「2018年1月から、名義保険のチェックが厳しくなりました」という情報を何かの機会に耳にされたことがあるかもしれません。
しかし、そもそも名義保険という言葉自体が一般的ではなく、意味がよくわからないという方も多いと思います。
そこで、まずはこの「名義保険」について簡単に解説してみたいと思います。
生命保険の場合、契約の仕方としては、契約者と被保険者が同じ人で、受取人がその遺族という形が一般的で、保険料を負担するのも契約者ということになります。
しかし、名義保険というのは、契約の仕方は同様であっても、保険料を負担しているのが、契約者以外(たとえば親など)である場合の保険のことを言います。
この場合、契約者・被保険者が子供、保険金受取人が子の法定相続人であるにもかかわらず、保険料負担者が親の場合、この保険料は親から子への生前贈与であり、贈与税の課税対象となります。
また、保険料を負担していたのが契約者でなかった場合、保険金や解約返戻金が受取人に支払われた場合も、本来であれば親から受取人あるいは契約者である子への贈与となります。
なぜ、このような払い方をするかというと、この契約の仕方をすることにより、相続対策ができるからなのです。
保険というのは、誰が保険料を負担しているかがわかりにくい金融商品であり、その点を活用して、相続財産を減らそうとする人もいるというわけです。
このような事態を重く見た税務当局は、相続税の申告において、この名義保険にも目を光らせてきました。
そして、2018年1月1日には「生命保険契約等の契約者変更に係る調書の創設」及び「生命保険金等の支払調書」の改正が行われたのです。
このことによって、どのような点が変わったのかについては、次の項から詳しく説明していきます。
どのような点が変わったの?
2018年1月1日から、名義保険が関係する制度の改正が行われました。
その一つとして、一定の条件に当てはまった場合、税務署に対して保険会社が提出しなくてはならなかった「支払調書」の改定があげられます。
もともと、「1回の支払金額が100万円を超える保険金や解約返戻金を支払うケース」と「同一の人に対して年間20万円以上の年金や給付金などを支払うケース」では、保険会社は税務署に支払調書というものを提出することが義務付けられていました。
しかし、これまではこの支払調書の中には契約者変更や掛け金の負担者等に関する情報がなかったのです。
今回の改定で、契約者の死亡による名義変更時は、保険会社に法定調書の作成と提出が義務付けられました。
また、保険会社が提出する支払調書において、生命保険契約の契約者変更の履歴や、実際に払い込みをした保険料の詳細などを記載することも義務付けられることになりました。
これによって、税務署は名義保険についても、その詳細が把握できることになったというわけです。
なぜ改正されるの?
それでは、なぜこのような改定が行われるようになったのでしょうか?
そこには、名義保険が相続における相続税の課税逃れの方法として使われていたことが背景にあるとされています。
先にも触れたように、生命保険というのは誰がその保険料を負担したかがわかりにくい金融商品ということが言えます。
なぜなら、保険契約については、契約者・被保険者・保険金受取人は明記されていますが、保険料負担者までは明記されていないのです。
また、契約者・保険料負担者が親、被保険者が子であった場合に、親の死亡があったとして、被保険者である子に契約者変更をしたとしても、お金の出入りがないため、支払調書は作成されずに済んでいたのです。
このような、相続における課税逃れの対策の一つとして、今回の改正が行われるに至ったというわけです。
名義保険と判断されないようにする対策
ここからは、名義保険と判断されないようにするための対策について解説してみたいと思います。
まず、取り掛かることは、名義保険とみなされる保険契約があるのかないのかをチェックすることです。
今、加入している保険契約を洗い出し、保険料負担者が契約者と違う契約や、契約者と被保険者が違う契約を把握することが大切となってきます。
その中で、保険料負担者が契約者と違っている場合は、保険料が贈与されているということになります。
もし、年間の掛け金が贈与税の年間非課税枠である110万円を超えている場合には、「贈与契約書」を取り交わし、証拠として残しておくことが必要となります。
また、この場合、保険料は贈与を受けた側である契約者の口座から支払われるようにするなどの工夫も重要です。
次に、契約者と被保険者が違う契約者の場合、どこかの時点で契約者変更をし、契約者=被保険者としておくこともポイントとなります。
契約者・被保険者・保険金受取人の違いで変わる税金の種類
名義保険を理解するうえで、保険契約の仕方と税金の種類の関係を知っておくことは基本的ではありますが、非常に重要です。
生命保険については、契約者・被保険者・受取人の関係によって死亡保険金に係る税金の種類が違ってくるのです。
保険契約の仕方と係る税金の種類について、表にまとめてみると次のようになります(ちなみにここでは、わかりやすくするために、夫・妻・子の関係で示します)。
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻あるいは子 | 相続税 |
夫 | 妻あるいは子 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
この表でも分かるように、せっかく遺族のためを思って加入した保険であっても、その契約の仕方によっては相続税の対象とならない場合があります。
そうなった場合、相続税の計算上認められている、「死亡保険金の非課税枠(法定相続人×法定相続人数)」の対象にならないといった不具合も出てきます。
ちなみに、相続税がかかるのは、被保険者=契約者の場合であり、所得税がかかるのは保険金受取人=契約者の場合となります。
また、契約者と被保険者、受取人がすべて違う場合、保険金が支払われた際に、その保険金が被保険者の体を使った保険金の贈与とみなされ、贈与税の対象となりますので、注意が必要です。
生命保険の名義変更の方法
生命保険の名義変更については、それほど難しい手続きが必要なわけではありません。
変更を希望する契約者が保険会社に連絡し、担当者に合うか、保険会社に出向く・書類を郵送でやり取りする等によって、書類上で変更は可能になります。
ただし、契約者変更の場合は本人確認が必要となりますので、新契約者の本人確認書類(運転免許証やパスポート・健康保険証の写し等)の提出が必要となる場合があります。
名義変更で意外と多いのが、離婚による名義変更かもしれません。
夫が契約者で被保険者が妻といった場合で、離婚後もその保険契約を続けていきたいと妻が考えた場合には、契約者を妻に変更する必要があります。
この場合も手続きは通常と同様ですが、旧契約者の申し出が必要となりますので、きちんと話し合っておくことが重要です。
また、同時に保険料振替口座や死亡保険金受取人等の変更を行っておく必要も出てきます。
ちなみに、この場合、貯蓄型の生命保険で解約返戻金がある程度貯まっている場合は、「財産分与」の対象となるケースも考えられ、注意が必要です。
もし、財産分与の対象となった場合、解約返戻金の金額における分与割合分(例えば半分ずつなど)を相手に渡さなくてはならなくなることもあます。
その場合、その金額に対応できる現金が準備できればよいのですが、準備できない場合、保険を減額や解約するなどして、その分の現金を作る必要が生じる場合も出てくると考えられます。
生命保険の名義貸しの注意点
生命保険については、自分に万が一があったときに、遺族がお金のことで困らないようにするために加入する場合がほとんどです。
しかし、保険の営業マン(募集人)が、自分の契約ノルマのために、保険料を負担し、知り合い等に保険に入ってもらうという「名義貸し」契約というものも存在します。
この場合、保険料を負担するわけではないので、簡単に引き受けてしまうことも考えられますが、この行為自体がコンプライアンス違反行為であり、不祥事案件となります。
また、このような経路で加入した保険の場合、いつまでも保険料を払ってもらえることは考えにくく、結局は失効してしまうことになります。
何度もこのような失効などが繰り返されると、保険会社のデータとして残ってしまい、後々迷惑をこうむることにもつながりかねませんので、注意が必要です。
名義保険となぜバレる?税務署のチェックの方法
生命保険においては、保険契約上の契約者・被保険者・保険金受取人については明確になりますが、その支払保険料をだれが負担しているかについては、なかなか把握できないというのが実情です。
そのような中でも、税務署は名義保険について目を光らせており、時にその事実を指摘されることがあります。
税務署はどのようにして名義保険を見破っているのでしょうか?
ここからは、税務署が名義保険であることを見破るために行っているチェックの方法について触れてみたいと思います。
預金の流れでチェック
名義保険が指摘されるのは、主に相続発生時で、相続税の申告納税を行う際である場合がほとんどです。
その際、被相続人(亡くなった人)の預金口座を調査し、資金の流れがチェックされることがあります。
その際、被相続人の口座から、本人が契約者ではない生命保険の保険料が引き落とされている場合は明らかに名義保険ということになります。
また、被保険者の口座から保険契約者の口座に定期的に資金が移動し、それが保険料のもとになっているが、贈与契約がなされていない場合も名義保険として取り扱われることになります。
生命保険契約額が大きい場合
名義保険が指摘されるもう一つのケースとして、「生命保険契約額が大きい場合」というものが考えられます。
たとえば、一時払い(一括で保険料を支払う保険)終身保険などの場合、契約者自身にその一括保険料を負担するだけの資産があるとは考えられないケースでは、名義保険を疑われてしまいます。
また、月払いや年払いの契約であっても同様で、契約者の収入から考えて、明らかに過大な保険料である場合、名義保険の可能性を疑われ、チェックの対象となることが考えられます。
申告漏れは要注意!
実際に、保険料負担者が契約者本人でなかったとしても、それ自体がとがめられるものではありません。
問題は、そのことを認識していながら、税金の申告をしない、いわゆる「申告漏れ」があった場合です。
その場合、修正申告を求められたり、追徴課税が発生することも考えられます。
ちなみに、注意が必要なのが、生命保険の保険料負担者が契約者以外で、被保険者が契約者以外の場合です。
さらに、その保険の存在がきちんと認識されていないケースは要注意です。
もし保険料負担者である被相続人が亡くなった場合でも、金銭的な動きはなく、相続財産として認識されない場合があり、申告漏れにつながる恐れがあるからです。
それを避けるためにも、家庭内の保険契約を整理し、保険料贈与を受けていることを自覚している場合は、贈与契約書を交わす等の工夫が必要となります。
また、その保険料が贈与税の年間非課税枠を超えている場合は、毎年申告し贈与税を払うようにするなどの手続きが重要となります。
まとめ:名義保険の注意点
ここまで、「名義保険とその注意点」をテーマに解説してきましたが、いかがでしたか?
この記事のポイントは
- 名義保険とは、契約者と保険料負担者が違うのに、その保険料贈与の申告をしていない保険のことである。
- 名義保険に税金がかかるのは、相続が発生した時点である。
- 生命保険は、契約者・被保険者・死亡保険金受取人の関係によって、かかる税金の種類が違ってくる。
- 名義保険については、税務当局も目を光らせており、預金の流れや過大な契約額などによってばれることが多い。