養老保険の販売停止は、なぜ相次いだか?その理由を知りたい

生命保険の1つ、養老保険が一部の会社で販売停止になっていることをご存じですか?養老保険が販売停止になった理由は何でしょうか?他の生命保険は大丈夫なのでしょうか?養老保険は今後どうなるのでしょうか?今回の記事で詳しく解説いたします。

養老保険のほかにも貯蓄性の高い保険は販売停止が相次いだ

実は養老保険の他にも、貯蓄性の高い保険は販売停止が相次ぎました

それはなぜでしょうか?

保険会社が、加入者に保険を支払う大枠の考え方について、ご説明します。


養老保険に限らず、加入者の立場からいえば、保険は万が一の事態に備えてかけているものであり、万が一の際には保険金を受け取れるからこそ加入していると言えます。


それに加えて、養老保険の大きな特徴の1つは、無事に満期をむかえると満期保険金を受け取ることができるという加入者側の大きなメリットがあります。


反対に生命保険会社の立場からいえば、まずは加入者の万が一の事態には保険金を支払わなければいけくなります。


そして万が一の事態が生じなくても養老保険のように無事に満期をむかえた方には満期保険金を支払わなければいけない状況が発生します。


加入者に万が一の事態が生じても生じなくても、利回りが低下している状況でも会社として加入者に保険金を支払えるだけの蓄えをしておかなければならないと言えます。


生命保険会社としては、利益を生みにくい状況であるにもかかわらず、養老保険の満期に約束した保険金は加入者に支払っていかないといけない状況になるのです。


なぜそのような状況になるのか、さらに詳しく解説していきます。

販売停止となった理由は、金利の低下による標準利率の引き下げ

養老保険などの貯蓄性の高い生命保険が販売停止となった主な理由は、金利の低下による標準利率の引き下げです。


金利の低下による標準利率の引き下げは、生命保険会社が養老保険のような貯蓄性の高い保険を販売停止にせざるをえない状況を生み出してしまいます。

マイナス金利政策とは?

金利の低下と聞くと、マイナス金利政策をイメージする方は多いのではないでしょうか?


マイナス金利政策とは、民間銀行などの金融機関が、日本銀行(日銀)に預けている預金金利をマイナスにする状態のことを言います。

マイナス金利政策にすることで、民間銀行などの金融機関は、企業への貸し出しや投資に資金を回しやすくなると言われています。


企業への貸し出しや投資に資金を回しやすくして、経済の活性化デフレ脱却を図るのがマイナス金利政策の狙いです。


一見、世間全体にはメリットがありそうな話ですが、養老保険などの生命保険には不利な状況が生じ、販売停止の要因となっています。

2017年4月から、標準利率が1%から0.25%ヘ

2017年4月から、標準利率が1%から0.25%へ引き下げられました。

標準利率が下がることで、保険会社は加入者に保険金を支払うための蓄えがしにくい状況となります。


そのため、保険会社は加入者に、確実な保険金を払うための対策を講じなければいけなくなります


養老保険の場合、何事もなく満期をむかえると満期保険金を支払う必要があり、標準利率が下がっている状況において、生命保険会社には大きな重荷となるのです。


結果、貯蓄性の高い生命保険の販売停止をせざるをえない状況を生み出しています。

貯蓄性の高い生命保険を販売停止にすることで、会社を守る必要があるのです。

標準利率が下がることによって、なぜ養老保険などの販売停止につながるのか

標準利率が下がることによって、なぜ養老保険などの販売停止につながるのでしょうか?



これは生命保険会社が、自らの会社を守るためという要素と、加入者には結果的にメリットが少なくなるという要素があるからです。

加入者にもメリットが少なければ、養老保険そのもののイメージもマイナスになるので、そうであるなら販売停止にしてしまった方がよいという考えが生じます。

生命保険会社の三利源とは?

生命保険会社には三利源(さんりげん)という考え方があります。

その文字どおり、生命保険会社の利益の主な3つの要素(源)を意味します。


三利源とは「利差益」「費差益」「死差益」のことを言います。


利差益」とは、予定利率で見込まれた運用収入よりも、実際の運用収入が多い場合に発生する利益のことを言います。


費差益」とは、予定事業費率によって見込まれた事業費よりも、実際に使用した事業費が少なく、その差によって生じた利益のことを言います。


死差益」とは、予定死亡率によって見込まれた死亡率よりも、実際の死亡率が少なかったときに、その差によって発生する利益のことを言います。

保険会社の運用益が下がるから

生命保険会社にとっては、標準利率下がると運用益が下がります。


運用益が下がると、加入者に保険金を支払うために蓄える額が、会社の保有財源として下がることになり、生命保険会社にとっては経営上不利な状況となります。


そのため、生命保険会社は自らの会社の財源を守るために、養老保険などの貯蓄性の高い生命保険を販売停止にして、自らの会社を守っていると言えるのです。


また加入者は、掛け金の割には満期保険金の受け取り額がさほど大きくないというデメリットが生じます。


加入者にデメリットが生じる保険は、販売停止にすることで、加入者の損失感を幾分少なくすることができます。

まとめ

マイナス金利政策は、経済の活性化やデフレ脱却を図る目的で行われる政策の1つです。

しかし、生命保険会社にとっては標準利率が下がることで、経営上不利な状況となります。


また、生命保険加入者にとっては、養老保険などの貯蓄性の高い保険商品は、掛け金が高くなりながら、相反して満期などによる受け取り金は低くなるというデメリットが生じます。


養老保険の販売停止は、生命保険会社が会社そのものを守るのと同時に、加入者も守るためとも言えます。


今回解説した記事が、マイナス金利政策中や標準利率が下がっているときの、生命保険商品の選び方の参考になれば幸いです。


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