個人年金保険料控除に上限はある? 控除額の計算方法を簡単に解説!

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個人年金保険を利用している人の中には、個人年金保険料控除の活用を考えている人もいることでしょう。そんな個人年金保険料控除には、上限があることを知っていますか?本記事では個人年金保険料控除の上限や、具体的な控除額などを解説します。

この記事の監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

上限の前に:そもそも個人年金保険料控除とは?


個人年金保険料控除とは、生命保険料控除のひとつです。


年内に払い込んだ個人年金保険の保険料のうち一定額を、所得から差し引きできるため、所得税や住民税の節税ができます。


個人年金保険料税制適格特約の付加が必要で、付加していない場合は対象外です。


対象外のものは一般生命保険料控除に合算されるため、枠を使い切っている場合は利用できません。


生命保険料控除には、旧制度新制度があります。


違いは以下の通りです。


旧制度新制度
対象平成23年12月31日までの契約平成24年1月1日以後の契約
種類一般生命保険料控除
個人年金保険料控除
一般生命保険料控除
介護医療保険料控除
個人年金保険料控除


以上の通り、新制度からは種類が追加されています。


改正の背景としては、少子高齢化が挙げられます。


近年は少子高齢化が進行しているため、介護・医療の需要は増加する一方です。


このまま進行すると公的制度だけでは補いきれない可能性もあるため、国民ひとりひとりの自助努力が必要になります。


したがって、民間の保険による自助努力の推進のために、新たな枠が設けられたのでしょう。


なお平成23年12月31日までに加入している場合でも、平成24年以降に契約更新・特約中途付加した場合は、その時点から新制度の適用になります。


混同しないように注意してください。

個人年金保険料控除額の上限を解説! 上限超えたらどうなるの?


個人年金保険料控除額の上限は、契約に適用される制度によって異なります。


控除額の上限は以下の通りです。


旧制度新制度
所得税5万円4万円
住民税3.5万円2.8万円


年間の払い込み済み保険料が所定の金額を超えると、一律で上記の金額を控除します。


続いて、合算した場合の上限は以下の通りです。


旧制度新制度
所得税10万円12万円
住民税7万円7万円


新制度は住民税の上限が単体で2.8万円ですが、合算すると上限が7万円になります。


一般・年金・介護全てで上限を満たしている場合は、余剰分が切り捨てられるため注意しましょう。


なお、両制度に加入の場合は、12万円が上限です。


詳しい算出方法や具体的なシミュレーションなどは後述します。

個人年金保険料控除額の計算方法

個人年金保険料控除の控除額は、


  • 新制度か旧制度か
  • その年に払い込んだ保険料など
  • 所得税か住民税か


上記の違いにより、計算方法が異なります。


そのため自分で計算する際は、混同しないように注意が必要です。


本章では、個人年金保険料控除額の計算方法を中心に解説します。


申告の際に間違えることのないよう、事前に確認しましょう。

旧制度:保険契約が2011(平成23年)12月31日以前の場合

旧制度の個人年金保険料控除の計算方法を、所得税・住民税それぞれ解説します。


なお、計算式にある「払い込み済み保険料など」は、余剰金や割戻金を差し引いた金額です。


所得税


所得税の場合は以下の通りです。


年間の払い込み済み保険料など控除額
2.5万円以下払い込み済み保険料などの全額
2.5円超〜5万円以下払い込み済み保険料など×1/2+12,500円
5万円超〜10万円以下払い込み済み保険料など×1/4+25,000円
10万円超一律5万円


上記の計算式は一般にも同様に適用され、2つ合わせた上限は10万円になります。


住民税


住民税の場合は以下の通りです。


年間の払い込み済み保険料など控除額
1.5万円以下払い込み済み保険料などの全額
1.5万円超〜4万円以下払い込み済み保険料など×1/2+7,500円
4万円超〜7万円以下払い込み済み保険料など×1/4+17,500
7万円超一律3.5万円


上記の計算式は一般にも同様に適用され、2つ合わせた上限は7万円になります。

新制度:保険契約が2012年(平成24年)1月1日以降の場合

新制度の個人年金保険料控除の計算方法を、所得税・住民税それぞれ解説します。


旧制度とは金額等が異なるため注意しましょう。


「払い込み済み保険料など」の意味は旧制度の場合と同様です。


所得税


所得税の場合は以下の通りです。


年間の払い込み済み保険料など控除額
2万円以下年間の払い込み済み保険料などの全額
2万円超〜4万円以下年間の払い込み済み保険料など×1/2+10,000円
4万円超〜8万円以下年間の払い込み済み保険料など×1/4+20,000円
8万円超一律4万円



上記の計算式は一般・介護にも同様に適用され、3つ合わせた上限は12万円になります。


住民税


住民税の場合は以下の通りです。 


年間の払い込み済み保険料など控除額
1.2万円以下年間の払い込み済み保険料などの全額
1.2万円超〜3.2万円以下年間の払い込み済み保険料など×1/2+6,000円
3.2万円超〜5.6万円以下年間の払い込み済み保険料など×1/4+14,000円
5.6万円超一律2.8万円


上記の計算式は一般・介護にも同様です。


ただし3つ全てを合計した上限は7万円になります。


それぞれの枠で上限に達していても、余剰分は切り捨てになるため気をつけましょう。

個人年金保険料控除額の具体的なシミュレーション(所得税控除)


前章で解説した計算をもとに控除額を算出すると、どのくらいの金額になるのでしょうか。


本章では以下の3つのケースに分けて、所得税控除のシミュレーションをします。


  • 旧制度のみ加入の場合
  • 新制度のみ加入の場合
  • 新旧両制度に加入の場合


個人年金保険料控除だけでなく、一般・介護も含めて算出するため、生命保険に加入中の人は参考にしてみてください。

旧制度(平成23年以前の契約)のみ加入している場合

旧制度のみ加入の場合をシミュレーションしましょう。


一般
年金介護
年間の払い込み済み保険料など12万円12万円-
控除額5万円5万円-


上記のケースでは、旧制度が適用された契約の控除額が4万円以上です。


この場合、旧制度の計算方法のみで算出します。


年間の払い込み済み保険料などが一般・年金ともに10万円超であることから、前章の計算表に当てはめると、いずれも上限の5万円になることがわかります。


そのため一般・年金を合算し、10万円が控除の適用額です。

新制度(平成24年以後の契約)のみ加入している場合

続いて、新制度のみ加入の場合をシミュレーションしましょう。


一般年金介護
年間の払い込み済み保険料など10万円10万円4万円
控除額4万円4万円3万円


上記のケースを前章の計算表に当てはめると、一般・年金は年間の払い込み済み保険料などが8万円超のため、上限にあたる4万円になることがわかります。


一方介護は上限に達していないため、以下の計算式から求めます。

40,000円 × 1/2 + 10,000円 = 30,000円

そのため3つ全てを合算すると、11万円が控除の適用額です。

旧制度と新制度の両制度に加入している場合

新旧両方に加入の場合は、旧制度の控除額次第で方法が変わります。


一般・年金は以下の通りです。


  • 旧制度の控除額4万円以上 → 5万円を上限に、旧制度のみを適用
  • 旧制度の控除額4万円未満 → 4万円を上限に、新旧両制度を合算して適用


介護は4万円を上限に新制度を適用します。


以上の条件をもとに、シミュレーションをしましょう。


年間の払い込み済み保険料など控除額
一般(旧)11万円5万円
年金(旧)11万円5万円
一般(新)8.5万円4万円
年金(新)0円0円
介護6万円3.5万円


このケースでは、旧制度がいずれも4万円を超えていますね。


そのため一般・介護については、旧制度だけを適用し、新制度は含めません。


以上を踏まえると、以下のように算出できます。

一般5万円 + 年金5万円 + 介護3.5万円 = 13.5万円

ただし所得税控除には上限があるため、余剰分が切り捨てられ、合算で上限にあたる12万円が控除の適用額です。

個人年金保険料控除でいくら戻ってくるのか? 具体例で解説! 


個人年金保険料控除を受けると、いくら戻ってくるのでしょうか。


以下のケースを元に解説します。


内容
年齢30歳
性別男性
年収500万円
扶養家族なし
加入保険個人年金保険(10年確定拠出)
基本年金額38.1万円
払い込み満了60歳
年金受け取り開始65歳
保険料/月1万円


年収500万円で扶養家族のいないケースでは、課税所得は以下の通りです。

年収500万円 - 給与所得控除144万円 - 課税所得124万円 = 232万円

国税庁の所得税率に当てはめると、所得税率は10%になります。


年間の払い込み済み保険料などは、合計で12万円であるため、所得税控除額は上限である4万円です。


この控除額に所得税率を掛けることで、所得税がいくら減るかがわかります。

4万円 × 10% = 4千円

つまり、今回のケースでは4千円の所得税が減り、年末調整・確定申告などを経て戻ってきます。


なお住民税に関しても考え方は同様です。


住民税は所得に関係なく、全国的におおむね10%とされています。


詳しくはお住まいの自治体で調べてみてください。

個人年金保険料控除を受ける条件を解説


個人年金保険料控除は、全ての個人年金保険が対象になるわけではありません。


大前提として、個人年金保険料税制適格特約を付加する必要があります。


その上で以下の条件に該当する契約のみが対象です。


  • 受取人=契約者 or その配偶者
  • 受取人=被保険者
  • 払い込み期間が10年以上
  • 確定・有期の場合は、受け取り開始が60歳以降、かつ受け取り期間が10年以上


例えば保険料を一括で支払う一時払いの場合は、上記の条件に当てはまらないため対象外です。


個人年金保険は退職金などで一時払いを行うケースも多いため、控除を受ける場合は払い込み期間の点に注意しましょう。


また、受取人は契約者本人かその配偶者に限られます。


子供や両親、兄弟などは対象外になるため、控除を受ける際は必ず受取人が誰になっているかを確認しましょう。

参考:特約を付加していなければ一般生命保険料控除の対象

契約している個人年金保険が、特約を付加していない場合は、一般生命保険料控除の対象です。


そのため死亡保険や学資保険と一緒に、控除枠を分け合うことになります。


既に死亡保険や学資保険などの生命保険で上限を満たしている場合は、それ以上の控除が受けられません。


せっかく個人年金保険に加入しているのに、控除が活用できないのは損だと思いませんか?


契約する際は特約の付加を忘れずに行い、条件を満たしているかの確認をしましょう。

個人年金保険料控除を受ける際の注意点を解説


個人年金保険料控除を受けるためには、特約の付加が必須です。


特約を付加する際は、以下のような注意点があります。


  • 条件を満たす必要がある
  • そのため契約の自由度が減る


条件とは前章でも挙げた、以下の条件です。


  • 受取人=契約者 or その配偶者
  • 受取人=被保険者
  • 払い込み期間が10年以上
  • 確定・有期の場合は、受け取り開始が60歳以降、かつ受け取り期間が10年以上


この条件に当てはまる契約だけが対象となるため、契約の自由度は大幅に減ります。


適切な個人年金保険は、ひとりひとりの経済状況やライフステージによって異なります。


つまり節税を目的に加入した場合、適切な保障が受けられなくなる可能性があるのです。


個人年金保険の本来の目的は、老後の生活資金です。


節税だけを意識するのではなく、あくまで自分にとって最適な保障が受けられるような、商品選びを行いましょう。

まとめ:個人年金保険料控除を理解して活用しよう


個人年金保険料控除の上限を中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか。


個人年金保険料控除は所得税・住民税の節税ができてお得な一方で、条件があり自由度が低い点に注意が必要です。


加入を検討する際は、あくまでも自分に適した保険であるかを基準に、商品を選択しましょう。


個人年金保険料控除は、適用する制度や払い込み保険料などにより、控除額が変わります。


そのため申告の際は算出方法を正しく理解することが大切です。


もし個人年金保険料控除の計算に自信がない場合は、保険のプロにご相談ください。


保険のプロであれば保険に関する専門知識を持っているため、正しい金額を算出できます。


マネーキャリアでは、保険のプロによる無料相談を実施しています。


予約から面談まで全てオンラインのため、スマホひとつで利用可能です。


個人年金保険料控除に関する疑問のある人は、ぜひお気軽にご相談ください。

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