その生命保険、解約したらいくら返金される?しくみと手続きについて

見直しの結果、解約を決めた生命保険。でも契約していた生命保険の種類や、保険料を払い込んだ期間によっては、解約時に返金があるってご存知でしたか? いつ、どれくらい返金されるのか、解約返戻金のしくみと解約の手続きについて説明します。

生命保険には解約時に返金される制度がある:解約返戻金

あなたは、保険の解約時に返金される制度があるか気になって調べているでしょう。


保険が自分や家族の生活に合わなくなった際に、現在契約している生命保険の解約を考えることがあると思います。


契約のときには最良と思って加入した保険が、いつの間にか自分に合わなくなってしまったというのもよくあることなのです。 


しかし、保険を解約したら違約金が発生するのではないか心配ですよね。


実は、支出ではなく、支払済み給付金や必要経費の未回収分などを差し引いた「解約返戻金」が戻ってくるのです。


この記事では、「生命保険の解約返戻金のしくみと解約の手続き」について


  • 解約返戻金の3つの種類
  • 振込時期
  • 計算方法
  • 解約返戻金と税金
  • 解約手続きの方法
  • 契約者貸付制度


の6点をご紹介させていただきます。

記事を読んでいただければ、解約返戻金のしくみと手続きがご理解いただけると思うのでぜひ最後までご覧ください。


生命保険の解約返戻金には3つの種類がある

生命保険には、解約時に返金される解約返戻金がある保険とない保険があります。


終身保険・養老保険・学資保険・個人年金保険など、保険期間が長く貯蓄性のある保険では返金があります。 


しかし同じ死亡保障がある保険でも、保険料の負担が軽い定期保険・入院や通院に備えるための保険は事情が異なります。 


定期保険や医療保険などの「備えるための保険」は解約払戻金がないか、あってもごく少額でしょう。 


生命保険には、その返戻金のタイプにより


  1. 従来型
  2. 低解約返戻金型
  3. 無解約返戻金型


これら3つの型があります。 


加入する生命保険の解約払戻金がどれなのかということを確認しましょう。 


それぞれの型の特徴について、解説していきます。 

1:従来型

解約返戻金が通常通り支払われるタイプの商品です。 

終身保険・養老保険・学資保険・個人年金保険などの多くが、ここに当てはまります。 


契約当初の解約返戻金は元本を下回っていますが、契約年数が長くなるにつれ、返金額はゆるやかに増えていきます。 


従来型は、生命保険の基本スタイルであると考えてください。

2:低解約返戻金型

払込が終わるまでの返戻金が、払込済保険料の70%程度に抑えられている商品です。 

払込期間中の返金が通常より少ない分、払込期間満了後は解約払戻金の返戻率がぐんと良くなるのが特徴です。 


最近では、その特徴から学資保険代わりとして加入する方も多くなっています。

3:無解約返戻金型

返金はないか、あってもごくわずかです。 

その代わり、保険料はかなり安く抑えられています。 


いわゆる掛け捨てタイプと呼ばれる保険ですね。

解約返戻金はいつ振り込まれる?

解約返戻金が振り込まれるタイミングは各保険会社によって異なりますが、数日~1週間後に振り込まれる保険会社が多いです。


もし1週間を過ぎても解約返戻金が振り込まれないようなら、保険会社に連絡してみると良いでしょう。


コールセンターがある保険会社に質問することをおすすめします。


いくら振り込まれる?解約返戻金の計算方法

解約返戻金額は、以下の計算式から導き出されます。 

①契約者価格 - ②解約控除=解約返戻金額


ここからは、式の中に登場する

  1. 契約者価格
  2. 契約控除
について解説していきます。

①契約者価格とは?

契約者価格とは、保険会社の責任準備金のうち収支残高(すでに支払われた給付金を差し引いた残高)を指します。 


返戻金額を計算するには、まず契約者価格を算出しなくてはなりません。 


この返戻金のベースとなるものが「責任準備金」であり、高齢になってからかかる予定の危険保険料を、若いうちの保険料に上乗せしている部分のことを指します。


つまり、将来の真の保険料を先払いしているのです。


したがって、返金になる部分すべてが戻ってくるわけではないことを理解しておきましょう。


②解約控除とは?

解約控除とは、生命保険契約のときににかかった経費(営業職員への手数料・審査にかかる費用・保険証券の発行費用など)のうち、まだ回収できていない部分のことです。


保険会社では、新規契約にさまざまなな費用がかかっています。 


この費用は一定期間の保険料に分散する形で回収されていますが、保険が解約されるとそれ以降の費用が回収できません。 


そのため、解約控除という形で残りの費用を回収しています。


ただし、解約控除金の発生する期間は一般的に「契約から10年間程度」とされており、契約してからの期間が短いほど、払い込み保険料の総額に占める解約返戻金の割合は低くなるのです。  

解約返戻金は中途解約すると返金額が減る

解約返戻金は、中途解約すると返金額が減るデメリットがあります。

なぜなら、
契約途中で亡くなる方の割合(予定死亡率)から死亡保険金が算出されるからです。


貯蓄性が高いといわれる生命保険でも、払込期間中に亡くなる方が一定の割合でいます。 


そちらに支払われる死亡保険金は、本人が積み立てた金額に加えて同じ商品に加入している人全員で少しずつ負担することになります。 


学資保険でも同様に、 契約者の死亡時保険料免除や育英年金特約がついている場合は、亡くなった他の加入者の死亡保険料の一部を支払っていると考えられます。 


ちなみに定期保険や収入保障保険では、むしろ貯蓄部分の方をなくして加入者同士が支え合う保障部分を主目的としているので、安い保険料と大きな保障を両立できるということです。


とはいえ、貯蓄型に比べれば少額ですが解約返戻金がある商品もあります。 


このタイプでは徐々に責任準備金が積み立てられますが、満期に向かって減っていくので契約期間の終了(または更新)時にはゼロとなります。 


近年では無解約返戻金型が増えているため、より保険料を抑えた商品を提供することが可能となっています。

解約返戻金に税金はかかるのか

お金を受け取ると課税されることが厄介だと思いますが、生命保険の解約返戻金には税金がかかるのでしょうか。


実は生命保険の解約返戻金にかかる税金は、保険の契約者(保険会社と契約し、実際に保険料を支払う人)と、保険金の受取人(保険金を受け取る人)の両者の関係性によって変化します。


ここからは、

  • 契約者=受取人の場合
  • 契約者≠受取人の場合
  • 契約返戻金に消費税はかかるのか
の2点を解説させていただきます。

契約者=受取人の場合

まず、契約者=受取人の場合です。

この場合は所得税がかかります。

また、解約返戻金の受け取り方によって

  • 一時所得
  • 雑所得

と、所得の種別が変わるので、以下で詳しく説明していきます。

解約返戻金を一時金で受け取った場合


この場合、一時所得になります。

なぜなら、解約返戻金は営利目的で発生するものではないからです。

尚、一時所得は控除額である50万円を引いた額の半分に対して所得税が発生するので、すべての額に税金が発生するわけではないことを押さえておきましょう。

一時所得の所得税額は

一時所得=(差益-50万円)÷2×その年の所得税率


の式で計算します。

解約返戻金を年金で受け取った場合


この場合、雑所得になります。

単純に言うと、9つある所得の区分に該当しないためです。

雑所得は、その年に受け取った年金の額から払込保険料の額を差し引いた金額となり、年金を受け取る際には、原則として所得税が源泉徴収されます。

雑所得の所得税額は、課税所得金額(雑所得を含む)に応じた所得税率と控除額によって算出します。

以上、2種類の受け取り方で所得種別が変わることを説明させていただきました。

このように所得区別が変わることを覚えておきましょう。

契約者≠受取人の場合

次に、契約者≠受取人の場合です。

この場合は、贈与税がかかります。

生命保険は契約者=保険料負担者=解約返戻金受取人となることが通常ですが、一部で保険者以外が保険料を負担している場合もあります。

たとえば、夫が妻の保険料を負担しているケースが考えられますね。

その場合は、保険料支払い者と解約返戻金受取人が別人になるので、税務上は贈与税がかかることになるのです。

受取人には課税負担がかかってしまうので、よく覚えておきたいですね。

解約返戻金に消費税はかからない

解約返戻金には対価性がないため、解約返戻金に消費税がかかることはありません。


こちらのサイト(国税庁)で、No.6157の(4)を参考にしてください。

解約手続きの方法

生命保険の解約手続きの方法には


  • 自分でコールセンターに連絡をする
  • 営業担当者に自宅や職場に来てもらい手続きをする


などの方法があります。
 

しかし担当者に会ってしまうと、解約を慰留される可能性は否めません。


顧客を解約させることは、保険会社にとって大きな痛手となるからです。


嫌であれば聞き流しておきましょう。


 一度に手続きを終わらせるには、


  1. 写真つき身分証明書1点 
  2. 保険証券
  3. 契約印  


が必要なので、用意をしておいてください。

また、解約手続きの際に保険料の返金先口座を聞かれる場合があります。


保険料の引き落としに利用しているのとは別の口座に返金してもらいたい場合には、 振込先の口座番号を控えておきましょう。 


書類の不備などがなければ受理されてから一週間ほどで返金されますが、もし一週間が過ぎても返金されないときには、保険会社に問い合わせてくださいね。 


いくつかの生命保険のサイトには、解約手続きの方法が記載されているので、気になる人は参照してみてください。

生命保険の解約返戻金を受け取った場合、確定申告は必要?

生命保険の解約返戻金を受け取った場合、確定申告が必要になるか気になりますよね。

確定申告が必要になる基準は、「一時所得の金額が20万円を超えているか」です。

逆に言うと一時所得の金額が20万円以下であれば確定申告の必要はないのでしっかり覚えておきましょう。

また、会社員の人も確定申告は不要です。

なぜなら、雇い主が年末調整をしてくれるからです。

年末調整とは、会社があなたの一年間の給与所得を確定し、天引きしていた税金を計算しなおして還付・徴収することをいいます。

社会人であれば、毎年1~2月頃の給与に年末調整された関係でいくらかお金が戻ってきた経験があると思います。

このように、会社が年末調整を行ってくれるので基本的には確定申告を行う必要はありません。

しかし、
  • 年末調整の対象にならないもの(医療費控除、寄付金控除など)
  • 年度の途中で退社した場合
  • 年末調整で控除義務があるがしなかった場合
は、確定申告が必要になります。


参考:保険を解約する前に契約者貸付制度について知ろう

まとまったお金が必要な時、保険を解約しなくてもお金を得る手段として、契約者貸付制度があります。

これは、解約返戻金の一部を保険会社から借り入れできる制度です。

簡潔に言うと、保険会社からの「借金」ということですね。

契約者貸付制度を利用する場合、利用額は解約返戻金を元に貸付可能額が決まります。

長期間生命保険に入っている人の方が、貸付可能額が大きくなる可能性があることを覚えておきましょう。

メリットは、
  • 生命保険を解約する必要がない
  • カードローンと比べて金利が低い
  • 返済の自由度が高い
の3つです。

やむを得ず税金が払えない場合、解約返戻金が差押えられてしまいます。

「差押え通知」が役所から届いた場合、自主解約は難しくなってしまうのです。

とても厄介な差押え制度ですが、そんな時に契約者貸付制度が役に立つのです。

この制度は、大きな保険会社でも行っており、インターネットやコールセンターで手続きが可能です。

ほけんROOMでは、生命保険契約者貸付制度について詳しく説明した記事があるのでそちらも参考にしてください

まとめ:生命保険解約時の返金について

この記事では、「生命保険の解約返戻金のしくみと解約の手続き」について解説させていただきましたが、いかがだったでしょうか。

記事の要点は、
  • 解約返戻金には、「従来型」「低解約返戻金型」「無解約返戻金型」の3種類がある。
  • 中途解約をすると返金が減るデメリットがある。
  • 解約返戻金を受け取る場合、契約者と受取人の関係によって税金がかかるケースがある。
  • 解約返戻金は、「一時所得が20万円を超えている」場合に確定申告を行う必要があるが、会社員は年末調整をされるので行う必要はない。
の4点です。

「いつ・いくら返金があるか」は、保険の加入期間によって異なるのですね。

また、中途解約をすると返金額が減ってしまうことも覚えておきましょう。

もちろん少しでも多くの返金があるほうが助かると思いますが、「解約のときに返金があるかないか・多いか少ないか」のみで生命保険を選んでしまうのは本末転倒です。


自分に合った保険商品を選ぶことを心がけましょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。


生命保険解約のタイミングについてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。

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