更新日:2021/02/27
傷病手当金は有給を消化するともらえない?どっちが得か解説!
大きな病気やけがをして長期間休みをとるため傷病手当金を受け取りたい!そんな時に有給を消化すると傷病手当金はもらえないのか疑問に思う方は多いでしょう。ここでは傷病手当金と有給消化は併用できるのか、またどちらを優先するとお得なのか解説します。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 傷病手当金は有給を消化するともらえない?
- 基本的に有給を消化すると傷病手当金はもらえない!
- そもそも傷病手当金とは
- 傷病手当金の支給額と支給期間
- 3日間はもらえない?待期期間とは
- 傷病手当金を受け取れる4つの条件
- 傷病手当金を受給する際に注意すべき5つのポイント
- ①支給が途中で止まってしまうことがある
- ②アルバイトや副業をすると受給できなくなってしまう
- ③申請には会社の証明が必要
- ④傷病手当金は課税の対象にならない
- ⑤自動車保険を使ったほうがいいことも
- 傷病手当金と有給どちらを優先すべきか
- 有給を消化したほうが得!
- 傷病手当金を受給したほうがよい場合
- [例外]傷病手当金と有給を併用できるケース
- 傷病手当金は審査が厳しいことも!事例を紹介!
- 参考:退職後にも傷病手当金は申請できる!
- まとめ:有給を消化すると傷病手当金は受給できない!
目次
傷病手当金は有給を消化するともらえない?
基本的に有給を消化すると傷病手当金はもらえない!
病気やけがで長期間働けなくなってしまったときに使える制度として、有給と傷病手当金が挙げられます。
しかし、残念ながらこれら二つの制度を同時に利用することはできません。
会社を休む際は有給を消化するか、傷病手当金を受給するか、どちらか一方を選ばなければならないというのが現状です。
そもそも有給はなじみのある制度ですが、傷病手当金は「聞きなれない制度でよくわからない」「最大何日間受け取れるの?」「いくらもらえる?」など疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでまず傷病手当金とはどんな制度なのか紹介していきます。
そもそも傷病手当金とは
傷病手当金とは、健康保険の被保険者本人が病気やけがで一定期間仕事ができなくなってしまった際に、本人とその家族の生活を保障するための制度です。
新型コロナウイルスに感染して出社できなくなった場合にも利用することができる制度ですので、理解を深めておきましょう。
傷病手当金の支給額と支給期間
傷病手当金として1日に受け取れる金額は次のように計算されます。
支給開始日以前の12か月の標準報酬月額の平均÷30日×2/3
(標準報酬月額については全国健康保険協会を参考にしてください。)
つまり、目安としては給料の3分の2がもらえると考えてください。
例えば、標準報酬月額が25万の人が10日間分、傷病手当金を申請すると、
25万円÷30×2/3×10=55,555
と計算され、約5万円受け取ることができます。
また、支給期間は最長で1年6か月と決まっています。
状態がよくなり復帰したものの、また同じ病気で休むことになった場合には、その期間はリセットされず、1年6か月の期間内に含まれるため注意が必要です。
しかし、異なる病気やけがで再度休む場合は、新たに最長1年6か月の支給が保障されます。
3日間はもらえない?待期期間とは
傷病手当金には、「待期期間」というものが存在します。
これは、病気やけがで休み始めてから、最初の連続3日間は傷病手当金が支給されないというものです。
仕事を休み始めて第4日目からが傷病手当金の対象期間になります。
注意点としては、待期期間3日間には公休日(土日祝日など会社が決めた休日)や、有給日も含まれる、ということです。
待期期間中は残念ながら収入がなくなってしまいますが、虚病で傷病手当金を申請するのを防ぐための制度となっています。
そのため、有給が消化しきれず残っている方は、この3日間を有給消化にあてることをおすすめします。
傷病手当金を受け取れる4つの条件
①業務外の病気やけがで仕事を休んでいる
業務以外の原因によって病気やけがをした時のみ、傷病手当金の支給対象になります。
業務中や通勤途中での病気やけがは、労働災害保険の対象なので傷病手当金の適用外です。
業務中や通勤途中で事故などにあってしまった時には労働災害保険を申請しましょう。
②就業不能と判断された
傷病手当金を受給する際に注意すべき5つのポイント
傷病手当金を受けとる際に気をつけたほうがよい代表的なポイントを5つ紹介します。
本来は受け取れたはずなのに、傷病手当金がもらえなかった!ということを避けるためにも留意点をチェックしていきましょう。
傷病手当金を受けとるときの参考にしてください。
①支給が途中で止まってしまうことがある
傷病手当金の受給期間内に、解雇や退職などで健康保険の被保険者でなくなってしまうと、支給が打ち切りになってしまうことがあります。
退職日までに一年以上継続して健康保険に加入していた際には、退職後も続けて受給できますが、一年未満の場合は退職日で受給が停止してしまいます。
加入期間が一年未満の可能性がある方は、退職日を調整できないか、会社と話し合いましょう。
②アルバイトや副業をすると受給できなくなってしまう
傷病手当金の受給には「就業不能であると判断された」という条件を満たす必要があります。
仕事を休んでいる間に、副業やアルバイトをすると仕事ができる状態とみなされ、傷病手当金がもらえなくなってしまいます。
リハビリのために軽く仕事を始めてしまい、支給が打ち切られてしまうということがあるので注意しましょう。
③申請には会社の証明が必要
傷病手当金の申請には証明書の提出が4枚必要です。
書類名 | 記入内容 | 記入者 |
---|---|---|
被保険者記入用(2枚) | 本人の基本情報 振込先銀行口座 傷病名 | 本人 |
事業主記入用(1枚) | 勤務状況 給料状況 | 勤め先の会社 |
療養担当者記入用(1枚) | 傷病名 労務不能と認める期間 入院期間 | 診察を担当した医師 |
これらの書類は、4枚まとめて会社または本人が協会けんぽや健康保険組合に提出(郵送)する必要があります。
仕事を休む間に給料の支払いがないという証明が必要になるので会社に記入をお願いしなければなりません。
会社が用紙に書いてくれないということがあるので、勤め先の会社にしっかり事情を説明して記入してもらいましょう。
④傷病手当金は課税の対象にならない
傷病手当金は所得という扱いにはならないので、所得税はかかりません。
そのため退職などをしない限り確定申告は不要です。
しかし、住民税と社会保険料は支払う必要があります。
手元に残った金額が予想以上に少なかった!ということもあるので注意しましょう。
⑤自動車保険を使ったほうがいいことも
交通事故による病気やけがの場合には、自動車保険を利用したほうがもらえる額が多くなることがあります。
特に相手側の過失による交通事故では損害賠償として本来受け取れる給与分を全額請求できます。
傷病手当金でもらえる金額は給与のおよそ3分の2なので、どちらを利用すべきか考えてから申請しましょう。
傷病手当金と有給どちらを優先すべきか
ここまで傷病手当金について説明してきました。
先ほども説明したように、傷病手当金を受けとるためには「給与の支払いがない」という条件を満たさなければならないため、傷病手当金と有給消化を併用することはできません。
では、どちらを優先すべきなのでしょうか?
ここではどちらの制度のほうが得なのか見ていきます。
有給を消化したほうが得!
一日単位で考えると、有給では通常もらえる給与をそのまま受け取れますが、傷病手当金では、給与の約3分の2しか受けとれないことになります。
有給を消化する前に傷病手当金を受け取ることができるの?と疑問に思う方もいると思いますが、全く問題ありません。
一日単位の金額で考えると、有給を消化したほうが得といえるでしょう。
傷病手当金を受給したほうがよい場合
有給を消化せずに傷病手当金を受給したほうがよい場合には、以下のケースが挙げられます。
長期間療養する場合
仕事に復帰するまで長期間必要だと見込まれるときは有給では足りなくなってしまうので、待期期間3日間以外は傷病手当金を申請しましょう。
支給期間は最長1年6か月あるため、安心して療養に集中することができます。
有給を後のために残しておきたい場合
出産や子どもの行事、旅行などのために有給を消化せず残しておきたいというときには傷病手当金を受給しましょう。
有給を使い切って後で困ることがないようにしましょう。
入社したばかりで有給を申請できない場合
労働基準法によって、入社6か月が経過しないと有給を申請できないと決まっています。入社したばかりで病気やけがをしてしまったときには、傷病手当金をもらいましょう。
日頃から残業が多い場合
先ほど、一日単位で考えると、有給を消化したほうが得とお伝えしましたが、そうではないケースがまれにあります。
それは、日ごろから長時間の残業をしている場合です。
例えば、標準報酬月額が25万(基本給18万、時間外手当7万)の方が、労働日数20日の月に有給を消化すると、一日当たり
18万÷20=9,000円
もらうことができますが、傷病手当金を申請すると、一日当たり
25万÷30×2/3=5,555円
しかもらえないことになります。
日頃から残業を多くしている人は有給を消化するよりも傷病手当金を申請したほうが得といえます。
自分が時間外手当をいくらもらっているのかによって、どちらを利用するか判断しましょう。
[例外]傷病手当金と有給を併用できるケース
ここまで、傷病手当金と有給消化は併用できないためどちらを優先するとよいのか、についてお伝えしてきましたが、例外的に併用できるケースがあります。
それは、有給でもらえる分が傷病手当金よりも少ない場合です。
しかし、これは有給分と傷病手当金どちらももらえるのではなく、差額を受け取れるということなので、注意しなければなりません。
また、基本的に傷病手当金は給料の約3分の2なので、有給でもらえる分が傷病手当金より少なくなることはほとんどありません。
考えられるケースとしては、先ほども説明したように普段から長時間の残業をしている場合や、有給の支給額が多い会社に勤めている場合などです。
自分に当てはまるかどうか確認しておきましょう。
傷病手当金は審査が厳しいことも!事例を紹介!
傷病手当金を申請したけれど、審査が通らない!ということも稀にあります。
ここでは傷病手当金を受け取れない可能性がありながらも、結果的に受け取ることができた事例をいくつか紹介します。
ほんの少しの工夫で受給できるようになるということがおわかりいただけると思います。
代男性
脳梗塞で倒れた後、退職後の継続給付を申請したAさん
Aさんは、退職後もしばらく「脳梗塞」のため就労できないという証明をX病院でもらっていました。その後にリハビリ専門病院でリハビリを始めたため、リハビリ専門病院で証明してもらった傷病手当金の請求書が届きました。しかし、その傷病名は「脳梗塞」ではなく「右片麻痺」となっていました。 退職後の継続給付の場合は、同じ傷病名でないと傷病手当金が支払われません。AさんはまだX病院へも通院はしているが、リハビリ専門病院の方が頻繁に行くからという理由で、そこから証明をもらったのでした。そこで改めてX病院で「脳梗塞」の傷病名の証明をもらいなおし、Aさんは無事に傷病手当金を受け取ることができました。
(参考:社会保険労務士法人アールワン)
代男性
治療の途中で、引越しによる転院をしたBさん
怪我により働けなくなったBさんは、実家に帰って治療を続けることになったため、病院も転院することになりました。病院での就労不能期間の証明は「その病院の初診日」より前のことは証明してもらえません。そのため、Bさんは傷病手当金を1日の空きなく受け取るために、引越日までの分は転院前の病院で証明をもらい、 「引越し日の前」に転院先の病院で診察をしてもらいました。Bさんは無事に1日の空きなく傷病手当金を受取ることができました。
(参考:社会保険労務士法人アールワン)
参考:退職後にも傷病手当金は申請できる!
重大な病気や大きなけがをしてしまった際には、仕事に復帰せずそのまま退職するということもあります。
退職後にも継続して傷病手当金は受けとることは可能です。
しかし、次の2つの条件を満たす必要があるので注意しましょう。
- 退職日まで継続して1年以上健康保険に加入していた
- 退職日や退職後に働いていない
特に、二つ目の条件は見落としがちで、退職日にあいさつなどのために出勤してしまい、退職後に傷病手当金がもらえなくなってしまった!ということがよくあるので気を付けましょう。
まとめ:有給を消化すると傷病手当金は受給できない!
ここまで有給消化と傷病手当金は併用できるのか、どちらを利用するのが得なのか、について解説してきましたが、いかがでしたか?
この記事のポイントは
- 待期期間3日間以外は、有給を消化すると傷病手当金は受け取れない!
- 傷病手当金でもらえる金額は給料の約3分の2
- 有給消化のほうが多くお金をもらえる
- 傷病手当金の審査が厳しい場合もある!
病気やけがで仕事を休まなければいけなくなった際、有給を消化するべきか傷病手当金を受け取るべきかの参考にしてみてください。
ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事が多数掲載されていますので、ぜひご覧ください。
大きな病気やけがをして長期間会社を休まなければならなくなった際に、生活を助けてくれるのが傷病手当金です。
あまり聞きなじみがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、健康保険に加入している公務員やサラリーマンの方なら誰でも利用できる制度です。
想定外の入院や通院で費用がかさみ、さらに働けないという状況で、手当金がもらえるのはとても助かりますよね。
特に最近は、新型コロナウイルスに感染してしまい出社できなくなったときに利用できる制度として注目されています。
その一方で、会社を休むときに使うことのできる制度に有給があります。
どちらの制度も会社を休む際に使えるので、有給を消化しながら傷病手当金も受け取りたい、と考える方も多いのではないでしょうか?
ここでは
について解説します。
この記事を読んでいただければ、傷病手当金と有給、両方の制度を上手に活用する方法を知ることができます。
ぜひ最後までお読みください。