外貨建て保険の市場価格調整の仕組みや計算方法をわかりやすく解説

外貨建て保険のほとんどの商品に付いている市場価格調整(MVA)機能について正しく理解していますか?外貨建て保険の市場価格調整とは、採用通貨国の市場金利の変動を解約返戻金額に反映させる機能のことです。市場価格調整率の計算方法までわかりやすく解説します。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

外貨建て保険の市場価格調整(MVA)とは?

市場調整価格とは、保険を中途解約した際の解約返戻金に市場金利の価格変動を反映させる仕組みのことです。


保険会社は保険料を外国債で運用しますので、解約時の市場金利が契約時より高くなった場合は、相対的に債券の価値が下落するので返戻金が減額されます。


逆に、市場金利が低くなった場合は返戻金は増額されます。


したがって、MVA機能を有する保険には、市場金利の変動によって解約返戻金が払込保険料を下回る可能性(元本割れ)があります。

外貨建て保険の市場価格調整率の計算方法について

それでは、市場価格調整率の具体的な計算方法をわかりやすく説明していきましょう。


保険会社によって多少異なりますが、市場価格調整率は原則として以下の順で算出されます。

(1+加入時の積立利率)÷(1+解約時の積立利率)=A

A^(据置期間満了までの月数÷12)=★(^は乗を表す)

市場価格調整率=1-★

以下の条件で実際に途中解約した場合の、市場価格調整率を計算してみましょう。

  • 据置期間...10年
  • 加入時の積立利率...年3.00%
  • 解約時の積立金額...10,000ドル
  • 経過年数...60ヶ月(5年)
  • 解約時の積立利率...年3.50%

1.03÷1.035=0.995

0.995の5乗=0.975 1-0.975=0.025

この場合の市場価格調整率は2.5%ということになります。

参考:外貨建て保険には解約控除による元本割れリスクもある

解約返戻金が減る要因は、市場価格調整だけではありません。


積立型生命保険を早期解約すると、解約控除金というペナルティともいえるお金も引かれてしまいます。


解約控除金は「解約控除率」によって決められますが、解約控除率は保険会社・据置するはずだった期間・契約からの経過年数によって異なります


とある保険会社の据置期間10年の保険を途中解約した場合、契約からの経過年数によって解約控除率は以下のように異なります。

経過年数解約控除率
1年0.070
3年0.056
5年0.042
8年0.021

市場価格調整率と解約控除率を合わせれば、解約返戻金は以下の式で算出されます。

解約返戻金=積立金×(1-市場価格調整率-解約控除率)

このように、早期解約によって解約返戻金はかなり減ってしまいます


市場価格調整のある商品に加入している場合、途中解約の際には市場価格調整率と解約控除率をしっかり認識しておきましょう。

外貨建て保険のデメリット、リスクについて解説

ここまでは、外貨建て保険の市場価格調整と解約控除についてお伝えしてきました。


外貨建て保険には、他にも外貨建て保険ならではのデメリットやリスクが存在します。


ここからは、留意すべきリスクとして、

  • 為替リスク
  • 手数料のデメリット

この2点について解説していきます。

為替リスクによる元本割れリスク

いくら運用利率が高かったとしても、市場価格調整でむしろ得をしたとしても、外貨建て保険には「円で受け取るときの為替リスク」が存在します。


特に一時払いの場合、1ドルが110円から100円に下がったなら9%の損失、90円まで下がったら18%の損失です。


積立金にかかる為替損益が大きい場合は、いくら運用益があっても元本割れしてしまう可能性もあります


月払いや年払いならこのリスクを緩和できますが、こちらは為替によって保険料が上下するというデメリットが生じます。

為替手数料、初期手数料がかかる

外貨建て保険は、支払ったお金がすべて運用に回るわけではありません。


死亡保障部分が引かれるのはもちろん、保険料から各種手数料を支払うことになります。


まず支払った日本円を外貨に替えるため、1ドルあたり1銭~50銭の両替手数料(為替手数料)がかかります。


また、4%~9%の初期手数料も引かれてしまいます。


外貨建て保険の初期手数料は、円建ての1%~2%よりはるかに高額です。


残った分のみが積み立てに回るわけですから、外貨建て保険は大きく元本割れした状態でのスタートとなります。 

長期的な運用が前提!資産の流動性を失う

もう一つ外貨建て保険のデメリットとして挙げられるのが、払い込んだお金を長期間使えなくなる、つまり資産の流動性を失うということです。


外貨建て保険は途中解約により市場価格調整や解約控除のリスクを負うため、絶対に途中解約してはいけないと認識しておきましょう。


また、特に外貨建て終身保険は据置期間が過ぎてからの運用こそが本番です。


運用期間が長けれ長いほど積立金は増えていきますから、なるべく長期の付き合いをしていきましょう。


為替の推移によっては解約を先伸ばしする必要もありますから、外貨建て保険は当面使う予定のない余剰資産で加入すべきものです。

気になるけど難しい!FPさんに相談してみませんか?

市場価格調整をはじめとした外貨建て保険の仕組みはかなり複雑です。


市場価格調整についてもっとしっかり理解したいと考えたなら、ぜひお金の専門家であるFPへ相談してみましょう。


FP(ファイナンシャルプランナー)は、保険や家計など生活に密着したお金についてのプロフェッショナルです。


もしあなたが外貨建て保険を途中解約しなければならない状況だとしても、できる限り損失が少なくなるよう的確なアドバイスをしてくれるはずです。


マネーキャリア相談ではFPの無料相談を実施していますので、ぜひご活用してください。 

まとめ:外貨建て保険の市場価格調整について解説

外貨建て保険の市場価格調整についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。


この記事のポイントは、

  • 市場価格調整のある外貨建て保険は、据置期間中の解約で市場価格調整率により返戻金が上下する
  • 解約が早ければ早いほど積立金から引かれる解約控除金も多くなる
  • 外貨建て保険は長期の運用を前提とし、余剰資産で行うべき

以上のことでした。


外貨建て保険は決して「絶対儲かる」商品ではありません。


ハイリスクハイリターンの商品と心得て「資産運用を楽しむ」くらいの気持ちで取り組んでいきましょう。


ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい保険に関する記事を多数掲載しています。

ぜひご覧になってください。

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