更新日:2021/12/01
不告知教唆とは?不告知教唆をした募集人の罰則・処分について解説
不告知教唆をご存知でしょうか。簡単に言えば保険に加入の際にうその告知を募集人側から強要されるということです。けれども被保険者が不告知教唆を訴えたとしても給付金の支払いがされないこともあります。そこで不告知教唆をした募集人の罰則や処分について解説していきます。
- 保険の加入を少しでも検討している人
- 保険の加入を検討する上で告知事項などで迷っている人
- 保険や告知、特に不告知教唆についての知識を身につけたい人
- 不告知教唆をした募集人には罰則や処分がある
- かんぽ生命の募集人が実際に不告知教唆をした例
- 不告知教唆によって告知義務違反による契約解除が覆った判例もある
- 告知の大切さ
内容をまとめると
目次を使って気になるところから読みましょう!
不告知教唆とは?
不告知教唆を聞いて耳慣れない言葉と思った方は多いのではないでしょうか。
不告知教唆(ふこくちきょうさ)
第55条(告知義務違反による解除)
保険者は、保険契約者又は被保険者が、告知事項について、故意又は重大な過失により事実の告知をせず、又は不実の告知をしたときは、生命保険契約を解除することができる。
第2項
保険媒介者が、保険契約者又は被保険者が前項の事実の告知をすることを妨げたとき。
引用:保険法
わかりやすく言えば契約者や被保険者が保険会社や保険の代理店などから、加入の際に本当の告知をしないようにすすめられることです。本来保険会社や代理店などは、正直に告知事項に答えるように促さなくてはならない存在です。
実際に不告知教唆が行われていたとして保険契約を交わしてしまった場合、保険契約の解除は保険会社側からはできないこととなっています。そのため契約の解除を求められることはないかもしれませんが、保険金や給付金を契約通りに支給できるかどうかはそう簡単なことではないはずです。
この記事では以下の不告知教唆における事例を含め、不告知教唆をした募集人への罰則や処分はあるのかなどもみていきましょう。
- 募集人の罰則や処分
- かんぽ生命の募集人の事例
- 不告知教唆によって告知義務違反による契約解除が覆った判例
不告知教唆をした募集人の罰則・処分はどうなる?
もしも担当社員や営業社員など保険会社側が不告知教唆をしてしまった場合、募集人に対しての罰則や処分はあるのでしょうか。
少し考えてみましょう。あなたが保険会社の職員だったとして、自分の成績のためついつい加入者に不告知の教唆を強要してしまいます。
ただこのときは契約者にはわかっていなくても、後日契約者が保険金や給付金の請求を行うときになり事実を知ります。契約者から問いただされたとき保険会社側としてはどう答えるでしょうか。何の証拠もないですから「そんなことは言っていない」と言うはずです。
結局契約者と言った・言っていないの水掛論になってしまいます。ただ本当に不告知教唆を認めた場合には保険会社側からの一方的な契約解除はできませんし、保険金などの支払いも行わなければなりません。そのうえ、下記の罰則や処分があり課せられるケースもあります。
- 賠償責任請求
- 詐欺罪
①民事により賠償責任を請求される
まず生命保険会社や代理店などの募集人側が不告知教唆を認めた場合、その保険セールスだけでなく、保険会社全体も賠償責任を請求されることがあります。
ただし保険会社自体が不告知教唆を認めるか否かが一番の問題点であることは間違いないでしょう。実際に認めてしまうと保険会社としては、正しい告知がされていなかったにもかかわらず、契約を解除できませんし、給付金の支払いを行わなければならないケースもあります。
そのため、保険会社も知らなかったと言わざるを得ないはずです。けれども、そのままの状態にしておくと、今度は契約者から解除する代わりに、いままで支払った保険料の請求を求めて返還請求などを起こされる可能性もあります。
営業担当だけの判断で不告知教唆が行われたのであれば、営業担当者に賠償責任などを負わせてしまうといったこともあります。
実際平成17年には明治安田生命は告知義務違反や不告知教唆などが原因で、金融庁から業務停止命令の行政処分が下されました。
②詐欺罪に問われる
また実際には募集人に対して保険会社の審査を通すために不告知教唆を行ったことが立証されたとして、その保険契約自体が詐欺だと訴えたとしても、その場合保険契約者も共犯に問われる可能性があります。
けれども契約者が知らない間に、勝手に募集人が保険契約書の告知書を作成したというのならば、私文書偽造などの罪に問うことができるはずです。
ですからたとえば逆のケースすなわち告知義務違反を契約者が行えば、これは詐欺罪の犯罪になってしまいます。
けれどもそれを強要した募集人に対しては、直接詐欺罪に問われることはありません。
ただ契約者が不告知教唆を受けているにもかかわらず、保険会社がそれを認めず告知義務違反で逆に保険契約者を詐欺罪だと言わんばかりに保険金や給付金を支払わない場合には、保険会社に対して業務停止命令が下されることもあります。
もしも不告知教唆の件で保険会社に訴えてもどうもならないのであれば、一度金融庁に相談してみることを考えても良いでしょう。
かんぽ生命の募集人が通院告知をしないように不告知教唆をした事例
ここでまだ記憶に新しいかんぽ生命の事例をみてみましょう。
かんぽ生命の社員は、取引先の会社に対して通院している事実を告知しないように教唆をして法律違反となり、その社員は営業資格の剥奪と懲戒処分となりました。
この事例は同行していた別の社員が、上司にこういう告知は問題ないのかどうかを相談したことで発覚となりました。
この事例が発覚した後は、再度正しい告知をして適正な手続きをもって契約をし直したそうです。
かんぽ生命は再発防止策として下記をあげていて、特に告知に対しては今後募集時の録音や、単独訪問を禁止し複数名での訪問による手続きを必須としています。
- 社員教育の徹底
- チェック体制の強化によるリスク検知
- 告知にかかる説明場面での牽制
不告知教唆によって告知義務違反による契約解除が覆った判例
裁判になると保険会社の不告知教唆を証明できないことや、保険会社が契約者側の告知義務違反を主張して支払いを拒絶をしたりすることで、多くの契約者が保険契約の解除や保険金などの受取がされていない状態です。
もしも自分がそんな状況になってしまったときにはきちんと確認をしておき、正直に告知を行っていれば何も心配することはありません。
また過去の判例の多くは契約解除となっているものの、不告知教唆と認められたはいいけれど告知義務違反であるには違いないとのことでしたが、それが最終的な判決では契約解除が覆ることとなり保険金等も支払われたという例もあったのです。
これは被保険者でもあった契約者が死亡してしまったケースです。遺族からすると告知義務違反でもなんでもないことであり、不告知教唆で間違いないということは明らかなことです。それなのに、契約者側の告知義務違反とされ死亡保険金がおりないという事態となれば不服申し立てを起こすのは当然といえば当然の行為ではないでしょうか。
ただしそうならないためにも保険の契約をするときには自分で告知をすることや、少しでも怪しいと感じたら契約後すぐにでも保険会社に確認を行い、告知事項が事実と異なっていないかを調べておくことも大切です。
詳しい判例の内容は下記の記事を参考にしてみてください。