法人保険の「30万円特例」をわかりやすく解説!注意点と活用方法も紹介!

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どうにかして会社から出るお金を抑えたい。少しでも資産を増やしてキャッシュに余裕を持ちたい。そんなお悩みを持つ経営者に法人保険の30万円特例をご紹介。すでに法人保険に加入している方、まだの方に法人保険の30万円特例でなにができるのか、どうなるのを解説します。



▼この記事を読んで欲しい人

  • 法人保険の加入を考えている人
  • 法人保険に加入している人
  • 法人保険で節税を検討している人


▼この記事を読んでわかること

  • 法人保険の30万円特例の概要
  • 法人保険の30万円特例の適用条件
  • 法人保険の30万円特例の注意点
  • 法人保険の30万円特例の活用法

内容をまとめると

  • 法人保険の30万円特例は法人税基本通達9-3-5、9-3-5の2の2つ
  • 法人保険の30万円特例の適用条件は最高解約返戻率が70%以下の定期保険もしくは第三分野保険(短期払い)の年間保険料が30万円以下
  •  法人保険の30万円特例の4つの注意点は、実効税率、給付債務、他社契約、短期払いの30万円特例
  • 法人保険の30万円特例ので抑えておくべきポイント3つは、募集人契約、令和1年7月8日以前の税制改正と2つの特例(法人税基本通達9-3-5、9-3-5の2)
  • マネーキャリアはオンライン対応が可能なので法人保険の専門家にに気軽に無料相談できる! 
監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

法人保険の「30万円特例」の概要


法人保険の「30万円特例」は、被保険者1人あたりの年間保険料が30万円を下回ることで保険料全額が損金として計上できる制度になります。


仮に30万円を超えてしまった場合は特例の範囲外となり、少しでも超えると全てが損金として認められないので注意する必要があります。


この特例には2つ条件があり、1つ目が定期保険(保険期間が一定期間の死亡保険など)で解約返戻率が70%を下回る、2つ目が第三分野保険(がん保険や医療保険、傷害保険など)で保険料の払込期間が短期のものです。


 この法人保険の「30万円特例」には適用条件をはじめ注意点や活用法など抑えるべきポイントが多数あります。次項から法人税基本通達9-3-5、9-3-5の2の特例をそれぞれ分けて解説します。 

①法人税基本通達9-3-5の特例

法人税基本通達9-3-5の特例は、法人が契約者となって役員や使用人(親族も含める)を被保険者として保険料を支払います。


そして、定期保険(解約返戻金なしのプラン)もしくは第三分野保険の短期払いで、年間支払保険料が30万円を下回る条件で支払保険料全てを損金として計上できます。


ちなみに、定期保険と第三分野保険は定期保険特約や家族定期保険特約のような特約も含みます。


こちらに関しては詳しくは法人税基本通達9-3-5の2特例にて述べていますが、最高返戻解約率が70%以下で、年換算保険料相当額(当該保険に係る保険料の総額を保険期間の年数で割った金額)が30万円以下の保険に係る保険料を支払う場合も法人税基本通達9-3-5として損金となります。


第三分野保険は保険の開始日から被保険者が116歳を迎えるまでが保険期間の対象としています。法人税基本通達9-3-5の特例には注意点があり、次の条件下では損金として認められません。契約者が法人で被保険者を役員や部課長、使用人を限定とした場合は、保険料が損金ではなく給与として扱われます。

②法人税基本通達9-3-5の2の特例

法人税基本通達9-3-5の2とは、法人が契約者となり役員や使用人(親族も含める)を被保険者とした上で、被保険者の保険期間が3年以上の定期保険もしくは第三分野保険に加入します。


このとき最高返戻解約率が50%を超えるものに加入する必要があります。ただし、上述した最高返戻解約率が70%以下で、年換算保険料相当額が30万円以下の保険に係る保険料を支払う場合は、法人税基本通達9-3-5の2ではなく9-3-5として取り扱います。


この年換算保険料相当額ですが、複数の定期保険などに加入している場合は、それらの年換算保険料相当額を合わせた金額になります。


次に資産計上について、国税庁公式HPにて資産計上期間がある事業年度は当期分支払保険料を基に資産計上額の項目にある金額は資産として、残りは損金として計上します。


資産計上期間がない場合は損金として計上します。ただし、取崩期間がある場合は当期分支払保険料にて資産計上した分以外を損金として計上し、資産計上分は累積額を取崩期間の経過によって均等に取り崩します。最後はそれをその年の事業年度に係る金額として損金計上します。

法人保険の「 30万円特例」の適用条件

法人保険の「30万円特例」を受けるための適用条件には、最高解約返戻率(対象となる保険の保険期間で解約返戻率が一番高い割合となる期間にあたる割合)が70%以下の定期保険もしくは第三分野保険(短期払い)の年間保険料が30万円以下となっています。


最高解約返戻率は50%を超える数値から70%を下回る範囲になり、国税庁公式HPによると資産計上期間は「保険期間の開始の日から、当該保険期間の100分の40相当期間を経過する日まで」、資産計上額は「当期分支払保険料の額に100分の40を乗じて計算した金額」、取崩期間は「保険期間の100分の75相当期間経過後から、保険期間の終了の日まで」となっています。


 年間保険料が30万円以下については後に詳しく述べますが、被保険者一人当たりを基に定期保険や第三分野保険(短期払い)の年間保険料が30万円以下になっているかどうかがポイントです。


一社だけでなく他社契約で合算30万円を超えると適用外になるので、適用条件は把握しておきましょう。 

法人保険の30万円特例の4つの注意点

法人保険の30万円特例の適用条件を満たしている場合でもふとしたことで損する場合があります。


たとえば、節税ばかりに気を取られて余計な作業が増えると同時に給付債務を負う、法人保険を複数の保険会社で申し込み、特例の範囲外となって恩恵を受けられないなどです。


次からはその対策として実効税率によるメリットや給付債務のリスク、他社契約、短期払いの30万円特例を注意すべき点として4つに分けて解説します。

注意点①実効税率が30%を超えないとメリットなし

実行税率(法人税に法人事業税や法人住民税、地方法人税を含めた法人の所得に課税される実質的な負担割合を示したもの)が30%を超えないとメリットがありません。 


また、実行税率が30%を超えているからといって大きな恩恵があるとは限りません。1%、2%でも超えていれば適用の対象になりますが、法人税率が低い場合は節税の額が少なくなる点に注意してください。


 最高解約返戻率が70%を下回ることで年間保険料が30万円以下の特例を適用できるので、実行税率が30%を超えていることで支払保険料の全額を損金として扱える点はメリットに他なりません。


実行税率の求め方については以下を参考にしてください。


 {法人税率 × (1 + 法人住民税率 + 地方法人税率) + 法人事業税率} ÷ (1 + 法人事業税率) 

実行税率の計算については正確性を期すために、税理士のような専門家に任せるとよいでしょう。 

注意点②余分な給付債務を負うリスク

法人保険30万円特例2つ目の注意点に挙げるのは余分な給付債務を負うリスクについてです。 


法人保険30万円特例を用いることによって、退職金の規定をはじめとする給付債務を負ってしまうデメリットが発生します。


 給付債務の一つ目が退職金規定で、受取人である法人が保険金などを受け取り、役員や従業員などの被保険者に渡す場合に作成する規定になります。


このような作業をする理由は損金として計上するためです。
従業員、役員ともに対象とするもの(役職により規定が異なる)でそれぞれ支給金額やその方法、積立金など経理処理の一貫として扱われ、その分の作業が余分な給付債務になります。 


また、弔慰金規定もあり、亡くなった方を弔い、その遺族を慰めるお金を贈る制度も同様に経理処理の一貫として扱うことになります。 これらは損金として計上する一方で余分な給付債務が発生する点に気をつけてください

注意点③他社契約も合算される

3つ目は他社契約も合算されてしまう点です。最高解約返戻率70%を下回る全額損金特例や第三分野保険(短期払い)の特例は別個のものとして利用できます。


しかし、いずれも全損の特例は他社契約を通算するので、一つの契約が30万円以内でも同じ特例の適用を見据えた他の契約があれば合算(被保険者一人当たりを基に考えて他社契約の合算を考える必要があります)します。


 たとえば、ガン保険(15万円)に加入する一方で、介護保険(15万円)にも加入した場合は合算しても30万円を超えないので30万円特例の範囲内となります。


 ただし、ふとしたことで30万円を超える場合もあるので注意する必要があります。


たとえば、保険の見直しなどで片方を15万円以上にしたことを忘れ、うっかり数年後に医療保険にも加入するなどして通算30万円を超える場合です。


少しでも超えた場合は特例の範囲外となるので損金として扱われません。 

注意点④短期払いの30万円特例はすべて合算

4つ目は短期払いの30万円特例は全て合算する点です。


短期払いとは決められた保険期間よりも短い期間で保険料を払う制度で、保険料は高額になりますが支払期間が短くなる点が特徴です。


短期払いには第三分野保険が挙げられます。ちなみに、同保険には全期払いもあり保険期間満期まで支払う制度で、短期払いと比較すると保険料は安めになりますが支払期間が長くなります。


上述の他社契約と被る点がありますが、合算して30万円を超えない場合は30万円特例が受けられます。


30万円を超える場合は以下の計算式で支払保険料を損金と資産に分けることができます。


「年間保険料×保険料払込期間÷保険期間(116歳-契約年齢)」 

たとえば、被保険者(53歳)で払込方法が年払い、払込期間が5年、年間保険料は500,000円の場合。


支払保険料 500,000円×5年÷(116歳-53歳)=39,683円 

 

前払保険料 500,000円-39,683円=460,317円 

 つまり、初年度から5年目までは支払保険料39,683円が損金になり、前払保険料460,317円が資産として計上されます。


保険料払込期間終了後からは毎年上記の前払保険料を取り崩して支払保険料を損金として計上します。30万円を超えても一時的には資産として扱われるものの、保険料は次第に損金として計上できます。 

法人保険の30万円特例で抑えておくべき3つのポイント

法人保険の30万円特例で抑えておくべきポイントが3つあります。


1つ目は募集人契約が混じらないようにする。2つ目は令和1年7月8日以前の保険契約には適用されない。3つ目が2つの特例は通算されないです。


これらは節税を上手く進める上で外せないポイントになります。次からは30万円特例を有効に活用する上で抑えておくべきポイント3つを順番に解説します。

ポイント①他の募集人契約が混じらないように徹底する

募集人契約(保険代理店を仲介して保険を契約する)は混ざらないように徹底してください。


混ざってしまうと複数の募集人契約の場合、通算することで保険料が30万円を超える可能性があります。


また、被保険者が保険の契約前に病気や怪我を負っていた場合、保険金が下りない恐れや契約した内容が混同して不利益を被る可能性があります。


ですから、募集人契約は混ざらないように徹底しましょう。


 募集人(損害保険や生命保険などの保険商品を販売する者)は、保険の種類によって名前が異なり、生命保険を取り扱う場合は生命保険募集人、損害保険なら損害保険募集人とそれぞれ呼び名が違います。 

ポイント②令和1年7月8日より前の法人保険契約には適用されない

法人保険の30万円特例は令和1年7月8日税制改正によってそれ以前の保険契約には適用されないルールになっています。


改正前は逓増定期保険(ていぞうていきほけん)をはじめとする支払保険料の半分以上が損金となる保険商品が多数あり、節税対策として加入する法人が多かった特徴があります。


また、節税だけでなく解約返戻率が90%を超えるものもあったことから貯蓄性の高さもありました。


これらを含めた令和1年7月8日以前の保険全般は対象とならず、改正前の制度に基づいて経理処理されます。


ただ、税制改正前の法人保険には注意点があります。それは保険の更新です。更新することによって経理処理が変わる場合があるので、各々が加入する保険のルールをしっかり確認しておく必要があります。

ポイント③2つの特例は通算されない

法人保険の30万円特例において2つの特例は通算されません。この2つというのは、最初の方で説明した法人税基本通達9-3-59-3-5の2です。


改めて9-3-5は解約返戻金がない定期保険もしくは第三分野保険の短期払いで、年間保険料が30万円を下回れば支払保険料は全て損金になりました。


 9-3-5の2は保険期間が3年以上の定期保険、もしくは第三分野保険で最高返戻解約率が50%を超えると損金になりました。


いずれも法人保険30万円特例としての機能を持ちますが、この2つの特例は通算されないのがポイントです。


つまり、どちらも被保険者一人当たり30万円が上限のところ、通算しないので30万円の枠が2生まれ、合わせて60万円を上限とした損金計上が見込めます。


注意点の項目で挙げた短期払いの30万円特例はすべて合算する点でしたが、2つの特例は通算されないので混同しないように気をつけてください。


法人保険の30万円特例の活用法は次項で解説しますが、上手く活用すると節税の効果も大きいのでこの点は抑えておきましょう。 

法人保険の30万円特例を活用する方法

法人保険の30万円特例を活用する上で、節税も大事な部分ですが、保険なので被保険者一人一々の保障に加えて、保険料の積み立ても欠かせないポイントになります。


保険のプランについては経営者と従業員では事業上での立ち位置が異なるのでなにに重きを置くかは変わってきます。


次からは法人保険の30万円特例を活用する方法について経営者福利厚生(従業員)の2つに分けて解説します。

活用法①経営者の万が一のための保障

法人保険の30万円特例の活用法1つ目が経営者に万が一のことがあった場合の保証についてです。


経営者に関する問題を基に考えると、今後の事業展開や次期後継者などを踏まえた保証内容になるでしょう。


たとえば、万が一のことがあって亡くなった場合、多額の保険金を受け取ることができ、事業継続に充てるための資金にする。


経営者の遺族に贈るためのお金にするなど。他には経営者が退職してからもお金に困らないようにする保証などが挙げられます。


ただし、節税を意識し過ぎて補償内容が疎かになるのは言語道断です。

活用法②福利厚生

次は従業員に焦点を当てた福利厚生についてです。従業員も経営者と同様に退職後の生活を考えたプランを考えるかと思います。


その場合は保証を受ける一方で退職金の多いプランが向いているでしょう。


従業員が事故などで万が一亡くなった場合、法人が受け取った保険金の内、死亡保険金は遺族に渡す一方で、残りは会社の事業に充てるために使うケース。


他は従業員が退職金規定から外れた方法で退職した場合、解約返戻金を支払う必要はなくなるため会社の事業資金に充てられます。


経営者や従業員どちらも30万円特例が活用できる範囲内で、保証についてはどのようなプランが自分に合っているのか、専門家と相談して取り決めるといいでしょう。

最新の税制ルールに沿った節税や保険プランならまずは専門家に無料相談!

法人保険に加入するときは、常に最新の税制ルールを把握し、目的に沿ったプランに加入する必要があります。


その上で保険料を損金として計上できるよう節税も考慮しなければなりません。


加入者にとってなにを優先するのかによってプランの組み立ては変わりますが、企業や従業員に合ったものに加入しなければ保障の恩恵が少なくなります。


また、法人保険は個人が加入する保険と違って契約内容が大型になるので、安易な加入は損失を被ることに繋がります。


まずは、加入することでどんなメリットが得られ、デメリットはどれぐらいあるのかを予め計算しておくといいでしょう。


マネーキャリアの法人保険相談サービスでは、上記の点を無料で解決することができます。 


公式ページの申し込みフォームから相談予約を完了させれば、あとはLINE上でヒアリングや日程調整が完了するので便利です。


相談したいと思われる方は、ぜひマネーキャリアを利用してみてください!

法人保険の「30万円特例」に関するまとめ


ここまで法人保険30万円特例について法人税基本通達9-3-5、9-3-5の2の特例を皮切りに、適用条件、4つの注意点、抑えておくべき3つのポイント、活用法を解説してきましたがいかがでしたでしょうか。


 何度も述べていますが、法人保険は30万円の損金として使える枠がありますが、節税ばかりに気を取られて手薄な保障内容だと本末転倒です。


 また、法人税基本通達9-3-5、9-3-5の2は通算されない、令和1年7月8日以前の法人保険契約には30万円特例が適用されないなど様々な条件がありました。


他には実効税率が30%を超えないとメリットがなく、短期払いの30万円特例は合算されるなど。


これから法人保険の加入を考えている方、加入しているが今一つ制度の内容を理解しないまま進めていた方など、目的を明確にした上で加入するかどうかを判断しましょう。


ほけんROOMではこの記事以外にも役立つ記事を多数掲載していますので、ぜひご覧ください。 

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