更新日:2022/07/18
従業員の退職後も法人保険は継続可能?保険料を無駄にしないために
被保険者が急に退職した場合はそのまま法人保険を継続することはできるのでしょうか?また、もしそのまま放置していた場合にはペナルティなどはあるのでしょうか?今回は、法人保険契約期間に被保険者が退職した場合に必要な会社と被保険者の対応について詳しく解説していきます。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 従業員の退職後も法人保険をかけ続けることは可能?
- 従業員の退職時は法人保険の解約か契約者変更をする必要がある
- 基本的には従業員退職後の保険料は損金算入に認められない
- 従業員退職後に保険金が法人に入ることはない
- 補足:被保険者退職後に保険料の損金算入が認められることもある
- 従業員退職後の解約返戻金と保険契約についての対応方法
- 解約返戻金が使えるのなら退職金として使おう
- 解約返戻金が少ないのなら、名義変更することも可能
- 参考:退職後に事業主が法人保険を解約してくれない場合には
- まとめ:従業員の退職後は名義変更か退職金に使おう
- 法人保険について気になることがあるなら、まずは保険のプロに無料相談!
目次
従業員の退職後も法人保険をかけ続けることは可能?
- 継続した場合のペナルティ
- 損金算入できるかどうか
- 解約した場合の解約返戻金の使い方
- 名義変更による契約の継続
従業員の退職時は法人保険の解約か契約者変更をする必要がある
基本的には従業員退職後の保険料は損金算入に認められない
従業員が退職した場合、基本的に法人保険を継続することはできません。
そのため税務上の恩恵も受けられないということになります。実際にあるケースとして1つの事例を紹介します。
法人を契約者とし、従業員(役員含め)を被保険者とした養老保険に加入している場合の事例です。
養老保険というのは満期まで契約を続ければ満期保険金を受け取ることができ、満期までの間に万一のことがあれば死亡保険金が受け取れるという保険をいいます。
従業員がやめてしまったにも関わらず、「もう少しで満期だから解約するのは惜しい」と契約を続ける法人がいた場合、税務上はどのようになるのでしょうか?
「法人が自己を契約者とし、役員または使用人を被保険者とする保険」の場合に損金算入ができるので、通常ならば損金算入を認められていますが、従業員が退職していたと判明した時点で損金算入が認められなくなります。
法人との雇用関係がなくなった時点で、税務上のメリットも受けられなくなるということです。
従業員退職後に保険金が法人に入ることはない
その場合は、死亡保険金を受け取るのはご遺族になります。
補足:被保険者退職後に保険料の損金算入が認められることもある
今までの説明ですと、従業員(被保険者)が退職した後の生命保険の保険料は損金に算入されないという事でしたが、例外として損金算入が認められたケースがあります。
実際に裁判となったケースで紹介します。
契約形態 | |
---|---|
契約者 | A社 |
被保険者 | A社の従業員 |
保険金受取人 | A社 |
契約内容 | 終身がん保険 |
<概要>
A社では、従業員の福利厚生の一環として「がん保険」の契約を上記契約形態で結んでいました。
従業員が退職した後も、法人税の申告時に、がん保険の保険料を損金に算入。
税務署が「退職者の保険料は損金に算入出来ない」と更生処分を行ったところ、A社は不服申し立てを行いました。
結果、国税不服審判所の裁決は「損金に認められる」となりました。(平成29年12月12日裁決分)
何故、損金と認められたのでしょうか?
損金として認められた理由は次の通りです。
- 従業員が退職後、5年間はがん保険の給付金等を支給する事を書面で説明していたこと。
- 従業員も、退職後の生活の安定がはかれると周知していたこと。
- 会社側の業務との関連性があり、会社側の業務の遂行上必要と認められたこと。
このようなケースでは従業員退職後に損金に算入される事もありますので、参考にしてください。
従業員退職後の解約返戻金と保険契約についての対応方法
解約返戻金が使えるのなら退職金として使おう
法人保険の場合、解約返戻金を従業員の退職金の一部にあてることができます。
社長など役職のある従業員の退職金は特に高額になることが多いため、調達するのはなかなか大変です。
解約返戻金額は変動しますが、退職のタイミングで一番多くなるように契約をすることで、資金を調達する手段となります。
保険商品の種類によって程度は違いますが、税制優遇を受けるができます。
このように被保険者が退職をするタイミングで、契約をしている生命保険等の法人保険の解約金を退職金としてあてることはとてもいい方法です。
退職金は大きな金額で、経営的にかなりの支出となりますが、退職金制度は福利厚生の一つとしてぜひとも整えておきたい制度です。
法人保険を上手に利用することをぜひ検討していただきたいと思います。
解約返戻金が少ないのなら、名義変更することも可能
「解約返戻金を退職金にあてる」と先ほどはお伝えしましたが、他にも方法があります。
それは名義変更です。
契約者を法人から個人に変えてもらうことで保障を継続することができます。
がん保険やそれ以外の医療保険など、退職した後も継続したい保険があると思います。
その場合、名義変更することで契約継続が可能となります。
ただこの方法は注意が必要です。
医療保険などはあまり解約返戻金が多くないので心配はいりませんが、もし解約返戻金が多くあった場合、税金が多くかかってしまいます。
名義変更を検討される場合はよく確認してください。
参考:退職後に事業主が法人保険を解約してくれない場合には
既に雇用関係にはないのにも関わらず、法人保険契約を継続しているケースもあります。
被保険者にされてしまっている元社員としては気持ちのよくない話だとは思いますが、特に損をすることはありませんので安心してください。
ただ、どうしても気になるということでしたら、保険会社よりも税務署に相談してみましょう。なぜなら税法に触れている可能性があるからです。
そもそもなぜ事業主は法人保険の保険契約を解約しないのでしょうか?
考えられる理由としては何かしらの税務対策に利用すると考えられます。
前述しましたが損金算入の条件として、被保険者はその法人と雇用関係にないといけません。
退職した時点で条件を満たさなくなってしまっているのです。
税務署に相談すれば、税務署から保険契約の解除を促してもらえると思われます。
まとめ:従業員の退職後は名義変更か退職金に使おう
「従業員退職後の法人保険」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは、被保険者が退職した場合、
- 法人保険を継続できるのかどうか
- 法人保険を継続した場合のペナルティ、損金算入についてはどうか
- 法人保険を解約した場合の解約返戻金の使い方
- 名義変更による契約の継続
法人保険について気になることがあるなら、まずは保険のプロに無料相談!
法人保険の専門家は従業員退職時の処理といった保険の知識だけでなく、最適な活用プランなどについても相談することが可能です。
法人保険の適切な運用を行うために知識を身につけることは重要ではありますが、そのために時間を失うことはとても惜しいです。
そのため、最後は自分で納得して決めることは重要ですが、まずは専門家の意見を聞いて自分の考えと照らし合わせることが大切になります。
マネーキャリアならオンラインで気軽に無料相談ができ、些細な疑問があればなんでも聞くことができます。
また、すでに法人保険に加入している方も、一度セカンドオピニオンとして保険活用のプランや知識を吸収する機会になるため、ぜひ利用してみて下さい!