傷病休暇中にボーナスを受け取ったら減額される?調整される金額の計算を紹介

傷病休暇中にボーナスを受け取った場合、そのボーナス分(賞与分)や給料にどのような影響があるのか気になりますよね。実はボーナスといっても年3回以下のものか年4回以上のものかで大きく扱いや調整の計算方法がかわってくるのです。また有給休暇をつかったうまい逃れ方もあるので、ぜひ最後までご覧ください。

傷病休暇中にボーナスを受け取ったら金額に影響はある?

働く方々にとって楽しみにしているイベントの一つに「ボーナス(賞与)」があると思います。


ボーナスが入ったら、買いたいと思っていたものや旅行などの資金に充てる予定を立てている方も多いと思いますが、もし仮にあなたがケガや病気で「傷病休暇」となってしまい、傷病休暇中にボーナス支給日となった場合、支給額に影響があるのか気になるのではないでしょうか?


また通常、傷病休暇を取る際には加入の健康保険組合より「傷病手当金」が支給されますが、傷病手当金をもらっている場合にボーナスを支給してもらえないのではと感じられる方もいるのではないでしょうか?


そこで今回は、「傷病休暇中」にボーナスが支給された場合、支給額がどのようになるのかについて詳しく見ていきたいと思います。


具体的には、

  • 年3回以内のボーナス支給は?
  • 年4回以内のボーナス支給は?
  • 傷病休暇期間と会社規定の関係は?

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、傷病休暇中のボーナスについての基本知識を得ることに役立つかと思います。


現在傷病休暇中の方や、傷病休暇で休職中の家族がいる家族の方にとって気になる点であると思いますので、該当する方は必見です。



年3回以内のボーナスの場合は、傷病手当金から減額されない

実は、年3回以内のボーナスは傷病手当金から減額されず支払われることとなっています。


業務外でのケガや病気の際に申請の上受け取れるものが傷病手当金です。ケガや病気で仕事を3日以上休業している方に、健康保険より4日目から支払われる手当となります。傷病手当金の支給額はそれぞれの方の月給に応じて決められており、一般的に「日給の3分の2」と言われています。ただし、支給には「給料」をもらっていないことが前提となります。


従って、給与を受け取った場合は、傷病手当金の支給額を上回る場合には支給されず、上回らない場合でも休職中の給料の差額分しか受け取れません。


しかし「ボーナス」の場合は異なります。傷病手当金は「報酬」を基に計算しますが、報酬の中にボーナス(賞与)は含まれません


健康保険法の3条5項に記載の「報酬」の定義を見てみますと、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。」とされています。


また、3条6項に記載の「賞与」の定義を見てみますと、「賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。」とされています。


簡単にまとめますと、「3か月以内で支給=年4回以上の賞与」は報酬、「3か月以上で支給=年3回以上の賞与」は賞与とみなされるため、年3回以内のボーナスを受け取っても傷病手当金から減額されることはありません。

年4回以上の場合の傷病手当金からボーナス分を調整する計算方法

前項でご説明の通り、「年4回以上の賞与」の場合は、「報酬」とみなされるため傷病手当金から調整されます。


尚、傷病手当金の支給額ですが、以下の計算式で求めることができます。


(支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3

ざっくりとした考え方としては、月額給与の3分の2を傷病手当金として受け取ることができます。通常は4月から6月までの給与の平均で月額給与を求められます。


仮に給与は支給されていなくとも、ボーナスが支給された場合は、傷病手当金相当額からボーナス額を差し引き、残った分が傷病手当金として支給されます。


分かりやすくするために具体的な例を用いて解説します。

  • 月額給与が300,000円
  • 年4回の賞与で、1回の支給額が各500,000円

【標準報酬額】300,000円+(500,000円×4回÷12か月)=470,000円

【傷病手当金支給日額】470,000円÷30日×2/3=10,447円(1日あたり)

【ボーナス日額】500,000円÷90日=5,556円

【傷病手当金実支給額】10,447円-5,556円×30日=146,730円

上記はあくまでも仮定の計算です。詳しくは健康保険組合や勤務先にお問い合わせください。

そもそも傷病休暇期間にボーナスは受け取れるかは、会社の規定次第

さて、ここまでは傷病手当金とボーナスとの関係性について見てきました。


ボーナス支給が「年3回以内」か「年4回以上」かで傷病手当金の支給額に影響があることをご理解頂いたと思います。


しかし、実際に賞与規定を設けている会社とそうではない会社では対応が異なります。そもそも賞与規定があってもボーナスが支給されない場合もあります。


ここからはボーナス・賞与に関する会社の規定の例を見ていき、実際に傷病休暇中にボーナスがもらえるかについて見てきます。


傷病休暇中の方や傷病休暇に入る可能性のある方は、傷病休暇に入る前に予め確認しておいた方がいいと思います。

ボーナス・賞与に関する会社の規定の例

ボーナス・賞与に関しては、基本的に勤め先の会社や組織の規定に沿って異なります。従って、それぞれの会社の賞与規定を確認する必要があります。中でも多い規定について簡単に解説していきます。


ボーナス支給日に在籍している

大手企業で多いケースで「在籍の有無」がボーナス支給に影響を与えていることがあります。例えば7月に賞与支給日である場合、「前月の6月末まで在籍している社員」を対象にボーナス支給を行うというケースがあります。

ボーナス査定期間中に一定期間以上出勤している

その他では、ボーナス査定期間中に一定期間以上出勤した場合にボーナスを支給するという規定を設けている会社もあります。例えばボーナス支給が7月と12月の場合、1月~6月が7月賞与7月~11月が12月賞与とした場合、それぞれの期間で3分の2以上出勤している場合には賞与支給を行うという形を取っている会社もあります。

ボーナス支給日に休職していない

ボーナス支給日時点で休職していないことをボーナス支給の条件等して規定している会社もあります。このような規定の場合は、傷病休暇を入るタイミングがボーナス支給日よりも後でなければボーナスを受けることができません。

対策としては、ボーナス支給日まで有給休暇を取得し休職状態にしないことです。会社との相談となりますが、有給休暇を使ってボーナスを受け取ることができます。

会社によってはボーナスに関する規定のない場合も

公務員の場合は法律で定められた規定に則ります。診断書を提出した日から「病気休暇」として90日間は有給休暇と同様に給与が100%支給されます。ボーナスの場合は、ボーナス査定期間中に勤務している場合は、その期間分のボーナスは支給されます。


90日以降の場合、通常は病気休職として以後1年間は基本給の80%を支給されます。最大3年間は休職を認められており、非常に恵まれた傷病休暇制度となっています。


法律によって職務を行う公務員に比べ、民間企業の場合はボーナスに対する規定が設けられていない会社も多くあります。何故ならば賞与に関する規定は法律上定められていないためです。


民間企業の場合は「社長次第」で傷病休暇中のボーナス支給は変わってくると言えます。休職中にボーナスを支給される場合もあれば、少額のボーナスを支給する先もあります。


中には会社の業績に貢献していないという理由からボーナスを支給しない会社もありますので、ご自身の会社がどのような規定となっているのかについては確認しておいた方が良いでしょう。

傷病休暇中のボーナスのまとめ

ここまで傷病休暇中のボーナスについてまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか?


今回の記事のポイントをまとめますと、

  • 傷病手当金は「年3回以内のボーナス」であれば支給額に影響がない
  • 「年4回以上のボーナス」は傷病手当金の支給額に影響
  • 民間企業の場合は企業によってボーナス支給の有無が異なる
  • 「休職の有無」がボーナス査定に影響するのであれば有給休暇を活用する
でした。


業務外での病気やケガは何より本人が一番大変であり、給料や月々の支払いや生活費について悩まれる方も多いと思います。


そのような事態を救済するものが傷病手当金です。傷病休暇中の生活を補うものとなります。


しかし、労働者として賞与・ボーナスの存在は非常に重要であり、ご自身が賞与を受け取ることができるのか否かについても気になると思います。大前提として年3回以内のボーナスは傷病手当金の支給には影響ありません。従って、ボーナス支給があるのか否かについて確認しましょう。


実際に傷病休暇に入る必要がある方は、勤務先に確認し支給されるかチェックしておきましょう。


また、健康状態の方であっても、勤め先の賞与の査定基準がどのようになっているのかについて事前に確認しておいた方が良いでしょう。


実際、勤務していても自社の就業規則や給与規程について知らない方も多いのが実情です。就業規則などは従業員であれば確認できるものですので、この機会に改めて確認しておいてもいいのかと思います。

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