更新日:2019/01/11
基本と応用―子どものための教育資金を用意する『学資保険』とは?
子どもの将来を考えるうえで重要な、最も良い「教育資金の準備の仕方とは」という問題。貯蓄でも投資でもなく、なぜ『学資保険』という方法を選べるのか、そもそも学資保険とは何か、そして「なぜ」「どのように」加入するかという疑問点は、知ることによって必ず解決できます。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 学資保険に関する全情報まとめ
- 学資保険の特徴とは
- 学資保険に加入する目的
- 学資保険の加入率
- 学資保険の種類:貯蓄型と保障型とは
- 学資保険の特約とその種類
- 学資保険の育英年金とは
- 学資保険の返戻率とは
- 学資保険を選ぶ際は返戻率に注目すべき
- 学資保険の返戻率を高くする方法
- 学資保険の元本割れに要注意
- 学資保険のメリットとデメリット
- メリット1.親にもしものことが起きた時に、保険料の支払い免除の措置がある
- メリット2.定期預金などに比べて税制面で優遇されている
- デメリット1.元本割れのリスクがある
- デメリット2.学資保険は保険料が高い
- デメリット3.インフレリスクに対応できない
- 学資保険に加入するタイミング
- 学資保険は出産予定日の140日前
- 学資保険の加入は早ければ早い程良い
- 学資保険への加入がおすすめの方とおすすめできない方
- おすすめな方の特徴:貯蓄もして保障も欲しい方
- おすすめな方の特徴:浪費グセがあり自分では貯金できない方
- おすすめできない方の特徴:満期金の受け取りをいつにするか定まっていない方
- おすすめできない方の特徴:学資保険の返戻率に満足できない方
- 学資保険以外に子どもの教育資金を確保する方法
- 預貯金で賄う
- 生命保険で賄う
- 低解約返戻金型終身保険を利用する
- 株、証券など金融商品を利用する
- 学資保険と税金まとめ
- 学資保険の課税額の計算方法
- 学資保険は生命保険料控除の対象になる
- まとめ
目次
学資保険に関する全情報まとめ
今現在、小さい子どもを育てている方も、これから育てることになるという方も、皆が子どもが健やかに育ち、いつかは自分の力で未来を切り開いていくことを期待しておられるのではないでしょうか。実際、親には子どもたちの未来を切り開く準備をしてあげる責任があります。最終的にどのような道を行くのかは子どもたち次第ですが、その道を指し示してあげるにしたがって、必ずと言って良いほど直面する問題があります。
それが、「お金(教育資金)」の問題です。
一般的に、子どもに掛かる教育資金は、最低でも1000万円だとされています。この金額を少ないかまたは多いか、と見るのはそれぞれの価値観に左右されますが、あくまでそれは参考値、最低値でしかなく、親が子どもにどんな未来を歩んでほしいと望んでいるか、また子どもがどのような未来を望んでいるかという点によっては、さらに子どもの教育に掛かる資金が膨れ上がることは、容易に想像できます。
実際のところ、子どもの将来に備えるために、最適と言える手段を考えてみる―その意識は年々高まっています。SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)などの普及で情報が簡単に共有できるようになり、他の人と実際の経験を交えながらそれについて考える機会も増えています。
そこで一つの選択肢として登場するのが、『学資保険』です。これは、子どもがまだ小さいうち、いいえ、生まれる前から準備することが可能な方法なのですが、そもそも学資保険とはどのような保険なのでしょうか。どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
学資保険の特徴とは
私たちが加入することのできる保険の種類はいくつもありますが、簡単に言うと学資保険は
支払った保険料が教育資金として『貯蓄』され、満期になれば貯蓄分を保険金として受け取れる
というものです。
そのように言うと、学資保険とはただの貯蓄型の保険のように思われてしまいがちですが、学資保険には単に将来の学資金の準備をするだけではなく、子どもたちが病気になったり、怪我をしたりするなどした際の保障も含まれているものがありますから、旧来の呼び方である『こども保険』をイメージした方が分かりやすいでしょう。
学資保険に加入する目的
子どもの将来の学資金を準備するだけならば、確かに銀行で貯金を行うだけでも可能です。毎月決まった額を積み立てていけば、少しばかりの利息は付き、子どもが成長したころにはある程度の積立額になっているでしょう。しかし、銀行での貯蓄にはいくつかのデメリットが挙げられます。
- 貯蓄分を途中で崩してしまう可能性がある
- 経済的な都合で貯金自体が継続できなくなる可能性がある
- 受け取れるのは当然積み立てした額(+ほんの少しの金利)だけ
- 貯蓄する目的、目標を見失いやすい
例えば、何か欲しい商品があるとして、そのために貯金を始めたとします。その目標額がそこまで大きくなければ、一年、または半年もかからずに目標額を達成できて、欲しい商品に手が届くかもしれません。しかしそれが、5年、10年スパンで考えなければならないくらい高額な商品だったとしたらどうでしょうか。もしかすると、途中でお金が入用になったりするなどして、貯金を下ろしてしまうかもしれません。それに、想定している期間が長すぎて、欲しい商品が変わったり、そもそも欲しくなくなったりするなど、目的や目標を途中で見失ってしまうこともあるでしょう。
学資保険の目標額も、10万、20万ではなく、必然的にある程度高額な設定となります。そのために、子どもが成長するまでのある程度の年数が必要であることを考慮する必要があります。それを考えたときに、学資保険がメリットになる部分としては、
- 貯蓄が継続しやすく、保険という形をとるのでモチベーションが維持しやすい
- 保障も付帯されているものならば、子どもたちの病気や怪我などにも備えられる
- 途中で保険料が支払えなくなった時の、救済措置がある
- 節目となる年数で、「お祝い金」を受け取ることができる
- 綿密な計画を立てるので、貯蓄する目的、目標を見失わずに貯蓄ができる
このような点などが挙げられます。何よりも優先されるべきなのは、本来の目的である『子どもたちの将来に備えること』ですから、これが達成できなければ意味がありません。その第一目標を確実に達成しやすくなる、という点で、学資保険は確かに良い選択肢の一つであると言えます。
学資保険の加入率
ある2013年の統計によると、ネット上の20代から50代の男性・女性合わせて1000人近くを対象とした調査では、半数以上の方がすでに学資保険に加入している、と回答しました。さらに、どちらかというと若年層の方が学資保険の必要性を高く感じていることも統計により分かりました。
では、それら多くの方は「なぜ」、「どのような」学資保険を選んで加入したと回答しているのでしょうか。割合が高いものとして挙げられる点としては、
- 返戻率の高さ
- 保険金を受け取ることができる時期
- 何らかの理由で支払えなくなった時の補償(救済措置)内容
- 保険(会社)の規模や実績等
これらの要素が挙げられています。
やはり多くの方が重視しているのは、返戻率など『貯蓄面でどれくらいのメリットがあるのか』という点です。家族にとって最適な学資保険を選ぶ際にもそのような要素を重視するなら、より良い学資保険を選ぶことができるでしょう。
しかしここで本当に大切なのは、「その学資保険の質がどのくらい高いか」「その保険にどのくらい多くの人が加入しているか」という点だけではなく、『その学資保険は自分や家族、子どもの将来に最適だろうか』という点です。保険に加入する際は理想の将来設計だけではなく、家庭の経済状況など現実的な問題にも向き合う必要があります。そのうえで、『自分の家族(子ども)にとって最適な保険』とは何かという点を、いくつかの学資保険を比較考慮しながら考えていきましょう。
学資保険の種類:貯蓄型と保障型とは
それぞれの特徴としては、
貯蓄型:将来受け取ることができる保険金の額、いわば本来の目的である『貯蓄』の部分を重視したもの。返戻率が高めで、元本割れが起こりにくい。
保障型:学資金の準備と、入院や手術時等の補償を両立できるもの。貯蓄目的でも加入は可能だが、どちらかというと『保障』の部分が重視されている。
という点が挙げられます。
学資保険に加入するときにはっきりさせておきたいのは、そもそも「なぜ」学資保険に加入する必要性を感じているのか、という点です。予想以上に、そして必ず必要になる学資金を今から確実に準備しておきたいのか、それとも子どもが怪我をしたり病気などで入院したときに保障を受けたいという部分を優先しているのか、どちらが本来の目的であるかを考えるならば、おのずとどちらのタイプの学資保険に加入すれば良いのかという点がはっきりと見えてきます。
逆にその目的が曖昧なまま学資保険に加入すると、学資保険で考えなければならないデメリット…これは後に詳しく取り上げますが、その問題にぶつかったときに、やはり加入しなければ良かった…なんていう考えに簡単に陥ってしまうかもしれません。ですから、きちんと目的別に用意された学資保険を、それぞれのメリットを考えながら、慎重に選ぶ必要があります。
学資保険の特約とその種類
- 入院時の保障:病気や怪我などで子どもが入院した際に、一日単位で入院費の保障が受けられる
- 手術時の保障:手術が必要となった際に、手術費の保障が受けられる
- 特定の治療(放射線治療等)を行った際に、費用の保障が受けられる
- 死亡、傷害の保障:事故や災害等で死亡、また障害を負った際に、保障が受けられる
- 保険金支払い免除の特約:保険料の支払者である親が死亡または障害を負った際にその後の保険料支払いが免除され、満期時の保険金も受け取れる
- 育英年金特約:学資保険に付帯する形で、親(支払い者)の死亡保障に類似する保障を付けられる。本来保険金を受け取れる満期まで、「育英年金」が支払われ続ける。
このような特約などがあります。
特約を追加することによってさらに安心をプラスできますが、その分支払う保険料も高額になり、さらにその保険内で保障が賄われるため、返戻率が下がり、元本割れが起こりやすくなります。ですから前述したように、やはり特約も本来の目的をはっきりさせたうえで、加入するかどうかを検討するべきです。
学資保険の育英年金とは
育英年金とはあくまで子どものための学資保険に追加するものですが、保険料が支払えなくなる理由というのは、死亡、または障害を負ったという理由だけではなく、失業して収入が激減したなど、他の理由も考えられます。ですからリスクを分散するために、主に生計を立てるための給料を貰っている方の親が、別途異なる生命保険に加入することも検討できるでしょう。
学資保険の返戻率とは
学資保険を選ぶ際は返戻率に注目すべき
先ほども挙げたように、保険はそのタイプ(型)によって特徴が異なります。貯蓄を主としたものか、保障を主としたものかによって、それぞれ違っています。また、返戻率は保険に加入している年数によっても異なり、基本的に加入年数が多くなれば多くなるほど、返戻率は高くなります。満期までに貯蓄分として支払った総額の割合を100とすると、満期に受け取れる保険金の総額も100となるのが普通です。しかし、多くの学資保険は返戻率が「102%」、「105%」や、「110%」と謳っているものが多く、単純に、より返戻率の高い保険を選ぶことが可能です。
ただし、医療保障が適用になった場合など、その提示されている返戻率は絶対ではありません。返戻率が他よりも高いと思って加入したのにもかかわらず、結果的に、予想よりも受け取れる保険金の額が少なくなってしまったということも発生し得ます。では、可能な限り返戻率を高めるために、どのような対策が行えるのでしょうか。
学資保険の返戻率を高くする方法
- 保険料の支払いをできるだけまとめて行う
- 保険料の払い込み期間を短く設定する
- 元本割れの原因となる保障・特約に加入しない
という点が挙げられます。
学資保険には、子どもが特定の年齢になるまでに、保険料を払い込むタイプのものがあります。例えば、保険料を18歳で払い込むタイプの保険と、さらに早めの12歳で払い込むタイプの保険を比べたとき、18歳で払い込むタイプの方が月々に支払う保険料を抑えることはできますが、その分支払う保険料の総額は多くなります。それに対して、12歳に払い込みを終えてしまうタイプの保険は、当然月々の支払額は大きくなりますが、その分支払う保険料の総額が少なくなります。
- 払い込み期間が長い:月々の保険料が少なくなるが、支払総額は多くなる→返戻率が下がる
- 払い込み期間が短い:月々の保険料は高くなるが、支払総額は少なくなる→返戻率が上がる
このように、可能な限り返戻率を上げたいのなら、同じ保険であっても支払期間が短いタイプのものを選択することができるでしょう。
学資保険の元本割れに要注意
最初からその元本割れリスクを想定して準備をすることも大切ですが、リスクを回避するための準備も大切です。もともと医療保障のおまけ、と考えて学資保険に加入するのなら考え方も変わってきますが、いざ保険金を受け取る段になって「損をした」と感じないように、慎重に学資保険を選ぶ必要があるでしょう。
学資保険のメリットとデメリット
メリット1.親にもしものことが起きた時に、保険料の支払い免除の措置がある
メリット2.定期預金などに比べて税制面で優遇されている
デメリット1.元本割れのリスクがある
デメリット2.学資保険は保険料が高い
デメリット3.インフレリスクに対応できない
学資保険に加入するタイミング
学資保険は出産予定日の140日前
学資保険の加入は早ければ早い程良い
ですから、学資保険について計画するのも加入するのも、早ければ早いほど良い、という点を覚えておきましょう。
学資保険への加入がおすすめの方とおすすめできない方
おすすめな方の特徴:貯蓄もして保障も欲しい方
おすすめな方の特徴:浪費グセがあり自分では貯金できない方
おすすめできない方の特徴:満期金の受け取りをいつにするか定まっていない方
おすすめできない方の特徴:学資保険の返戻率に満足できない方
学資保険以外に子どもの教育資金を確保する方法
預貯金で賄う
- 元本割れのリスクがある
- 保障を充実させるための選択により、逆に返戻率が下がってしまう
- 銀行での預貯金よりも保全性が低い
というデメリットがある部分も無視できません。これらを考えた際に、計画性を持って積み立てられるならば、積み立てた分はほぼ確実に受け取ることができる方法を選ぶという方もおられるでしょう。
生命保険で賄う
一般的に、貯蓄型の保険において満期に受け取れる保険金をどのような用途で使用するかという点は指定されていません。ですから、受け取った保険金を教育資金にまわすという計画のもと、他の、より保険料が安くおさまる貯蓄型の保険に加入するというのも一つの手段です。
低解約返戻金型終身保険を利用する
これは、保険解約時に受け取ることができる解約返戻金が、60歳など、ある一定の年齢に達すると100%を上回るというものです。年数が経たないうちに解約してしまうと損ですが、これも貯蓄型の保険として扱うことができますから、教育資金を用意するための一つの選択肢になります。
株、証券など金融商品を利用する
学資保険と税金まとめ
学資保険の課税額の計算方法
(祝い金も含む満期に受け取る保険金額 - 支払う保険料の総額 - 特別控除上限額50万円)× 1/2
として計算できます。
学資保険において、一時所得となる保険金に税金が課される可能性が低いのは、この計算式に当てはめて計算したときに答えがマイナスになる場合が多いからであり、結果的に所得税がかからないことの方が多いのです。
学資保険は生命保険料控除の対象になる
まとめ
長距離マラソンを完走しようと思うときは、ただ走るだけでなくあらかじめペース配分を考えて走る必要があります。それと同様に、教育資金を貯めるための手段、そして保険の選び方においても、早めに良い計画を立てておくならば、より良い『計画達成』というゴールテープを切ることができます。そしてそのゴールは、子どもにとってのより良い未来、次のレースへとバトンを渡すものとなります。
どのような将来を歩むか…それは最終的に子どもが決めるものであり、親が進むべき道を強制することはできません。しかし教育資金は、子どもの将来における可能性を広げるものとなりますから、本当に子どもにとって良い選択ができるように、そして後で後悔しない選択ができるように、早めに計画して準備していきましょう。そのスタートラインにおいて『学資保険』という一つの選択肢が、皆さんの、そしてお子さんにとっての、より良い人生のレースを彩るものとなりますように。