傷病手当金が不支給となる事例を紹介。不服申し立てについても解説

病気やケガで長期間仕事ができない場合に申請する健康保険の傷病手当金制度。この記事では傷病手当金が不支給となった事例の原因や理由を解説します。また、傷病手当金不支給となった場合に不服を申し立てる方法や不支給に関するQ&Aもあわせて紹介します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

傷病手当金が不支給になる原因・理由とは?

傷病手当金がもらえない原因や理由が何なのか、気になるという人は多いと思います。傷病手当金が不支給となったときに、どうやって不服を申し立てれば良いのか方法がわからない人も多いのではないでしょうか。


傷病手当金の不支給の理由には、医師の指示に従わなかったり、同じ病気で1年6か月が経過していたりなどさまざまなものがあります。


そこで、この記事では、

  • 傷病手当金が不支給になる原因・理由
  • 傷病手当金が不支給となった事例
  • 傷病手当金不支給に対する審査請求(不服申し立て)方法
  • その他、不支給にまつわるQ&A
について、解説いたします。

この記事を読んでいただければ、傷病手当金が不支給となったときに、どのような方法を取れば良いのかわかると思います。ぜひ、最後までご覧ください。

傷病手当金の不支給期間とは

傷病手当金には、以下の不支給期間があります。

  • 3日間の待期期間
  • 有給休暇(消化)を取得している期間

傷病手当金は、原則として3日間以上連続して休んでいることが定められています。そのため、会社を休んでから最初の3日間は待期期間となり傷病手当金は支給されません。

ただし、待期期間中に有給休暇を取ることは問題ありませんので、必要な人は申請を忘れないようにしましょう。

そして、傷病手当金の支給期間中に有給休暇を取得した場合も不支給となります。

有給と傷病手当金は二重でもらうことはできませんので、長期間休む場合はどのように申請するかきちんと考えましょう。

傷病手当金が不支給となった事例

傷病手当金の申請をしても、不支給の通知がくる場合もあります。


原因や理由にはさまざまなものがあり、もし不服だと思った場合には申し立てをすることも可能です。


ここでは、実際に傷病手当金が不支給となった事例を5つご紹介します。


実際に病気やケガで長期間休んだときに、事例にあったようなことをしてしまいますと、ご自身が申請をしたときに不支給となる可能性もありますので気を付けましょう。

2回目の再申請時など、同一疾病で1年6か月経過していた場合

傷病手当金の支給は、同一疾病につき支給開始から1年6か月までと定められています。

  • 同じ病気・ケガの場合は、支給開始から1年6か月まで
  • 別の病気・ケガの場合は、それぞれの病気・ケガごとに1年6か月まで
ここで気を付けなくてはいけないのが、会社に復帰している期間も支給期間になるということです。

例えば、病気で1年間休職し、そのあと仕事復帰をしたけれども半年後に同じ病気が悪化してまた休職した場合は、1年6か月が経過するため傷病手当金は不支給となります。

ですが、病気やケガが一度完治していると認められた場合は、同じ病名がついたとしても異なる病気として扱われるため、2回目でも傷病手当金の支給が可能になります。

とくに、うつ病などの精神疾患は判断が難しく、傷病手当金の申請をしても不支給となるケースが多いようです。この場合、復職中の勤務状況やどれくらい復職していたか、治療の状況などで判断されます。

保険者によって判断基準も異なりますので、不支給の通知に納得がいかない場合は不服申し立てをして審査請求をすることも可能です。

処方箋通りに薬を飲まないなど、医師の指示に従わなかった場合

傷病手当金は、医師の指示に従わなかった場合に不支給となる場合があります。

  • 通院が必要なのに病院へ行かない
  • 処方箋通りに薬を飲まない
  • 自己判断で通院をやめる
これらの行為は、正しい療養をしていないと判断されてしまうのです。

傷病手当金の目的の1つに、早期に病気やケガを治すというものがあります。医師の指示はきちんと従い、決められた薬は正しく飲みましょう。

ただし、うつ病などの精神疾患に掛かっている人の中には、症状が酷すぎて外出することができず通院ができないという人もいるかもしれません。

このような理由があるにも関わらず傷病手当金の不支給となった場合には、不服申し立てをしてみても良いでしょう。

退職後の継続給付中、転院による空白期間がある場合

退職後の継続給付中、引っ越しなどで転院しなくてはいけない場合、病院が変わることで空白期間ができてしまいますと傷病手当金が不支給となります。


ここでのポイントは、退職後ということです。


休職中であれば、転院により空白期間ができたとしても、空白期間中の給付はありませんが転院前・転院後で医師の診断書をもらえれば傷病手当金は給付されます。


退職後に引っ越しの予定があるという人は、

  1. 転院前の病院で就労不能期間を証明してもらう
  2. 引越し前に転院先の病院で診察を受ける
必ず、この2つを行っておきましょう。

引越しをしてから転院先の病院に行きますと、その時点で空白期間ができてしまいます。そうならないためにも、引越し前に診察を受けておくことで空白期間を埋めておきましょう。

県外の引越しとなりますと、転院先の病院に行くのは大変かもしれません。ですが、傷病手当金が不支給にならないためにも、計画的に病院に行く予定を立てておきましょう。

退職後不支給となった後に労務不能で再申請した場合

退職をすると、被保険者の資格を失います。しかし、傷病手当金は退職をするまでに1年以上被保険者だった場合、労務不能で再申請をすれば引き続き給付を受けられる場合があります。


給付を受けるのに必要な要件は以下になります。

  • 退職前に1年以上被保険者であること
  • 退職日に傷病手当金の給付を受けていること(受ける条件を満たしている)
  • 退職後も同じ病気で療養しており、労務不能の状態であること
上記で挙げました3点は必須となります。

また、以下のようなケースの場合は、傷病手当金が支給されません。
  • 退職日に労務についた場合
  • 失業給付金(雇用保険)を受ける場合
  • 退職後働ける状態になり傷病手当金が不支給になったが、そのあとに労務不能となった場合
退職日に傷病手当金の給付を受けている、または受ける要件を満たしていることが要件として挙げられます。退職後に働ける状態にあった場合は、再度労務不能になったとしても傷病手当金の支給はされませんので気を付けなくてはいけません。

病気やケガが原因で会社を辞めなくてはいけない場合、完治していなければなかなか次の会社で働くことは難しいと言えます。傷病手当金の要件をよく確認して、少しでも生活の支えになるようにしたいものです。

妊娠悪阻・切迫流産・切迫早産・うつ病など傷病は関係なし

妊娠は病気ではないため、基本的には傷病手当金の対象外となります。ですが、以下の場合は傷病手当金の対象となります。

  • 妊娠悪阻
  • 切迫流産
  • 切迫早産
  • 妊娠高血圧症候群
  • 子宮頸管縫縮術
悪阻が重症化して1日に何回も嘔吐をしたり、体重減少や脱水症状などの症状が出た場合や、流産が差し迫っている状態、予定日よりも早く出産する可能性がある場合などは傷病手当金が給付されます。

ここでのポイントは、医師から療養するように言い渡され労務不能状態になるということです。

ただし、産休期間に入ってから症状が出た場合は、出産手当金が優先されるため傷病手当金はもらえなくなります。

また、うつ病などの精神疾患は診断も難しいため、傷病手当金がもらえないのはないかと
思う人が多いと言われています。しかし、連続して4日以上働くことができなかったり、医師から療養するように言い渡されたりした場合は支給されます。

これらの病気や症状は、医師がどのように判断するかというのが大切なポイントとなります。そのため、会社に行けないほどの酷い状態であれば、一度必ず診察を受けましょう。

傷病手当金不支給に対する審査請求(不服申し立て)方法

傷病手当金の申請をして不支給だった場合、その処分に対して不服があれば審査請求(不服申し立て)社会保険審査官に対してすることができます。


審査請求をするときに、気を付けなくてはいけない点は以下になります。

  • 処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に行うこと
  • 処分を行った保険者を経由して行うことも可能
審査請求をするにあたり期限が設けられていますので、傷病手当金の通知が来ましたら必ず早めに内容を確認しましょう。

また、審査請求をしたあとの決定に対して不服があった場合、再審査請求を行うこともできます。この場合も、決定書の謄本が送付された日の翌日から、起算して60日以内となっています。

審査請求・再審査請求は口頭でもできますが、不支給の処分は簡単に出されるものではありません。不服の理由をきちんと伝えるためにも、できる限り口頭ではなく書面にして請求しましょう。

その場合、不服である裏付けとして証明できる資料などがあれば、一緒に提出すると良いでしょう。

健康保険の傷病手当金の不支給にまつわるQ&A集

傷病手当金の不支給には様々な理由があり、このようなケースはどうなるのかなど疑問を持っている人がたくさんいます。


ここでは、傷病手当金の不支給にまつわるQ&Aにはどのようなものがあるのかをご紹介します。

障害年金や老齢年金が受けられる場合、傷病手当金は支給される?

傷病手当金以外にも障害年金や老齢年金などが受けられる場合は、どのように支給されるのか疑問に持っている人が多くいるようです。


まず、障害年金は同一の傷病で受けられる場合、傷病手当金の支給はありません。ただし、障害年金を360で割った額が、傷病手当金の日額に満たない場合は差額が支給されます。

  1. 【傷病手当金日額】≦【障害年金÷360】⇒ 支給されない
  2. 【傷病手当金日額】>【障害年金÷360】⇒ 差額分が支給される
このようになります。

そして、老齢年金も退職後に退職や老齢を事由とする、年金の支給を受けることができる場合は傷病手当金の支給はされません。

ただし、老齢年金の額を360で割った額が、傷病手当金の日額に満たない場合は差額が支給されます。
  1. 【傷病手当金日額】≦【老齢年金÷360】⇒ 支給されない
  2. 【傷病手当金日額】>【老齢年金÷360】⇒ 差額分が支給される
障害年金も老齢年金も、支給される額傷病手当金の日額が重要なポイントとなります。

ボーナスが支払われると、傷病手当金は支給されない?

傷病手当金は健康保険から支給される、病気やケガなどで休職している間に生活を保障するための制度です。そして、一般的な年3回以下のボーナスであれば、傷病手当金の減額はされません。


これは、健康保険法3条5項6項で定められており、報酬とは3月を超える期間ごとに受け取るものはこの限りではないとされているからです。


つまり、年3回以内のボーナスは、1年で割ると4ヶ月に1度で報酬にならないため、減額の対象にはなりません。尚、賞与とは3ヶ月を超える期間ごとに受けるものという定義があります。


ただし、ボーナスがもらえるかどうかは会社の規定によるものとされていますので、支給条件をよく確認することが大切です。支給されたとしても、休職期間中は対象外となることが多く満額支給というケースは少ないようです。

傷病手当金不支給の事例まとめ

傷病手当金が不支給になる原因や理由、事例などをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 傷病手当金の不支給期間とは、3日間の待期期間と有給の期間がある
  • 傷病手当金は、同一疾病につき支給開始から1年6か月までと定められている
  • 傷病手当金は、医師の指示に従わなかった場合に不支給となる場合がある
  • 傷病手当金は、退職後の継続給付中に転院による空白期間があると不支給となる
  • 傷病手当金は、退職後働ける状態になり傷病手当金が不支給になったが、そのあとに労務不能となった場合は不支給となる
  • 傷病手当金は、妊娠悪阻や切迫流産、うつ病などは支給される
  • 審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に行うこと
  • 障害年金と老齢年金は同一の傷病で受けられる場合、傷病手当金は不支給となる
  • 傷病手当金は、一般的な年3回以下のボーナスであれば減額はされない
以上になります。

傷病手当金の不支給となる原因には様々なものがあるため、もし不支給の処分に納得がいかない場合は速やかに審査請求を行いましょう。

医師の指示に従わなかったり、転院で空白期間ができたりするなどの理由で不支給となる場合もありますので、傷病手当金の正しい知識を身に着けておくことが大切です。

ほけんROOMでは、他にも傷病手当金に関する記事を多数公開していますので、ぜひ参考にしてください。

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