更新日:2020/07/06
傷病手当金と失業保険は両方同時に受け取れる?どちらが得かも解説
病気やケガで働けない方を対象とした傷病手当金と失業者を対象とした失業保険の手当金は、両方同時に受け取ることができるのか(併給できるか)、どちらが得なのか解説します。また、傷病手当金が終わった後失業保険をムダなく受け取る方法や、それぞれの申請方法も紹介します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 傷病手当金と失業保険を両方同時に受け取れる?どちらがお得?
- 傷病手当金と失業保険は同時に受け取ることができない
- 傷病手当金の支給資格
- 失業保険の支給資格
- 傷病手当金と失業保険はどちらが得?
- 傷病手当金の支給金額
- 失業保険の支給金額
- 傷病手当金と失業保険を時間差でムダなく受け取る方法!
- 失業保険の延長手続きが必要
- 失業保険受給期間の延長手続き方法
- 傷病手当金から失業保険へ切り替えた際の待機期間
- 傷病手当金と失業給付の支給期間・申請手続きを解説
- 傷病手当金の支給期間・申請の手続き。書類はダウンロード可能
- 失業給付の支給期間・申請の手続き。ハローワークで書類をもらう
- ケガや病気で退職後、傷病手当金と失業手当はもらえる?
- ケガや病気で退職後に傷病手当金はもらえるか
- ケガや病気で退職後、失業保険から失業手当はもらえるか
- 参考:パートの方の場合の傷病手当金と失業保険
- 参考:傷病手当金や失業保険と障害年金は併給可能
- まとめ:傷病手当金と失業保険は同時に受け取れることは不可能
目次
傷病手当金と失業保険を両方同時に受け取れる?どちらがお得?
ケガや病気で療養中または退職を検討している場合、退職後の生活を不安に思っている方が多いのではないでしょうか。
傷病手当や失業保険について「どちらをもらえばいいのか?」「同時受給は可能なのか?」など多くの疑問を抱きもやもやしているかもしれません。
このような悩みは、退職前にしっかり解消しておきたいですよね。
この記事では、
- 傷病手当金と失業保険は同時受給可能なのか
- 傷病手当金と失業保険はどちらがお得なのか
- 傷病手当金と失業保険をムダなく受け取る方法
- 傷病手当金と失業保険の申請方法
- ケガ・病気で退職後に傷病手当・失業保険はもらえるのか
- パート勤務だった場合の傷病手当や失業保険について
傷病手当金と失業保険は同時に受け取ることができない
結論からいうと、傷病手当金と失業保険を同時に受給することは不可能です。
理由はそれぞれの制度の目的を知ればすぐに分かります。
両方の制度の目的は以下の通りです。
- 傷病手当金:ケガ・病気で働けない状態にある方の生活を補償するため
- 失業保険:すぐに働ける状況なのに就職が決まらない方が生活に困ることなく就活できるようにするため
病気やケガで働くことができないということは「すぐに働ける状態」とはいえず、失業保険の受け取りができないことが分かります。
また、仮に働ける状態にあるならば、傷病手当金の受給ができません。
そのため、傷病手当と失業保険を同時受給することは不可能ということになります。
しかし、同時受給が不可能というだけで個別にもらうことは可能です。
ただし、傷病手当金・失業保険のどちらにも、ある一定の条件があります。この条件をみたしていないとどちらも受給できません。
ここからは、傷病手当と失業保険の支給条件を解説していきます。
自身がどちらに該当するのか分からない方はぜひ参考にしてみてください。
傷病手当金の支給資格
傷病手当金とは、仕事以外で病気やケガをし労働不能となった場合に、健康保険から手当金が支給される制度です。
受給するには、次の3つの項目を全て満たす必要があります。
- 仕事以外での病気やケガで労働不能であること
- 仕事を4日以上休む
- 休職中、給料や他の給付金をもらっていない
まず仕事以外での病気などで労働不能であることが重要です。労働不能であるというのは、自己申告では認めてもらえません。
なぜなら、医師の診断書や仕事内容、本人の意見を総合的にみたうえで判断するからです。
病気やケガには、うつ病や精神疾患だけでなく風邪(インフルエンザ等)も含まれます。
ただし業務中に怪我をした場合は労災保険の対象となるため、傷病手当の対象にはなりません。
また、美容整形なども対象外となります。
仕事を4日以上休む
4日以上といっても休み方によっては、給付対象外となる可能性があります。
この場合の4日は会社を3日間連続して休み、かつそれ以降も仕事を休んでいる状態を指しているからです。
連続した3日間は土日祝日も含めた3日間を指し、これを「待期期間」といいます。
休職中、給料や他の給付金をもらっていない
傷病手当金は先ほど説明した通り、業務外の病気やケガで労働不能な方の生活を保障する制度です。
そのため、給料をもらっている間は受給が不可能となります。
また、給料だけでなく出産手当などをもらっている方も対象外です。
失業保険の支給資格
失業状態である
働く意思と能力があり求職活動を行っている
- 自己都合:退職前2年のうち1年以上
- 会社都合:退職前1年のうち半年以上
傷病手当金と失業保険はどちらが得?
傷病手当金と失業保険は、どちらをもらった方が得なのでしょうか。
結論をいってしまうと、傷病手当金と失業手当のどちらが得なのかは、人によって異なります。
なぜなら、退職理由や退職時の年齢などによっても、もらえる金額が大きく変動するからです。
しかし、傷病手当金と失業保険の給付がどの程度になるのかは、自身で計算をすればある程度予測を立てることが可能です。
そこで、ここからはそれぞれの支給金額の計算方法を解説していきます。
傷病手当金の支給金額
まずは、傷病手当金の支給額を算出方法を解説します。
支給額を知るためには、まず1日あたりの金額を算出することが大切です。
以下、1日あたりの支給額の計算方法となります。
(傷病手当金の支給開始日前1年間の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3
30日で割った時の1の位を四捨五入し、2/3をかけた際に出た小数点は小数点第1位で四捨五入します。
この方法で出た値が傷病手当としてあなたが1日あたりに受給できる額です。
失業保険の支給金額
失業保険で1日あたりに支給される金額のことを「基本手当日額」と言います。
基本手当日額を算出するには、まず賃金日額を知る必要があります。
賃金日額とは、退職前6か月間分の給与の平均額のことです。以下の方法で算出できます。
退職前の6か月間の給与総額÷180(30日間×6か月分)=賃金日額
給与総額には残業代や各種手当を含みますが、ボーナスは対象外です。
上記で算出した賃金日額に約50%~80%を掛けると、基本手当日額が分かります。
賃金日額に掛ける割合は退職時の年齢で異なるため、厚生労働省を参考に算出してみるとよいでしょう。
また、手当が支給される日数も個々の退職理由や年齢により大きく変動します。
給付日数が分からない方は、厚生労働省を参照してみてください。
傷病手当金と失業保険を時間差でムダなく受け取る方法!
先ほど傷病手当金と失業保険は同時受給できないが、個別にもらうことはできるとお伝えしました。
しかし、失業手当は基本的に離職後1年の間にもらいきらなければならなくなっているため「働ける状態になったら就活したい」と思っている方は、失業手当をもらえない可能性が高いです。
就活の際に保障を受けられないと、経済的な不安で落ち着いて就活に取り組めず、失敗してしまいそうですよね。
そんな方のために、失業保険には受給期間の延長制度があります。これは、退職後1年をすぎても手当を受けられるという制度です。
受け取りまでの期限は設けられていますが、2年~最大4年間延長が可能です。
ここでは、失業保険を延長ができる方の条件や手続きの方法まで詳しく解説します。
自身が該当するのかどうかチェックしてみてください。
失業保険の延長手続きが必要
失業保険の延長には手続きが必要です。手続きは基本的に自分が住んでいる地域のハローワークの窓口で行います。
しかし、窓口まで行かなくても郵送や代理人による申請が可能です。
ただし、この延長は誰でもできるわけではありません。
延長の申請は基本的に以下の条件に当てはまり、かつすぐに働けない方のみ可能となっています。
- 病気やケガで療養中の方
- 妊娠や出産、育児(3歳未満)が理由の方
- 親族の看護や介護が理由の方
- 定年退職後の休養を希望する方
しかし、延長できる期間には制限が設けられています。
- 1~3が理由の場合:本来の期間1年+3年
- 4の場合:本来の期間1年+1年
失業保険受給期間の延長手続き方法
受給期間の延長手続きをする際は、まず必要な書類をそろえる必要があります。
下記が延長手続きに必要な書類です。
- 受給期間延長申請書
- 医師診断書や母子手帳など延長理由を証明する書類(定年退職の場合は不要)
- 雇用保険受給資格者証
- 離職票-2(離職票-1は不要)
- 印鑑
傷病手当金から失業保険へ切り替えた際の待機期間
失業保険は申請すればすぐにもらえるわけではありません。
申請後、待期期間という受給できない期間があります。
この期間は失業状態かどうかを確認するためのもので、この間にアルバイトなどをしてしまうと、手当がもらえなくなってしまいます。
待期期間は通常、退職理由により7日間か3か月に分かれるのですが、傷病手当から切り替えた場合は理由関係なく7日間と決められています。
そのため傷病手当金から切り替えた際は、申請後1週間以降に受給可能です。
傷病手当金と失業給付の支給期間・申請手続きを解説
ここまで、傷病手当などの支給条件や支給額などについて詳しくみてきた中で「傷病手当や失業給付をもらいたいけど、申請の仕方が分からない」「支給期間はどのくらいなのだろう」と疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。
ここでは、両者の支給期間や申請方法を分かりやすく解説します。
傷病手当金の支給期間・申請の手続き。書類はダウンロード可能
傷病手当金の支給期間は最大1年6か月までとなっています。
これは給付される日数が1年6か月というわけではありません。
支給開始から1年6か月までが支給対象期間という意味です。
傷病手当の受給中に仕事へ復帰した時期があっても、その分の支給日数が延びることはないため、注意してください。
申請には、傷病手当支給申請書が必要です。この書類はハローワークの窓口でもらえますが、ネットでの印刷も可能です。
申請方法は以下の通りです。
- ハローワークの窓口に直接行く
- 申請書をハローワークに郵送する
- ハローワークのサイト上で提出する
失業給付の支給期間・申請の手続き。ハローワークで書類をもらう
失業給付の支給期間は、基本的に退職の翌日から1年間です。
ただし、先ほどもお伝えした通り、失業保険は支給期間の延長が可能です。退職後、すぐに働ける状態にない方は延長手続きを行っておくとよいでしょう。
申請には、以下のものが必要です。
- 離職票1、2
- 雇用保険被保険者証
- 身分証明書
- マイナンバー確認書類
- 写真
- 印鑑
- 通帳(本人名義のもの)
ケガや病気で退職後、傷病手当金と失業手当はもらえる?
ケガや病気で退職後、傷病手当金や失業手当はもらえるのか不安に思っている方も多いことでしょう。
結論からいうと、支給条件を満たせば両方受給可能です。しかし、両者の支給条件は異なります。
ここからは退職後の傷病手当と失業手当の支給条件を順に詳しく解説していきます。注意点も併せて紹介するので参考にしてください。
ケガや病気で退職後に傷病手当金はもらえるか
ケガや病気で退職後も、傷病手当金はもらえますが、以下の条件を全てクリアしていることが重要です。
- 病気やケガの療養中で労働不能
- 退職日前日までの健康保険の被保険者期間が1年以上
- 退職当日に傷病手当金をもらっている又はもらえる状態にある方
ケガや病気で退職後、失業保険から失業手当はもらえるか
ケガや病気で退職後でも、本人が働ける状態であれば失業手当は受け取れます。
しかし療養が必要ですぐに働けない場合には手当を受け取れません。
療養により働ける状態になった際には、その段階で申請をすれば手当を受け取れます。
退職後しばらく療養が必要な方は、あとで受け取れるように支給期間の延長をするとよいでしょう。
参考:パートの方の場合の傷病手当金と失業保険
正社員ではなくパートとして働いている方の中には、傷病手当や失業保険をもらえるのか不安に思っている方も多いと思います。
手当が支給されるか分からない段階では、パートを辞めたくても中々辞められないですよね。
ここでは、パートの方の傷病手当金や失業保険について解説していきます。パートで働いている方はぜひ参考にしてみてください。
結論からいうと、パートで働いている方も、条件を満たせば傷病手当や失業保険を受給可能です。ただし、どちらを受給するのかによって条件は変わります。
ここからは、パートの方が傷病手当と失業保険を受けるために必要な条件を紹介していきます。
【傷病手当金の場合】
- 仕事以外のケガ・病気で働けない状態である
- 4日以上休んでいる
- 休職中に給与や給付を受け取っていない
- 1か月の労働日数が正社員の3/4以上
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 月の賃金が8.8万円以上
- 雇用期間が1年以上
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 31日以上の雇用が見込まれるとき
- 退職前2年のうち被保険者期間が1年以上
- 失業状態で働く意思がある
参考:傷病手当金や失業保険と障害年金は併給可能
障害年金を受給中でも、傷病手当金や失業保険は受け取れます。
しかし、失業保険と併給するためにはいくつかの条件を満たす必要があったり、傷病手当金との併給では金額の調整が行われたりします。
【傷病手当金との併給】
傷病手当金との併給では、以下のような金額の調整が行われます。
- 傷病手当金の方が多い→障害年金との差額を支給
- 障害年金より少ない→傷病手当金の支給停止
上記を見て分かるように、傷病手当金は満額受け取れません。
【失業保険との併給】
失業保険との併給では減額も支給停止もされません。
しかし、以下の条件を満たす必要があります。
- 障害年金の受給要件を満たしている
- 働く意思と能力がある
まとめ:傷病手当金と失業保険は同時に受け取れることは不可能
ここまで、傷病手当金と失業保険の同時受給について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
この記事のポイントは、
- 傷病手当金と失業保険は同時に受給できない
- 傷病手当金と失業保険のどちらが得とは一概にいえない
- 失業保険の延長をすれば、時間差で両方受給できる
- 切り替え時の待期期間は7日間
- ケガ・病気で退職した場合、条件を満たせば両方とも受給資格を得られる
- パートの場合も条件を満たせば傷病手当や失業保険を受給できる
- 障害年金との併給は両方とも可能