ボーナスの源泉徴収税額は?計算方法や手取りシミュレーションも解説

待ちに待ったボーナスですが、源泉徴収票を見て「源泉徴収されている所得税や社会保険料などの税金が案外高い」と感じた方は多いと思います。そこでこの記事では、実際のケースを基にボーナスにおける源泉徴収税額の計算方法と手取り金額をシミュレーションします。

ボーナスからの源泉徴収。控除される税金と計算方法は?

コツコツ半年間頑張って働いたご褒美のようなボーナス。しかし、いざ受け取ってみると、「高い金額の税金がとられている…」「思っていたより金額が少ない気がする…」と感じる人も多いと思います。

ボーナスは、額面通りに受け取れるわけではなく、源泉徴収税額が引かれた後の額で受け取ります。

「賞与の手取り=賞与額-賞与にかかる社会保険料-源泉徴収税額」

この源泉徴収税額の計算方法が分からないために、必要以上に高い税金が引かれているような気持ちになってしまう人は少なくありません。

そこで、この記事では「ボーナスにかかる源泉徴収税額」について、
  • 賞与から引かれる税金の種類
  • 賞与から引かれる源泉徴収税額と手取りの計算シミュレーション
  • 年末調整で過払いした税金が戻ってくる可能性
以上のことを中心に解説していきます。

この記事を読んでいただければ、ボーナスの実際の受け取り額を計算できるようになります。ぜひ、最後までご覧ください。


源泉徴収される税金は「源泉徴収税」「社会保険料」!計算方法は?

ボーナスから引かれるものには、大きく2種類あります。それは、「源泉徴収税」「社会保険料」です。


「源泉徴収税」のことは覚えていても、「社会保険料」も引かれることを忘れてしまう人が多いので、注意してください。


「源泉徴収税」と「社会保険料」は、前月の給与扶養人数の情報を元に、国税庁が出している「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に基づいて計算されています。


具体的のどのように計算していくのか、解説します。

源泉徴収以外にボーナスから控除される税金

源泉徴収以外にもボーナスから引かれるものがあります。それは、「社会保険料」


この存在を忘れて、「ボーナスが思っていたより少なくてショック!」という人も多いものです。


ボーナスから引かれる社会保険料には、3種類あります。


「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」です。


それぞれの求め方を解説します。


健康保険料の求め方

健康保険料は、「標準賞与額」「健康保険料率」を使い計算します。


標準賞与額:賞与額の1,000円未満を切り捨てた額


健康保険料率:加入している健康保険によりますが、全国健康保険協会の場合は、都道府県毎の保険料額表で確認できます。


健康保険料の計算式は次の通りです。

健康保険料=標準賞与額×健康保険料率÷2

健康保険料は、会社と折半するため、2で割っています。


厚生年金保険の求め方

厚生年金保険の計算方法は、健康保険料の計算方法と同様です。


保険料率は、健康保険料の計算で使った表の中から、厚生年金保険の欄で確認します。(全国健康保険協会の場合は、都道府県毎の保険料額表で確認できます。)

厚生年金保険料=標準賞与額×厚生年金保険料率÷2

雇用保険の求め方

雇用保険の計算には、額面通りの賞与額を使います。


雇用保険料率は、厚生労働省の資料で確認できます。一般の事業の場合、労働者の負担は、0.3%です。農林水産・清酒製造の事業と建設の事業は、0.4%です。(平成30年度)

雇用保険料=賞与額×雇用保険料率

雇用保険は、労働者と事業主で負担割合が異なるため、健康保険や厚生年金保険のように2で割りません。

計算する前に確認すること

それでは、源泉徴収税の計算について確認しましょう。源泉徴収税の計算をするためには、次の材料を集めておく必要があります。


  1. 賞与の額
  2. 扶養親族
  3. 前月の月収
  4. 前月社会保険料の額


前月の給与が無い場合は、後述するモデルケースのBさんをご参照ください。ここでは、概要をお伝えしたいと思います。

具体的な計算方法は?

源泉徴収額の計算に必要なものは、「賞与の社会保険料」「源泉税率」の2つです。


賞与の社会保険料は、「源泉徴収以外にもボーナスから引かれるものがある?」の章で計算した「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」の合計額をそのまま使います。


源泉税率は国税庁の表で確認できます。「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成31年度分)」


この表を見る時は、

  1. 「前月の給与」ー「前月の給与に対する社会保険料 」
  2. 扶養親族

以上の2点を手掛かりに該当する料率を探すという方法で使います。


国税庁の「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(平成31年分)」の一部を抜粋するとこのようになっています。


料率扶養家族0人扶養家族2人
2.04268(千円)以上 79(千円)未満133(千円)以上269(千円)未満


実際の表は、扶養家族0,1,2,3人があり、さらに、給与額の選択肢ももっとたくさんあります。この表の給与額は、前月の給与から前月の社会保険料を控除した後の額です。


表を元に、源泉税率が分かったら、次の式で源泉徴収税額を計算します。

源泉徴収税額 =(賞与の額面ー賞与の社会保険料)×源泉税率

実際のケースでボーナスにかかる源泉徴収税額を計算してみよう

それでは、具体例として2つのモデルケースで源泉徴収税額を計算してみます。


前月の給与がある場合とない場合で、計算方法が大きく異なることに注目してみてください。

Aさんのケース:賞与50万・扶養親族2人・月給20万の場合

まず、モデルケースの設定を確認してください。今回、以下の条件で計算してみたいと思います。


Aさん:32歳、賞与50万円、扶養家族2人、月給20万円、東京都在住、一般事業所勤務


Aさんの賞与にかかる社会保険料を計算しよう!

まずは、社会保険料から計算しましょう。標準賞与額は、1,000円未満を切り捨てて「500,000円」です。


健康保険料は、「標準賞与額×健康保険料率÷2」という式で求めます。


全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額」の東京都
の表
をご覧ください。Aさんは40歳未満のため、「介護保険第2号被保険者に該当しない場合」の保険料率が適用されます。東京都の平成31年度の料率は、9.90%です。

500,000×9.90%÷2=24,750

健康保険料は、24,750円です。


次に、厚生年金保険料の計算をします。厚生年金保険料は「標準賞与額×厚生年金保険料率÷2」。


先程と同じ表をご覧ください。東京都の平成31年度の料率は、18.3%です。

500,000×18.3%÷2=45,750

厚生年金保険料は、45,750円です。


最後に、雇用保険料を求めてみましょう。雇用保険料は、「賞与額×雇用保険料率」です。


一般の事業所に勤務している場合の雇用保険料率は0.3%です。

500,000×0.3%=1,500

雇用保険料は、1,500円です。


Aさんの社会保険料は、合計で72,000円と算出できました。


Aさんのボーナスにかかる源泉徴収税額を計算してみよう!

社会保険料の計算ができましたので、次に、源泉徴収税額の計算をしていきます。


源泉徴収税額 は、「(賞与の額面ー賞与の社会保険料)×源泉税率」で計算します。


源泉税率は、賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表で確認できます。


Aさんの月給が20万円のため、扶養家族2人の列から「133(千円)以上269(千円)未満」を探してください。その行の一番左が源泉税率です。


このケースでは、源泉税率「2.042」であることが分かります。

(500,000-72,000)×2.042=8,740

源泉徴収税額は、8,740円です。


Aさんのケースでは、ボーナス手取り額419,260円となります。

500,000(ボーナス額)-72,000(社会保険料)-8,740(源泉徴収税額)=419,260(手取り額)

Bさんのケース:前月の給与が無い場合

では、次に、前月の給与がない場合のモデルケースをご紹介します。Aさんと他の条件は全く同じで、前月の給与の有無だけが違うと想定します。


Bさん:32歳、賞与50万円、扶養家族2人、前月の給与なし、東京都、一般の事業


前月の給与が無い場合は、社会保険料の計算は同じですが、源泉徴収税額の計算方法が違います。


ボーナスが6ヶ月単位の場合は次の順番で計算します。

  1. (ボーナス額-社会保険料)÷6
  2. (1)の金額を月額表に当てはめて税額を探す
  3. (2)の税額×6


Bさんの場合、(ボーナス額500,000-社会保険料72,000)÷6=71,133


71,133円を賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表から探して税額を求めます。扶養家族2人で133千円未満のため、税率0%です。


つまり、Bさんのケースでは、源泉徴収税は引かれず、社会保険料のみ引かれることとなり、ボーナス手取り額428,000円となります。

500,000(ボーナス額)-72,000(社会保険料)=428,000(手取り額)

年末調整で払いすぎた税金は戻ってくる?

ボーナスの源泉徴収税は、暫定的に計算した仮払い税金です。そのため、年末調整で正確に計算し、払いすぎていた場合は、還付金として戻ってきます。


特に払いすぎていなければ、戻ってきません。また、逆に、追加徴収されるケースもあります。


還付されるケースと追加徴収されるケースには、どのような理由があるのかご紹介します。

還付される場合

還付されるケースには、次のようなことが考えられます。


  • ボーナス支給の前月の給与額が高かった
  • ボーナス支給後に転職して給与が減った
  • 生命保険・地震保険の控除がある
  • ボーナス支給後に扶養家族が増えた
  • 年末調整で寡婦控除や障がい者控除など申請をした


ボーナス月だけではなく一年を通してみると、源泉徴収税額が高かった。そんな場合に還付が発生します。


最も多いのは、生命保険・地震保険等の控除が適用されるケースです。


年末調整・確定申告で、はじめて考慮されるため、還付金が発生することがよくあります。年末調整でお金が返ってくるイメージを持っている人が多いかもしれません。

追加徴収される場合

ボーナス支給後、給与額や扶養家族に変化があると、追加徴収される可能性が出てきます。


  • 昇給した
  • ボーナス支給の前月だけ給与が少なかった
  • 子供が独立して扶養家族が減った
  • 妻の年収が103万円を超過した


このような場合は注意しておきましょう。


扶養家族の人数は、12月31日時点で扶養に入っている場合に、その年の扶養家族として計算されます。


つまり、ボーナス支給後に扶養から外れた人がいた場合、ボーナスの所得税額計算が変わり、追加徴収される可能性が出てきます。

ボーナスから源泉徴収される税金とその計算方法まとめ

ボーナスから源泉徴収される税金について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

この記事のポイントは、
  • ボーナスから差し引かれる税金は、「源泉徴収税」「社会保険料」の2種類
  • 源泉徴収税額の計算には、前月の給与額が関係しており、前月の給与の有無によって計算方法が全く違う
  • 年末調整で多く払いすぎた税金は還付されるが、不足していた場合は追加徴収されるケースもある
でした。

計算方法を知らないと、無駄なお金を取られていると感じてしまうかもしれません。気持ちよくボーナスを受け取るためにも、源泉徴収される税金の計算方法を知っておくと役に立つでしょう。

ボーナス時の計算には、生命保険・地震保険等の控除額が考慮されていません。控除対象になる場合は、年末調整や確定申告で忘れずに申告されてください。

ほけんROOMには、他にも、知っておくと心強いお金に関する記事が多数あります。ぜひ、ご覧になってください。

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