年末調整でがん保険の保険料は控除できる?書き方も解説

がん保険は、年末調整で税金控除の対象となるのでしょうか。対象となる場合、年末調整をしなければ、がん保険で損をしているかもしれません。実際に控除について考えるときには、受取人の設定に注意が必要です。では受取人に関して、どのような点に注意したらいいのでしょうか。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

がん保険も年末調整で税金控除の対象



民間の生命保険や医療保険に加入していると、支払った保険料に対して年末調整で所得税の控除を受けることができるのは、広く周知されています。


しかし、医療保険について実際どの保険に加入していれば控除を受けることができるのか、詳しく理解している人はあまりいません。


実は、がん保険に加入していても、医療保険と同じ扱いで所得税の控除を受けることができるのをご存知でしょうか。


そこで、この記事では「がん保険の保険料の年末調整」について、

  • 年末調整での保険料控除の仕組み
  • がん保険が保険料控除でどこに該当するのか
  • 保険料控除で実際にいくらぐらい控除が可能なのか

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、年末調整における保険料控除の仕組みを知ることができ、がん保険に加入している方がどのように年末調整を行うのか、いくらぐらいの還付を受けることができるのかを詳しく知ることができます。


是非最後までご覧ください。

そもそも年末調整とは

ではがん保険で税金控除をしてもらいたい場合に必要な年末調整ですが、どのような手続きをしたらいいのでしょうか。

年末調整とは、会社員などの給与を受け取っている方が、毎月給与から引かれている所得税を

調整する仕組みです。


この際に生命保険控除や住宅ローン控除などの控除をしてもらいたい場合には、書類を提出します。


期日までに提出しなければ、控除の対象ならないので注意しましょう。 

年末調整の生命保険料控除とは

がん保険を税金控除した場合、どのような流れで年末調整を行えばいいのでしょうか。

がん保険に加入している場合、年末が近づくと控除証明書が生命保険会社から自宅に届きます。


もし控除証明書が11月くらいまでに自宅に届いていない場合、早めに生命保険会社に問い合わせるようにしましょう。


そして自宅に届いた控除証明書を年末調整の書類として、勤め先に提出することで税金控除の対象にしてもらえます。 

がん保険は年末調整で介護医療保険料または一般生命保険料に区分される

がん保険の年末調整について考えるとき、受取人の問題以外に注意しなければならない点が存在しています。 


それが年末調整に大きく影響する税制改正が行われたということです。 


平成24年から生命保険料控除の仕組みが変わったことで、年末調整のがん保険の控除区分も変わりました。

契約日が平成23年12月31日以前ならがん保険は「一般生命保険料」の対象

受取人以外にも注意するべきポイントである税制改正ですが、平成24年以前の旧制度では、がん保険は一般生命保険料の対象となっていました。
 


この旧制度では、年末調整を行うことで最高5万円の控除を受けることができました。 

契約日が平成23年12月31日より後ならがん保険は「介護医療保険料」の対象

それでは、年末調整に影響する税制改正で、がん保険の控除の仕組みはどのように変わったのでしょうか。
 


生命保険料控除の仕組みで、今まで2つの項目だったのが3つの項目に分かれました。 


そしてがん保険は、新制度において介護医療保険料の対象となっています。 


介護保険医療保険では、最高で4万円の控除が受けられます。 

新制度と旧制度での最大控除額はそれぞれいくら?

まず生活保険料の控除は「新制度」「旧制度」とで別れています。


この違いを見分けるのには簡単で契約日が平成23年12月31日までなら旧制度、それ以降は新制度となります。わからない場合は契約している保険会社に問い合わせをしてみましょう。


また新制度に切り替わった後に契約の更新・転換、特約の付加をした場合には保険全体が旧制度から新制度に切り替わります。


「更新」とは保険の契約期間を延長することを言います。「転換」とは現在の保険の契約を下取りしてもらい新しく保険に加入することを言います。


新制度と旧制度、それぞれの最大控除額は以下の通りです。

  • 新制度…所得税12万円、住民税7万円
  • 旧制度…所得税10万円、住民税7万円
新制度では旧制度の控除内容に加えて介護医療生命保険料が加わりました。


注意が必要なのが生命保険料の控除額は、課税対象となる所得から差し引かれる分のことです。そのため控除額が返金される訳ではございません。

年末調整での控除額の計算方法

新制度での控除額の計算方法

年間払込保険料額控除される(所得税)金額
年間払込保険料額控除される(住民税額)金額
20,000円以下保険料全額
12,000円以下保険料全額
20,000円〜40,000円(保険料×1/2)
+10,000円
12,000円〜32,000円(保険料×1/2)
+6,000円
40,000円〜80,000円(保険料×1/4)
+20,000円
32,000円〜56,000円(保険料×1/4)
+14,000円
80,000円〜一律40,000円
56,000円超一律28,000円

旧制度での控除額の計算方法

年間払込保険料額控除される(所得税)金額年間払込保険料額控除される(住民税)金額
25,000円以下保険料全額15,000円以下保険料全額
25,000円〜50,000円(保険料×1/2)
+12,500円
15,000円〜40,000円(保険料×1/2)
+7,500円
50,000円〜100,000円(保険料×1/4)
+25,000円
40,000円〜70,000円(保険料×1/4)
+17,500円
100,000円〜一律50,000円70,000円〜一律35,000円

しかし年末調整の控除額の計算はインターネット上でも今ではできるようになりました。

生命保険料控除額計算サポートツール

こちらのサイトで簡単に計算することができます!

新制度・旧制度が混在している場合の計算方法

がん保険の契約状況によっては、旧制度と新制度の両方の控除を受けたいと考えて年末調整を行う方もいます。 


そのような方は、新制度と旧制度の仕組みを両方考えなければなりません。 

 

この場合、新制度と旧制度の両方について考えたうえで、最高4万円の控除が受けられます。  

各保険会社の生命保険料控除証明書について

年末調整でがん保険の保険料を控除するには各保険会社の「生命保険料控除証明書」というものが必要になります。


以下に各保険会社のリンクを貼っておきますので、気になる方はぜひ確認してみてください。


チューリッヒ生命はこちら


アフラックはこちら 


セコム損保はこちら 


アメリカンホーム保険会社(医療総合保険)はこちら

生命保険料控除の対象には、がん保険の受取人に条件がある

がん保険の生命保険料控除を受けたいと考えていても、どのような契約内容であっても、控除の対象となるわけではありません。

その控除の対象となるかどうかで注目するべき点が、がん保険の受取人が誰かという点です。


年末調整を行う前に、受取人が誰になっているのか確認して、生命保険料控除の対象となっているか確認しましょう。 

そもそもがん保険の受取人になれる人の条件:もちろん本人は可能

そもそもがん保険の受取人になれる方は誰なのでしょうか。

まず当たり前ですが、契約者本人が受取人になれます。


そして妻や子供など、自分の家族も受取人となれる方の1人です。


そのほかにも同居中の方など、生計を同じにしている方は、がん保険の受取人になれます


ただし、どの受取人であったとしても、生命保険料控除の対象とはなるわけではありません。 


生命保険料控除の対象のがん保険の受取人の条件

がん保険の年末調整では、受取人を書く欄が存在しています。

このとき、受取人によっては、生命保険料控除の設定とならないので注意しましょう。


多くの方は、受取人を本人に設定しているので、その場合は受取人のことまで考える必要はありません。 

生命保険料控除でいくらお金が返ってくるかシミュレーション

では実際に生活保険料控除でいくらお金が返ってくるかシミュレーションしていきます。


Aさんが支払った保険料は

  • 一般生命保険料…50,000円
  • 医療介護保険料…70,000円
  • 個人年金保険料…90,000円
所得税の生活保険料控除

計算式控除額
一般生命保険料(50,000×1/4)+20,000円32,500円
医療介護保険料
(70,000円×1/4)+20,000円
37,500円
個人年金保険料一律金額40,000円
生命保険料控除
100,000円
適用される生命保険料控除限度額を超えないのでそのまま適用100,000
住民税の生活保険料控除
計算式控除額
一般生命保険料(50,000円×1/4)+14,000円26,500円
介護保険料控除一律金額28,000円
個人年金保険料控除一律金額28,000円
生命保険料控除82,500円
適用される生命保険料控除限度額を超えたので70,000円

がん保険の受取人が複数人いる場合の年末調整の書き方

保険料控除申告書

保険料控除申告書
がん保険で年末調整を行うとき、がん保険の受取人が複数いるため困っているという方も多くいるかもしれません。

実際に年末調整を行いたくても、がん保険の受取人を記載する箇所は1人分しかありません


その場合、妻と子供を受取人に設定している方は、2人分記載できません。


そこでがん保険の年末調整を行う場合には、メインとなる受取人を1人分だけ記載しましょう。 

まとめ:がん保険の受取人の年末調整について

がん保険の受取人の年末調整について見てきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回のこの記事のポイントは、

  • 生命保険などの保険料を支払っていると、保険料控除の対象となる
  • 保険料控除を受ける際には、保険金の受取人が重要となる
  • がん保険は旧制度では「一般生命保険料」の対象、新制度では「介護医療保険料」の対象である
  • がん保険の受取人が複数の場合は1人分だけを記載する

です。


がん保険は、一般的に保険料控除の対象となり、年末調整で控除の申告ができます。


申告の方法も、保険料控除証明書のとおりに必要事項を転記するだけと簡単なため、必ず申告して還付を受けましょう。


しかし、保険料控除には受取人が誰かによって控除を受けることができない場合もありますので、加入するとき、もしくは加入中の方は受取人が誰になっているかを、改めて確認しておくことも重要です。

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