更新日:2020/03/08
生命保険を利用した相続対策に、養老保険が不向きな理由とは?
相続対策にも利用される生命保険。その中でも養老保険は相続対策にはむいていません。養老保険が相続対策に不向きである理由を終身保険と比較しながら解説します。契約形態によって変わる税金や暦年贈与についても詳しく説明しています。
目次を使って気になるところから読みましょう!
- 養老保険は相続対策にはむいていないって本当?
- 相続対策のためなら、養老保険よりも終身保険である理由を解説
- 養老保険は満期があることが相続対策とならない一番の理由
- 養老保険の満期保険金を受け取った場合、相続財産にはなりえない
- 終身保険の死亡保険金はみなし相続財産となり、相続税非課税枠が使える
- 実際にどのくらい受け取れる金額が変わるのかを知っておこう
- 養老保険の受取人を子供にしても、相続対策には適していない
- 満期保険金を受け取る場合、贈与税がかかる
- ただ、毎年贈与税がかからない範囲の保険料分を子供に贈与して支払うという方法もある
- 生命保険は受取人を指定することで、相続問題も解消できる
- まとめ
目次
養老保険は相続対策にはむいていないって本当?
この記事では、養老保険が相続対策にむかない理由と、相続対策に適しているとされる終身保険について解説します。
いざというときに後悔しないよう準備をしましょう。
ぜひ最後までご覧ください。
相続対策のためなら、養老保険よりも終身保険である理由を解説
なぜならば、養老保険は生死混合保険だからです。
養老保険は、満期までに万が一のことがあれば死亡保険金を受け取ることができますが、満期を迎えると満期金を受け取ることができる代わりにその後の保障は消滅します。
したがって、満期以降は相続対策になりません。
一方、終身保険は、保険料の払い込み満了後も一生涯死亡保障が続きます。いつ亡くなっても死亡保険金が支払われますので、相続対策として有効です。
養老保険は満期があることが相続対策とならない一番の理由
満期を迎える前に被保険者が亡くなった場合は、死亡保険金を受け取ることができますが、満期を迎えた場合は、満期金を受け取った以降の保障がなくなってしまうからです。
養老保険の満期保険金を受け取った場合、相続財産にはなりえない
保険料負担者 | 満期保険金受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|
A | A | 所得税 |
A | B | 贈与税 |
もちろん、被保険者が保険期間中に亡くなった場合は、死亡保険金を受け取ることになりますので、相続税の対象になります。
その場合、死亡保険金はみなし相続財産となり、相続税非課税枠がつかえます。
しかし、人は死期を選択することができませんので、養老保険は相続対策に向かないのです。
終身保険の死亡保険金はみなし相続財産となり、相続税非課税枠が使える
終身保険(にかかわらず生命保険)は死亡保険金受取人が決まっています。被保険者が死亡したときは受取人に保険金が支払われ、その保険金は受取人固有の財産になります。
受け取った死亡保険金には税金がかかります。契約者(保険料負担者)と被保険者、受取人の関係によって、かかる税金の種類が変わります。
【死亡保険金の課税関係の表】
保険料負担者 | 被保険者 | 受取人 | 税金の種類 |
---|---|---|---|
A | A | B | 相続税 |
A | B | A | 所得税 |
A | B | C | 贈与税 |
上の表でわかるように、契約者(保険料負担者)と 被保険者が同じで、受取人が異なる場合が相続税の対象です。
相続税には「課税価格の合計-3000万円×法定相続人の数」の基礎控除があります。
さらに、相続人が保険金を受け取る場合「500万円×法定相続人の人数」が非課税金額となります。
実際にどのくらい受け取れる金額が変わるのかを知っておこう
一般的に、課税額は相続税がもっとも低く、贈与税がもっとも高くなります。どれほどの違いがあるのでしょうか?
満期保険金(死亡保険金)が600万円、払込保険料の合計が400万円の養老保険で説明します。
【所得税になる場合】
所得税の計算は、まず一時所得の額を算出します。
「満期保険金-払込保険料合計-50万円=一時所得」ですので、一時所得は「600万円-400万円-50万円=150万円」です。
次に課税対象額を計算します。
「一時所得×1/2=課税対象額」ですので、所得財の課税対象は「150万円×1/2=75万円」です。
【贈与税になる場合】
贈与税には1年間に110万円の基礎控除があります。
「600万円-110万円=490万円」が贈与税の課税対象額です。
【相続税になる場合】
相続税には「課税価格の合計-3000万円×法定相続人の数」の基礎控除があります。さらに、相続人が保険金を受け取る場合「500万円×法定相続人の人数」が非課税金額となります。
したがって、600万円の養老保険には相続税はかかりません。
このように、満期(死亡)保険金の受取金額は変わりますので、相続対策には、契約者、被保険者、受取人の関係が大変重要です。
養老保険の受取人を子供にしても、相続対策には適していない
なぜなら、多くの場合は贈与税の対象となってしまうからです。
ただし「契約者・受取人=子ども、被保険者=親」という契約形態にし、「暦年贈与」で相続対策に活用する方法もあります。
満期保険金を受け取る場合、贈与税がかかる
契約者(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | |
---|---|---|---|
1 | 父 | 父 | 子 |
2 | 父 | 母 | 子 |
1の契約形態で満期保険金を受け取った場合は、贈与税の対象となります。
死亡保険金を受け取った場合は相続税の対象となりますが、死亡保険金となるか満期保険金となるかはわかりません。
2の契約形態では、満期保険金を受け取った場合も、死亡保険金を受け取った場合も必ず贈与税の対象となります。
ただ、毎年贈与税がかからない範囲の保険料分を子供に贈与して支払うという方法もある
長期間毎年110万円を限度に贈与をし、財産を相続税の控除額以内まで減らしてしまえば、最終的には贈与税はもちろん、相続税もかからなくなります。
その手段として有効となるのが生命保険です。親が子どもに110万円を贈与し、子どもがそのお金で親に保険をかけるのです。
「契約者・受取人=子ども、被保険者=親」の保険に加入し、親が子どもに贈与した現金(子ども名義の通帳に移した現金)で保険料を支払います。
親が死亡すると、保険金は所得税の課税対象です。しかし所得税の計算時に、今まで支払った保険料分は受け取る保険金から差し引きできます。
所得税は贈与税より支払う金額が少なくて済みますので、贈与税のかかる契約形態で保険に加入するよりも、暦年贈与を利用する方が相続税対策として有効なのです。
相続税対策における生命保険についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ読んでみてください。
生命保険は受取人を指定することで、相続問題も解消できる
亡くなった人の財産を相続するときは、遺言書がなければ遺産分割協議をするのが一般的です。しかし保険金は受取人の固有の財産になるので遺産分割協議が不要です。
遺産を巡って争いが起きる心配が減ります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
養老保険が相続対策として不向きである理由を、満期のない終身保険と比較しながら解説しました。
加入する保険の種類や契約形態によって、受け取ることのできる保険金の額は変わります。
生命保険を相続対策に利用する場合は、保険の種類と契約形態を必ず確認しましょう。