証券口座は差し押さえの対象になるのか|ネット証券のよくある質問

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資産の中で証券口座は差し押さえの対象になるのでしょうか。もし対象になるならどうすればいいのでしょうか。ここでは証券口座の差し押さえの方法について解説し、証券口座以外で差し押さえできる8つの方法や財産調査の手順を紹介します。

証券口座は債権回収の差し押さえ対象になる【結論】



証券口座は、次の条件を満たせば債権回収の差し押さえ対象になります。

  1. 執行開始当時に債務者(お金を返す義務のある人)に属している債権 (条件付や期限付、将来支払ってもらえる債権も含む)
  2. お金に換えられる独立した債権

  3. 債務者以外でも行使できる債権
  4.  「差押禁止債権」に該当しないもの
このようにたいていの場合、証券口座は差し押さえの対象になります。債務者に株券がある場合は執行官に申立てをすれば、動産執行を行いって差し押さえになり売却をすることができます。証券口座で株券を電子化して保有している場合でも、差し押さえをすれば債務者は処分や振替を禁止されます。

債務者に株券がない場合でも株式を、「その他の財債権」として差し押さえることができます。弁護士が活動してからでは確認が難しくなりますので、あらかじめ債務者がどの証券会社に口座を開設しているかを確認しておくことをおすすめします。

差し押さえ対象になる資産8つ



差し押さえ対象になる資産は次の8つです。

  1. 不動産
  2. 動産
  3. 預貯金
  4. 株式・投機信託
  5. 給与、役員報酬等
  6. 売掛金
  7. 自動車
  8. 生命保険


差し押さえとは、平たくいうと債権者が債務者の回収を行うための手段です。債権者が裁判所、税務署、地方公共団体に申し建することによってお金を借りている債務者の財産の事実上・法律上の処分を禁止することができます。


差し押さえをすれば債権者は債務者の財産を拘束することができますので、債務者が持っている財産を換金するなどして貸したお金を回収することができます。また債務者は差し押さえされることによってお金の無駄遣いができなくなりますので、支払いに専念できるようになります。


差し押さえできる対象には証券口座以外にもたくさんありますので、全ての資産を調べてその中で証券口座を差し押さえ対象にする前に、差し押さえできる全ての資産を調べておけば、全てのお金を回収しやすくなりますし、最も良い資産を差し押さえることができます。

差し押さえ対象①不動産

不動産は所在地を特定できれば換価することが比較的簡単で、財産的価値が高いのでこれだけで高額な債権を回収できるというメリットがあります。


しかし換価までの時間がかかり(およそ半年〜1年程度)、単純に不動産の価値をそのまま回収できないというケースが多いので注意が必要です。予約金として 60〜80万円以上を納めなければなりませんので、債権額がどれだけの額であるかを事前に知っておくことは大切です。


例えば他の債権者が対象となる不動産に担保券を設定している場合、その担保権に対しての債権が不動産の価値から引かれることになり、最悪の場合差し押さえする意味がないほど債権が残っていることがあります。またその不動産が第三者と共有している場合は、差し押さえができるのは債務者の分のみとなり、換価する難易度も高くなります。


このように不動産は簡単に高額な債権を回収できるのでまず目に留めておきたい資産ですが、差し押さえにする前によく調査をしておき差し押さえする価値があるかどうかを確かめておきましょう。

差し押さえ対象②動産

ブランド品、貴金属、電気製品、楽器、絵画、骨董品、自動車(厳密には登録制度や抵当権などの設定があるので不動産扱いになる)などの動産は予約金が 3〜5万円と比較的低いので気軽に差し押さえができるというメリットがあります。


一方動産は一つ一つの価値が不動産ほど高くないので、動産の差し押さえだけで全ての債権を回収するのは難しいです。また鑑定するのが簡単ではなく、一見価値があるとみえたブランド品や骨董品が想定より低かったり、最悪な場合は全く価値がなかったりというケースも少なくありません。


しかし差し押さえ可能な動産を識別するときに、執行官が赤札を貼っていきますので、債務者が心理的にプレッシャーをかけ債務者を本気にさせることができるというのも忘れてはならない副産物です。動産だけで全ての回収は難しいかもしれませんが、他の差し押さえ対象となる資産とあわせて回収することができます。

差し押さえ対象③預貯金

預貯金の差し押さえとは言い換えると、本当は払うお金があるのに払わない債務者のお金を強制的に回収する作業です。したがって成功すれば簡単に多額のお金を回収できるというメリットがあります。


預貯金を差し押さえする場合はまずは債務者がどんな預金口座を持っているかを調査する必要があります。まずはこれまでの取引の経緯からどんな口座を持っているかを確認してください。場合によっては弁護士に依頼して、銀行や第三者が債務者がどんな口座を持っているかを調べることもできます。


また銀行が差し押さえ命令を受け取る前に債務者が引き出しをしたお金は差し押さえができませんので、差し押さえをするタイミングには注意が必要です。タイミングとしては債務者の給料日など入金が入った日に差し押さえをし、その後すぐに銀行に取り立てに行きます。


仮差押さえをすれば、裁判中で取り立てに行けなくても債務者は銀行から引き落としができなくなりますのでこうした制度を活用するのも賢明といえます。

差し押さえ対象④株式・投資信託

相手が株式会社で働いているのであれば自社株を持っているはずですので、債権を回収する上で非常に有効な手段となります。また他社の株券や投資信託を持っている場合も、差し押さえ対象になりますので有効活用していきましょう。


まず債務者が株券を持っている場合その株券は「動産」扱いになります。株式の鑑定評価を行った後差し押さえが可能になります。もしその株式に譲渡制限がある場合は別途承認請求の手続きが必要となります。


債務者が株券を持っていない場合、「その他の財産権」扱いになります。まず株券発行請求権に基づいて株券を発行してもらい競売にかけて回収することができます。


投資信託の場合は個別株式を所有しているわけではありませんので、振替口座のある金融機関を第三債務者として差し押さえを行います。もし債務者が投資信託振替制度を利用していないなら「投資信託の受益権」を差し押さえることになります。

差し押さえ対象⑤給与、役員報酬等

債務者が役員でもパート・アルバイトでも給与や役員報酬は差し押さえの対象となります。まずは債務者の勤務先の住所や会社名を特定して、どんな役職に就いてるかを確認しておきましょう。


役員報酬は全額の差し押さえが認められていますが給与は税金や保険料などを引いた手取り額の4分の1までしか差し押さえることができません。手取り額が44万円を超える場合は手取り額から33万円を控除した金額となります。


給与や役員報酬の差し押さえは債務者から定期的に回収できるので強力な方法といえますが、手続きが少し複雑ですので素人では手続きの負担が大きく、また回収額も少なくなってしまうので弁護士に依頼したほうがいいかもしれません。 


まずは大きな額の回収が見込める不動産や預貯金、あるいは証券口座を含む株式や投機信託で差し押さえをして、それでも回収が足りない場合に定期的に回収できる給与や役員報酬等を差し押さえするという人もいます。

差し押さえ対象⑥売掛金

売掛金とは商品などで売上が発生していてもまだ回収できていない代金のことで、この金銭になる前の将来的な金銭の権利を差し押さえすることができます。卸売業、サービス業、製造業の場合手持ちのお金や預金がなくても、この差し押さえができる売掛金が多額にある可能性があります。


通常サービスや商品などの売上によって売掛金が発生したら、会計ソフトや振替伝票に仕訳が記入されていますので債権者がどれほど売掛金を持っているかを確認することができます。この場合第三者の協力がないと難しいかもしれません。


このように売掛金の差し押さえをするためには、事前にどこに未回収の代金がいくらくらいあるかなどの調査が必要となります。またいわゆる「黒字倒産」という言葉があるように、売上が発生しているのに債務者自身が回収できていないケースもあることも覚えておきたい点です。

差し押さえ対象⑦自動車

民事執行規則86条に基づき、自動車執行と呼ばれる自動車に対しての差し押さえができます。ただし自動車執行は道路運送車両法13条1項に規定する登録自動車のみが対象となり、次の自動車は「動産」扱いとなります。

  • 軽乗用車
  • バイク
  • フォークリフトやトラクターなど小型特殊自動車
自動車を差し押さえする場合は、登録事項等証明書「使用の本拠の位置」欄記載の場所を管轄する裁判所に自動車の強制執行の申し立てを行います。強制執行が開始されると自動車の差し押さえの登録がされ、自動車の引き渡しや売却を強制することができるようになります。

自動車は比較的資産価値がわかりやすいですが、通常1年で価値が30%下がり3年後には半値近くまで下がり、8年を過ぎるとほとんど価値がなくなるといわれていますので、差し押さえ対象にはあまり向いていません。

差し押さえ対象⑧生命保険

債務者の持っている生命保険に、契約者がいつでも解約でき、かつ解約時に解約戻金が発生するという特約がある場合、生命保険解約返戻請求権を差し押さえることができます。


これは平成11年9月9日の東京地方裁判所の判決によるもので、反対意見はあるものの、「生命保険契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、これを取り立てるため、債務者の有する解約権を行使することができる。」とあります。(COUST IN JAPANより引用)


保険証の控えを回収できない場合でも、保険者、契約者、受取人、被保険者、保険の種類など保険証を特定できるものを記載すれば差し戻しは可能です。ちなみにこの平成11年の判決は生命保険解約返戻請求権であり、自動車保険契約の解約返戻金は差し戻し対象にはなっていません。

個人で差し押さえたい場合は裁判するべきなのか



差し押さえる口座自体分からなければ、裁判をする意味が薄くなりますので、個人で差し押さえたい場合の裁判はおすすめできません。2020年4月1日から開始された「第三者からの情報取得手続」という制度により、債権者は債務者の口座をほぼ確実に把握することが可能になりました。


それで差し押さえる口座が分からない場合本当に持っていない場合がほとんどで、仮に口座を突き止めたとしても預金が少なければ、差し戻し自体は可能でも差し戻しをする意味があまりありません。


それでもし今回紹介した8つの資産のうち、債務者がめぼしいものを何も持っていないなら物理的に差し押さえは不可能になるということができます。


この場合裁判所や弁護士で解決する問題ではなく、無駄に裁判費用を失う結果となります。自分一人で行うとしても差し戻しは手続きがかなり複雑なので、負担は大きく時間を無駄に使ってしまいます。このような理由から個人で差し押さえたい時の裁判はおすすめできません。

株式・投資信託の財産調査の2つの手順



これまで考えましたように、株式や投資信託の差し戻しをするためにはまず債務者が株式や投資信託をどれだけ保有しているかを調べる財産調査が必要です。債務者の中にはいくつかの株式や投資信託を持っているはずなのに、どの金融機関だったのかを完全に忘れているケースもあります。


また債務者の中には株式や投資信託を相続人として受け取っているはずなのに、やはりどの金融機関にどんな株式や投資信託を預けているかわからないこともあります。


この場合一括で管理している機関はないので、地道に調査するしか方法はありません。まずは「自宅で調査」を行い、もし関係する書類が全て見当たらなかったなら自宅で見つかった書類に関係する金融機関の「窓口で調査」をすることができます。それぞれの調査方法について詳しく解説していきます。

手順①自宅で調査

株式や投資信託など債権がある場合は、まず自宅での財産調査で以下があるかどうかを調べてみてください。

  • 預金口座への入金(配当金等)
  • 証券会社と取引しているなら取引報告書
  • 金融機関に投資信託を預けている場合はその通帳や預金口座
  • 国内株式を持っているなら配当に関する通知のはがき
  • その他株式や投資信託に関係すると思われる書類や通信物
株式や投機信託などの債権の証券口座は預金口座のような通帳はない場合がほとんどなので、取引報告書など財産調査に必要な書類が自宅にはあります。株式や投機信託などの債権があるなら、上記のようなものが自宅にありますのでまず調査を行なっていきましょう。

必要書類が全て見つからなかったとしても、最悪どの金融機関に株式や投資信託を預けているかが確認できればその書類も次の手順で役に立ちます。

手順②窓口で調査

もし自宅での調査で必要な書類が見つからなかったなら、窓口に直接行って調査を行うことができます。あなたが相続人であることを証明するために、次の書類が必要になる場合がほとんどですので、あらかじめ準備しておきましょう。

  • 相続人であることのわかる戸籍
  • 金融機関の所定書類への署名・実印押印
  • 印鑑証明書
  • 免許証等の本人確認情報

自宅調査である程度金融機関に検討がついているなら、そこから始めることができますが、もし全く見当がつかないなら予想できる金融機関を地道に探すしかありません。


もし上場している国内株式を持っているなら、「株主名簿管理人」に問い合わせれば必要な情報を教えてもえらえます。主な株主名簿管理人は次通り限られていますので調査してみてください。

  • 三菱UFJ信託銀行
  • みずほ信託銀行
  • 三井住友信託銀行の証券代行部
  • 東京証券代行株式会社
  • 日本証券代行株式会社
  • 株式会社アイ・アールジャパン

まとめ

ここまで読んだことで、証券口座が差し押さえ対象になることに加えてそのほかの差し押さえ対象になる資産についても理解いただけたと思います。


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