更新日:2024/03/07
幼児教育無償化のメリットとデメリットとは?賛成・反対意見を紹介!
ついに始まった幼児教育の無償化ですが、これにはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。無償化というメリットの裏に隠れたデメリットとはいったい何か、それぞれのポイントを3つずつあげて解説します。幼児教育無償化を活用される方は是非参考にしてみてください。
目次を使って気になるところから読みましょう!
幼児教育の無償化にはどんなメリットとデメリットがあるのか
この記事をご覧のあなたは、幼児教育について詳しく知りたいと思っておられることでしょう。
令和元年10月から施行された「幼児教育無償化」という新しい制度は、現在そしてこれから育ち盛りの子どもを育てようと奮闘しておられる親にとって朗報となりました。
しかしその反面「幼児教育無償化」には知られていない、周知されていない面も多く、自分は果たして本当に無償化のメリットを享受できるのだろうか、と考えておられる方も少なくありません。
そこで今回はその「幼児教育無償化」について、
- 幼児教育無償化におけるメリットとは?
- 幼児教育無償化におけるデメリットとは?
- 多くの方が感じているこの制度の不安材料とは?
幼児教育無償化における3つのメリット
10月から「子ども・子育て支援」の一貫として施行された幼児教育無償化から、誰もが最大のメリットを享受したいと願うはずです。
そのためには、まずはそれがどのような制度であり、具体的にどのようなメリットがあるのかを知る必要があります。
そこで次からは、幼児教育無償化が施行されたことで、確実にメリットが生まれる部分を紹介していきます。
子どもがいる家庭の負担軽減
幼児教育無償化は、簡単に言えば「子どもを育てる親の負担を軽減するための仕組み」、「教育の平等化を実現するための仕組み」です。
子どもを育てておられる方は、生活費や教育費を賄うために夫婦で共働きをしている方も多く、そのために日中は子どもの世話をする時間が取れない、という方も少なくありません。
もしそのような方が無償化のメリットを受けられるなら、子育ての時間および家計の負担が大きく軽減されることになります。
では、どのような子どもが無償化の対象となるのでしょうか。
この制度により無償の対象となるのは、
- 住民税非課税世帯の子ども(0~2歳)※一部施設
- 幼稚園・保育所等を利用する全ての子ども(3~5歳)
施設の分類 | 無償/補助 | 補助額 |
---|---|---|
認可保育施設(保育所) | ◯無償 | ➖ |
認定こども園 | ◯無償 | ➖ |
幼稚園(子育て支援制度対象施設) | ◯無償 | ➖ |
障害児支援施設 | ◯無償 | ➖ |
認可外保育施設 | △補助 | ~3.7万円 |
幼稚園(子育て支援非対象施設) | △補助 | ~2.57万円 |
預かり保育(幼稚園) | △補助 | ~3.7万円 |
NPO施設、個人の保護施設等 | ✕非対象 | ➖ |
このように、たとえ無償化になる施設にどうしても子どもを通わせられない場合でも、3~5歳児の間は何らかの補助を受けられるのは大きなメリットです。
また、これに加えて住民税非課税世帯は0~2歳児であっても無償化・補助を受けられる点は大きなメリットとなるでしょう。
ただし、「保育のための施設」としての体を成していない、個人またはNPOが運営する保育施設・学校等では補助が受けられない点を覚えておきましょう。
少子化問題の解消に繋がる
多くの夫婦が子どもを産み、育てることに難色を示すのはなぜでしょうか。
それが招くいわゆる「少子化」の原因には、そもそも「子どもの教育に莫大なお金がかかる」という点が挙げられます。
ある統計によると、子どもを育てるためには最低でも1000万円、私立の学校に通わせる場合はさらにプラスで1000~2000万円かかるとされています。
それに加えて、子どもが怪我をしたり病気になったときの治療費を考えれば、生活するだけでも想定しているより遥かにに多くのお金がかかることが分かるでしょう。
しかし、10月から「幼児教育無償化」が施行されることによって、子どもの年齢が0~5歳児時点での家計の負担が大きく軽減されます。
幼児教育平等化の進行
ここ数年で取り沙汰された問題の一つに「待機児童」問題があります。
保育所を希望する子どもの数が、保育所に入所できる子どもの限界数を大きく超えてしまい、あふれた子どもが保育所に通えなくなってしまうという問題です。
全体数で見れば少し減少しましたが、それでも都市部を中心に保育所や認定こども園などに入所できない子どもは1万6千人ほどいます。
しかしこの「待機児童問題」は幼児教育無償化により大幅に改善することが期待できます。
なぜなら、国から補助が出ることによって保育所以外も利用料が安くなり、認定保育施設の保育所だけではなく、認定外の保育所や幼稚園にも子どもを通わせやすくなるからです。
無償化によって家計の負担が減り、「金銭面の問題で子どもを通わせられない」という根本的なボトルネックが解消されれば、どの子どもも平等に保育所や幼稚園に通って幼児教育を受けられるようになるかもしれません。
幼児教育無償化における3つのデメリット
ここまでの点を考えれば、幼児教育無償化にはメリットこそあってもデメリットはないように見えるかもしれません。
しかし、ただ幼児教育施設の利用料が「無償化」されるだけでは収まらない、いくつかのデメリット・問題点を抱えているのも事実です。
では、幼児教育無償化には具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。
幼児教育無償化の財源確保の困難さ
まず最初に、「財源の不足」というデメリットがあります。
今回の幼児教育無償化は、親の年収に関わらず基本的には「すべての幼児(3~5歳)」を対象としているため、どの家庭も無償化の恩恵を受けることができます。
ただしその反面、子どもたちを預ける場所として「無償である」認可保育所を選択する家庭が多くなるのは必然で、そのために想定以上の予算が必要となっています。
本来は0.8億円用意されていたはずの財源でも、希望者の増加により足りなくなってしまい、追加予算が必要となったのです。
もしこの予算がどんどん増えていく結果になれば、果たしてこの施策をずっと続けていくことができるのでしょうか。
本来であれば安心できるはずの施策が、この財源不足の問題により継続性や将来性に不安を抱えさせることになっているのは、紛れもない事実です。
増税や無償化対象外費用によって、負担軽減の反対となる結果に
次の問題点は、幼児教育無償化によって「果たして本当に家計は楽になるだろうか?」という点です。
まず、幼児教育無償化では、
- 給食費
- 通園送迎費(バス代)
- 各種イベント代
- 雑用品費
もし今後、競争率の激化により無償化の対象とはならない施設の選択を迫られた場合に、国から補助を受けられると安心していたのにも関わらず、想定以上に多くの負担が発生する可能性があります。
100%の人が幸せになる施策は存在しませんが、その仕組み上「無償」という恩恵を受けられなくなってしまう子どもを持つ家庭の救済措置が、地方自治体を中心に今後は必要となってくるでしょう。
人材・設備の不足、またそれに伴う教育の質の低下のおそれ
無償化は確かに「家計の負担を軽減したい」親にとっては朗報となります。
ただし、認定保育所の競争率が増えることにより、無償化の影響を受けて値上げした(無償化の対象とはならない)施設に子どもを通わせる必要性も発生します。
なぜなら、認定保育所の希望者は増えても、施設そのものや保育士が劇的に増加することは見込めないからです。
それが引き起こす問題の一つに、「保育士の負担増」があります。
保育士は学校の先生と同様、多くの時間を子どもたちのために費やすことになるため、明らかに短時間労働ではなく長時間の勤務が必要となります。
子どもたちの世話をする時間を「仕事」や「拘束」の時間と捉えるかどうかは人それぞれですが、「働く時間が給料に見合わない」と感じる方も多くおられるのが現状です。
実際のところ保育士の年収は300~350万円が平均であり、これはサラリーマンや公務員の給料に比べるととりわけ低い金額です。
ただ単に利用料が無償化されるよりも、高い「質」が求められる幼児教育の現場において、保育士の待遇や保育施設・設備の改善が改善されることを何よりも優先すべきだという声は、ないがしろにできない意見だと言えます。
幼児教育無償化のメリットとデメリットの比較
ここまで、幼児教育無償化における主なメリットとデメリットについて取り上げてきました。
どのようなデメリットがあっても保育所や幼稚園の利用料が無料になり、家計の負担が減るのであれば、取り上げたようなデメリットは取るに足らないもの、と考える方もおられるでしょう。
実際に幼児教育無償化に賛成している多くの方のポジティブな意見の多くが、
- 家計の負担が軽減されるのであれば良い
- 認定保育所の競争率が上がっても選択肢が増えるのであれば良い
- 子どもの教育に関する別の分野にお金を掛けてあげられる
- 将来的に見れば少子化対策にもなる
- 最初から完璧な政策はないので、少しずつ改善されていけば良い
このような「親・子ども目線」でのメリットを重視していることが分かります。
それに対して、幼児教育無償化に難色を示している意見の多くは、
- 教える立場である保育士の不足、安給問題等が解決されていない
- 無償化をしても保育の質が向上するわけではないし、下がる懸念もある
- 施設側が無償とならない部分で値上げをすれば意味がない
- 財政が確保できなければ、無償化は長くは続かない
この2つの意見が噛み合わない理由には、保育所や幼稚園に「保育」としての価値だけを求めているのか、またはそれ以上の「教育」を求めているのか、という親や保育士の認識違いも関係しています。
また、子どもたちがどのような環境に置かれるか、どのような人にどのような世話を受けるかという点が、お金や家計よりも大切であると考えておられる方も多くおられます。
今回施行された幼児教育無償化が、本当の意味で「子どもたちが平等に保育・教育を受けられる」ようになる制度かどうかを見極めるには、まだ多くの時間が必要となるでしょう。
世間における、幼児教育無償化のメリットとデメリットの考え
いわゆる「世間(世論)」と、「政策(施策)」の間にずれがあるのは今に始まったことではありませんが、特に自分の子どもたちが関係してくるとなるということもあり、幼児教育無償化は常にネット上で議論となりやすい議題です。
明確なメリットやデメリットはすでに取り上げたとおりですが、実際にこの幼児教育無償化に対してどのような意見が寄せられているのでしょうか。
いくつかそれらの意見を抜粋すると、
- 今まで自分たちは幼稚園や保育所の費用を払ってきたのに不公平だ
- 無償化されることで、仕事を優先して教育に積極的でない親が増えるのでは?
- 無償化で浮いた分を学資保険や貯蓄に回せるかも?
- 子どもがいるのに保育所費用を支払えない家庭は稀なのでは?
①「今まで自分たちは幼稚園や保育所の費用を払ってきたのに不公平だ」
これは子育て現役世代ではなく、すでに子どもたちがある程度大きくなっている方の意見として多いことでしょう。
確かに、今まで保育所や幼稚園の費用を全て支払ってきた方にとっては不公平感を感じることは仕方がないことかもしれません。
しかし、実際はこの国による無償化制度が始まる前も、各市町村によって子育てを行う親への制度はすでに行われており、通常よりもかなり安く幼児教育施設に子どもたちを通わせていた方もおられます。
②無償化されることで、仕事を優先して教育に積極的でない親が増えるのでは?
親がどのような教育方針を持ち、子どもに対してどのような教育を行うかは、当然ながらそれぞれの親が決めて実践します。
さらに、子どもを保育所に通わせるかどうかは、本来「お金がいくらかかるかどうか」ではなく、その時間が「子どものためになるかどうか」を基準にして考える必要があります。
もしも無償化になることで子どもへの教育が行き届かなくなると感じるのであれば、それは無償化制度が原因ではなく、子どもを保育施設に預けるそれぞれの家庭が、根本となる「教育」や「保育」への考え方を変える必要があるかもしれません。
③無償化で浮いた分を学資保険や貯蓄に回せるかも?
学資保険とは、早ければ子どもが生まれたときから貯蓄型の保険に加入して、子どもが将来充実した教育を受けられるように資金を用意しておくための仕組みです。
学資保険は「子どもの将来のため」という目的を明確化できる有用な保険ですが、同時に元本割れというリスクも含んでいます。
さらに、学資保険への加入は保険料を支払いながらも「生計が維持できる」ことが大前提となります。
ですから、あくまで短期間の無償化で浮いた分を、将来的に支払い続ける必要のある学資保険の保険料支払いに本当に充てて良いのだろうか、という点を先に考える必要があるでしょう。
④子どもがいるのに保育所費用を支払えない家庭は少ないのでは?
親が子どもを保育所や幼稚園に通わせない理由はいくつかあります。
しかし、その理由の一つに家計状況が関係しているのも事実です。
効率の幼稚園に子どもを通わせようと考えていた方が、公立で定員オーバーのために私立の幼稚園を選択しようとすると、その費用の違いに驚かれることでしょう。
何らかの事情がある場合を含め、無理をして子どもを私立の幼稚園に通わせているような場合では、明らかな家計への負担となっています。
総数を計ることは不可能ですが、保育所や幼稚園などの費用が家計への負担となっている家庭は少なからずある、ということを否定できる方はいません。
幼児教育無償化のデメリットについてのまとめ
今回は幼児教育無償化をテーマとして、メリットやデメリット等を取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の記事のポイントは、
- 幼児教育無償化には、家計の負担を軽減できるという確実なメリットがある
- その反面年齢が制限されており、無償化の恩恵を受けられない施設もある
- その他、財源不足や保育の質低下などの問題・デメリットがある