更新日:2020/11/12
IPOの初値の決まり方は?その方法や公募価格との関係性について解説
抽選に当たりさえすれば儲けが出るとも言われ、ローリスクハイリターンで知られるIPOですが、その初値の決まり方はどうなっているのか気になりませんか?この記事ではIPOにおける初値の決まり方だけでなく、公募価格との関係を考えていきます。
目次を使って気になるところから読みましょう!
IPOの初値はどうやって決まる?
IPO株(新規公開株)投資は、ローリスク・ハイリターンであることで知られています。そのため、抽選に当たりさえすれば儲けることができるお買い得な投資であるとも言われています。
そもそも、IPO株投資とは「新規公開株投資」と言って、これから新規上場する企業の株式を購入し、その株式を上場日に売ることで利益を得る投資方式です。
未公開株詐欺と勘違いをされてしまうこともありますが、IPO株の場合の新規上場日はすでに決定されています。また、IPO株を購入するにはIPO株を取り扱っている証券会社を経由して購入しなければならず、またその購入も抽選によって決定されることになっています。
IPO株投資で利益を得るためには、上場前のIPO株の購入価格である「公開価格」よりも上場日に初めて決まる株価である「初値」が上回る必要があります。
初値-公開価格=利益
つまり、IPO株の抽選に当たった人は、初値が高くなるほど利益を得ることができるため、「IPO株投資で儲けたい」という人であれば、初値が高くなればなるほど嬉しいですよね。そこで気になるのが、初値の決まり方ではないでしょうか。
そこで本記事では、
- IPO株の初値の決まり方
- IPO株の初値と公開価格の関係性
- 一本値方式という初値決定方式
- 初値が大幅に上がる銘柄とは?
について詳しく解説していきます。
IPO株投資に興味を持っていて始めたいと思っている人はもちろん、「IPO株の抽選に当たった!」という人や「IPO株投資で儲けたい!」という人も、ぜひ最後までご覧ください!
IPO株投資の売り方に関する記事もほけんROOMにはありますので、IPO株投資を始めたばかりの方は参考に読んでみてください。
IPOの初値の決まり方
ここではまず、IPO株の「初値」の決まり方について解説していきます。
IPO株投資で儲けるためには、公開価格よりも初値が高くならなければなりません。そのため、この初値が非常に重要になります。
まず、初値の決まり方を見ていく前に、IPO株投資の流れについて確認していきましょう。
IPO株投資の手順は以下の通りです。
- 上場決定後、株式の公開価格が決まる(=IPO銘柄)
- 証券会社を通じてIPO銘柄の購入を申し込む
- 抽選当選後、IPO銘柄を公開価格で購入
- 上場
- 上場、初値が決定(=IPO銘柄の売買成立)
そのため、IPO銘柄を購入することができた投資家は、公開価格よりも初値が上回らなければ利益を得ることができません。
そこで今回は、これからIPO株投資を始めようと思っている人にもわかりやすく、
- そもそも初値とは何か?
- 初値の決まり方
- 初値が決まらない場合
そもそも初値って?
初値やその決まり方を理解するためにはまず、株価の決まり方を知る必要があります。そこでまずは、株価の決まり方について見ていきましょう。
そもそも株式取引はオークション形式で行われています。そのため、株式の買い手と売り手が一致した値が「株価」となります。
例えば、A社の株について以下のようになっていたとします。
株価 | 買い手 (買い注文) | 売り手 (売り注文) |
---|---|---|
1,500円 | 800 | 100 |
1,600円 | 600 | 200 |
1,700円 | 500 | 300 |
1,800円 | 400 | 400 |
この場合、買い手(買い注文)と売り手(売り注文)が一致しているのは「1800円」になり、この価格で株式が売買されることになります。つまり、A社の株価は1800円ということになります。
初値とは、新規上場企業が株式市場に上場した後、初めて決まった時の株価ということになります。一般的に初値は、公開価格(上場する前に投資家が購入する価格)よりも高くなる傾向にあります。
このように、株式市場に上場後、初めて決まった株価が初値ですが、ではその初値とはどのように決まるのでしょうか。ここでは初値の決まり方と、売り注文や買い注文が殺到してしまった場合を解説していきます。
初値の決まり方は、「板寄せ方式」
IPO株の初値の決まり方は一般的に「板寄せ方式」と言われています。板寄せ方式とは、最多の株式売買が成立(=約定)するような株価の決まり方です。
そもそも、株式の売買は午前9時から始まりますが、株式売買の注文自体は午前8時~午前9時の間も受け付けられています。
板寄せ方式ではまず、上場開始時点で提示されている買い注文と売り注文の全てを注文控え(=板)に記載します。その後、成行注文の売買が成立します。
「成行注文売買」とは簡単に言えば、売値や買値を指定せずに売買注文する方法です。そのため、買い成行注文は最も安い売り注文と売買成立し、売り成行注文は最も高い買い注文と売買成立します。
成行注文の売買が成立(=約定)した後、買い注文と売り注文の最もバランスが取れる価格で売買約定がなされます。そのため、IPO株を初値で売るためには成行注文する必要があります。
このように、成行注文確定が優先される板寄せ方式ですが、IPO株の初値の決まり方としてはさらに、急激な株価変動を避けるために「値幅制限内」という基準が設けられています。具体的には、最も高値でも公開価格の2.3倍、最も低値でも公開価格の0.75倍の範囲内でなければならないとされています。
そのため、買い注文や売り注文が殺到していたりすることで値幅制限内に収まらない場合、「特別気配」が運用されます。
決まらない場合は「特別気配」が運用される
板寄せ方式ではまず成行注文が確定されますが、IPO株の場合は買い注文が殺到してしまったり、売り注文が殺到してしまうこともあります。そのため、急激な株価変動を抑えるために「特別気配」で運用されることがあります。
特別気配で運用される場合、一度株式取引が中断されます。気配値(=最も高い買い注文価格と最も低い売り注文価格)を更新し、板寄せ方式が適用できる価格になった時に初値が確定します。
このように、あまりにも大きすぎる株価変動を防ぐ初値の決まり方が定められていますが、それでも上場初日に初値が決まらないこともあります。
初値は上場初日に決まらないこともある
このように、買い注文や売り注文が殺到することで、公開価格の上限・下限の値幅制限内に収まらなければ上場初日に初値が決まらないこともあります。この場合は、翌営業日以降に初値決定が繰り越されます。
2日目以降の初値の決まり方も初日と同じです。異なる点は、公開価格ではなく前日営業日の最終気配値が基準となる点です。
つまり上場2日目の間に、上場初日の気配値から上限2.3~下限0.75の間で初値が決まらなければ、さらに翌営業日に持ち越されることになります。
上場初日で初値が決まらないのは人気銘柄?
そもそも公開価格は、それまでに上場している企業の株価や市場の相場価格、またその新規上場企業の業績・将来性といった事項を参考に決まります。
一方、初値を含む株価は、株式投資をしている投資家によって変動していきます。多くの投資家が「欲しい!」と思う企業の株価は上昇しますし、そうでない企業の株価は下がっていきます。
つまり、公開価格と投資家の思う株価(=市場価格)にある乖離が大きくなればなるほど、なかなか初値が決まらないという現象が起こりえます。つまり、上場2日目以降に初値が決まる場合は、人気の銘柄で株式としての利益が高いと言えます。
初値と公募価格の関係
このように、初値の決まり方は急激な株価変動を抑えながらの板寄せ方式でした。公募価格から一定の上限・下限以内で買い手(買い注文)と売り手(売り注文)のバランスを取っていきます。
ここで気になるのは、初値と公募価格の関係でしょう。ここでは、IPO株の勝率などを含めて解説をしていきます。
初値はほとんどの場合公募価格を上回る!
IPO株投資は、公開価格(公募価格)よりも初値が高値になることで利益を得ることができます。では、どの程度の割合で初値は公募価格を上回るのでしょうか。
一般的に、IPO株式投資の勝率は80~90%程度と言われています。つまり、IPO株の抽選に当たりさえすれば、ほとんどの確率で利益を得ることができる、ということです。
ではなぜ、初値が高値になる傾向にあるのでしょうか。それは、公募価格の決まり方にポイントがあります。
公募価格の決まり方
公募価格は先ほどの解説したとおり、それまでの企業の株価や市場相場などを加味して決定されています。しかし、そもそもIPO株は初値よりも公募価格が低くなるように設定されています。
公募価格を決定しているのは、新規上場企業の主幹事証券会社です。この主幹証券会社は、公募価格の値段によって新規上場企業から手数料を得ています。
そのため、主幹証券会社は機関投資家などの意見も考慮しながら、公募価格は低すぎず、かといって上場後にしっかり初値が高くなるような価格で設定するようにしているのです。
公募価格より初値が低くなることもある
このように、公募価格と初値の関係性は、企業にとっても証券会社にとっても、もちろん投資家にとっても非常に重要となっています。一般的には公募価格よりも高くつく初値ですが、なかにはその逆となることもあります。
最近でいえば、2018年12月に上場を果たしたソフトバンクがその例として挙げられます。
2018年12月18日に上場を果たしたソフトバンクですが、その前評判とは裏腹に公募価格1500円に対して初値1463円と、37円のマイナスとなりました。
公募価格に対する初値の上限と下限は?
また、初値の決まり方には値幅制限内で決めるというルールがありました。上限は2.3倍、下限は0.75倍となっています。
上場初日は公募価格を基準としていますが、2日目営業日以降は、前日営業日の最終気配値が基準となります。
80~90%という高い勝率だけではなく、値幅制限内というルールとして、公募価格の2倍以上の上限が許容される一方で下限は4分の3以内となっていることからも、IPO株投資がローリスク・ハイリターンであると言えるでしょう。
一本値方式というもう一つの初値決定方式も
初値のもう一つの決まり方として「一本値方式」というものがあります。これは、初値の確定時間があらかじめ決められており、その予定時刻のタイミングにおける売買注文をもとに板寄せ方式で初値が決まります。
一般的なIPO株式は、初値決定後、通常株式と同様に売買されますが、一本値方式のIPO株式は初値決定後、翌営業日まで売買注文が行われません。
このように、初値の決定時間が決まっていることもあり、採用されることは少ない方式ではありますが、理解しておくことが大切です。
参考:IPO初値が大幅に上昇する銘柄
このように、IPO株は利益が出る可能性が高い投資であると言えますが、2018年のソフトバンクのように初値が公開価格よりも低くなり利益が出ない場合もあります。
そこでここでは、IPO株投資として利益の出やすい銘柄やその法則性について見ていきたいと思います。
利益が出るIPO銘柄とは言い換えれば、初値が高くなりやすい人気銘柄と言えます。つまり、公開価格(公募価格)はできるだけ低価格になっている方が初値が上がりやすいと言えます。
また、新規上場する際の新規株式は、IPO株を購入する個人投資家だけが保有するとはかぎりません。会社の役員や大株主、また、投資の専門家であるベンチャーキャピタル(未上場企業へ資金投資をして、高いハイリターンを狙う投資ファンド)がその未公開株を保有していることもあります。
特にベンチャーキャピタルがIPO株を保有している場合は、上場後すぐに株式を売り出す可能性が高いため、高い初値がつきにくくなると言われています。
一方で新規上場企業が、こういった大株主やベンチャーキャピタルに対して「ロックアップ」という契約をしていることがあります。この場合は、初値が上がりやすい傾向にあります。
ロックアップとは、上場後すぐに大株主やベンチャーキャピタルなどが株式を売り出すことを禁止する契約です。この場合は当該企業の株式が売り出されにくくなり、初値が上がることになります。
もちろん、成長が見込める業界や話題性の高い業界、また業績のよい企業のIPO株の初値は高値になる傾向があります。
このように多角度から分析することで、より高い確率で「利益の出やすい」IPO株を狙うことができます。
まとめ:IPOの初値の決まり方は板寄せ方式と特別気配による
- 一般的にIPO銘柄の初値は、公開価格より高くなり利益が出やすい
- I初値の決まり方は板寄せ方式だが、決まらなければ特別気配で運用される
- 初値が上場初日に決まらないこともあり、その場合は翌営業日に持ち越し
- 一本値方式が採用されることもある
- 多角度からの分析が利益の出るIPO銘柄選びには重要になる