更新日:2024/08/07
生命保険会社は倒産する?破産時のリスクと救済措置について解説!
生命保険会社が倒産しても、生命保険契約者保護機構が保険契約者を代理し、救済措置をとります。倒産のような事態にならないために、生命保険会社が健全な経営を行う事は当然ですが、保険契約者である私たちも、常に生命保険会社の経営状態を把握している必要があります。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- そもそも生命保険会社は倒産するのか
- 過去に倒産した生命保険会社
- 倒産する原因とは
- 生命保険会社が倒産した場合、保険契約はどうなるのか
- 生命保険契約者保護機構が資金援助などを行う
- 救済保険会社が現れた場合
- 過去の倒産会社と救済保険会社一覧
- 救済保険会社が現れなかった場合
- 生命保険会社が倒産した場合、保障内容は変更されるのか
- 保障内容はほぼまちがいなく変更される
- 責任準備金の削減
- 予定利率の削減
- 倒産しない生命保険会社を選ぶときのポイント
- ソルベンシー・マージン比率について
- 決算情報・基礎利益をチェックしましょう
- 加入者数の多い生命保険会社や、大手生命保険会社が100%出資している生命保険会社は保護が受けやすい
- まとめ
目次
そもそも生命保険会社は倒産するのか
。
ただし、何らの救済措置も無く倒産した場合にはその影響は測り知れません。
このため生命保険会社が経営破綻(経営が立ち行かなくなり倒産する寸前のこと)したとしても、保険契約者のために救済措置があり、支払った保険金や保険契約がすべて無くなると言うわけではありません。
過去に倒産した生命保険会社
その後、東邦生命(1999年6月)、第百生命(2000年5月)、大正生命(2000年8月)、千代田生命(2000年10月)、協栄生命(2000年10月)、東京生命(2001年3月)、大和生命(2008年10月)が経営破綻し、現在までに8社となっています。
倒産する原因とは
2000年前後に倒産をしている保険会社は、元々予定利率がトップクラスに高い保険商品を売り出していました。
しかし、バブルが弾けると、一気に国債などの金利が暴落、株価も暴落し、経営破綻に追い込まれたわけです。
※予定利率とは、生命保険会社が保険契約者に対して約束する運用利回り(利子)のことです。
予定利率が高いほど保険契約者にメリットがありますが、逆に生命保険会社の収益を圧迫することにもつながります。
2008年時の大和生命は、米国発のサブプライムローンの影響から、さらにリーマンショックを受け倒産することとなっています。
もともと中堅の生命保険会社であり、経営が良好なわけではありませんでした。
今後も、世界的な金融危機が勃発する可能性はなくはないので、生命保険会社の倒産リスクについて知識をつけておくべきです。
生命保険会社が倒産した場合、保険契約はどうなるのか
保障内容が気に入っていた人や、利率が高いのが魅力だったから加入した人などにとっては、気が気じゃありませんよね。
特に、病気をしていて新しく保険に加入できない人にとっては一大事。
しかし、保険会社が倒産しても保険の契約が無くなってしまうわけではありません。
必ず救済制度があるので、一先ず安心です。
この救済制度は2種類あり、「救済保険会社が現れる場合」と「救済保険会社が現れない場合」の2つに分かれます。
生命保険契約者保護機構が資金援助などを行う
これが、「生命保険契約者保護機構」です。
この機構は全ての生命保険会社が会員となり、毎年負担金を出し合う事で運用されている法人で、破綻した生命保険会社に資金援助等の措置を行います。
なお、救済措置の方法は「救済保険会社」が現れたか、現れなかったで異なります。
救済保険会社が現れた場合
この救済保険会社が、破綻した生命保険会社より、契約の移転、合併、株式取得を行い、保険契約の継続を行います。
生命保険契約者保護機構は、必要がある場合は破綻した生命保険会社へ補償対象保険金支払いに係る資金援助を行います。
補償対象保険金支払いは、保険契約者等の保護のために、破綻した生命保険会社が保険金等の支払いを停止している間に行われる措置です。
補償対象保険金支払いは破綻した生命保険会社が行いますが、資金不足になっている場合に、生命保険契約者保護機構が資金を援助することになります。
一方、救済保険会社にも必要な場合には資金を援助します。
救済保険会社が現れた場合には、生命保険契約者保護機構は専ら資金援助を行う役割を担う事になります。
生命保険会社の破綻倒産ケース①
過去の倒産会社と救済保険会社一覧
※PGF生命:プルデンシャル・ジブラルタ・ファイナンシャル生命
2008年に倒産した大和生命は、2000年倒産の大正生命の救済保険会社になっていましたが、PGFに2重破綻するという結果になってしまっています。
救済保険会社が現れなかった場合
- 「承継保険会社」による救済措置
生命保険契約者保護機構はまず、子会社として「承継保険会社」を設立します。
この承継保険会社が破綻した生命保険会社の保険契約を承継することになります。
承継保険会社は、保険料の受け入れや資産運用、保険契約の承継以降の保険金等の支払いを行います。
その他、救済保険会社を引き受けてくれる生命保険会社を探す役割もあります。
一方、生命保険契約者保護機構は、破綻した生命保険会社に対して、必要がある場合は破綻した生命保険会社へ補償対象保険金支払いに係る資金援助を行います。
また、承継保険会社にも必要な場合には資金を援助します。
- 生命保険契約者保護機構が引き受け
生命保険契約者保護機構が、承継保険会社を設立せずに機構自らが破綻した生命保険会社の保険契約を引き受けることもできます。
生命保険契約者保護機構は、承継保険会社の場合と同様に、保険契約の管理や処分を行います。
破綻した生命保険会社には、必要に応じて補償対象保険金支払いに係る資金援助を行います。
なお、保険契約の引受け以降に保険金等の支払いに応じるのは、生命保険契約者保護機構ということになります。
生命保険会社の破綻倒産ケース②
生命保険会社が倒産した場合、保障内容は変更されるのか
ただし、責任準備金や予定利率に影響が出てきます。
保障内容はほぼまちがいなく変更される
変更になる可能性があるものは…
- 責任準備金の削減
- 予定利率の削減
この二つは契約者にとっては.、非常に痛いデメリット。
特に予定利率の削減は、当初契約した時は「これくらいプラスになる貯蓄商品です」と説明され、そこに魅力を感じコツコツと貯蓄、保険料の支払いをしてきたと思います。
これが、「予定利率の変更によって思っていたよりもプラスにならなくなった。」「さらにはマイナスになった。」
なんてこともあり得るからです。
それでは、責任準備金の削減や予定利率の削減について詳しくご説明していきます。
責任準備金の削減
責任準備金は、通常90%まで補償されます。
ただし、補償されるのは責任準備金であり、保険金や給付金等が一律90%補償されると言うわけではありません。
なお、経営破綻時に、過去5年で常に予定利率が基準利率(金融庁長官及び財務大臣が定める利率)を超えていた生命保険契約「高予定利率契約」の場合は、責任準備金の補償率が異なります。
この場合は、高予定利率契約の補償率 = 90%-{(過去5年間各年の予定利率-基準利率の総和)/2}となります。
予定利率の削減
予定利率が引き下げられると、契約した補償金額や、解約した場合の返戻金、保険金等が、契約当初に約束されていた額を下回ることがあります。
特に、個人年金保険や学資保険などの貯蓄型の生命保険に関しては、予定利率が下がることもあり、大幅に損をする可能性があります。
元の予定利率が高い時期に契約していれば、また、契約期間から満期までの期間が長い商品を契約していれば、倒産時の損失はより大きくなります。
実際の倒産した例で言えば、第百生命保険、大正生命保険では、予定利率が約10%から1%まで引き下げられている例もあります。
倒産しない生命保険会社を選ぶときのポイント
- ソルベンシー・マージン比率
まず第一に、ソルベンシー・マージン比率を確認します。
この比率は生命保険会社の保険金を支払う余力を表しており、この比率が200%以上あれば健全な生命保険会社と言われています。
ただし、前述した経営破綻生命保険会社8社のソルベンシー・マージン比率をみてみると、この比率が不明の日産生命を除き、東邦生命(154.3%)、第百生命(304.6%)、大正生命(62.7%)、千代田生命(221.0%)、協栄生命(263.1%)、東京生命(446.7%)、大和生命(555.4%)と、実に5社が200%を上回る比率となっています。
つまり、ソルベンシー・マージン比率だけで倒産しない健全な生命保険会社と判断することは妥当ではありません。
- 基礎利益を確認しましょう!
基礎利益とは、生命保険会社が、年間に得た保険収益から諸経費を差し引いた、本業での実際の利益を指します。
この基礎利益が多いほど倒産しない健全な生命保険会社と言えます。
ただし、この基礎利益を判断する場合には、生命保険会社の数年分の基礎利益を、比較検討するべきです。
数年間で右肩上がりなら安心ですが、途中でいきなり基礎利益の落ち込みがあるなら注意した方が良いです。
ご自身で判断するのが不安な場合もありますので、保険の専門家であるファイナンシャルプランナーや保険代理店にも相談してみましょう。
ソルベンシー・マージン比率について
このソルベンシー・マージン比率は毎年、保険会社の決算が終わると新しい数値が開示されます。
そのため毎年確認しておくと安心かもしれません。
ソルベンシー・マージン比率は一つの比較材料であり、安心できると言い切れるものではありません。
特に新規参入した保険会社は加入者が少なく、給付金の支払いもほとんどないでしょう。
そういった保険会社のソルベンシー・マージン比率は高くなるのが当たり前です。
しかし、歴史の古い保険会社は加入者も多く、毎年多くの給付金を支払っています。
それでもソルベンシー・マージン比率が変動しない、または上がっている場合は純利益が上がっているので信用度も上がります。
特に東日本大震災のような大きな災害に見舞われたとき、多くの保険会社が給付金対応に追われたと思います。
そして、多くの給付金を支払ったためソルベンシー・マージン比率は一気に下がりました。
しかし、基本的に地震や戦争のときは支払い対象にはならないとされている生命保険でありながら、国内生保はどこの保険会社も給付金を請求したので数値は変動したのです。
それでも800~1.200ほどの数値を維持できている保険会社は、力強いと感じます。
決算情報・基礎利益をチェックしましょう
基礎利益とは、保険会社の保険本業の収益を示す指標であるため、利益が減少していると不安がよぎります。
基礎利益は、保険会社の商品パンフレットやホームページで確認することができるので決算後は毎年チェックしておくと良いでしょう。
さらに、加入を検討している人はその保険会社のパンフレットや決算後の決算情報が記載されたものをもらうとより安心できます。
決算情報は必ず、パンフレット化されお客様に配布できるようにされています。
この決算情報には、その保険会社の格付けも記載されており、格付け会社が独自に調査したものが発表されています。
この格付けで「AAA」を受けた会社や「A」が多い保険会社は、健全性が高いと判断することができます。
加入者数の多い生命保険会社や、大手生命保険会社が100%出資している生命保険会社は保護が受けやすい
契約者が多ければ、保険料の徴収ができるから倒産のリスクは低そうに感じますが、会社の負担が大きい利率が高すぎる貯蓄性の商品ばかりが売れ、生命保険の契約者が少なければ倒産の可能性も出てきます。
しかし、契約者が多いと救済制度によって保護を受けやすいと言われています。
契約者が多ければ倒産してしまったとき、社会に対する影響が大きいので保護される可能性が多いのです。
さらに、大手生命保険が100%出資している生命保険会社、いわゆる子会社は倒産してしまった場合、大手保険会社が保護する可能性が高いです。
近年、生命保険の子会社は増え続けているので、自分では知らないうちに加入している可能性はあります。
だからといって絶対に安心ではありません。
先ほどもご説明した通り、親会社が保護したと言っても削減されない可能性が無くなるわけではありません。
まとめ
ただし、生命保険会社が経営破綻すれば、保険契約者の生命保険を活用した人生設計に何らかの影響を与えるリスクもあり、健全な経営が求められるのは当然のことです。
倒産した時に慌てないために、保険契約者である私たちも、契約を希望する生命保険会社の経営状態を、専門家の意見を踏まえながら把握し、契約後も生命保険会社の経営状態を常に監視して、見定めていく必要があります。