更新日:2023/07/20
社長が同じ別会社を作る分社化・グループ会社設立のメリット
社長が同じ別会社をつくる「分社化」をすることで、実は法人税や事業税など必ず発生する税金を減額することが可能です。なぜ社長が同じ別会社をつくると税効果が受けられるのか、そして分社化のメリットやデメリットなどについても詳しく説明していきます。
- 社長が同じ別会社をつくるメリットを知りたい人
- スキームを理解したい人
- 別会社をつくることは法人税・事業税の減額などのメリットがある
- 租税回避行為とみなされるリスクやコストが増えるなどのデメリットがある
内容をまとめると
- 別会社をつくることで法人税・事業税や消費税・相続税などに備えることが可能
- 分社化が租税回避行為とみなされないためには会社を分ける明確な理由が必要である
- 親会社の「完全子会社」となる会社をつくるという方法がある
- 法人が行える税金対策についてさらに詳しく知りたい方は、マネーキャリアの利用がおすすめ!節最適なプランを無料オンライン相談で提案してくれます!
目次を使って気になるところから読みましょう!
社長が同じ別会社を作る8つのメリット
法人税は利益を出している企業にとって逃れられない負担であるため、その法人税をいかに減らせるかが経営のカギとなります。
- 法人税・事業税の減額
- 利益の調整
- 一括での経費計上
- 消費税の優遇
- 退職金の複数回支給
- 事業譲渡での税制優遇
- 相続税の軽減
- 使える交際費の増加
①法人税・事業税の減額ができる
社長が同じ別会社を作ることによって、税金の指標となる「利益」が分散されることにより、課税金額が減額することができます。
法人税は売上に比例するという「累進課税」方式であり、
- 800万円以下:15%
- 800万円超:23.2%
このように利益が「800万円」というボーダーを下回っている場合に「軽減税率」が適用され、税率が小さくなるため税金も少なくなります。
事業税に関しても、
- 400万円以下:3.5%
- 400万円超800万円以下:5.3%
- 800万円超:7.0%
これは「資金が1億円以下の企業」、いわゆる中小企業の場合に限りますが、社長が同じ別会社を作ることで利益が800万円以下となり軽減税率が適用されやすくなるため、結果的に課税所得が減り、税金対策につながります。
具体例を挙げると、
- 分社化前の会社:課税所3,000万円
- 分社化後の会社A:課税所得800万円
- 分社化後の会社B:課税所得1400万円
- 800万円 × 0.15 = 120万円
- 1,400万円 × 0.232 = 324.8万円
- (1)+(2)= 444.8万円
- 会社A:800万円 × 0.15 = 120万円
- 会社B:800万円 × 0.15 = 120万円
- 会社B:600万円 × 0.15 = 90万円
- (1)+(2)+(3)= 330万円
②利益の調整ができる
③共同購入・減価償却資産の特例で一括経費計上できる
社長が同じ別会社を作る場合、中小企業であれば税制の特例として「少額減価償却資産」が適用されます。
会社で10万円以上の備品などを購入すると、消耗品として一括で損金算できないため、一定の年数をかけて減価償却を行っていく必要があります。
しかし、「中小企業者等」に含まれる法人の場合、「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」に基づいて、取得価額30万円までの費用を一括で損金算入させることができます。
この場合、本来は30万円以上である場合には適用外となりますが、分社化した2つの法人で共同購入する場合、その枠が「30万円×2」で、60万円まで増えることになります。
たとえば60万円の備品を、社長が同じ別会社であるA社とB社で共同購入し、
- A社:70%
- B社:30%
このように按分したとします。
この場合、
- A社:600,000 × 0.7 = 420,000
- B社:600,000 × 0.3 = 180,000
④消費税の優遇を受けられる
また中小企業者は特定の条件を満たしている場合に、消費税支払いに関して優遇を受けることができます。
年間での売上が1,000万円以下の事業者である場合、消費税が免税となります。
これも中小企業に限りますが、一例としてたとえば年間売上が「1,500万円」の企業である場合、
- A社:売上800万円
- B社:売上700万円
⑤退職金を複数回支給できる
⑥事業譲渡の際の税金面で有利になる
会社の事業を他企業に譲渡する際に、事業譲渡ではなく「会社分割」を利用することで、税金対策ができます。
具体的にどのような税金が優遇されるのかというと、
- 消費税:なし
- 不動産取得税:軽減
- 登録免許税:軽減
- 分割事業にかかる資産・負債が分割継承法人に移転している
- 分割事業が分割継承法人によって継続される
- 分割事業にかかる従業者のうち総数の8割以上が分割継承法人に従事する
このような条件(例は東京都の場合)を満たしている必要があります。
⑦相続争い対策・相続税の軽減になる
社長が同じ別会社を作ることは、複数の相続者がいる場合の相続争いや、相続税におけるトラブルを軽減することにつながります。
たとえば経営者に2人の継承者となる子どもがいる場合、どちらが父親の会社を引き継ぐかでトラブルになるかもしれません。
しかし、分社化すると2人の子どもに会社を一つずつ相続させることができるため、相続争いが減ります。
⑧交際費に使える金額が増える
社長が同じ別会社を作ると、交際費として全額損金算入できる枠が増えます。
本来取引先との飲み会などで用いられる「交際費」は、中小企業であれば年間で800万円まで経費にすることができます。
そこで、分社化することで交際費として計上する分も半々になり、理論的には2社分の1600万円まで経費にできる枠が増えることになります。
ただしこれには税務上のリスクもあり、その点は次から取り上げます。
社長が同じ別会社を作る3つのリスク
ここまでは社長が同じ別会社を作る「分社化」のメリットについて紹介してきました。
しかし、少なからず分社化にはリスクもあります。
次はそのリスクについて、
- 租税回避とみなされる可能性
- 維持費の増加
- 経営の煩雑化
①租税回避と見做されて税務署に否認される
法人が様々な方法で対策しようと思うとき、最大のリスクとなるのが税務署により「租税回避行為」とみなされて損金算入が否認される可能性がある、という点です。
税金対策スキームは今でもたしかに有用ですが、規制はどんどん厳しくなっており、いわゆる「グレーゾーン」に含まれる行為は経費にできないケースが増えています。
さきほど分社化することで「交際費」が実質1,600万円まで経費にできる点について取り上げましたが、たとえば実際に「中小企業」という枠に含まれる法人が、年間で1,600万円もの交際費を計上するのは、あまり現実的ではありません。
もし計上していたとしても、租税回避行為とみなされて、損金算入が否認される可能性が高いといえます。
あくまで社長が同じ別会社をつくることが経営戦略の一つであり、その「結果」税金対策が達成されているのなら何も問題ありません。
しかし分社化が完全に「租税回避目的」であるとみなされれば、税務署から否認される可能性が高くなります。
②維持費が大きくなる
社長が同じ別会社をつくるということは、
- 新たに会社を設立するコスト
- 維持・管理するコスト
- 法人住民税(地方税)のコスト
③経営が煩雑になる
分社化することで、今まで1社だけの経理処理だけで良かったものが2社分行うことになるため、経営が煩雑になります。
たとえば経費はそれぞれの会社で分ける必要があるため、余分に経理書類を作成する手間が発生します。
また、企業が特定の経営理念を有している場合など、分社化することでいわゆる会社としての「統一性」が失われる、という経営面の問題があります。
そもそも分社化しても片方が赤字である場合などは税効果が薄れてしまうため、対抗意識や軋轢が生まれてしまったり、それが基になって社内トラブルが発生するなど、今まで発生し得なかった問題が生まれる可能性があります。
分社化では、こういったセクショナリズムにも対応しなければなりません。
単なる売上の問題だけでなく、社員数が増えることで社内コミュニケーションの円滑性が失われ、生産性の低下を招くリスクにも注意を払われるべきです。
会社分割の方法
ここまでは社長が同じ別会社をつくることのメリットおよびデメリットについて紹介してきましたが、それらの点を理解したうえで実際に会社分割をどのように行えば良いのでしょうか。
最後は会社分割の方法に関して、
- 持株比率100%の完全子会社設立
- 兄弟会社設立
①持株比率100%の子会社を設立する
1つ目は、親会社の指揮下にある完全子会社を設立する(分社化)という方法です。
社長が同じ別会社を設立する場合、親会社から
- 完全子会社
- 連結子会社
- 非連結子会社
- 関連会社
②兄弟会社を設立する
大元である親会社が複数の子会社を設立した場合、その子会社同士は同じ親から生まれた会社なので、いわゆる「兄弟会社」となります。