生命保険の約款には何が書かれている?特に注意すべきことは?

生命保険の約款には、契約内容が細かく記載されています。実際に、約款の全てに目を通す人はあまりいないようですが、生命保険の保障内容は各社同じようでも細かい点が異なる場合が多くありますので、特に注意が必要な点についてお伝えします。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

生命保険の約款とは?

約款とは、生命保険契約の内容を定めたもので、保険契約者の保険料支払や告知・通知の義務、また保険会社が保険金を支払う場合の条件や支払額などが記載されているものです。約款には、同一種類の保険契約のすべてに共通な契約内容を定めた普通保険約款と、普通保険約款の規定内容を補充・変更・限定する特別約款(特約条項)とがあります。

これは、契約者ごとに生命保険契約の契約条項を細かく変えていると保険契約の事務が複雑になってしまうため、保険の契約条項を約款という形であらかじめ決めておいて、約款に基づいて保険会社と契約者が画一的に保険契約を行う形をとっているためです。


約款は保険会社のホームページ上で公開されていますので、事前に契約内容を確認することもできます。また、最近ではペーパーレス化の流れで冊子の形で交付されず、CD-ROMで交付されることが多くなってきました。 



約款の交付には金融庁(内閣総理大臣)の許可が必要

約款は、生命保険契約の前に契約者へ交付することが義務付けられています。

まず各保険会社が約款を作成し、内閣総理大臣の認可を取ってから交付することとされていますが、実際の確認作業は金融庁が行っています。保険契約者にとって不利な契約が締結されてしまう事を事前に防ぐために認可が必要なのです。

生命保険の約款に記されている免責事項

生命保険を契約したからといって、必ずしも保障が受けられるというわけではありません。約款には保険金や給付金が受け取れない場合が記載されていますので、必ず一読するようにしましょう。一般的に以下の場合は保険金や給付金は受け取れないとされています。

支払事由に該当しない場合

  • 支払事由の原因が責任開始前に生じている場合
  • 入院・手術が支払事由に該当しない場合

保障の責任開始日前に生じた病気やケガを原因とする場合は、約款に特に定めがない限り、保険金や給付金は受け取れないのが一般的です。

入院した日数が約款所定の日数に満たない場合や、既に約款所定の支払日数の限度まで入院給付金を受け取っている場合、入院先が約款所定の医療機関でない場合、治療を目的としない入院の場合などは、入院給付金が受け取れませんし、手術が約款所定の支払対象となる手術の種類に該当しない場合は、手術給付金は受け取れません。  


免責事由に該当した場合

一般的な免責事由は以下の通りです。

  • 契約した保険の責任開始日または復活日から一定期間内(1~3年)に被保険者が自殺したとき。
  • 契約者または死亡保険金(給付金)の受取人の故意によるとき。
  •  戦争その他の変乱によるとき。ただし、その程度によっては全額または一部を受け取れる場合があります。
  • 契約者、被保険者または災害死亡保険金受取人の故意または重大な過失によるとき。
  • 被保険者の犯罪行為によるとき。
  •  被保険者の精神障害の状態を原因とする事故によるとき。
  •  被保険者の泥酔の状態を原因とする事故によるとき。
  • 被保険者が法令に定める運転資格を持たないで運転している間に生じた事故によるとき。
  • 被保険者が法令に定める酒気帯び運転またはこれに相当する運転をしている間に生じた事故によるとき。
  • 戦争その他の変乱、地震、噴火または津波によるとき。ただし、その程度によっては、保険金・給付金の全額または一部を受け取れる場合があります。 

告知義務違反による解除の場合

契約時に告知義務違反があった場合は、営業職員などから告知を妨げられたり、告知をしないことを勧められたときなどを除いて、契約が解除となり、保険金や給付金が受け取れないことがあります。

重大事由による解除、詐欺による取消、不法取得目的による無効の場合

保険金や給付金などをだましとる目的で故意に事故を起こしたなどの重大事由で契約が解除となった場合や、契約の加入や復活にの際に詐欺行為や保険金を不法に取得する目的の行為があり契約が取消または無効となった場合には、保険金や給付金は受け取ることができません。 

暴力団の生命保険契約は解除になる

現在、金融庁が中心となって、金融業界全体が反社会的勢力との関係遮断に向けた取り組みを行っています。生命保険についても同様で、各生命保険会社が暴力団排除条項を導入し、約款に記載するとともにホームページなどでも明示しています。

一般的に保険契約者、被保険者または保険金・給付金の受取人が次のいずれかに該当するときは重大事由による解除として保険契約を将来に向かって解除するとしています。

保険会社が明示している暴力団排除条項の一例を見てみましょう。


①暴力団、暴力団員(暴力団でなくなった日から5年を経過しない者を含みます)、暴力団準構成員、暴力団関係企業その他の反社会的勢力に該当すると認められること

②反社会的勢力に対して資金等を提供し、または便宜を供与するなどの関与をしていると認められること。

③反社会的勢力を不当に利用していると認められること 。

④保険契約者または保険金・給付金の受取人が法人の場合、反社会的勢力がその法人の経営を支配し、またはその法人の経営に実質的に関与していると認められること。

⑤その他反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有していると認められること 。

出典: http://www.axa-direct-life.co.jp/info/2012/info_120401_a.html


解釈の違いによる誤解

保険約款には、生命保険で高度障害保険金を受け取れるのはどんなときなのかの記載もあります。死亡に至らず、高度障害のときに受け取れる保険金であることは想像がつきますが、具体的にどういう状態になったときが対象なのか見てみましょう。

高度障害保険金の受取対象となる高度障害状態

・両眼の視力を全く永久に失ったもの

・言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの

・中枢神経系・精神または胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要するもの

・両上肢とも手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

・両下肢とも足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失ったもの

・1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったか、またはその用を全く永久に失ったもの

・1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失ったもの

国が定める身体障害者福祉法で身体障害等級1級に該当しても、約款で定める高度障害状態に該当しない場合は、高度障害保険金は受け取れません。

出典: http://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/life_insurance_q25.html


イメージしていた高度障害よりも、かなりハードルが高いと感じるでしょう。ですが、約款にはきちんと記されていることなのです。

生命保険の約款や保険証券を紛失したら?

重要な内容が記載してある約款。早速目を通しておこうと思ったのに、保管しておいたはずの約款や保険証券が見当たらない!ということもあるかと思います。ですが、約款や保険証券を紛失しても、生命保険の契約はそのまま継続していきますので安心してください。

保険証券は再発行が可能ですので、早めに保険会社に連絡して手続きをしましょう。約款についても基本的に再発行が可能ですが、かなり昔に加入した生命保険などの場合、原本ではなくコピーされた書類になる場合もあります。また、保険会社のホームページで公開している約款もありますので、該当する約款があれば確認することもできます。

まとめ

約款は、細かい文字と専門用語の羅列で難しく感じることが多いでしょう。確かに全文を読むことはなかなかできないかもしれません。なので、約款の中でも特に重要な項目がまとめられている「ご契約のしおり」に目を通し、気になる部分や不明な部分については約款で詳細を確認しておくこともひとつの方法として試してみてください。

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