妊娠中のつわりや切迫早産で傷病手当金は受給可能?手続きや申請書の書き方解説

妊娠中のつわり(妊娠悪阻)や切迫早産の場合は傷病休暇・休職として傷病手当金を受給できるのでしょうか。実は切迫流産や妊娠糖尿病などは対象内ですが妊娠悪阻は発病時の状況次第で対象外となります。今回、妊婦さん必見の傷病手当金の受給資格や申請方法、申請書の書き方、診断書の有無を解説します。

妊娠中のつわり(妊娠悪阻)や自宅安静で傷病手当金は受け取れる?


20代、30代で共働きをしている既婚女性にとって、妊娠は特に仕事にもかかわる人生の一大イベントですよね。


妊娠するとしばらくの間働くことが難しくなりますが、収入の減少を補填してくれる出産育児一時金や傷病手当金などさまざまな補助制度があり、条件に該当するのであれば是非とも貰っておきたいところですよね。


そこで、この記事では「妊娠中に傷病手当金を受け取るための条件」について、

  • 傷病手当金の給付条件
  • 傷病手当金の対象となる具体的な病気や症状
  • 傷病手当金を受け取るための手続きや他の補助金

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、妊娠中に働けなくなるなど不測の事態が起こったときにどのようなお金がもらえるのかを知ることができ、いざ妊娠したときにも慌てずに心の準備ができます。


是非最後までご覧ください。

そもそも傷病手当金の給付条件は?

傷病手当金とは、サラリーマンやOLなど企業に努める人が病気や怪我で働くことができなくなった場合に、治療中に収入が減少して生活ができなくなることの補償として支給されるお金のことです。


一般的に労働者は社会保険に加入していますが、そのうち健康保険組合から支給される給付金を指します。


傷病手当金の支給の対象となるのは、以下の要件に当てはまる場合です。

  1. 業務外の事象に起因する病気や怪我
  2. 健康保険制度を利用した療養中であること
  3. 療養中は業務を遂行することができない状態であること
まず1つ目の条件である業務外の事象に起因するとは、例えば休みの日に怪我をして治療をする場合や、持病が悪化して入院した場合などです。


営業車で客先に向かう最中に事故をした、建築中に資材で怪我をして治療が必要になったなどの場合、いわゆる労災が適用され、傷病手当金ではなく雇用保険の傷病手当が適用されます。

業務とは関係のない場所や原因に起因する怪我や病気の場合のみ、傷病手当金の適用範囲となります。

2つ目の健康保険制度を利用した療養中であることとは、医療機関を利用したときの診療費や調剤費について、健康保険の適用がされているということです。

健康保険に加入している人は、通常の医療行為において医療費のうち3割を負担するだけで済んでいますが、これは健康保険が適用されているからです。

健康保険が適用されない自由診療や先進医療を利用して療養中の場合は、傷病手当金の適用がされません。

3つ目の療養中は業務を遂行することができない状態であることとは、担当医から療養中に業務を止められている、手足の治療で物理的に業務を遂行することができないなど、第三者から見て業務が行えない状態のことを指します。

療養中も半日だけ仕事をしている、在宅勤務ができるなどの状態は業務を遂行できないとは見做されないため、傷病手当金の対象とはなりません。

ここで、通常の妊娠の人は確かに業務を遂行することは難しくなりますが、そもそも妊娠は病気ではなく自然に起こるものであると考えられており、残念ながら傷病手当金の対象とはなりません。

しかし妊娠中は体の状態が通常とは異なっており、妊娠に伴って起こる体のトラブルや病気などの症状によっては、傷病手当金の対象となることもあります。

次に妊娠中で傷病手当金の対象となる事例を紹介します。

妊娠中に傷病手当金の受給対象となる症状例。入院だけでない?

妊娠そのものは自然の中で起こることであり、病気ではありません


しかし妊娠中は体の状態が通常とは大きく変化するため、それに伴って引き起こされる病気や、人によっては出産時にリスクを伴う場合もあります。


例えば、妊娠中に起こる悪阻や体調不良、出産時の早産や切迫流産などのリスクなど、妊娠中の方は不安を多く抱えており、これらに対する補助が出れば有り難いと思うことでしょう。


しかし、これらの症状のうちいくつかは傷病手当金の対象となりますが、対象とはならないものもあります。


以下で、傷病手当金の対象となるケースを紹介していきます。

切迫流産

まず、傷病手当金の対象となる症状として切迫流産が挙げられます。


流産とは、妊娠したにも関わらず胎児が亡くなってしまう状態のことを指しており、妊娠22週未満のうちに妊娠が終わることをすべて流産と定義されています。


切迫流産とは流産が差し迫っている状態のことであり、治療をすれば妊娠を継続できる可能性があります。


切迫流産の場合は安静にしているよう医師から指示が出ることが多くあり、治療中は傷病手当金の対象となる場合があります。

妊娠悪阻(つわり)|不支給にならない発病時の状況

妊娠悪阻は、傷病手当金の対象となるかどうかは症状や勤務可能かの状態により変わります。


妊娠悪阻とは、妊娠中の体の状態の変化により、嘔吐や吐き気、脱水症状になることで、一般的に起こり得るつわりよりも悪化した状態でることが多いです。


そのため、人によっては仕事を続けることが難しいケースもあり、働けなくなったときは傷病手当金が出れば有り難いですよね。


しかし、妊娠悪阻で一時的に休職しているだけでは、傷病手当金の対象になるとは限りません。


キーポイントは傷病手当金の対象となる「療養中であるか」、「医師からの指示によるものか」等です。


医師から就業することを止められており、かつ治療が必要な状態で通院や入院をしている場合は、妊娠悪阻でも傷病手当金の対象となると考えられます。


一方、妊娠が二人目であるときには注意が必要です。


傷病手当金は、同一の病気や症状により申請をする場合、1年6ヶ月以内だと支給対象にはなりません。


よって、前回妊娠悪阻で傷病手当金を受給した場合、1年6ヶ月を経過していない場合は傷病手当金がもらえないことに注意してください。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群は、傷病手当金の支給対象となります。


妊娠高血圧症候群とは、少し前までは妊娠中毒症とも呼ばれていた病気です。


妊娠高血圧症候群の特徴としては高血圧および尿蛋白が出るもので、妊娠20週目から産後12週目までが対象の期間です。


妊娠高血圧症候群は胎盤がうまく形成されないことによって起こるとされており、場合によっては常位胎盤早期剥離などを引き起こすこともあり、治療が必要とされています


そのため、妊娠高血圧症候群は傷病手当金の対象となっています。

妊娠糖尿病

妊娠中の傷病手当金の対象となる可能性のある病気については、妊娠糖尿病というものもあります。


糖尿病と聞くと場合によっては治療が長期化したり、重症化したりする怖い病気ですが、妊娠糖尿病では妊娠したことにって糖尿病の一歩手前の状態になることがあります。


これが妊娠糖尿病といわれるもので、通常の糖尿病と同じように、血糖値が上昇した状態となります。


妊娠糖尿病になると、合併症を併発するおそれもあり、母体にも胎児にも悪影響を及ぼす恐れが大きくなります。


そのため場合によっては医師による治療が必要となり、就労不能であると証明される場合には、傷病手当金の対象となることが考えられます。

子宮頸管縫縮術

さらに、妊娠中の傷病手当金の対象となる可能性のある状態のひとつに、子宮頸管縫縮術というものがあります。


妊婦の子宮頸部の組織が弱い場合早産のリスクがあります。これを手術で子宮頸部を締めて、出産まで子宮頸部を閉じておくことがあります。


子宮頸管縫縮術とはそのための処置で、妊娠によるものではありますが外科的処置が必要となります。


そのため、傷病手当金の対象となります。

つわり(妊娠悪阻)や切迫早産で自宅療養でも傷病手当金は受給可能

傷病手当と聞くとケガや病気にかかった場合の入院や手術に対して支払われると思いますよね。


しかし、たとえつわりや切迫早産で自宅療養中でも傷病手当金の受給対象になります。


ただし「仕事に就くことができない」という判断され、医師などがそれを証明できている場合に限ります。


そのため医師からつわりや切迫早産で自宅安静を命じられた際には傷病手当金の申請をしましょう。

傷病手当金支給の受給金額・申請手続き・申請書の書き方をおさらい

ここまでは、傷病手当金の支給条件などを見てきました。


ここからは傷病手当金の受給金額の計算方法と申請の手続き、また申請書の書き方をおさらいしていきます。


傷病手当金の申請はとても簡単にできますのでいざという時のために覚えておきましょう。

傷病手当金はいくら貰える?金額を計算!

傷病手当金の受給額は給料の約3分の2が目安となっています。しかし細かい金額を求める計算方法も知っておきたいですよね。


金額の計算方法は

傷病手当支給額=支払い開始日までの連続した12ヶ月間の各月の標準報酬額÷30×2/3

となります。


しかし連続して12ヶ月間勤務していない場合もありますよね。


その場合には

  • 支払い開始日までの連続した各月の標準報酬額
  • 当該年度の前年度9月30日における加入している健康保険の全被保険者の標準報酬月額の平均額
この2つの方法で計算します。そして低い金額の方が採用されます。

また給料やその他の保険から、何らかの支給があった場合には傷病手当金は調整されます。

傷病手当金の申請方法の流れ

次に傷病手当金の申請方法の流れについて解説します。


順番としては以下のようになります。

  1. 傷病手当金の申請書を入手・記入
  2. 公的医療保険の保険者に提出
  3. 傷病手当金が銀行に振り込まれる

まずは傷病手当金を受け取るのに必要な申請書を記入します。その記入した申請書を公的医療保険の保険者に提出します。


そのあとに保険者である全国健康保険協会又は健康保険組合が審査を行います。


審査が終わると支給が決定したものには傷病手当金が銀行口座に振り込まれます。そして通知書が申請者の住所宛に届けられます。

傷病手当金の申請書の書き方!医師の診断書が必要

傷病手当金の申請書には4枚の書類があります。

  1. 被保険者記入用
  2. 被保険者記入用
  3. 事業主記入用
  4. 療養担当者記入用
最初の2枚がご自身で記入する書類です。この時に気をつけるポイントは被保険者証の記号と番号は健康保険証に記載があります。

万が一被保険者番号がわからない場合は、「マイナンバー」と「本人確認書類」をセットで提出することで代用することがでいきます。

また申請書内に「4 療養のため休んだ期間」とありますが、ここに記入した期間が傷病手当金の支給日数となります。この時の日数の数え方は公休の含みます。

次に事業主記入用の書類ですが、こちらの書類は会社側が記入します。この書類は療養期間中に給料が支払われていないことを証明するのに必要な書類です。

最後の療養担当者記入用は医師に「働けない状態」であったことを証明してもらうために必要な書類です。この書類の作成には時間がかかりますので、早めに作成依頼をしておきましょう。

この4枚の書類が揃ったら提出しましょう。また不備などがあると支給されない・支給が遅れるなどのトラブルもおきてしまいますので書類は入念にチェックしてから提出しましょう。

参考:つわりで診断書を書いてもらうには?母性健康管理指導事項連絡カードとは?

傷病手当金は医師の診断書がないと受け取ることはできませんが、つわりの場合に診断書を書いてもらうことが難しい場合もあります。


結論から申し上げますとつわりでも診断書を書いてもらうことはできますし、診断書の代わりとして母性健康管理指導事項連絡カードも利用することができます。


つわりの診断書をもらうのにはかかりつけの産婦人科に依頼しましょう。


母性健康管理指導事項連絡カード(母健カード)とは医師などの女性労働者への指示事項を適切に事業主に伝達するためのカードです。


働く妊産婦の方が医師から通勤緩和や休憩などの指示を受けた場合、そ指示内容が事業主の方に正確に伝えられるようにするために利用するものです。


こちらの母性健康管理指導事項連絡カードもかかりつけの産婦人科で発行してもらうことができます。

参考:妊婦さん必見!その他妊娠・出産時に受け取れる給付金と休暇

傷病手当金の他にも妊娠中・出産時に受け取れる給付金や休暇があります。


給付金

  • 出産手当金
  • 出産一時金
  • 育児休業給付金
休暇
  • 産前休暇
  • 育児休暇
これらを詳しく説明していきます。

給付金:出産手当金、出産一時金、育児休業給付金!退職後でももらえる?

まずは給付金ですが「出産手当金」「出産一時金」「育児休業給付金」も3種類の給付金があります。


出産手当金とは

会社員として勤務していた方が、勤務先の健康保険から手当金が受け取ることができます。

出産で休職してしまうと不安なのは出産後のお金ですよね。その不安を解消してくれるのが出産手当金です。

この手当金は退職後でも条件を満たせば受け取ることができます。

また注意したいのが傷病手当金よりも出産手当金が優先されますので、傷病手当が受け取れない可能性もあります。

出産一時金とは

出産の際の入院費用の負担を減らせる制度です。

健康保険の加入者で妊娠4ヶ月以上の出産であれば42万円の金額を受け取ることができます。

しかし金額については妊娠期間・出産する医療機関により異なる場合もあります。

育児休業給付金とは

出産後に育児休業する方がほとんどだと思います。そうなるとまだ働くことはできませんので収入は無いですよね。

そこで育児休業中に給付金が受け取れるのが育児休業給付金という制度です。

この制度は厚生労働省から推奨されている国からの支援です。さらに非課税なので社会保険料を支払う必要がありません。

休暇:産前休暇、育児休暇

次に休暇について「産前休暇」「育児休暇」について解説していきます。

産前休暇とは

出産予定日の6週間前から取得できる休暇です。雇用形態が正社員でもパートでも派遣社員でも取得することが可能です。

これは法律で決められていますので、もしも事業主が無理やり働かせようとしたならばそれは違法になります。

また公務員の場合ですと「出産予定日の8週間前」から取得することが可能です。

育児休暇とは

出産後に子供を育てる労働者のための「育児を目的」とした休暇のことです。1歳未満の子供がいることが条件となっています。

法律の適用外ですので権利の保障や給付制度はありません。

また似ている育児休業というものもあります。

こちらは育児休暇と似ていますが育児介護休業法という法律に基づいている制度です。この制度では権利が法律の中で守られており、給付金制度も設けられております。

教育費が本格化する前にライフプラン相談・保険の見直しがおすすめ

出産後には休むことなく育児をしていかなければなりません。


子供が成長して幼稚園・小学校・中学校と養育費だけではなく教育費もかかってきます。


そんな子育てに追われる忙しい日々が始まる前にしておきたいのが保険の見直しです。


現在加入している保険の内容を子供が生まれるにあたって手厚くしたりする必要もあります。


また、子供の誕生によってライフプランもガラリと変わりますよね。


そこでおすすめなのがほけんROOMの無料相談です。


保険のプロであるベテランのファイナンシャルプランナー(FP)に無料で相談することができますので、この機会に保険を見直したい方はぜひ利用してみてください。

まとめ:妊娠中の妊娠悪阻や自宅安静でも傷病手当金はもらえる!

妊娠中に受給することができる傷病手当金について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  • 妊娠中でも医師による治療を受けており、就労不能と証明される場合には傷病手当金の対象となる
  • 妊娠により自宅安静中に退職した場合でも、傷病手当金を受け取ることができるケースがある
  • 働けなくなった時に受給できる傷病手当金の他に、出産手当金などの手当もある

です。


傷病手当金は働くことができない状態のときにその生活費を補填してくれる有り難い制度ですが、そのぶん受給要件も厳しく、就労できないことが客観的に示せなければ受給できない可能性もあります。


しかし、いざ就労不能となったときに慌てないよう、妊娠中の方やパートナーが妊娠している人はこの記事をよく読んで、申請方法などを頭に入れておきましょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧下さい。

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