更新日:2022/10/26
ドル建て保険の一時払いは危険?為替リスクを抑える方法、対策を解説
一時払いドル建て保険は、生保会社、銀行窓口で多く販売されています。一時払いドル建て保険は高金利な米ドル・豪ドルなどの外貨で運用され、利率が良く、資産形成の手段として人気です。一方で、保険料支払いによっては為替リスクの影響で元本割れの危険性があり注意が必要です。
目次を使って気になるところから読みましょう!
一時払いドル建て保険のメリット・デメリットを全て解説
今回は、一時払いドル建て保険のメリット・デメリットを解説し、とりわけ多くの方が懸念する為替リスク(元本割れ)について、商品特性に応じて考えていきます。
記事のポイント
- 一時払いドル建て保険のメリット、デメリット
- 支払い方法と為替リスクの関係
- 元本割れ対策
正しくリスクと付き合い、信頼できる金融機関、保険会社の商品を購入すれば、ドル建て保険は老後の生活を安定して確保するための有効手段といえます。
今回の記事を通じて、一人でも多くの方が、外貨建ての保険と上手く向き合えるきっかけになればと思います。
一時払いドル建て保険のメリットとは?
- 現在は、円よりも外貨のほうが高金利なため利回りが良い
- 一時払いにより、利回りが良い
- 複数の外貨に分散投資ができる
円よりも外貨のほうが高金利なため、利回りが良い
日本は、長らく銀行では金利も皆無に等しく、0.1%の定期預金でもある場合は、飛びつく人も多いのが現状です。
でも、冷静に考えると100万円預けても0.1%の場合、利子は税引き前で1,000円でしかありません。
「無いよりはマシ」、それも間違いではないですが、将来の社会保障費の負担増や年金の受給金額が厳しくなることを鑑みると、利子というものにもっと注目することが必要だと思います。
仮に、「外貨=怖い」という思い込みがある場合で、それだけでシャットダウンしている人は、勿体ないと思います。
確かに、リスクはありますが、外貨といってもドル建て保険のように生命保険に連動するメジャー通貨は比較的にリスクも低いので、まずは話だけでも聞いてみるのはいかがでしょうか?
月払いなど分割払いより、利回りが良い
日本では、昨今の金利では、一時払いや前納による金利メリットは少ないですが、外貨商品の場合は一時払いによる利回りアップの効果がまだまだ期待できます。
複数の外貨に分散投資ができる
そこで、ドル建て保険のような比較的リスクの小さい外貨への投資は、資産の分散化メリットを受けることができます。
例えば、
- 東京オリンピック後に未曽有の不景気に見舞われた場合、
- 日本円インフレにより円安傾向になった場合
- 地震による大災害が発生した場合
私たちの力ではどうしようもできない出来事が我が国を襲った場合、円だけを保有していることはそれ自体がリスクといえます。
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一時払いドル建て終身保険のデメリットとは?
- 為替リスク
- 支払った年しか生命保険料控除の対象とならない
- 一時払いのため、まとまったお金が必要
外貨で保険料を一時払いし、後から保険金を受け取るため、為替リスクが大きい
一時払いドル建て保険は、その名の通り保険料を一括で支払いますので、そのタイミングで為替相場が円安ドル高の場合はどうなるでしょうか?
ご想像の通り、保険金受取り時に円高ドル安に為替相場が振れる可能性が大きいので、元本割れの可能性が高くなります。
また一時払いのドル建て保険の場合、加入時に手数料を多く引かれるケースが多く、早期(多くの場合、4~5年)に解約した場合には元本を割りこみます。
これは、ドル建て保険だけでなく、一時払いの円建ての終身保険でも同じようなケースが多く、初期費用(営業員への手数料の支払い等)が高い生命保険では一般に言えます(その分、銀行より中長期で高いリターンを実現)
だからこそ、為替リスク(元本を割り込むリスク)を商品別に理解したうえで、その商品を考えると元本を割れこむことは少ないでしょう。
ドル建て終身保険の例とその他リスクについては、以下で述べていきます。
ドル建て終身保険の商品例
- 毎年、利息のような支払金の受取があるもの
- 一定期間(5年・10年)は、外貨ベースで解約金が増えるもの
- 一定期間(2年・5年)経過後に死亡した場合、死亡保険金が大幅に増えるもの
どのような為替リスク(元本割れ)を考慮するべき?
1.毎年、利息のような支払金の受取があるもの
このタイプの商品では、被保険者が生存している限り利息のような支払金を毎年受け取ることができ、死亡時には加入時に支払った一時払い保険料相当額の外貨ベースで死亡保険金を受け取ります。
また、最初に手数料を引かれているケースが多いため、加入後、間もなく死亡し、その時に為替が円高の場合は、元本を割ります。
逆を考えると、被保険者が10年、20年と生存した場合は、元本割れのリスクは毎年下がっていきます。
2.一定期間(5年・10年)は、外貨ベースで解約金が増えるもの
このタイプの商品では、一定期間後に外貨ベースで積立金額は増えます。
ただし、一定期間後の為替の状況で円での受取金額は変動します。
つまり、10年後の為替の高低で、損をするケースもあります。
正直、10年後の為替は誰にも分りません。
故に、読みにくい部分も多く、かつて外貨建て保険で損をした人の多くはこのタイプの商品に加入しているケースが多かったように思えます。
ただ、最近では、加入途中でも解約金と為替を掛け合わして、一定の金額に達した場合に自動的に払い戻しとなるものもあるなど、より安全な商品設計がなされたものもあります。
3.一定期間(2年・5年)経過後に死亡した場合、死亡保険金が大幅に増えるもの
このタイプの商品では、一定期間経過後に外貨ベースで死亡保険金が大幅に増えます(例:1万ドルの保険料を払い、数年後に死亡した場合、死亡保険金を2万ドル支払う等)。
増え方が大きい若い層の場合、例えば、円高で1米ドル=50円といった未曽有の円高でも起こらない限り元本を下回ることはありません。
また、解約金は、年々増加していくので、タイミングさえ誤らなければ、元本を下回る可能性は、上記1,2のタイプの商品より低いです。
為替リスクは、どの商品もありますが、上記1,3のタイプの場合、タイミングを誤ったり、生活資金が急ぎ必要となり早期に解約しなければ元本を割れる可能性は極めて低いといえます。
支払った年しか生命保険料控除の対象とならない
だからこそ、老後の備えとしては、年金保険(円建てをお勧めします)の加入を同時に行うことで、毎月コツコツためることも大切です。
以下のケースをみて、銀行に預ける利子と比較すると、年金保険料控除による節税効果はどれだけ魅力的かよくわかります。
老後のために貯蓄をしている人は少なからず、民間の年金に加入することは効果的だと断言できます。
例:年金保険料(月1万円) 年収400万(所得税率10%)
⇒所得税は4,000円、住民税は2,800円の還付(実に年間の保険料の5%以上の戻り)
一時払いのため、まとまったお金が必要
若い世帯で、例えば400万円しかない場合に、300万円を早期解約が不利となる一時払いのドル建て終身保険に加入することはリスクと流動性の観点からお勧めできません。
外貨を保有する適切な水準は、30~50%と私は考えています。
理由は、国の年金の運用において、外貨を保有する割合が現在40%弱であり、私たちの納める年金保険料もその程度を外貨で運用されていることから、我々一個人も国同様にリスクを一定程度取ることで、自助努力で資産を守っていく必要があると思います。
一時払いドル建て保険の元本割れ対策を解説
一時払いドル建て保険の元本割れ対策としては
- 保険料を分割払いできるタイプも検討する
- 保険金を据え置きできるタイプを選ぶ
保険の加入前であれば、月払い等の保険料の分割払いを検討しましょう。
月払いのメリットは、時間経過による為替相場の変動リスクを平準化(ドルコスト平均法)を活用できる点です。
一時払いの場合は、そのタイミングで円安なら損になりますが、保険料の支払いタイミングを分散することで為替リスクも分散できるのです。
また、受取る保険金や解約返戻金を外貨のまま据え置きできるタイプの保険を選択することも有効な手段です。
為替差損は両替により発生するので、無傷の外貨のまま受取り、円安のタイミングを待って円に両替すれば元本割れ危険性を回避できます。
ちなみに、ドル建て終身保険の場合は解約をしない限り保険契約が一生涯継続されますので、据え置き機能の有無の心配はいりません。
まとめ:一時払いドル建て保険のメリット、デメリット、元本割れ対策
- 一時払いドル建て保険のメリット、デメリット
- 一時払いと為替リスクの関係
- 分割払いや保険金の据え置きで為替リスクを回避
日本の金利を考えると、自助努力でリスクを取りながら、資産を守ることが必要だと思います。
ただ、ドル建て保険のように、外貨=怖いというイメージで、話をシャットダウンする人もいれば、証券会社や銀行の外貨商品(流動性の低いマイナー通貨建ての金融商品など)でかつて損をした経験があり、外貨に拒絶反応を示す方も少なくはありません。
ただ、ドル建て保険のようにリスクを正しく理解すれば、自分たちの老後を守るに長けた商品もあります。大切なことは、リスクを恐れず、学ぶことを怠らないことだと思います。
そして、案外忘れがちなのは、ドル建て保険の利回りだけでなく、そのドル建て保険を販売している会社です。
保険は、何十年に亘る契約です。販売している会社が、果たして10年・20年先も安心して付き合える会社かという点は絶対に考えてください。
目の前の数や、高すぎる利回りには、何か裏があるのでは?と疑いの目を持って、担当者の話を聞き、そしてリスクを正しくとることが資産を守るうえでも最も大切な心掛けです。