被保険者の退職後も法人保険は継続可能?保険料を無駄にしないために

被保険者が急に退職した場合はそのまま法人保険を継続することはできるのでしょうか?また、もしそのまま放置していた場合にはペナルティなどはあるのでしょうか?今回は、法人保険契約期間に被保険者が退職した場合に必要な会社と被保険者の対応について詳しく解説していきます。

被保険者の退職後も法人保険をかけ続けることは可能?

法人保険に加入している場合、被保険者である社員がやめてしまっても保険契約を続けることはできるのでしょうか。

保険というのは一度契約してしまえば、満期がくる、もしくは契約者が解約するまでは契約が継続されるものです。

法人保険についても、保険料を払い続けていれば被保険者の退職については問題ない、とそう思っている方は少なくありません。

しかし本当に被保険者が退職したあと、法人保険の契約を続けてもいいものなのでしょうか?

そこで、この記事では「被保険者の退職後の法人保険継続」に関して
  • 継続した場合のペナルティ
  • 損金算入できるかどうか
  • 解約した場合の解約返戻金の使い方
  • 名義変更による契約の継続

について解説していきます。

この記事を読んでいただければ、被保険者が退職した場合に法人保険をどうすべきかお分かりいただけると思います。

どうぞ最後までご覧ください。

被保険者の退職後は法人保険の解約か契約者変更をする必要がある

法人保険は、原則その法人と雇用関係にある人に万一のことがあった場合の保険です。

そのため被保険者が退職するタイミングで保険契約を解約しなければなりません。

継続していた場合、税法に触れるので税務署から指摘を受ける可能性があります。

また解約時に受け取った解約返戻金は、その被保険者が退職する時に退職金の一部として支給されますので、法人が受け取るということはありません。

被保険者が会長や社長といった役職であったとしても、一社員と同様の扱いとなります。

原則法人保険は被保険者の退職後は解約しなければなりませんが、どうしてもその保険契約を継続したい場合、名義変更手続きといって契約者を変更することで継続することは可能です。

その場合、どのような形で保険契約を受け取るかにより、課税方法が変わるので注意が必要です。

基本的には被保険者退職後の保険料は損金算入に認められない

被保険者が退職した場合、基本的に法人保険を継続することはできません。


そのため税務上の恩恵も受けられないということになります。実際にあるケースとして1つの事例を紹介します。


法人を契約者とし、社員(役員含め)を被保険者とした養老保険に加入している場合の事例です。


養老保険というのは満期まで契約を続ければ満期保険金を受け取ることができ、満期までの間に万一のことがあれば死亡保険金が受け取れるという保険をいいます。


従業員がやめてしまったにも関わらず、「もう少しで満期だから解約するのは惜しい」と契約を続ける法人がいた場合、税務上はどのようになるのでしょうか?


「法人が自己を契約者とし、役員または使用人を被保険者とする保険」の場合に損金算入ができるので、通常ならば損金算入を認められていますが、従業員が退職していたと判明した時点で損金算入が認められなくなります。


法人との雇用関係がなくなった時点で、税務上のメリットも受けられなくなるということです。


※詳しい法人保険の経理処理方法についてはこちらの記事

被保険者退職後に保険金が法人に入ることはない

先ほどもお話しした通り、契約者が法人で従業員が被保険者の生命保険契約の場合、被保険者が退職した場合は保険契約を解約するのが通常の取り扱いです。
もう会社にいない人間の契約を続ける意味は全くありませんし、万一続けていても税務上の処理が適切ではなくなりますよね。

また、退職した元従業員のご遺族からクレームを受けるケースがあります。次のような場合です。

元従業員が死亡した時には、死亡を証明するために死亡診断書の取り寄せが必要となります。そこで会社側でご遺族に死亡診断書の提出を依頼したところ、「もう退職した人間の死亡保険金を会社側が全額受け取るのはおかしい。遺族側にも受け取る権利があるはずだ。」と訴えをおこされる可能性があるのです。
そのような無用なトラブルは避けたいですよね。

また、従業員が退職をする時に、生命保険を現物支給という形で渡すことも出来ます。
その場合は、死亡保険金を受け取るのはご遺族になります。

このように従業員(被保険者)が退職をした後に死亡保険金を会社側が受け取る事は出来ませんので注意してくださいね。   

補足:被保険者退職後に保険料の損金算入が認められることもある

今までの説明ですと、従業員(被保険者)が退職した後の生命保険の保険料は損金に算入されないという事でしたが、例外として損金算入が認められたケースがあります。


実際に裁判となったケースで紹介します。 


契約形態
契約者A社
被保険者A社の従業員
保険金受取人A社
契約内容終身がん保険
 


<概要>

A社では、従業員の福利厚生の一環として「がん保険」の契約を上記契約形態で結んでいました。

従業員が退職した後も、法人税の申告時に、がん保険の保険料を損金に算入。

税務署が「退職者の保険料は損金に算入出来ない」と更生処分を行ったところ、A社は不服申し立てを行いました。

結果、国税不服審判所の裁決は「損金に認められる」となりました。(平成29年12月12日裁決分) 


何故、損金と認められたのでしょうか?

損金として認められた理由は次の通りです。

  • 従業員が退職後、5年間はがん保険の給付金等を支給する事を書面で説明していたこと。 
  • 従業員も、退職後の生活の安定がはかれると周知していたこと。
  • 会社側の業務との関連性があり、会社側の業務の遂行上必要と認められたこと。

このようなケースでは従業員退職後に損金に算入される事もありますので、参考にしてください。

被保険者退職後の解約返戻金と保険契約についての対応方法

法人保険に加入する目的が節税であったり、資金調達手段であった場合、あまり知られていないのかもしれませんが、解約返戻金を社員の退職金にあてるということもできます。

基本的に社員を被保険者とした法人保険は被保険者が退職をしてしまった場合、解約することになります。

その場合、保険契約は消滅し、また解約することで解約返戻金が発生します。

その解約返戻金はどうしたらいいのでしょうか。

ここでは被保険者が退職をすることになった場合の解約返戻金の使い方や保険契約について説明します。


解約返戻金が使えるのなら退職金として使おう

上述しましたが、法人保険の場合、解約返戻金を社員の退職金の一部にあてることができます。


社長など役職のある社員の退職金は特に高額になることが多いため、調達するのはなかなか大変です。


解約返戻金額は変動しますが、退職のタイミングで一番多くなるように契約をすることで、資金を調達する手段となります。


保険商品の種類によって程度は違いますが、節税効果も得ることができます。


このように被保険者が退職をするタイミングで、契約をしている法人保険の解約金を退職金としてあてることはとてもいい方法です。


退職金は大きな金額で、経営的にかなりの支出となりますが、退職金制度は福利厚生の一つとしてぜひとも整えておきたい制度です。


法人保険を上手に利用することをぜひ検討していただきたいと思います。

解約返戻金が少ないのなら、名義変更することも可能

「解約返戻金を退職金にあてる」と先ほどはお伝えしましたが、他にも方法があります。


それは名義変更です。


契約者を法人から個人に変えてもらうことで保障を継続することができます。


がん保険やそれ以外の医療保険など、退職した後も継続したい保険があると思います。


その場合、名義変更することで契約継続が可能となります。


ただこの方法は注意が必要です。


医療保険などはあまり解約返戻金が多くないので心配はいりませんが、もし解約返戻金が多くあった場合、税金が多くかかってしまいます。


名義変更を検討される場合はよく確認してください。

参考:退職後に事業主が法人保険を解約してくれない場合には

既に雇用関係にはないのにも関わらず、法人保険契約を継続しているケースもあります。


被保険者にされてしまっている元社員としては気持ちのよくない話だとは思いますが、特に損をすることはありませんので安心してください。


ただ、どうしても気になるということでしたら、保険会社よりも税務署に相談してみましょう。なぜなら税法に触れている可能性があるからです。


そもそもなぜ事業主は法人保険の保険契約を解約しないのでしょうか?


考えられる理由としては何かしらの節税に利用すると考えられます。


前述しましたが損金算入の条件として、被保険者はその法人と雇用関係にないといけません。


退職した時点で条件を満たさなくなってしまっているのです。


税務署に相談すれば、税務署から保険契約の解除を促してもらえると思われます。



まとめ:被保険者退職後は名義変更か退職金に使おう

「被保険者退職後の法人保険」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、被保険者が退職した場合、

  • 法人保険を継続できるのかどうか
  • 法人保険を継続した場合のペナルティ、損金算入についてはどうか
  • 法人保険を解約した場合の解約返戻金の使い方
  • 名義変更による契約の継続
です。

法人保険というのは、契約者を法人、被保険者を社員(役員含め)とする保険です。

それが税法上、損金算入できる条件ともなっています。

被保険者が退職をしてしまえば、契約者である法人が法人保険を続けるメリットはないのです。

ですから継続ではなく解約によるメリットを受けることをおすすめします。

多額の支出となるであろう退職金が解約返戻金によって確保できるので、経営の大きな助けとなります。

最後までご覧頂きありがとうございました

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この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、「マネーキャリア」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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