生命保険は税金や社会保険料を滞納すると差押えの対象になります!

生命保険は税金や社会保険料を滞納すると差押えの対象になります。では、誰がなぜ、どうのような方法で差し押さえを行うのでしょうか?それらについて解説します。また、差押えを回避する方法もいくつか存在します。ここでは生命保険の差押の回避の方法についても解説していきます

生命保険が知らない内に差押えられる事がある

生命保険は、保険契約者が生命保険会社と契約して加入するものというのは基本的な事項です。

その後、告知義務にも従い、毎月保険料を支払っていれば契約の義務を全うしており、保険解約は誰に強制されることもなく契約者の自由であるはずです。


しかし、コツコツ支払っていた生命保険が行政に差押えられることがあることをご存知でしょうか。


この記事では、生命保険が差押えの対象となる事態について、

  • どんな場合に生命保険が差し押さえられるのか
  • なぜ生命保険が差し押さえられるのか
  • 差し押さえに対し、どのような対応の仕方があるのか

以上のことを中心に解説していきます。


この記事を読んでいただければ、生命保険の差し押さえとそのような事態にならないための対応について、理解していただけます。


是非最後までご覧ください。


どういう場合に生命保険が差押えられるのか

ご自身が市民税などの税金や社会保険料を滞納すると、市役所などの行政が差押えの対象とするのが、生命保険です。

そうはいっても、例えば固定資産税や国民健康保険を1、2ヵ月滞納した位でいきなり行政は差押えはしませんし、差押えをするのにも適法な手続きを踏まなければいけません。

なぜ生命保険が差押えられるのか

差押えについては、法令で差押えが禁止されている財産もありますが、生命保険はその禁止事項には該当せず、実際に差し押さえられた判例もあります。

そもそもなぜ生命保険が差押えられるのでしょうか?それには以下の理由が考えられます。

  • 生命保険は現金化しやすい


ということです。


生命保険は不動産(土地、建物)や動産(自家用車等)と違って、預貯金と同様に短期間で効率的に現金化しやすいことが挙げられます。


税金等の滞納者が、賃貸住宅で不動産を所有しておらず、自家用車もない、貯金もない場合でも、万が一のために生命保険に加入しているなら行政は資産として速やかに差押えます。


  • 行政の目的は解約返戻金


地方自治体や国の行政機関が着目するのは、被保険者が亡くなって支払われる生命保険金ではありません。


短期間で効率よく税金や保険料の未納分に充当できる解約返戻金の受け取りが目的です。


解約返戻金は、保険契約者が既に支払っている保険料の蓄積であり、債権者(この場合は行政)が解約請求する権利が与えられます。





差押えが行われる流れ

差押えはいきなり行われるわけではありません。さすがに行政であっても税金未納者等の資産を強制徴収する場合には、段階を踏んで手続きを進めていきますし、判例もそのようになっています。

以下では大まかに差押えが行われる流れを説明します。


1:税金等の未納

市税などの税金等は納期限を1日でも過ぎれば滞納となります。


納期限は、税金や社会保険料の種類、各地方自治体や国によりそれぞれ異なります。


納税通知書がある場合は、それに記載されているので一度確認してみましょう。

2:督促状の通知


滞納後、市役所などから最初に送られてくる書類が督促状です。督促状には以下のようなことが記載されています。

1.納付のお願い

2.滞納している税金等の額と延滞税(金)の額

3.納付期限


およそ、本来の納付期限の1~3ヵ月程度で郵送されてきます。

3:催告書の通知

督促状に従い納付をしなければ、催告書が送られてきます。内容は督促状とほとんど変わりませんが、期限までに「納付が確認できなければ、強制執行の手続きをする」旨の注意書きが追加されます。


督促状が届けられた後、およそ1ヵ月程度で送付されてきます。


4:差押予告書

督促状及び催告書が届いても放置し続けた場合は、最終的に差押予告書が通知されます。


基本的な内容は、督促状及び催告書と同じですが、期限までに「納付が確認できなければ、財産を差押さえる」旨が明記されています。


5:差し押さえ

預貯金や生命保険が差押えられます。ただし、差押予告書を放置した後、すぐに差押えが実行されるかどうかは各地方自治体や国で対応が異なっています。

差押え中に入院給付金などの給付金は受けられる?

一般的には、解約返戻金以外にも、入院や手術に対する給付金もすべて保険契約者の債権という扱いになります。

そのため、差し押さえの状態にある契約者は入院給付金などの給付金は受け取ることができず、もし給付金を受け取る保険事故が発生した場合でも、債権者が給付金を差し押さえることとなります。

給付金が市税や市民税などの滞納金額および延滞金等の補填に充てられ、給付金の金額がそれを上回った場合に、残額を契約者が受け取ることができます。

生命保険の差押えを回避する方法

差押えを受けず穏便に解決できる方法は、ご自身が生命保険を解約し、解約返戻金を受け取り、納税することが最善といえます。

それに、一度生命保険を解約したからと言って新たな保険に入り直すことができないわけではありません。

先に解約して、掛け捨ての生命保険に入る

生命保険には主に貯蓄型保険と掛け捨て保険があります。

貯蓄型保険とは、保険料を積み立てた保障と、更に満期となった時、保険を解約した時にお金を受け取ることができる保険です。解約して解約返戻金を受け取るのがこちらの保険と言う事になります。


一方、掛け捨て保険とは、保険を受け取ることが無ければこれまでに支払った保険料が戻ってこない保険です。


掛け捨て保険は資産には当たらない

掛け捨て保険は、死亡や障害を目的とした保険であるため、貯蓄型保険のように資産運用という特色はありません。


そのため、掛け捨て保険は行政から資産とはみなされず、万が一の場合のまさしく「保険」として所有することができます。


掛け捨て保険は支払う保険料が安い

掛け捨て保険は、毎月支払う保険料が一般的に安いのが特徴です。逆に、貯蓄型保険は資産運用としての特色があるため支払う保険料は高額となります。


貯蓄型保険から掛け捨て保険へ加入し直すことで、ういた支払保険料分を税金等に充当することもでき、再び滞納と言う事態を免れることにも繋がります。

保険法の介入権というものがある

生命保険は、いったん解約されると被保険者の健康状態や年齢によっては再加入が困難となってしまう場合があります。

つまりは、行政により滞納者の生命保険が解約されると、遺族の生活保障等の機能を損なうリスクがあります。


介入権制度は、解約により解約返戻金が税金等の滞納分へ充当されてしまうことを防ぐため、保険金受取人の利益を守ることを目的に、保険金受取人が解約返戻金相当額を負担することで、生命保険契約を存続させるための仕組みです。


  • 介入権を行使できる者とは?

介入権を行使できる方(介入権者)はどなたが該当するのでしょうか?


この場合は、生命保険会社が解除権者である行政の解約の通知を受けた時点での保険金受取人となります。


この保険金受取人は「被保険者」または「契約者=被保険者の親族」である方が該当します。

したがって、保険契約者は介入権者になることができません。


  • 介入権を行使し、生命保険契約を存続させる要件

以下のような手順となります。


  1. 介入権行使について、まず保険契約者の同意を得ます。
  2. .解除権者(この場合は行政)から生命保険会社が解約の通知を受けた時から1ヵ月以内に、通知があった時点での解約返戻金相当額を解除権者に支払います。
  3. この支払いの事実について、生命保険会社に通知します。

完済しない限り根本的な解決にはならない

介入権制度は保険法で規定(保険法第89条2項および3項)されており、行政といえども受取人の介入権行使を無視して、差押えを進めるわけにはいきません。

ただし、保険金受取人は前述した通り、生命保険会社が解約の通知を受けた時から1ヵ月以内に、通知があった時点での解約返戻金相当額を完済しなければなりません。


解約返戻金相当額の一部を返済しただけでは、生命保険契約を存続させることは極めて難しくなります。

生命保険が差し押さえられたら?最良の解決策は話し合い

滞納による差押えを防ぐ最良の方法は、何より放置せずに、できるだけ早く滞納状態になっている税金または社会保険料を支払う役所や、保険事務所等へ相談することです。

分割納付にして貰う

そもそも、税金や社会保険料は、ご自身等の収入に応じて課税されるものであり、支払が困難な金額ではないはずです。

ただし、課税額が前年の所得を参考に計算されるため、失業や疾病等の事情の変化で、納付が厳しくなる場合が考えられます。


そのため、役所または保険事務所等で税金または社会保険料の分割納付をする旨の約束をすることも一つの方法です。


月々、わずかずつでも納付する姿勢を見せれば、行政側も差押えという強硬手段はまず行いません。

まとめ:生命保険の差押が行われる場合と解決策

生命保険の差押えについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

今回のこの記事のポイントは、
  • 生命保険は差押えの対象となる財産である貯蓄型保険が差押えの対象
  • 掛け捨ての保険は差押えの対象とはならない
  • 滞納金は完済することが根本的な解決方法
です。

納税や、社会保険の加入は国民の義務である以上、その納付は避けては通れません。

税金等の納付と、現在加入している生命保険の支払保険料を定期に見直し、家計の圧迫になっていないかを検討しましょう。


ご家庭の経済状況に合わせ、負担のより少ない保険に変更することも後々、差押え等の重大なリスクを回避するための方法となります。


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