更新日:2019/05/16
外貨建て保険の解約返戻金を損せず受取り!税務、経理処理も解説
外貨建て保険の解約返戻金は、外貨の積立利率のみで決定するのではなく、受取り時点での為替レートや手数料によっても上下します。また早期解約など元本割れにも注意しましょう。外貨建て保険の解約返戻金を損せず受け取るために、出口戦略などの対策もご紹介します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
外貨建て保険の解約返戻金について解説
外貨建て保険の中途解約で受取る解約返戻金はいくら払い戻されるか予測しづらい面があります。
為替相場の変動や手数料で返戻金が上下する仕組みですが煩雑で分かりづらいですよね?
実は解約返戻金の受取り方、受取りタイミング次第で元本割れ(含み損)になる可能性があります。
そこで、この記事では「外貨建て保険の解約返戻金」について、
- 外貨建て保険の為替の影響による解約返戻金受取額の変動
- 外貨建て保険の早期解約の解約返戻金の元本割れ
- 外貨建て保険の保険金を外貨で受け取った場合の法人の経理処理
- 外貨建て保険の全額損金算入可能なドル建て保険
以上のことを中心に解説していきます。
外貨建て保険では、解約返戻金の外貨受取りのメリットもご紹介いたしますので、是非、最後までご覧ください。
外貨建て保険とは積立保険料が外貨の利率で運用される保険です。
また解約返戻金とは保険を解約して、今までの積立金を受け取ることを言います。
外貨建て保険では基本的には外貨で解約返戻金を受け取ることとなります。
外貨建て保険の解約返戻金を受け取るときの注意点
外貨建て保険では米ドルや豪ドルなどの外貨で保険金や保険料が設定され、その外貨の利率で運用されます。
具体的には死亡保険金が100,000ドル、月々の保険料が200ドルと、日本で海外の生命保険会社の保険を利用しているような形態です。
解約返戻金とは保険を中途解約した際に受け取る、今まで積み立ててきた保険額です。
保険会社は契約者が支払う保険料の一部を責任準備金として積み立てており、中途解約した場合には、その積立金が所定の割合で戻ってくる仕組みになっています。
外貨建て保険では、外貨で解約返戻金を受け取ることができるのが、一般の保険との大きな違いです。
しかし、解約返戻金については、
- 解約返戻金は積み立ててきた保険料の総額より少なくなる
- 保険の種類や内容により解約返戻金のない商品がある
などを留意しましょう。
為替の影響で受取金額が変動!手数料にも注意
外貨建て保険の解約返戻金を受け取るとき、為替変動の影響を受けます。
外貨建て保険の保険料を納めた時より、円高・円安で解約返戻金の額が異なってきます。
保険の解約時に、
- 円安になっていれば、為替差益
- 円高になっていれば、為替差損
がでます。
例えば、保険料を1ドル100円で支払い、保険金・解約返戻金を受け取る時に、為替が1ドル200円だと為替差益が出ます。
購入した通貨自体が値上がりするために、受け取る解約返戻金が増えるわけです。
一方で保険料を1ドル100円で支払い、保険金・解約返戻金を受け取る時に、為替が1ドル50円だと為替差損が出ます。
解約返戻金を受け取る時の為替で、特をしたり損をしたりするわけです。
また、外貨を円転するときに為替手数料が発生します。
保険会社の設定した為替レートは、TTMで低めになりますが、銀行などのレートは高くなるため注意しましょう。
早期の解約に注意!元本割れの可能性が大きい
外貨建て保険は、円建てよりも金利が高くハイリターンであることや、為替差益などのメリットだけが注目されて、リスクもあることが忘れられがちです。
外貨建て終身保険ではいろいろな条件が設定されていることがあり、途中解約すると解約控除が発生します。
そのため、為替でメリットが出ていても、結果的に元本割れすることがあります。
また金利が上昇した場合は「市場価格調整(MVA)」により、解約返戻金が少なくなることがあります。
外貨建て保険は主に外国債券で運用され、一般に、
- 金利が高くなると債券が値下がり
- 金利が低くなると債券は値上がり
ます。
そのため保険会社が加入者の中途解約の依頼に応じて債券を売ると、予定外の売却損益が発生することになります。
その損益を、解約返戻金で調整するのが市場価格調整(MVA)という仕組みです。
MVAでは、満期まで持たない場合の金利リスクを、中途解約者が負う取り決めで、早期解約であればあるほど、MVAの影響は大きくなります。
高利回りを実現するには必要な要素のため、ほとんどの外貨建て保険商品で行われています。
ついつい保険商品は安全な買い物と考えがちですが、外貨建て保険では、契約期間や、金利・為替・手数料に左右され、元本割れの可能性があることを理解してから契約しましょう。
保険金を外貨で受け取った場合の税務
外貨建て保険は解約返戻金を外貨のまま受け取れることができ、為替状況が円安に進むまで待って、円に換金することができます。
その場合は受け取り時で、為替差益による解約返戻金の増額が期待できます。
生命保険会社は外貨建て保険の解約返戻金を外貨で受け取る場合でも、その時点の円で換算した金額を通知してきますので納税を日本円ですることになります。
円安で円換算された額が上がっていれば税額は高くなり、また、下がっている場合は税額は少なくなります。
外貨建保険への課税率は、円建ての生命保険と同じです。
法人の方は必見!外貨受け取りでの経理処理
外貨建て保険の保険金・解約返戻金を、外貨で受け取った場合の経理処理には、期末時換算法と発生時換算法があります。
ドル建て解約返戻金の円転した価格を、直前のレートと比べて、その損益を計上してゆきます。
経理処理の手順は、
- 期末時換算法では、受け取り時のレートでまず円に換算して計上
- 外貨をそのまま保有して決算を迎える場合は、決算時のレートで換算
- 最終的にその外貨を決済する場合は、円転した時のレートで換算し経理処理
例えば、決算時と決済時の形状では、
- 決済時に、受け取り時のレートが1ドル80円、決算時が1ドル100円の場合、1ドルあたり20円の円安による為替差益を計上
- 翌期に円転した決済時に、1ドル90円ならば、1ドルあたり10円の円高による為替差損を損金として計上
外貨建て保険の解約返戻金を、決算時にその時のレートで計算し直すのは、より実際に近い資産価値を算出するためです。
しかし、件数が多いと経理処理が多くなり大変ですね。
その場合は、所轄税務署に届け出することで「発生時換算法」を採用することができます。
発生時換算法では、期末時の円換算をする必要ありません。
全額損金算入が可能なドル建て保険もある
定期保険は返戻率が一定期間上昇しますが、最終的に解約返戻金が0になる仕組みになっており、支払う保険料の損金性が認められています。
法人向けの「全額損金定期保険」と呼ばれる生命保険では、保険料全額を損金で計上できるため「節税」になるため、近年「全額損金のドル建て介護定期保険」が人気です。
これは、死亡保障に加え、
- 要介護2以上に認定されたとき、
- 認知症や寝たきりによる要介護の認定日から180日過ぎたとき、
などに保険が下りる商品です。
契約可能年齢は25歳から66歳までで、ドル建てなので資産のリスク分散ができ、さらに、解約返戻金の返戻率が高いという利点があります。
ピーク時の返戻率が90%以上になる場合があり、返戻率のピーク時に解約して解約返戻金を受取れれば、メリットを最大限に享受できます。
そのため、退職時に返戻率が90%程となるように加入して、老後の資金の準備金として解約返戻金を利用する人もいます。
他の保険商品で資産形成!FPさんと出口戦略について相談しよう
法人保険の出口戦略は、主に、保険の解約返戻金を有効利用する対策です。
その戦略は、
- 保険加入を入口として保険料を損失計上
- 法人税の課税対象となる額を減らし納税額を減らす
などです。
しかし 保険の解約返戻金で利益を上げれば、保険の出口で利益を計上することになります。
そうすれば、結果的に法人税の課税対象額が増え、結局、法人税の納税の時期を遅らせただけになってしまいます。
そのため解約返戻金で出た利益を、他の支出で相殺して法人税の課税額を抑えることが必要です。
しかし保険に再加入することで、次の解約返戻率のピークが来るまでに、出口戦略を立て直すこともできるでしょう。
外貨建て保険契約の出口で、解約返戻金の使い道である出口戦略が決まっていない場合は、ファイナンシャルプランナーに相談してみましょう。
まとめ:外貨建て保険の解約返戻金について
- 外貨建て保険の解約返戻金は為替の影響を受ける
- 外貨建て保険の早期解約では解約返戻金が元本割れすることもある
- 外貨で受け取った場合の法人の経理処理 の手順
- 全額損金算入可能なドル建て外貨建て保険