親が子供に個人年金保険をかける場合の控除や税金(贈与税)の注意点

個人年金保険は掛け金を払う人(契約者)と被保険者・受取人を異なる名義で設定できます。親が子供のために個人年金保険をかける、保険料を親が払うケースも可能です。ただ、子供の年末調整・確定申告の個人年金保険料控除の扱いや、受け取り時の税金(贈与税)に注意が必要です。

個人年金保険を親が子供にかけることは可能

「子供の将来が不安だから個人年金保険を積み立ててあげたい」「個人年金保険で税金の控除を活用しながら贈与をしたい」など、子供のために個人年金保険やその他個人年金の積立をしてあげたいと考えている親御さんからの相談を受けたことがあります。


親が契約者となり、子供が被保険者、受取人となるように個人年金保険に加入することもできますし、子供が加入年齢に達していて贈与税を正しく計算できる場合には、子供名義(子供が契約者)で掛け金を親が払うことも可能です。


ただし、親が子供のために個人年金保険に加入する場合、注意点があります。

  • 親の個人年金保険料控除の扱いについて(年末調整・確定申告)
  • 子供が受け取り時の税金、贈与税ついて
  • その他の注意点について
この2点について解説していきます。

中国では0歳の赤ちゃんに親が保険をかけるなんて事例もあるようで、最後にはそういった小噺(こばなし)もまとめます。最後まで読んでしっかりと理解してください。

個人年金保険控除の対象になる?年末調整・確定申告は必要?


通常、個人年金保険は、自分の個人年金の積立のために掛け金を支払い、60歳や65歳になった時に年金形式または一括受け取りをするものです。


この場合、生命保険料控除の3つ(一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除)のうち、個人年金保険料控除の対象となります。(詳細:生命保険文化センター


年末調整時に受取人を確認しなきゃ、と慌てた経験もある方も多いと思いますが、年末調整や確定申告で保険に加入している掛け金などを申告することで、所得税や住民税から一定金額の控除を受けられると言う制度です。


しかし、親が子供のために保険をかけるというケースでは、個人年金保険料控除の対象とはなりません。この点には要注意です。


※年末調整や確定申告での申告も不要ということになります。

個人年金保険料控除の対象とはならない

個人年金保険料控除を受けるには、「個人年金保険料税制適格特約」という特約をつけておかなくてはなりません。そして、個人年金保険料税制適格特約をつけるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 年金の受取人が契約者、または契約者の配偶者であること
  • 年金の受取人と被保険者が同じ人であること
  • 保険料を支払う期間を10年以上に設定していること
  • 年金の種類が確定年金、または有期年金の場合、年金受取開始年齢を60歳以降、かつ年金受取期間を10年以上に設定していること
親が子供のために個人年金保険に加入した場合、「年金の受取人が契約者、または契約者の配偶者であること」という条件が満たせません

個人年金保険料控除では、年間最大で所得税40,000円、住民税28,000円を課税対象から控除できます。

個人年金保険料控除が受けられなくても一般生命保険料控除は受けられますが、生命保険料控除には控除上限額が設定されているので、他にも生命保険などに加入していると控除上限額を超えてしまい、せっかくの控除を活用しきれないことがあるでしょう。

子供が受け取りの際に贈与税の課税対象となる?非課税?

親が子供のために加入した個人年金保険の年金を子供が受け取る際には、贈与税がかかります。子供が受取人であっても保険料を支払っているのは親なので、個人年金保険契約の権利は親にあるのです。


子供が年金を受け取るということは、「個人年金保険の年金受給権いう資産」を子供にゆずったとみなされ、贈与税の課税対象になります。


さらに、受け取った年金は雑所得として扱われるので所得税の対象です。ただし、年金受取初年度は贈与税がかかるので、2重課税を避けるために所得税は非課税となります。


なお、子供が年金を受け取る前に親が亡くなった場合は、「個人年金保険の年金受給権という資産」を子供が受け継ぐことになるので相続税がかかります。

契約者と受取人が異なる場合には贈与税がかかる

個人年金保険の年金を、保険料を負担する契約者が受け取る場合は所得税の対象であり、贈与税はかかりません。


一方、年金の受取人が子供でも配偶者でも、契約者と受取人が違えば年金受給権の評価額に対して贈与税がかかります。年金受給権の評価額は、以下のいずれかのうち1番金額が高いものです。

  • 個人年金保険を解約した場合の解約返戻金額
  • 年金を一括で受け取った場合の一時金額
  • 予定利率(※)をもとに算出した金額

贈与税のつらいところは、所得税と比べて税率が高い点です。所得税と贈与税の税率を比べてみましょう。まずは所得税率です。

課税所得額税率控除額
195万円以下5%0円
195万円超
330万円以下
10%9万7500円
330万円超
695万円以下
20%42万7500円
695万円超
900万円以下
23%63万6000円
900万円超
1,800万円以下
33%153万6000円
1,800万円超
4,000万円以下
40%279万6000円
4,000万円超45%479万6000円

続いて贈与税率を見てみましょう。親から20歳以上の子供に資産を贈与する場合は「特例贈与財産」になるので、そちらの税率を紹介します。

課税価格税率控除額
200万円以下 10%
0円
400万円以下15%10万円
600万円以下 20%30万円
1,000万円以下30% 90万円
1,500万円以下40% 190万円
3,000万円以下45% 265万円
4,500万円以下50% 415万円
4,500万円超55%640万円

子供が未成年だと「一般贈与財産」になり、これよりも税率が高くなります。親が子供のためを思って年金額を上げると贈与税も上がるという、何とも皮肉な結果になるのです。

(※予定利率とは、保険料を決めるときの基礎となる利率の1つで、保険料の一部を運用する際の利回りを指します)

子供名義(子供が契約者)の場合は税金はかからない?

「親が契約者だと贈与税がかかるのだったら、子供を契約者にすればいいんじゃ?」と思うかもしれませんが、やはり税金逃れの対策がしっかりなされています。


契約上「契約者=受取人」になっていても、実際に誰が保険料を払っていたのかを収入の情報などから細かく調査されるのです。


調査の結果、実は親が保険料を払っていましたとなると、贈与税がかかるうえに脱税とみなされ、加算税などのペナルティが科せられて、よけいに税金を払うはめになります。


どうしても贈与税を回避したいのであれば、親が保険料を支払うためのお金を子供にゆずり、そのお金で子供が保険料を支払う形を取るとよいでしょう


さらに、贈与税には年間110万円の基礎控除があるので、保険料を年間110万円以内に抑えておけば、保険料を支払うためのお金をゆずるときの贈与税も回避できます。


計画的に年間110万円の現金を子供に贈与していけば、将来親が亡くなったときに相続する現金が減るので、相続税対策にも役立つでしょう。


ただし、単に子供の口座にお金を入れて、そこから保険料を支払うようにしても、結果的に親が保険料を負担しているとみなされる恐れがあります。


子供と贈与に関する契約書を交わすなどして、親が保険料を支払うためのお金を贈与した証拠を残すようにしましょう。

子供が受け取り時に確定申告する必要あり

契約者が自分で個人年金保険の年金を受け取る場合には、保険会社が税金を源泉徴収するので、自分で確定申告をするは必要ありません。他に収入があったり、医療費控除を受けたりするときのみ確定申告が必要です。


一方、親が子供のために加入した個人年金保険の年金を子供が受け取る際には、源泉徴収がありません。そのため、子供が年金を受け取るときに、自分で確定申告をして贈与税について申告・納税する必要があります


確定申告をしなかった場合、故意ではなくても無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられてしまいます。


子供が年金の受取人であることを知らずに確定申告が遅れたということがないように、必ず個人年金保険の年金の受取人になっていることを伝えておきましょう。

個人年金保険をかける時の控除と税金以外の注意点とは?

その他の注意点についてみていきましょう。


保険料を親が払って、子供に個人年金保険をかけるというケースがイレギュラーではありますが、通常の個人年金保険を検討している方と同様の注意点はあります。


簡単にみていきましょう。

個人年金保険を中途解約すると元本割れで損する可能性

個人年金保険に限った話ではないですが、貯蓄性が高い保険は解約時に解約返戻金が受け取れます。


しかし、解約返戻金というのは、支払った保険料が100%戻ってくるものではありません。解約返戻金額は「返戻率」という利率によって決まりますが、基本的に返戻率は加入期間に比例して上がっていくものだからです。


例えば、個人年金保険ではありませんが、「終身保険RISE(ライズ)」という生命保険の返戻率を見てみましょう。


加入期間返戻率
5年67.0%
10年71.9%
20年74.2%
30年76.9%
低解約返戻金
期間終了後
109.9%


加入後30年経って低解約返戻期間が終了すると、ようやく返戻率が100%を超えます。貯蓄性が高い保険は長期運用を前提としているからです。


個人年金保険の解約返戻金も似たようなもので、数十年経過してようやく支払った保険料以上の解約返戻金が受け取れるようになります


子供を受取人とした個人年金保険は加入期間が長くなるので、途中で解約する確率も高くなるものです。解約したいときは、保険会社に今の返戻率を確認してから決めるようにしましょう。


複数の利率の保険に加入して利回りを高める

年金の受取人にした子供が若い場合は、かなりの長期間運用されることになります。そのため、最低限の利回りは保証されるものの、実際どれくらいの利益が出て、どれくらい年金額が増加するかは予測しづらいものです。


可能であれば利回りを高めるために、利回りは低くても安定した運用が期待できる個人年金保険と、ハイリスクハイリターンの個人年金の2種類に加入するなどの安全策を取るのがおすすめです。


とはいえ、個人年金保険は保険料が高めなので、どれくらいの保険料を負担することになるのかをシミュレーションしてから決めましょう。


子供にできるだけ税金の負担をかけずに財産を遺したいということであれば、自分が生命保険に加入し、死亡保険金の受取人を子供にするという方法もあります。生命保険の死亡保険金には、「法定相続人数×500万円」の非課税枠があるからです。


死亡保険金を年金形式で受け取れる「収入保障保険」などもあるので、どの方法が1番いいかを考えてみましょう。

親が子供にかける個人年金保険のおすすめは?

ここからは小噺になります。


年金不安がある中国の富裕層では、出産した0歳児に終身保険や個人年金保険をかける、と言うケースがあるようです。長らく一人っ子政策を敷いてきて、少子化が急速に進んでいる中国ですが、子供を大事にしたいと言う思いから子供に保険をかけると言う文化が一部エリアではあるようです。


実は日本でも、保険に詳しい専門家の方には理解できるかと思いますが、「親が0歳児に変額保険や終身保険などをかける」と言う手段は非常に合理的でコスパが最高です。


0歳児だと掛け金も安くなりますし、何より超長期投資になるため、運用の専門家のいる保険会社からすると、確実に高い利回りにして運用することができます。


個人年金保険でも同様で、筆者の意見からすると、親が子供のために個人年金保険に加入するなら、「一時払い外貨建て個人年金保険」の一択です。


前述の通り個人年金保険料控除も聞きませんし、受取人に指定された子供は受け取り時に課税対象となります。だとすると、毎年払い込むというのはコスパが悪いですし、できるだけ増やした状態で贈与をする方が相対的にメリットが大きいと考えます。


詳しくは保険相談をするなどして専門家に聞いてみてください。

まとめ:個人年金保険を親が子供にかける時の注意点

親が子供のために個人年金保険をかけたい、というニーズを持った方向けに記事を執筆してきました。

今回の内容としては、
  • 親が子供にかけるケースでは、個人年金保険の保険料は個人年金保険料控除の対象とはなりません。契約者・被保険者・受取人のセットを注意してください。
  • 親が契約者、子供が受取人となるケースでは、子供が受け取り時に「贈与税」が発生します。子供が老後に確定申告で税金の納税が必要となります。子供名義となっている場合も、親が払うケースについては贈与税が発生します。
  • 中国では0歳児に終身保険をかけるなど、長期運用をしているケースがあります。日本ではあまりみられません。
という内容をまとめてきました。

贈与をしたいなら、暦年贈与や一定の控除メリットを受けられる保険など、色々な方法があります。ファイナンシャルプランナーに相談するなどして適切な解決策を伺うことが得策と考えます。

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個人年金保険の必要性が知りたい方はこちらの記事もご覧ください
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この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、保険相談や選び方のポイントを伝える「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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