更新日:2018/11/13
傷病手当金とは?傷病手当金の支給条件や金額について解説!
傷病手当金とは、業務外(プライベート)の事由により病気や怪我などをし、働けなくなったときに非常に助けになる公的保障です。傷病手当金の支給条件、支給される金額、そして申請方法を説明し、またその他に傷病手当金について気をつけるべき内容について説明します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 傷病手当金とは、病気や怪我をして働けなくなったときのための公的保障
- 傷病手当金の支給条件
- 業務外の病気やケガで療養しており、休業中であること
- 医師などの判断により、仕事ができない状態であること
- 休業中、給与の支払いがないこと
- 連続する3日間を含み、4日以上休業していること
- 傷病手当金の支給期間は1年6ヶ月
- 3日間の待機期間とは?
- 有給休暇を使用した期間は支給期間には含まれない
- 傷病手当金の支給額は収入の3分の2
- 傷病手当金の金額が調整されるケース
- 傷病手当金の給付額は非課税
- 傷病手当金の申請方法と流れ
- 傷病手当金の申請時のポイント
- 申請から支給までの期間は1ヶ月ほど
- 申請はあとからでも可能!ただし、申請期間には2年の時効がある!
- 他に傷病手当金について知っておいたほうが良いポイント
- 退職などの資格喪失後も継続給付できるのか
- 国民健康保険には傷病手当金の制度がない
- フリーター(非正規雇用者)でも社会保険に加入していれば支給対象
- 傷病手当金を受け取っている期間中にアルバイトをするとどうなるのか
- まとめ
目次
傷病手当金とは、病気や怪我をして働けなくなったときのための公的保障
怪我や病気で仕事ができなくなった場合に、生活保障として給付金を受けることができる制度です。
傷病手当金が支給されるのは健康保険協会・健康保険組合・共済組合からですので、国民健康保険に加入している自営業の方々には支給されません。
そのように、もしもの時に助けてくれる傷病手当金の支給される条件や注意点を詳しく見ていきましょう。
ぜひ最後までご覧ください。
傷病手当金の支給条件
- 業務外の病気やケガで療養しており、休業中であること
- 医師などの判断により、仕事ができない状態であること
- 休業中、給与の支払いがないこと
- 連続する3日間を含み、4日以上休業していること
以上のようになります。
一項目づつ詳しく見ていきます。
業務外の病気やケガで療養しており、休業中であること
業務内で病気や怪我をしたり、もしくは通勤中の怪我の場合は労災保険の範囲になってしまうので傷病手当金の支給対象外になります。
他にも美容整形などで仕事を休む場合も病気や怪我ではありませんので傷病手当金の対象外となります。
また、病気や怪我で仕事を休むことが条件なので、入院しなければならないという訳でもありません。
自宅療養も傷病手当金の対象です。
医師などの判断により、仕事ができない状態であること
しかし、それを証明するには医師の診断による証明が必要となります。
例えば、自己の判断や思い込みにより「自分は仕事ができない」と仕事を休み、傷病手当金を請求しても支給されません。
もし、自身の調子が悪く、仕事を長期に渡って休み、傷病手当金を申請したい場合は医師の診断が必要です。
休業中、給与の支払いがないこと
そういった観点から、給与の支払いがないことが条件となります。
しかし、これには条件があり、休業中に給与をもらっていたとしても傷病手当金より金額が少ない場合は、傷病手当金と給与の差額分が支給されます。
連続する3日間を含み、4日以上休業していること
連続した3日間の間に有給休暇並びに土日祝日が入ったとしても連続した3日間に数えられます。
仕事中に具合が悪くなり、早退した場合はその日が1日目と数えられます。
また、傷病手当金が支給されるのは連続した3日間の待機期間が完成した後の4日目からになります。
傷病手当金の支給期間は1年6ヶ月
健康保険法第99条2項の4に、
傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより疾病に関して、その支給を始めた日から起算して一年六月を超えないものとする。
出典: http://www.houko.com/00/01/T11/070.HTM
以上のように記載されています。
傷病手当金の支給期間の1年6ヶ月は、1年6ヶ月分の傷病手当金を貰えるという訳ではなく、傷病手当金が始めて支給されてから暦で数えて1年6ヶ月までとなります。
例えば1月1日から傷病手当金が支給された場合は、最長で翌年の6月30日までの支給となります。
注意が必要なのが、職場に復帰した後、また同じ病気や怪我で傷病手当金の支給を受ける場合、復帰後から1年6ヶ月を暦で数える訳ではなく、最初の傷病手当金が支給された日から数えます。
また、連続した3日間の待機期間が完成し、傷病手当金の支給の対象となっても、先に有給休暇を取得した場合は、有給休暇が終わった後から、1年6ヶ月が傷病手当金の支給期間となります。
3日間の待機期間とは?
この連続した3日間は、働くことができなくなった3日間ですので、有給休暇も含めて数えても構いませんし、土・日・祝日などの公休も3日間の中に含めて数えても構いません。
しかし、働くことができなくなった事を証明しなければならないので、働くことができなくなったら、できるだけ早く医師の診断を受けた方が良いでしょう。
病気の具合によっては、連続して3日間休んだが、その後すぐに職場に復帰、しかし具合がすぐれずまた休みことになった場合は、すでに連続した3日間の待機期間は完成していますので傷病手当金の申請はできます。
仕事中に具合が悪くなり早退した場合や、救急車で運ばれた場合はその日も1日目と数えます。
しかし、仕事中の場合、業務の理由で病気や怪我をした場合は労災になりますので、労災保険の休業補償給付を申請しましょう。
有給休暇を使用した期間は支給期間には含まれない
傷病手当金の支給基準の一つに「休業中に会社から給与をもらっていない」とい条件がありますが、有給休暇の場合は、その名の通り給料が有る休暇なので、給与が支給されます。
有給休暇が残っていても、傷病手当金の支給を受けることができます。
傷病手当金の支給額は収入の3分の2
支給開始日の属する月以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30×2/3
になり、上記の計算方法で算出された金額が1日の金額となります。
月の金額を知りたい場合は上記で算出された1日の支給金額にその月の日数を掛け算するとわかります。
土日祝日を考慮する必要はありません。
まだ1年間働いておらず、12ヶ月の平均報酬額がわからない場合は、まず支給開始日以前の標準報酬月額を足して、働いた月で割り平均をだします。
その算出された平均金額と、加入する保険組合の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬額を平均した額と比べて、低い方を使用し、後は同じく÷30×2/3と計算し1日の金額を算出します。
また上記で出てきた加入する保険組合の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬額を平均した額ですが、加入している保険組合で金額が変わってきます。
金額を知りたい場合は、問い合わせをしてみると良いでしょう。
傷病手当金の金額が調整されるケース
給与が支給されている
給与が支給されている場合は、傷病手当金は支給されないことは何度も説明しましたが、支給されるケースもあります。
給与が支給されているが、支給された金額が傷病手当金より少ない場合、その差額が支給されます。
出産手当金が支給されている
出産は病気や怪我ではありませんので、傷病手当金は関係がないように思えますが、つわりや切迫早産・妊娠高血圧症候群などの妊娠が原因で、仕事に就けない場合も傷病手当金の対象となります。
しかし、出産手当金と傷病手当金を重ねて支給を受けることはできません。
優先されるのは出産手当金になり、傷病手当金より出産手当金が少ない場合はその差額が支給されます。
同じ病気や怪我で障害年金を支給されている
障害年金とは、初診日から1年6ヶ月以上経ってから支給され、1年6ヶ月経っても病気や怪我が治らず、障害が出てしまい、日常生活に支障がある方を助ける制度です。
傷病手当金は1年6ヶ月で支給されなくなってしまいます。
しかし、必ず1年6ヶ月経てば病気や怪我が治る訳ではありません。
この障害年金は、1年6ヶ月から先を助ける制度とも言え、傷病手当金のように支給期間に決まりはなく、障害が改善しない限り支給され続けます。
障害年金も上記の二つと同じく重ねて支給を受けることはできません。
障害年金を360で割り、傷病手当金より少ない場合はその差額が支給されます。
給与並びに障害年金の両方が支給されている
この場合も傷病手当金より、給与並びに障害年金の合計額が傷病手当金よりも少ない場合はその差額が支給されます。
会社から見舞金を貰った
傷病手当金の支給を受けることができる方は、仕事に就いていて、加入している健康保険から支給される制度ですので、会社からお見舞いを貰うことがあるはずです。
この見舞金は会社からの報酬という扱いになり、傷病手当金が減額されてしまうことがあります。
なぜ、見舞金で減額されてしまうかというと、社員が結婚や葬儀そして入院した場合など会社の規定で支給される金額が会社の規則として決まっている場合が多いです。
そのように会社の規則として文書で残っている場合、見舞金は報酬と判断され傷病手当金が減額されてしまいます。
傷病手当金の支給を受け始めてから退職し、年金をもらっている
年金額を360で割り、その金額が傷病手当金より少ない場合は、差額が支給される。
遺族年金は対象外となります。
前払いで退職金を受け取ている
会社によっては前払いで退職金を支給する制度があります。
前払いで退職金が会社からの報酬となれば、傷病手当金と調整されてしまいます。
その基準は前払いでもらう退職金の回数であり、年に4回以上前払いされてている場合は健康保険法で報酬と見なされ、調整の対象となります。
理由は、年に4回以上、金額が支払われれば、被保険者の労働の対価でありまた収入として、普通に生活費に充てることができるからです。
傷病手当金の給付額は非課税
さらに、会社の保険組合によっては傷病手当金のほかに付加金が支給されることもありますが、それも非課税です。
しかし、住宅ローンや民間の保険に加入している方は、確定申告をすることでお金が戻ってくる可能性もありますので確認したほうが良いでしょう。
傷病手当金の申請方法と流れ
- 医師の判断により、病気や怪我の確認
病気や怪我をした場合、まず病院に行くことになりますが、その時に医師に会社に行けるようになるまでの期間や、おおよその治療費を確認すると良いでしょう。
治療期間が長引けば給与に心配も出てきますし、治療期間が長引けば治療費も心配になってきます。
そうなれば傷病手当金の申請を考えなければなりません。
傷病手当金の申請を考えれば、この時に医師に傷病手当金の証明書を書いてもらえるかどうかを確認しても良いでしょう。
- 会社へ報告
医師から、会社を休むようにと診断が出たことを伝えます。
仕事を休む期間で、有給休暇を取得するか、傷病手当金の支給を受けるか考えなければなりません。
有給休暇を取得すれば、傷病手当金は支給されませんが、傷病手当金だと給与の2/3しか支給されません。
どうすれば良いか会社や、会社の上司・担当者へ相談すると良いでしょう。
会社によっては傷病手当金の手続きをしたことがなく、突然傷病手当金の話をしても、手続きが進まない可能性もあるので、決断を早くし、傷病手当金の支給を選んだ場合、傷病手当金の担当者へ早めに話をすることをお勧めします。
- 傷病手当金の申請書を準備
申請書は全国健康保険協会の窓口、もしくはホームページから印刷することもできます。
場所によっては、年金事務所や商工会議所の窓口においてある場合もあります。
- 医師に証明書の作成を依頼
傷病手当金の申請書には医師に記入をしてもらわないといけない箇所があります。
その箇所は就労ができないことの証明欄になります。
必ず医師に記入してもらいますが、それには300円の手数料が必要です。
傷病手当金の証明料は、病院で治療を受けた場合と同じく保険適用となる為、金額が300円と決まっています。
傷病手当金の証明料は1,000円です。
これに健康保険が適用され70歳未満は3割負担ですので300円となっています。
しかし、会社から診断書の提出を求められた場合は、診断書の金額は病院で違いますので確認をしてみましょう。
また、記入してもらうには注意が必要で、記入してもらうのは申請期間が経過してからでなければなりません。
せっかく記入してもらったのに証明欄が無効となってしまう場合もありますので、申請期間の経過を確認してから医師に証明欄に記入をお願いしましょう。
- 会社に証明書の作成を依頼
最後に、事業所記入欄がありますので、会社の担当者にお願いし、必要事項を記入してもらいます。
申請期間中に給与が支給されていないか、有給休暇扱いをされていないか証明してもらわなければなりません。
なかにはタイムカードなどの証明するものが必要となる場合もありますので、添付書類があるかどうかを確認しておくとスムーズに申請できます。
また、この事業所記入欄も、申請期間が経過してから記入してもらわなければなりませんので、医師の証明欄と同じく注意してください。
- 全国健康保険協会に傷病手当金の申請書を提出
ほとんどの会社が、事業所記入欄をお願いし、事業所記入欄の記入が終わったらそのまま会社が申請書を提出してくれることが多いのですが、会社によっては、事業所記入欄の記入が遅かったり、提出が遅かったりします。
提出した後に安心せずに、確認を怠らないようにしましょう。
提出は自分ですることもできます。
提出場所は、保険所に記載されている健康保険組合の支部になりますので、連絡先を調べてみると良いでしょう。
傷病手当金の申請時のポイント
詳しく見ていきましょう。
申請から支給までの期間は1ヶ月ほど
申請までの流れを上記で見ていきましたが、申請書ができるまでも時間を要します。
医師の記入欄もすぐに記入してもらえるわけではありませんし、事業所の記入欄もすぐに記入してもらえるかどうかわかりません。
病気や怪我で仕事に就けなくなったときから時から考えると、支給まで2ヶ月、長ければ3ヶ月かかることもあるようです。
申請はあとからでも可能!ただし、申請期間には2年の時効がある!
その為、傷病手当金の支給対象とわかっていても手続きのわずらわしさで、後回しにしていたらあっという間に2年が過ぎてしまいます。
また、申請するまでも時間がかかってしまうので注意が必要です。
傷病手当金の申請は後からできますが、申請は出来るだけ早めに済ませましょう。
他に傷病手当金について知っておいたほうが良いポイント
退職などの資格喪失後も継続給付できるのか
まず、会社に在職中に、3日間仕事に就けなかった待機期間の完成が必要となります。
次に、健康保険協会の被保険者期間が1年以上でなければなりません。
この場合、職場が変わっても1年以上、被保険者であれば傷病手当金の支給の対象となります。
ここで注意が必要なのは1年間継続して被保険者でなければならず、1日でも空白があれば傷病手当金の支給を受ける対象とはなりません。
例えばA会社に10月31日まで在籍し11月2日からB会社で働いた場合は11月1日が空白となってしまうので傷病手当金の支給を受けることができなくなります。
次に、退職前に傷病手当金の支給を受けている場合は、約束通り1年6ヶ月まで傷病手当金の支給が受けられます。
次に、傷病手当金の支給条件を満たしていたが、給与が支給されていた、出産手当金の支給を受けていた、有給休暇を受けていたなど、条件を満たすが支給されなかった場合も傷病手当金の支給を受けることができます。
国民健康保険には傷病手当金の制度がない
故に、自身で働けなくなった場合の保障を準備しなければなりません。
その為に民間の保険会社に、就業不能保険なるものがあります。
国民健康保険に加入している方々は就業不能保険を検討してみてはいかがでしょうか。
フリーター(非正規雇用者)でも社会保険に加入していれば支給対象
社会保険に加入した場合は、健康保険の加入金を会社が半分負担してくれます。
これにより、フリーターであっても傷病手当金の対象者となることができます。
傷病手当金を受け取っている期間中にアルバイトをするとどうなるのか
理由は、傷病手当金の支給の条件の一つに労務不能があります。
アルバイトをする場合、労務不能状態と判断されない為、傷病手当金の支給が止まってしまいます。
まとめ
傷病手当金の全てをまとめてみました。
サラリーマンを助けてくれる最強の制度である傷病手当金ですが、支給条件や申請方法を学ばなければ、後で後悔することになりかねません。
傷病手当金の全てを学び、上手に傷病手当金の支給を受けましょう。