告知義務違反の判例・事例を紹介!告知義務違反の重大な過失とは?

生命保険等の告知義務違反で契約を解除された場合、その認否が法廷で争われることもあります。裁判官が判決を行う際は、単に当事者へ勝訴、敗訴を下すばかりではなく、何故、告知義務違反となったのかも明示しています。今回は判例を通して、告知義務のポイントを解説します。



▼この記事を読んで欲しい人

  • 告知の重要性がわからない人 
  • 告知義務違反を犯すとどうなるのか知りたい人 
  • 告知に関する細かな知識まで身につけたい人

▼この記事を読んでわかること

  • 告知義務にまつわる知識 
  • 告知義務違反が契約解除に至った実際の判例とそれが覆った判例 
  • 告知義務違反でも保険金が支払われる場合がある
告知や保険に関して少しでもわからないことがある場合は、マネーキャリアで無料保険相談をしてみましょう!

内容をまとめると

  • 告知義務違反とは、告知義務のある自身の持病や既往歴などを隠して保険に加入する行為 
  • 告知義務違反は時効が一般的に2年と定められている 
  • 告知義務違反が重大な過失と見なされるか否かで、保険契約が解除されるかどうかが決まる 
  • 告知義務違反がばれると、保険料が返金されないので注意が必要 ・告知は正直に行うように心がけよう! 
  • 告知義務をはじめとした保険全般について質問があるなら、いますぐマネーキャリアを利用するのがおすすめ! 
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告知義務違反や告知の時効など告知に関する知識を深めたい方はまず以下の記事をご覧ください。


保険の告知事項や告知義務違反を解説!嘘をつくとなぜばれる?

告知義務違反に関する事前知識


保険における告知とは、過去から現在における加入希望者の健康状態を正しく伝えることです。


保険は、相互扶助の関係で成り立っています。


つまり加入者同士がお金(保険料)を出し合って、万が一の事態の人に対し金銭的援助(保険金)をする仕組みです。


この仕組みの上で加入者間の平等を保つためには、加入者が健康であることが鍵となります。


健康状態に問題がない人と持病などがある人では、後者のほうが保険金給付が必要になる可能性が高いですよね。


そうすると健康な人は損をすることになってしまいます。


このような不平等がなるべく生じないようにするために、告知が必要なのです。


そしてこの記事で扱う告知義務違反とは、告知義務のある自身の持病や既往歴などを隠して保険に加入する行為を指します。

告知義務違反における重大な過失とは?

告知義務違反とひとくちに言えども、

  • うっかり告知を失念してしまっていた
  • 故意に告知を行わなかった
大きくわけるとこの2つのケースが考えられるでしょう。

上記のうち、告知義務違反のなかでも過去の判例において重大な過失とされたのは後者です。

つまり、「過去の既往歴やもともとの持病などが告知義務の生じるものであると理解しておきながら、故意に告知を行わなかった」場合に重大な過失であると見なされる可能性があります。

重大な過失であるかどうかは、告知義務違反の認否を法廷で判断する際の争点ともなり得るポイントです。

後ほどご紹介する判例でも、重大な過失かどうかがポイントとなるものが登場します。

詳しいことは、永松裕幹「告知義務違反における故意又は重過失に関する裁判例の分析と検討」でもご確認ください。

告知義務違反の調査方法

そもそも告知義務違反はどうしてばれるのか、その点を疑問に感じる方もおられることでしょう。


調査方法に関する細かな違いは保険会社ごとにあるものの、調査自体は保険会社が委託した外部の確認会社によって行われます。


大まかな流れは以下の通りです。

  1. 保険金の支払いや特約から追加で給付金が下りるなどの事由が発生
  2. 事故や治療などの詳細の確認のため、保険会社から契約者や加入者へ連絡が入る
  3. 2と同時に、保険会社が確認会社へ調査を依頼する
  4. 確認会社が加入者のかかった医療機関に対し、実際の治療内容の確認などの調査を行う
  5. 必要に応じて、確認会社と加入者が面談を行う
  6. 確認会社が保険会社へ調査結果を報告、その結果次第で保険金の支払い可否が判断される

告知義務違反の調査方法について、さらに詳しいことは下記リンク先の記事からご覧ください。

告知義務違反の時効について

告知義務違反の時効年数は、一般的に保険の責任開始日(保障が始まる日)から2年とされています。


時効を迎えれば、保険会社から告知義務違反を理由に保険契約を解除されることはなくなります。


また、告知義務違反の発覚から1ヶ月の間に保険会社が契約解除へと踏み切らなかった場合も時効と見なされるようです。


ただし、時効を迎えるまでの間に保険金を受け取っていた場合は例外となってしまうため気をつけてください。


それから先ほど、「時効は2年が一般的」という記載の仕方をしました。


これは告知義務違反の時効について

  • 告知義務違反は民法における「債務不履行」と考えられ、債務不履行の時効は10年
  • 保険法での告知義務違反の時効は5年
と法律によって解釈がわかれてしまうためです。

ちなみに最初に挙げた2年というのは、保険会社がそれぞれ設けている保険約款で一般的に時効とされている数字となっています。

優先順位が
  1. 保険約款(保険法に抵触しない限り)
  2. 保険法
  3. 民法
となっているため、告知義務違反の時効は一般的に2年とされているのです。

告知義務違反に関する実際の裁判であった4つの判例(事例)とポイント


「時効が存在する限りは、告知義務違反を犯したとしても問題ないだろう」。


このように考えてしまった方もおられるかも知れません。


しかし、告知義務違反が大事に発展してしまったケースもあるのです。


ではここからは、告知義務違反から裁判に発展してしまった際の実際の判例をご紹介していきます。


ご紹介するのは

  • 告知義務違反により契約解除に至った判例①②
  • 告知義務違反による契約解除が覆された判例①②
の4例です。


判例とあわせて、その判例から見える告知義務のポイントも一緒にチェックしていきましょう。

被保険者の告知義務違反による契約解除の判例①

以下は平成10年1月21日、東京高等裁判所での判例です。


事件の概要


被保険者は生命保険に加入する時点で、すでに医師から慢性肝炎であると診断され治療を受けていました。


しかし生命保険加入時に、「慢性肝炎により治療をしている」という事実の告知を行いませんでした。


その2年後、被保険者は肝硬変により死亡。


保険会社は「保険加入時に慢性肝炎により治療を受けていることを伏せていたのは告知義務違反である」として保険契約を解除し、保険金の給付を拒否しました。


これを受け遺族側が「肝硬変と医師から診断はされていなかった」とし、告知義務違反と判断されるのは不当であると訴えました。


そして4,000万円の死亡保険金を求める裁判へと発展したのです。


裁判の結末


東京高等裁判所が下した判決は、遺族側の敗訴でした。


この理由として、「被保険者は医師から肝硬変とは告げられていなかったかも知れない。しかし慢性肝炎の診断・治療を告知しなかったのは、重大な告知義務違反である」ことが挙げられています。


ポイント


争点とされた「慢性肝炎」と「肝硬変」。


確かに違う病気なのだからと、遺族側の言い分にも正当性があるようにも見受けられます。


しかし判決で重視されたのは、「慢性肝炎であると診断され治療を受けていたにもかかわらず、その告知義務を怠慢した」という事実でした。


告知書や診査医から問われた病名だけでなく、それに関係する病名にも告知義務は生じます。


不安なことがあれば、加入前に保険会社に確認しておくのが安心でしょう。

被保険者の告知義務違反による契約解除の判例②

以下は平成10年8月26日、東京高等裁判所での判例です。


事件の概要


被保険者が、生命保険に加入した1年後に脳出血・クモ膜下出血にて死亡しました。


生命保険会社は、被保険者が保険加入時に高血圧と診断され投薬を受けていたことを指摘。


「その事実を隠して保険に加入したことは告知義務違反である」として保険契約を解除し、保険金を支払いませんでした。


これを受け遺族側が「生命保険に加入する際に、面接士と外務員に対し高血圧であると告知を行っていた」とし、告知義務違反と判断されるのは不当であると訴えました。


そして4,100万円の死亡保険金を求める裁判へと発展したのです。


裁判の結末


高等裁判所が下した判決は、遺族側の敗訴でした。


この理由として

  • 被保険者が面接士と外務員に高血圧の告知を行っていたことが事実だとしても、その記録が残されておらず明確ではなかったこと
  • 面接士・外務員両者に告知を受領する権限はなく、告知義務を履行したとは言い難いこと
以上の2点が挙げられています。

ポイント


知っておかねばならないのは、面接士や外務員に告知を受領する権限がないということです。

あくまでも、告知を受けて保険加入の可否を判断できるのは保険会社となっています。

面接士や外務員はその仲介手続きをするまでに留まるのです。

自身の持病や既往歴を告知する際は口頭で行うのでなく、きちんと告知書に記載するよう心がけましょう。

告知義務違反による契約解除が覆った判例①

事件の概要


被保険者は生命保険に加入する以前に、定期健康診断で高血圧を指摘され、精密検査を受けるように言われていました。


その後、友人であった外務員を介して生命保険(死亡保険金750万円と家族収入特約月20万円)に加入する際に「高血圧で精密検査が必要であることは伏せておくよう強く依頼された」ため、告知をしなかったようです。


なお被保険者はこの契約成立後、それまで加入していた他社生命保険(死亡保険金6,000万円)を解約しています。


それから1年11ヶ月後、脳患部出血により被保険者は死亡しました。


生命保険会社は、当然ながら告知義務違反を理由に保険契約を解除、保険金を支払いませんでした。


これに対し遺族側が不服を申し立て、保険会社に対して死亡保険金6,000万円と家族収入特約月20万円の支払いを求める裁判へと発展したのです。


裁判の結果


東京高等裁判所は生命保険会社に対し、

  • 死亡保険金750万円
  • 家族収入特約月20万円
の支払いを命じる判決を下しました。

つまり遺族側の申し立てが一部認められたのです。

この理由として
  • 被保険者は友人である外務員による積極的な不告知教唆を受けて、虚偽の告知をしたこと
  • 被保険者にも問題はあるが、外務員の果たした役割の方がはるかに大きいこと
以上の2点が挙げられています。

ポイント


不告知教唆」という、聞き慣れない言葉が登場しました。

不告知教唆とは、上記の判例で登場したような保険外務員などのいわゆる保険媒介者が保険加入を検討している被保険者に対して、告知を正しく行わないよう勧めることです。

原則として、保険法28条2項などで「被保険者が告知をしなかったことが不告知教唆に基づく場合、保険会社は保険契約を解除することができない」と定められています。

ただし不告知教唆が関わるすべての判例において、保険契約解除が覆ったわけではありません。

不告知教唆については、下記リンク先で詳しく解説していますのでぜひご確認ください。

告知義務違反による契約解除が覆った判例②

事件の概要


被保険者は保険加入の2年弱前に、人間ドックで大動脈弓部拡大と診断され、精密検査の指示を受けていました。


その後の生命保険の加入に際しては血圧異常のみを告知した上で、生命保険に加入します(死亡保険金2,800万円)。


保険加入の1年半後、被保険者は胸部大動脈瘤破裂で死亡。


生命保険会社は「大動脈弓部拡大の診断を受けていたことを告知をしなかったのは、告知義務違反である」とし契約を解除、保険金を支払いませんでした。


遺族はこれを不服とし、裁判へと発展したのです。


裁判の結果


一審では被保険者による告知義務違反が否定され、保険会社側が敗訴しました。


これを不服とした保険会社が控訴。


しかし二審での判決の結果では保険会社控訴が棄却され、事実上の保険会社側の敗訴となりました。


判決の理由として、「大動脈弓部拡大との診断は告知事項とまで認められず、告知しなかったことについて重大な過失があったとは認められない」ことが挙げられています。


ポイント


確かに人間ドックにおいて、被保険者は大動脈弓部拡大と診断を受けていました。


しかし、その部位や症状について詳細な説明を受けていなかったことが契約解除を覆すポイントとなったようです。


つまり

  • そもそも被保険者が自身の状態をしっかり理解できていなかった
  • 虚偽の告知を行っていたわけではない

以上の理由から「事実を隠してまで生命保険契約を成立させた」という告知義務違反に及ぶための動機としては乏しい、と判断されたわけです。


告知義務違反かどうかの争点として、告知を行う側の「故意または重大な過失であるかどうか」が分岐点であることがわかる判例でした。

告知義務違反となった事実と支払事由との間に因果関係がない場合は保険金を受け取れる

さて告知義務違反だとばれることがあった場合、絶対に保険金は受け取れないのでしょうか。


実はそうではありません。


告知義務違反と判断された事実と保険金が支払われる事由との間に因果関係さえなければ、保険金は支払われます。


つまり、告知義務違反が発覚した病名により入院・手術・死亡などをしたのでなければ、保険金が支払われるということです。


公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険に関するQ&A」では、以下のような例を用いて解説されています。


「慢性C型肝炎」による通院歴を告知書で正しく告知せずに契約したとしましょう。


もし契約1年後に、「慢性C型肝炎」を原因とする「肝がん」で死亡した場合。


このケースでは死亡保険金が支払われることはありません。


告知義務違反と判断された事実(慢性C型肝炎)と支払事由(慢性C型肝炎による肝がん)に因果関係が認められるためです。


一方もし契約1年後に、慢性C型肝炎とは無縁の「胃がん」で死亡した場合。


このケースでは死亡保険金が支払われます。


告知義務違反と判断された事実(慢性C型肝炎)と支払事由(胃がん)に因果関係が見られないためです。


このように保険金の給付は、告知義務違反となった病名がその後の万が一の事態に影響を及ぼしたか否かにかかっています。

告知義務違反が発覚したときに保険料は返金されない

告知義務違反が発覚した際に取られる処置としては、

  • 保険金が支払われない
  • 保険契約が解除される
このようなものがあります。

ここで気になるのが、それまでに支払ってきた保険料のことではないでしょうか。

残念ながら、告知義務違反が発覚した際には保険料が返金されることはありません

自身の違反に対する処置なので、当然と言えば当然のことです。

「告知を怠ってもばれないだろう」このように考えて軽い気持ちで虚偽の告知をして保険に加入。

しかしそれに対して下される制裁は、すべて支払ってきた保険料を無駄にしてしまうものとなっています。

繰り返しますが、告知は必ず正しく行うように心がけましょう。

まとめ:告知書は自分のために誠実に書くことを心がけることが大切


今回は、告知義務違反とその実際の判例について解説してきましたがいかがだったでしょうか。


告知義務違反は絶対にばれるものです。


調査方法などもご紹介しましたが、ばれないなんてことはありません。


告知は、その保険の加入者の平等性を保つためのものとなっています。


そういう面を踏まえても、正当に保障を受けられるようにするために正しく告知を行いましょう。


今回ご紹介した判例などもしっかり理解して、わからないことがあればすぐ保険会社に確認を取ることも大切です。


ほけんROOMでは、他にも読んでおくべき保険に関する記事が多数掲載されていますので最後までぜひご覧ください。

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