外貨建て個人年金保険のメリット、デメリット!危険性や活用方法とは

外貨建て個人年金保険は、その高金利のメリットに注目しがちですが、デメリットや危険性について把握していないと思わぬ損を招く可能性があります。外貨建て個人年金保険の加入の際はメリットやデメリットを理解し、他の貯蓄型保険やiDeCoと比較するなど慎重に検討しよう。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

外貨建て個人年金保険とは?メリット、デメリット、危険性について

最近は公的年金に対する不安が高まっていることから、外貨建て個人年金保険が注目を集めています。


確かに、公的年金の受給額引き下げ・受給開始年齢引き上げと聞けば、自力で備えておかなければと不安になるのも仕方ありません。


外貨建て個人年金保険の高利率を目にすると、すぐにでも加入してしまいたくなりますよね。


しかし、高利回りが魅力の外貨建て個人年金保険にもデメリットはあります。


そこで、この記事では外貨建て個人年金保険のメリットとデメリットについて、

  • 外貨建て個人年金保険のメリットに隠されたリスクとは
  • 外貨建て個人年金保険、加入の際の注意点
  • 外貨建て個人年金保険とiDeCoはどちらがお得なのか

以上のことを中心にお伝えしていきます。


この記事を読めば外貨建て保険の本当の姿が分かり、よりお得な活用方法を知ることができるはずです。


ぜひ最後までご覧ください。

外貨建て(ドル建て)個人年金保険とは?老後の生活資金へ活用

外貨建て個人年金保険とは、保険料支払いや保険金受取りを米ドル・豪ドル・ユーロ・英ポンドなどの外貨で行う個人年金保険です。 


10年、20年などの一定期間に保険料を支払い、60歳など定年後に年金形式や一括受取り方式で積立金を受取れます。 


また保険料を一括で支払うタイプの一時払い外貨建て個人年金保険もあります。

外貨建て個人年金保険のメリット、デメリット

外貨建て保険には、メリットもあればデメリットもあります。


そして、実は外貨建て個人年金保険のメリットとデメリットは表裏一体でもあります。


ここからは外貨建個人年金保険のメリットとして、

  • 金利が高い
  • 為替の恩恵を受けられる場合がある

そしてデメリットとして、

  • 為替の損失を被ることがある
  • 手数料が高い

これらのことについてお伝えしていきます。

メリット:外貨の金利は高くてお得

外貨建て個人年金保険最大のメリットは「円よりも金利が高い外貨で運用し、資産を増やすことができる」という点です。


現在日本は先進国でも有数の低金利国家ですから、安全に効率良くお金を増やすことが難しくなっています。


円建て個人年金保険の運用利回りは1%程度ですが、外貨建て個人年金保険は2%~3%台と高利率です。


運用期間が長ければ長いほど円と外貨の運用成果の差は顕著になるため、長期間の貯蓄を目的とした個人年金保険ならその差は歴然です。


運用利回りが良ければ予定利率(保険会社が契約者に約束する利率)も高くなるので、保険料をより安く設定することができます

メリット:為替差益が発生する!円安になるとお得

もう一つ外貨建てならではのメリットとして「満期や解約のときに円安に進んでいれば為替差益が得られる」ということが挙げられます。


これは、保険料を一気に全額払い込む「一時払い」の場合に、もっとも利益が大きくなります。


運用の結果として積立金が10万ドルまで増えたなら、1ドル=100円なら1,000万円ですが1ドル=120円なら1,200万円にもなります。


 FXなどはこの為替差益を利用した投資ですが、外貨建て個人年金保険に加入するだけでこの為替の恩恵を受けられる可能性があります


運用益と合わせれば、掛け金を1.5倍や2倍に増やすことも夢ではありません。

デメリット:円高になると損!為替差損が発生

しかし、為替の動きによっては為替差損が発生するデメリットがあることも忘れてはいけません。

これは差益とは逆に、為替レートが円高に進むことで起こります。

「保険」と聞くと、株などよりも安全なイメージを持つ人が多いようです。

しかし外貨建て保険では、どんなに運用で堅実に増やしたとしても円高が原因であっさり元本割れしてしまうケースも多く存在します。

たとえば返戻率130%の「ドル建て一時払い年金保険」で5万ドルの保険料を運用すれば、6万5,000ドルまで増えることになります。

しかし、加入時に1ドル=120円だったのが受取時に1ドル=90円の円高になっていたなら、

50,000ドル×120円=600万円

65,000ドル×90円=585万円

円ベースでの返戻率は97.5%と、元本割れの状態になります。

為替の変動は、外貨建て個人年金保険でもっとも警戒すべきデメリットであることを忘れてはいけません。

デメリット:初期手数料、為替手数料で元本割れすることも

もう一つ知っておくべきデメリットは、外貨建て保険にかかる手数料です。


外貨建て個人年金保険では、保険料支払いと保険金受取りの際に、外貨と円を両替するための為替手数料が発生します。


為替手数料の相場は1ドルあたり1銭~50銭で、50銭なら5万ドルを得るために2万5,000円支払うことになります(1ドル=100円の場合)。


さらにその後、保険料から初期手数料が引かれることになります。


外貨建ての一時払保険の初期手数料は保険料の4%~9%で、円建ての1%~2%に比べてはるかに高額です。


5万ドルの保険料を払ったなら4%で2,000ドル、9%で4,500ドルが最初に引かれることになります。


最初に1割近くが引かれてしまう場合があるのは、外貨建て保険ならではのデメリットといえるでしょう。

外貨建て個人年金保険の注意点とは?貯蓄型保険の問題点

ここまでは、外貨建て個人年金保険のメリットとデメリットについて解説してきました。


大きなメリットがある分、それなりにリスクもあることがお分かりいただけたかと思います。


それでは、外貨建て個人年金に加入するときは、具体的にどのようなことに気を付ければ良いのでしょうか。


ここからは、外貨建て個人年金保険加入時の注意点として、

  • 早期解約で元本割れする
  • 一時払いにすると為替リスクが高まる
  • 銀行で外貨建て保険に加入するのは危険? 

以上のことについてお伝えしていきます。

早期解約は元本割れ?解約控除にも要注意

外貨建て個人年金保険は、早期解約すると元本割れの可能性が非常に高くなります。


外貨建て保険は加入後すぐに保険料から手数料が引かれてしまうため、大きく元本割れした状態からのスタートになります。


つまり、解約の時期が早ければ早いほど返戻金は少なくなってしまいます。


さらに、外貨建て保険に限らず生命保険を早期解約すると「解約控除金」という手数料が発生します。


この解約控除金も契約からの経過期間が短ければ短いほど高くなります。


手数料と解約控除金のダブルパンチを受ける早期解約にはデメリットしかありません。


外貨建て個人年金保険は絶対に早期解約しないように無理のない金額での加入を心がけましょう。

一時支払いタイプは為替リスクが高い?積立支払いタイプと比較

特に一時払いタイプは為替リスクに留意し、なるべく円高のタイミングで加入するようにしましょう。


一時払いでは保険料総額を加入時のレートで一気に外貨へ替えるため、もし円高が進めば為替差損が膨大になる恐れがあります


一時払いの商品は積立利率よりむしろ為替変動の方が、受取金額に大きな影響を与えます。


しかし前述したように、一時払いでは円安になった場合の為替差益によるメリットも大きくなります。


外貨建て一時払い保険は「ハイリスク・ハイリターン」の投資商品であることをしっかり心得ておきましょう。


一方で月払いや年払いなら、為替の動きによって円換算の保険料も上下しますので、比較的為替リスクは低くなります。


ただし満期直前に突然大幅な円高に見舞われたときには、やはり大きな損失となります。

外貨預金ではなく保険です!銀行窓販の説明不足に注意

現在、銀行の保険販売窓口(銀行窓販)で売られた外貨建て保険への苦情の急増が問題となっています。


特に高齢者からの苦情が多く、その内容の大半は「販売員が商品のリスクについてちゃんと説明してくれなかった」というものです。


保険であることすら知らず、外貨預金と思い込んで契約したというケースも多発しています。


超低金利が続き、銀行は融資で稼ぐことが難しくなってきています。


現在銀行は投資信託や外貨建保険などの「金融商品の販売」で利ざやを得ることに力を入れています。


特に外貨建て保険は高額の手数料が得られるため、銀行にとって都合のよい商品です。


言い方は悪いですが「お金があって、将来が不安で、理解力に乏しい」高齢者は、銀行にとって格好のターゲットなのです。


銀行窓販ではリスクについての説明もそこそこに、外貨建て保険の高金利ばかりをアピールしていると言われています。


後で本人や家族がリスクに気づいてもクーリングオフ期間はとっくに過ぎ、途中解約できない八方塞がりの状態になっているというわけです。


高齢者に限らず外貨建て保険への加入を検討するすべての人は、商品の危険性を知ることで自衛しておかなければなりません。

外貨建て個人年金保険とiDeCoのメリット、デメリットを比較

老後に備えられるのは外貨建て個人年金保険だけではありません。


「自分で作る年金」として人気のiDeCo(個人型確定拠出年金)と、外貨建て個人年金保険のメリットとデメリットを比較してみましょう。


iDeCoを利用すると、毎月一定の掛け金を拠出して金融商品で運用し、60歳以降に運用後の掛け金を受け取ることになります。


そしてiDeCo最大のメリットは、掛け金の全額が所得から控除されるということです。


たとえば課税所得が500万円(所得税率20%)のサラリーマンが毎月2万3,000円拠出すれば、年間27万6,000円が所得から控除されます。


つまり、所得税と住民税(10%)を合わせれば8万2,800円もの節税となります。


一方で外貨建て個人年金の保険料は「個人年金保険料控除」の対象になりますが、最大で所得税4万円・住民税2万8,000円までしか控除されません。


つまり課税所得が500万円なら、保険料が月2万3,000円でも最大で年間10,800円しか節税できないということです。


とはいえ、節税が魅力のiDecoにもデメリットは存在します。


個人年金保険と色々な項目について比較してみましょう。

iDeCo外貨建て個人年金保険
加入できる年齢60歳まで一時払いなら
80歳程度まで
解約できる年齢60歳から制限なし
支払方法月払い
年払い
(金額に上限あり)
月払い
年払い
一時払い
受取時の課税方法全額が課税対象
(控除制度は使える)
差益に課税

年齢条件もタイトですし、60歳まで絶対に解約できないという制限もあります。


特に「受取時の課税方法」については、iDeCoは自分のお金を返してもらうだけなのに全額が所得とされてしまう理不尽さがあります。


(条件によって控除制度は使えます)


このことについて「iDeCoはただの税金の後払い」と揶揄する声もあるようです。


以上のように、外貨建て個人年金保険・iDeCoの双方に長所と短所があります。


それぞれのメリットとデメリットを比較した上で、自分に合った活用方法を検討していただきたいと思います。

外貨建て個人年金保険の活用方法は資産分散と老後資金の貯蓄

生命保険文化センターの調査によると、夫婦で老後を過ごすための生活費は最低で月22.0万円ということです。


ゆとりある老後を送るには、月34.8万円が必要とも述べられています。


あなたが将来もらえる年金の額と比較してみて、いかがでしょうか。


さらに公的年金制度の受給年齢が今後68歳・70歳に引き上げられることが見込まれていますが、受給までの生活は大丈夫でしょうか。


今のうちに利率の良い運用を始めて「ゆとりある老後」に少しでも近づくのが、個人年金保険の意義といえます。


また、外貨のデメリットばかりを強調してしまいましたが、外貨に資産を分散しておくことは将来のインフレリスク回避に大変意味のあることです。


もし円の価値が下がってしまったなら物価が上がり、円で貯蓄してきた資産の価値は下落してしまいます。


資産を外貨に替えて避難させておけば、円の価値が下がっても資産価値を保持することができます。

気になるけど難しい!FPさんに相談してみませんか?

外貨建て個人年金保険には大きなメリットがある分、デメリットも存在します。


できればメリットを最大限享受し、リスクは最小限に抑えたいですよね。


しかし、その方法は個々の事情や加入のタイミングによって異なるため、なかなか理解しづらい部分もあるのではないかと思います。


外貨建て個人年金保険について悩んだときは、FP(ファイナンシャルプランナー)へ相談してみましょう。


FPは、保険・投資・税金など、人生に関わるお金のプロフェッショナルです。


外貨建て個人年金保険をはじめとした老後資産形成方法について、あなたに合った方法をアドバイスしてくれるはずです。


ほけんROOMの「マネーキャリア相談」ではFPの無料相談を実施していますので、ぜひご活用ください。

まとめ:外貨建て個人年金保険のメリット、デメリットについて

外貨建て個人年金保険のメリットとデメリットについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 高利回りの外貨建て個人年金保険だが手数料や為替のリスクにより元本割れするケースもある
  • 早期解約は元本割れの可能性が高くなるため継続できるよう無理のない範囲で加入するべき
  • 外貨建て個人年金保険とiDeCoには、それぞれにメリットとデメリットがある

以上のことでした。


個人年金保険には死亡保障がなく、払込期間中に死亡すれば払込済保険料が返還されるのみです。


あくまで自分自身の老後を支えるためのものと認識し、自分の死後の家族の生活も支えたい方は終身保険養老保険も検討しましょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事を多数掲載しています。

ぜひご覧になってください。

ランキング