傷病休暇とは?傷病休暇の給与(傷病手当金)や有給休暇との違いを解説

会社員の方なら、傷病休暇という制度を聞いたことがあるかと思います。しかし傷病休暇には公傷病休暇と私傷病休暇の2種類あることや、傷病休暇中の給与の扱い、傷病手当金の金額や条件など、詳細まで理解している方は多くはないと思います。傷病休暇の概要を解説します。

傷病休暇とは?条件や期間、保障内容を解説します

傷病休暇とは、サラリーマンのように会社へお勤めの方であれば、長期的な入院・治療が必要になった場合に利用できる特別な休暇のことです。

傷病休暇は有給のため、回復にそれなりの期間がかかってしまう傷病を負った場合でも、安心して治療に専念できます。


ただし、会社ごとに任意で決められている制度のため、傷病休暇がない会社にお勤めの方は、利用することはできません。 


一方、傷病休暇がある会社では、アルバイト・パートタイマー、派遣社員だと利用できないような取り決めもあります。


そこで、この記事では「傷病休暇の特徴」について、 

  • 傷病休暇の種類
  • 傷病手当金を受け取るための条件
  • 傷病手当金のメリット・デメリット

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、傷病休暇の基本的知識を得ることに役立つかと思います。

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傷病休暇には「公傷病休暇」と「私傷病休暇」の2種類がある

この休暇を導入するのは会社ごとの判断しだいであり、その内容もそれぞれ導入している会社によって異なりますが、傷病休暇のタイプとしては2つあります。

こちらでは、「公傷病休暇」「私傷病休暇」ついて解説していきます。

公傷病休暇(条件:業務上の災害によるもの)

公傷病休暇は、業務中に負ったケガや、業務が原因となった疾病で、仕事を続けることが困難になった場合、入院・治療のためにとることができる休暇を指します。

例えば、オフィスで仕事中に段差などにつまずいて転倒し手や足を骨折したり、外回りの営業をしているときに交通事故に巻き込まれて負傷したりした等、「業務上の災害」として公傷病休暇の対象になります。


業務上の病気やケガの場合、労働基準法でも休業中の補償は定められていますが、手厚い公傷病休暇を設けている場合なら、法定以上の有利な条件で休暇を利用することができます。

私傷病休暇(条件:プライベートの怪我などによるもの)

私傷病休暇とは、従業員がプライベートで病気やケガを負い、休職する場合にとることができる休暇を指します。

傷病休暇といえば、この私傷病休暇を指す場合が通常といえます。


ただし、自宅から会社へ向かう通勤途中でケガをした場合等は、業務上の災害となるので私傷病休暇には該当しません。

公傷病休暇と私傷病休暇に対する保障内容

傷病休暇には2つのタイプがあることを解説してきましたが、公傷病休暇と私傷病休暇では、金銭的なサポート内容・条件が異なる場合があります。

そこで、こちらでは以下のケースで、公傷病休暇と私傷病休暇の場合に受けることのできる、金銭的なサポートを説明します。

怪我や病気で治療を受けたケース

業務上の災害で公傷病休暇を取得またはプライベートでの傷病で私傷病休暇を取得した場合、怪我や病気で治療を受けたケースでは、それぞれ適用される保険、条件が異なります。

公傷病休暇の場合

医療機関での治療に関して労働保険が適用されます。

給付内容としては療養補償給付があります。


療養保障給付とは、労働者の業務上または通勤中に起きた傷病を療養する目的で給付される補償です。


この療養給付には、次の2種類があります。


  • 現物給付:業務上の負傷・疾病にかかった従業員が受けた療養自体が給付となります。労災指定病院等で必要な療養を受けることが給付条件となります。
  • 療養費用給付:従業員が必要な療養を受けた場合、事後かかった療養費の全額負担が給付となります。つまり、従業員が費用を支払ってもその全額分戻ってくることになります。労災指定病院等以外の医療機関で療養を受けた場合が条件です。

私傷病休暇の場合

医療機関での治療に関して健康保険が適用されます。

給付内容としては現物(療養)給付等があります。


費用負担としては、従業員が一部負担することになり原則として3割自己負担となります。ただし、企業独自に設けた健康保険組合に加入している場合は、従業員にさらに有利な費用負担となっている所もあります。

働けずに賃金の支払いがないケース

従業員が労務不能となり、賃金の支払がない場合は次のような給付・手当金があります。

公傷病休暇の場合

給付される内容は休業補償給付および休業特別支給金の2種類となります。


  • 休業補償給付:従業員が業務上の負傷・疾病により休職し、賃金を受けない場合に支給される給付です。なお、労働者災害補償保険法では、賃金を受けない日の第4日目以降、休業給付基礎日額の6割が労災保険より支給されることになります。
  • 休業特別支給金:休業補償給付にさらに上乗せして支給されるお金です。1日につき休業給付基礎日額の2割が支給されます。

つまり、休業補償給付と休業特別支給金を合算して、休業給付基礎日額の8割が支給されます。


私傷病休暇の場合

従業員が加入する健康保険では傷病手当金を支給されます。

従業員が会社を4日以上休んだ時に適用されます。 


手当金としては、1日当たりの給料(日額)の2/3で、最長1年6ヶ月にわたり受け取ることができます。なお、傷病手当金の詳細については後述します。

1年6ヶ月たっても病気や怪我が治らないケース

従業員が休業を開始して1年6ヶ月たっても治療を必要とする時は、次のような給付・支給金があります。

公傷病休暇の場合

休業補償給付と休業特別支給金の他、傷病補償年金・傷病特別支給金・傷病特別年金があります。


  • 傷病補償年金:1年6ヶ月を超え休業が必要で、一定の障害状態(傷病等級1級〜3級)がある場合に給付される年金です。年金給付基礎日額は傷病等級により、第1級313日分、第2級277日分、第3級245日分と日数が異なります。
  • 傷病特別支給金:労働災害または通勤災害の受給権者に支給される一時金です。こちらは傷病等級により、第1級114万円、第2級107万円、第3級100万円となります。
  • 傷病特別年金:算定基礎日額を用いて給付金額が決定される年金です。この算定基礎日額とは、業務上・通勤で事故が発生した日以前1年間に、事業主より3ヶ月を超える期間に支払われたボーナス等を、365で割った金額を指します。算定基礎日額は傷病等級により、第1級313日分、第2級277日分、第3級245日分となります。

私傷病休暇の場合

傷病手当金は支給終了となります。

なお、健康保険組合によっては、支給期間を延長している所もあります。

傷病手当金を受け取るための条件とは?

前述したように、従業員が加入する健康保険(会社員なら協会けんぽや組合健保、公務員なら共済組合)では、傷病手当金が給付されます。


休業している間、その期間に関係なく社会保険料は免除されません。そのため、傷病手当金が給付されるのであれば非常に助かります。


傷病手当金は国民健康保険にない頼もしい金銭的サポートですが、この手当金を受け取る場合に条件もあります。


こちらでは、いろいろな条件について説明していきます。


参考:KDDI健康保険組合

業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること(私傷病休暇)

業務上や通勤での病気・ケガは労働保険が対象となり、健康保険から給付される傷病手当金はそれ以外の場合に適用されます。

ただし、美容整形手術等、健康保険の給付対象とならない療養のための休業は適用外です。

働けない状況であること

労務不能であることが条件です。今まで従事している業務ができない状態を指します。ケガや病気はもとより精神障害(うつ状態)の場合も手当金は支給されます。


ただし、労務不能であるか否かは、従業員自身が決定するわけではなく、医師の意見及び被保険者の業務内容やその他の諸条件を総合的に考慮して判断します。

連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

傷病手当金は、療養のために休業を始めた日から連続した3日間(待期期間)を除いて、4日目から支給対象です。

いきなり1日目から支給対象とはなりませんので注意が必要です。



その期間中に給与の支払いがないこと

療養期間中は、給与の支払いがないことが傷病手当金の支給条件です。

もしも、給与が一部だけ支給されている場合なら、傷病手当金から給与支給分だけ減額されることになります。

なぜなら、あくまで傷病手当金は、従業員が療養生活に専念するための費用の補填を目的とした制度だからです。

傷病休暇の期間はどう決まるのか・いつまでか

傷病休暇の期間は勤めている会社により変わります。


ほとんどの企業では、傷病休暇の期間が就業年数により決まります。


しかし、中には休職制度がない職場もあり、また試用期間や勤続が1年未満の場合は、傷病休暇の対象外とする会社もあるので注意しましょう。


一般的な休業期間は

  • 休職期間は症状が軽度であれば1か月程度
  • 症状が重い場合には3か月~半年間

とされています。

怪我の具合により、復帰は難しい場合、就業規則の上限までは延長することができますが、主治医の診断書等が必要になります。


もし満了しても復職できない場合、解雇になるか、休職になるかについても勤めている会社の就業規則によります。


ここで注意したいのは、業務上の傷病とは異なり私的な怪我による休暇は法律での雇用保障はないということです。

休職期間が満了後も復職できない場合は、退職または解雇となる可能性があります。

傷病休暇中にボーナスは支給されるのか

実は、休職中にボーナスをもらえるケースもあります。


ボーナスとは個々の実績に対する報酬である会社がほとんどであり、休職中は当然実績がないのでもらえない可能性も高いです。


しかし前提として、それらは会社の就業規則によるので、上司や総務部に問い合わせたり就業規則を確認しておくなど、あらかじめ確認しておくことをオススメします。

会社員・公務員の場合|傷病休暇中にボーナスが支給される例

休職期間中にボーナスが払われる場合、会社員と公務員で異なってきます。


会社員の場合

会社員はボーナスの査定期間に実績がある場合、もらえるケースがあります。

しかし注意が必要なのが、出勤日数が定められていたり、支給額に制限が設けられていたり
するケースがあるので、実績があるからといって、確実にもらえるわけではありません。


会社の方に確認してみましょう。



公務員の場合

公務員は過去半年間の間に就業していれば、ボーナスをもらうことができます。

しかし、勤務期間によってボーナスの割合は変わることに注意してください。


勤務期間とボーナスの割合は、以下の通りです。
ボーナス査定期間の勤務日数が少なければその分減額され、1年以上の休職の場合はボーナスが支給されません。
勤務期間割合
6ヶ月100%
5ヶ月15日から6ヶ月95%
5ヶ月から5ヶ月15日90%
4ヶ月15日から5ヶ月80%
 4ヶ月から4ヶ月15日70%
3ヶ月15日から4ヶ月 
60%
3ヶ月から3ヶ月15日50%
2ヶ月15日から3ヶ月 40%
2ヶ月から2ヶ月15日30%
1ヶ月15日から2ヶ月 20%
1カ月から1ヶ月15日15%
15日から1ヶ月10%
15日未満5%
0日0%

傷病休暇中にボーナスが支給された場合、手当に影響はあるのか

傷病休暇中のボーナスが支給された場合、手当に影響はありません。


なぜならば、ボーナスは給与としてみなされないので、ほとんどのケースで減額の対象とならないからです。


ただし、休職中であってもボーナスが年に3回以上ある場合は、ボーナスでなく給与とみなされるため、手当や支給金が減額される可能性があるので注意が必要です。

それ以外に知っておくべき傷病手当金のメリット・デメリット

こちらでは傷病手当金のメリット・デメリットについて説明します。傷病手当金は差額分のみではありますが、平成28年3月から出産手当金との併用も可能となり、より便利になりました(全国健康保険協会ホームページ参照)。

しかし、他の給付を受けているときには傷病手当金が支給されないケースもあります。

メリット:インフルエンザなどの軽い病気でも支給される

傷病手当金の対象は、何も重い病気やケガに限定されるわけではありません。連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかった条件に該当すれば、インフルエンザなどの軽い病気でも手当金は支給されます。

デメリット:傷病手当金が支給されないケースがある

給与を受けていたり、傷病手当金以外の公的な給付金を受けていたりした場合には、傷病手当金が減額または支給されないケースもあります。また、次のような場合も不支給または減額となります。

出産手当金・労災保険の休業補償給付を受けている場合


女性の方の妊娠・出産による休業の場合は出産手当金が優先されます。また、業務上の他、業務外でも病気やケガをした場合ならば、労災保険の休業補償給付を受けている間、傷病手当金は支給されません。


ただし、いずれの場合も、受け取れる傷病手当金の額が多ければその差額は支給されます。


老齢年金・障害年金・障害手当金を受けている場合


老齢年金の場合は原則として傷病手当金との重複が認められていません。しかし、年金額1/360分より傷病手当金の額が多い場合は差額を受給できます。


また、障害年金・障害手当金の場合も傷病手当金の受け取る金額が多ければ、差額が支給されます。

傷病手当金の申請方法と手続き

傷病手当金の申請の流れは次の通りです。

  1. 勤務先に病気またはケガをしたことを報告し、4日以上欠勤することを伝える。
  2. 会社が加入している保険者から「傷病手当金支給申請書」を取得します。
  3. 医師よりご自分の傷病について、傷病手当金支給申請書用紙の「療養担当者の意見」欄へ記載してもらいます。なお、診断書は不要です。
  4. 会社からも申請書用紙の「事業主記入欄」へ記載してもらいます。
  5. 保険者である全国健康保険協会(協会けんぽ)または各保険組合に、必要書類を提出します。
  6. 保険者から審査され、支給決定通知書または不支給決定通知書が送付されます。
  7. 支給が決定された場合なら、申請して約2~3週間で指定口座に手当金が入金されます。

一般的に必要書類は次の通りです。なお、被保険者(従業員)の状況(転職・退職等)によっては追加書類が必要な場合もあります。


  • 傷病手当金支給申請書
  • 出勤簿またはタイムカード(コピー可)
  • 賃金台帳または給与明細(コピー可)

傷病休暇と有給休暇との違いとは?

さて、ここまでしょ傷病休暇について、傷病手当金を受け取るための条件や傷病手当金のメリット・デメリットを解説してきました。

次に、こちらでは傷病休暇と有給休暇の違いを説明します。一見、似たような制度に思えますが、それぞれ設定された過程は異なります。以下では、その違いを取り上げます。

有給休暇は法定休暇であり、会社が申請を断ることはできない

有給休暇は労働基準法で定められている休暇です。雇用形態(正社員、派遣社員、パート・アルバイト等)にかかわらず全ての労働者が対象です。


この休暇を取る際に特別な手続きはとる必要がありません。いわば全ての労働者の法的権利として認められており、会社が休暇申請を断ることはできません。


有給休暇の他には、産前産後の休業、生理休暇、育児休業、介護休業、子の看護休暇があげられます。

傷病休暇は福利厚生であるため、会社によっては存在しないことも

傷病休暇は就業規則で定められている休暇です。これは法定外休暇(法律を上回る休暇)といわれ、休暇を設けることについて会社の判断に任せられています。
また、使用者側と従業員との協議で取り決められた場合もあります。

いずれの場合にしても、任意の取り決めによって設定されるため、就業規則中に傷病休暇がなくても法律違反にはなりません。


この法定外休暇には、傷病休暇の他、慶弔休暇、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、夏季休暇、年末年始休暇等があります。

参考:新型コロナウイルスによる傷病休暇は傷病手当金が支払われない⁉

新型コロナウイルスによって会社を休む際は、傷病休暇が支払われません。


そもそも会社が傷病手当を出すケースは、「使用者の責に帰するべき事由による休業」に該当すると判断されたケースに限ります。


これに当てはまるのが、インフルエンザや風邪です。


しかし新型コロナウイルスは、都道府県知事が行う就業制限により休業する場合は、「使用者の責に帰するべき事由による休業」に該当しないと考えられるため、会社側に休業手当の支払義務はありません。


ただし、新型コロナウイルスに対する休業手当はありませんが、健康保険に加入しているなら傷病手当金の対象(4日以上の就労不能が必要)となるケースがあるので、会社に相談してみましょう。

まとめ:傷病休暇の保障内容・期間・条件まとめ

傷病休暇の特徴ついて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。 


今回の記事のポイントは、 


  • 傷病休暇には、公傷病休暇と私傷病休暇の2種類があり給付内容が異なる
  • 私傷病には傷病手当金を受け取れるが、条件や制約もある
  • 傷病手当金は病気やケガをしたら会社に報告するだけではなく、保険者へ申請手続きを行う必要がある

でした。 


傷病休暇は法定外休暇であるため、まず就業規則中に傷病休暇制度が設けられているかを確認してから、申請手続きをすすめていきましょう。


なお、会社によっては(私)傷病休暇がない等、まさかの病気やケガの際に金銭的なサポートを期待できないケースが想定されます。


その場合には、ご自分で医療保険・がん保険に加入しておくことを検討しましょう。公的医療保険制度に加入しているだけでは、保険適用外の医療サービスを受けた場合に負担が大きくなります。


例えば、一定額の入院時食事代や、入院する際に差額ベッド代を支払う必要がある場合、先進医療費を支払う場合等、入院日数・治療内容によっては多額の費用を支払うことにつながるケースがあります。


その場合に活用できる民間保険の給付金等は、事前の備えとして頼もしい金銭的サポートとなります。


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