外貨建て養老保険とは?メリット、デメリットや他の金融商品との比較

外貨建て養老保険のメリット、デメリットは把握していますか?外貨建て(ドル建て)保険は高金利な外貨で資産運用できる一方、為替差損のリスクや高い手数料のデメリットなどの注意点もあります。円高や円安の為替タイミングによる元本割れの可能性もしっかり理解しましょう。

外貨建て養老保険の危険性とは?メリット、デメリットまで解説

低金利の今、老後に備える「養老保険」の中でも運用利回りのよい外貨建て養老保険が注目されています。


将来の年金制度に不安を覚える方は多く、なるべく利率の良い保険に加入したいと考えている方は多いようです。


「外貨建て保険は年利3%」などと聞くと、迷わず加入してしまいそうになりますよね。


しかし、外貨建て養老保険には見た目では分からないリスクデメリットがあることをご存じでしょうか。


そこで、この記事では外貨建て養老保険のメリットに潜むデメリットについて、

  • 外貨建て養老保険の為替や手数料におけるデメリット
  • 外貨建て養老保険に加入する際に注意すべきこと
  • 外貨建て養老保険だけではない、老後に備えられる金融商品

以上のことを中心にお伝えしていきます。


この記事を読めば外貨建て養老保険の危険性が分かり、あなたに合った老後のための貯蓄方法を選ぶ助けになることと思います。


ぜひ最後までご覧ください。

外貨建て(ドル建て)養老保険とは?老後の生活資金の貯蓄に有効

外貨建て養老保険とは、保険料の支払や保険金の受取りを外貨で行う養老保険で、一般的には米ドル・豪ドル・ユーロなどの外貨で積立・運用を行います。


満期時に満期保険金が受け取れる貯蓄型生命保険で、生存保障的な満期金と死亡保障を備えることから生死混合保険とも呼ばれています。 


保険料の支払い方法が一括のタイプ(一時払い外貨建て養老保険)なら保険料の運用期間が長くなり、満期金が増加するメリットがあります。

外貨建て養老保険のメリット、デメリット、リスクについて

資産形成の手段として選択肢の一つとなる外貨建て養老保険ですが、加入前にそのメリットやデメリットは押さえておきましょう。


ここからは、外貨建て保険のメリットとして

  • 利回りが良く円建てよりも効率良く増やすことができる
  • 為替の動きによっては、その差益も期待できる

さらにデメリットとして

  • 為替差損による元本割れのリスクがある
  • 手数料が高い

以上のことについてお伝えしていきます。

メリット:外貨の高金利を活用して効率良く資産運用

外貨建て養老保険最大のメリットは、外貨ならではの高金利を活用して効率良く資産を増やせることです。


高利率で運用できれば、予定利率(保険会社が契約者に約束する運用利回り)も高くなります。


予定利率が高いと、同じ額の満期保険金を用意するために必要な保険料も低くなります。


円建て生命保険の予定利率は0.25%前後ですが外貨建て保険の予定利率は2%~4%と、かなり高く設定されています。


結果として外貨建て養老保険は返戻率120%~150%という高い数字を提示することができるのです。 

メリット:円高、円安によって為替差益を享受できる

外貨建て養老保険のもう一つのメリットは、為替差益が期待できるということです。


お金を受け取るときに為替レートが円安に進んでいたなら、円換算での保険金額が高くなります


たとえば1ドル=110円のときにドル建て保険で2万ドルを運用し、2万6,000ドルまで増えたとします。


為替レートに変化がなければ、220万円が286万円まで増えたことになります。


しかし、もし1ドル=120円の円になっていれば312万円まで増えていることになります。


こういった為替メリットを狙う商品として外貨預金やFXが存在するわけですが、外貨建て保険はさらに万が一の保障と積立機能をあわせ持つ商品であるといえます。

デメリット:実は元本保証ではない?為替差損の発生の仕組み

しかし、為替レートの変動は外貨建て保険最大のデメリットにもなり得ます。


保険というと「元本保証」のイメージがあるかもしれませんが、こと外貨建て保険に関しては元本割れの危険性を知っておかなければなりません。


もし受け取り時に円高になっていれば、円換算で受け取れる金額は目減りしてしまいます。


たとえば先ほど例に挙げた2万ドルを運用する場合ですが、受け取り時に1ドル=100円の円高になっていたら、受取金は円換算で260万円です。


ドルでは30%増の状態でも、円で考えれば18%しか増えていないことになります。


さらに1ドル=90円なら受取金は234万円で、たった6%の増加にとどまってしまいます。

デメリット:初期手数料、為替手数料が発生する

「6%増えるなら、最悪でも円建てと同じ程度の利益は確保できるのでは?」 


そう考えるかもしれませんが、ここでもう一つ注意しておかなければならないことがあります。


外貨建て保険の第二のデメリットは手数料です。


外貨建て保険の初期手数料は円建てに比べて高額で、中には保険料の10%近くが最初に控除されてしまう商品もあります。


各種費用が引かれた残りの積立金のみが運用に回されるため、マイナスからのスタートになります。


初期手数料が保険料の9%なら、2万ドルを運用するためには約2万2,000ドルの保険料(1ドル=110円なら242万円)を払う必要があるということです。


つまりこの場合1ドル90円=の円高になれば元本割れしてしまうことになります。


また外貨建て保険は保険料支払時と保険金受取時に外貨と円を交換する為替手数料がかかることもご注意ください。


ただし相場は1ドルあたり1銭~50銭と、銀行の為替手数料よりはかなり安く設定されています。 

外貨建て養老保険の注意点とは?元本割れタイミングについて

ここまでは、外貨建て養老保険のメリットとデメリットについてお伝えしてきました。


見た目の数字では分からない外貨建て保険の危険要素がお分かりいただけたかと思います。


ではこういったデメリットを踏まえた上で具体的にどのようなことに注意して外貨建て養老保険に加入すれば良いのでしょうか。


ここからは、加入する前に知っておくべきこととして、

  • 早期解約で生じるデメリットについて
  • 加入時の為替レートについて
  • 銀行窓販の説明不足について

以上3つの注意点を解説していきます。

早期解約は元本割れの原因!解約控除もあります

お伝えしたように外貨建て養老保険は加入直後の手数料等によって積立金額が減ってしまいます。


再び元本レベルまで積立金を増額させるためには、ある程度の運用期間が必要となります。


したがって、保険の解約が早期であるほど返戻率は低くなってしまいます


また、途中解約には解約控除金というさらなる手数料も発生します。


解約控除金とは積立型の生命保険を早期解約したときに取られるペナルティともいえる手数料で、額は経過期間などにより異なります。


このような理由から外貨建て養老保険の早期解約は元本割れの可能性が非常に高くなります。


加入には「絶対に途中解約しない」という覚悟が必要です。

一時払いタイプの場合は加入タイミングが円安だと損

特に一時払いタイプの場合、もっとも警戒すべきは為替レートです。


為替による損失を避けるためには、加入のタイミングがとても重要になります


外貨建て保険に加入するということは、円で外貨を買うということです。


たとえば米ドル=150円という円安のタイミングで数万ドルを買えば、その後ドルが下がって損失が出るであろうことは容易に想像できるのではないでしょうか。


一方で月払いや年払いなら為替の動きとともに円換算の保険料も上下するため、大損はしにくいといえます。


しかし為替相場の上下によって保険料も上下するというデメリットもあります。


このようなデメリットを避けるため「ドルコスト平均法」を利用した保険もあります。


ドルコスト平均法とは「定期的に投資商品を一定金額分のみ買う」ことによって、リスクを抑える投資方法です。


たとえば月額の保険料を1万円に固定して1ドル120円のときには83.3ドル、1ドル100円のときには100ドル購入するということです。


ドルコスト平均法を利用することで毎月払う保険料を固定化できる上に、為替リスクの平準化を試みることができます。 

外貨預金ではなく保険です!銀行窓販の説明不足に注意

実は今、銀行窓販(銀行窓口での金融商品販売)で加入した外貨建て保険への苦情が急増しています。


苦情の多くは高齢者からで、苦情内容は「リスクについて窓口できちんと説明してくれなかった」というものが大半です。


定期預金を申し込みに来たのに、こちらの方が利回りが良いと銀行員に勧められるまま外貨建て保険に加入してしまったというケースが多いようです。


外貨建て養老保険は定期預金のように元本保証の商品ではありません。


しかし中には、リスクどころか「保険であること」さえ理解しないまま加入してしまう方もいます。


低金利が続き融資で稼げなくなった銀行は金融商品の販売で利益を上げようとしています。


一時は主力商品であった投資信託の売り上げが伸び悩んできたこともあり、銀行はより高い手数料が得られる外貨建て保険に方向転換しています。


たとえ銀行窓販でメリットばかりを強調したセールスにあっても、鵜呑みにしてはいけません。


最近は高齢者が外貨建て保険に加入する際に親族の同席を義務づける方向になっていますが、高齢者以外の方も注意しましょう。 

外貨建て養老保険との比較対象とは?終身保険や個人年金について

ここまでは、外貨建て養老保険に加入する際の注意点についてお伝えしてきました。


保険という名の割にリスクやデメリットが多く、加入を躊躇してしまう方もいることでしょう。


もちろん、老後に備えられるのは外貨建て養老保険だけではありません。


ここからは老後の資産形成に活用できる、

  • iDeCoや個人年金
  • 外貨建て終身保険

これらの方法について解説していきます。

老後の資産形成ならiDeCoや個人年金保険も検討しよう

外貨建て養老保険は運用した積立金を受け取れる商品ですが、個人年金保険iDeCo(個人型確定拠出年金)や個人年金保険も老後の資産形成に有効です。


それぞれの特徴や注意点について解説していきましょう。


個人年金保険

個人年金保険は養老保険と同じく保険商品で円建てのものと外貨建てのものがあります。


一定年齢になれば一時金や年金として受け取ることができ先行きに不安のある公的年金にプラスすることで堅実な老後を送ることができます。


ただし、個人年金保険は養老保険と比較して以下のデメリットがあることにご注意ください。

  1. 死亡保険金がなく、払込期間中に亡くなれば払込済保険料が返還されるだけである
  2. 基本的に受け取り年齢は60歳以上でしか設定できない
  3. 終身年金や有期年期は、早期死亡で損をしてしまうことがある

個人年金保険は、死亡保障は他の保険で備えている人や死亡保障よりも長生きリスクに備えたい方におすすめできます。


iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoとは制度名ですが、一般的にこの制度を利用した定期預金・保険・投資信託(株式や国債)の運用もiDeCoと呼ばれています。


iDeCoは「掛け金全額が所得から控除される」という点で、他から抜きん出たメリットがあります。


なお、養老保険も「一般生命保険料控除」個人年金保険は「個人年金保険料控除」の対象になります。


しかし、それぞれ所得税で4万円・住民税で2万8,000円までしか控除されません。


そして、節税が最大の魅力であるiDecoにも以下のようなデメリットが存在します。

  1. 20歳~60歳までしか加入できない
  2. 原則として60歳まで解約できない
  3. 掛け金の一括払いができない(年間掛け金に上限がある)
  4. 受取時に、差益ではなく全額が所得とされてしまう

4に関しては「受け取り時に退職所得控除や公的年金等控除が適用される」と、まるでメリットのように語られる場合もあります。


しかし、そもそも保険なら払込保険料との差益にしか課税されないのですから、全額課税対象になってしまうということは明らかにデメリットです。


iDeCoは老後の積立てをしながら現在も節税の恩恵を受けたい方に適しています。


このように同じ老後に備える商品でもそれぞれの特徴は大きく異なります。


比較検討して自分のニーズに合った資産形成方法を選んでいただきたいと思います。

相続対策を視野に入れるなら外貨建て終身保険もおすすめ

自分が亡くなった後の相続税が心配な方には、外貨建て終身保険がおすすめです。


終身保険には満期という概念がないため、お金を受け取るのは解約したときか死亡したときです。


死亡保険金には相続財産として相続税が課税されますが、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。


実際に相続する人が1人だったとしても、この非課税枠は変わりません。


これが定期預金なら全額が課税対象となってしまうわけですから、非課税枠内で外貨建て終身保険に加入しておけば大幅な節税につながります。


亡くなったタイミングが円高なら遺族は外貨のままで保険金を受け取り円転のタイミングを待ちましょう。

外貨建て養老保険に向いている人とは?

ここまでは、外貨建て養老保険以外の老後の資産形成方法についてお伝えしてきました。


では、これら多くの運用方法の中から「外貨建て養老保険」を選ぶべきなのは、どんな人なのでしょうか。


ここからは外貨建て養老保険に向いている人として、

  • 老後資金を外貨に分散しつつ貯蓄したい人
  • 決まった時期にまとまったお金が必要な人

これら2つのケースについてお伝えしていきます。

老後の生活資金を資産分散しつつ貯蓄したい方

ある程度の額の外貨を保有することは、長い目で見ればとても意味のあることです。


「老後資金を外貨なんて不安定なもので貯蓄するなんて」という否定的な意見もありますが、今後ずっと円が同じ価値を持ち続けるとは限りません。


円の価値が下がれば、どんどん物価は上がっていきます。


今後為替相場がどう進むかは誰にも分かりませんが、円安に備えて外貨を保有しておくことは、収入が途絶える老後にとって大いに価値のあることです。


さらに養老保険には死亡保もありますから、積立ての途中で亡くなったとしても家族に予定通りの財産が遺せるというメリットもあります。


「自分の老後」「万が一のときの家族の生活」という両方のリスクに備えたい方にとって、外貨建て養老保険はうってつけの保険であるといえます。

養老保険の醍醐味は満期金!まとまったお金が必要な方

一般的に、老後に必要なお金はサラリーマン世帯で「年金+3,000万円」と言われています。


解約か死亡でしかお金を受け取れない終身保険とは違い、養老保険には満期があります。


終身保険は長く寝かせれば寝かせるほど運用益が出ますので、つい細く長くとのんびり構えてしまいがちです。


しかし養老保険は運用期間が決まっているため、目標の設定が明確です。


「この時期にお金が必要となるのだから、毎月○円払わなければならない」
と、目標達成のために強い意志で払い続けることができます。


つまり外貨建て養老保険は、目標があり貯蓄意識の高い人にも向いている保険といえます。

気になるけど難しい!FPさんに相談してみませんか?

ここまでお伝えしたように、外貨建て養老保険にはメリットもデメリットも存在します。


といっても外貨建て養老保険の構造は複雑で、特に為替や手数料などのデメリットについては理解しかねる部分もあるのではないでしょうか。


自分が外貨建て養老保険に加入すべきかどうかお悩みの方は、ぜひFP(ファイナンシャルプランナー)へ相談することをおすすめします。


FPは、保険・投資・税金など、人生に関わるお金のプロフェッショナルです。


あなたの人生設計を見据えた上で、外貨建て養老保険をはじめとした老後の資産形成の方法についてしっかりアドバイスをくれるはずです。


ほけんROOMの「マネーキャリア相談」ではFPの無料相談を実施していますので、一度ご利用になってはいかがでしょうか。

まとめ:外貨建て養老保険のメリット、デメリットについて

外貨建て養老保険のメリットに潜むデメリットについてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 外貨建て養老保険は手数料が高く為替リスクによって元本割れする可能性もある
  • 加入時には為替相場に注意し途中解約しない覚悟を持つ
  • 個人年金保険やiDeCoも老後の資産形成には有効である

以上のことでした。


最近は終身保険や変額年金保険などが主流となり、養老保険はあまり一般的な商品ではなくなってきました。


しかし、満期を自由に設定でき目標に向かって計画的に貯められるという点で、養老保険は他にない利点を持つ商品です。


外貨建てのメリットとデメリットをしっかり認識し、効率よい資産形成方法を選んでいただきたいと思います。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事を多数掲載しています。

ぜひご覧になってください。

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