
更新日:2023/01/24
65歳以上になると、介護保険料は給与からの天引きじゃなくなる?

自分が65歳以上になった場合や、社員が65歳以上になった場合に、給与支払いの際に社会保険や介護保険について注意すべき点がいくつかあります。60歳未満の被扶養配偶者がいるかどうかなどいくつかの条件によって変わり複雑なので、この記事でしっかりと解説していきます。
目次を使って気になるところから読みましょう!
65歳以上の給与を受けている人の介護保険料と手続きとは
- 第2号被保険者の配偶者が65歳に到達したと同時に国民年金第2号被保険者の資格を喪失するため、被扶養配偶者も第3号被保険者の資格を喪失する
- 被扶養者である配偶者は住所地の市区町村の役所で第1号被保険者の手続(種別変更)をする必要がある
- 65歳以降も厚生年金に加入し続けている場合、給与がほとんど変わらない場合は厚生年金保険料は変わらない
- 65歳以上になると、今まで給与から天引きされていた介護保険料は給与からは天引きされなくなる
- 65歳以上になると給与からではなく、年金から介護保険料が天引きされる
これは、社会保険の「高年齢者雇用安定法の改正」や「厚生年金の受給開始年齢の65歳への段階的引上げ」などが大きく影響しており、会社によっては、そのまま65歳を従業員として雇用する場合があり、加入する社会保険や介護保険料においてはさまざまな手続きの変更が発生します。
社会保険や介護保険料の手続き上、65歳以上は非常に大切となる節目です。
自分がが65歳以上になったとき、どんな事に注意しなければならないかについて説明します。
社員が65歳以上になった場合に知っておきたいポイント
従業員本人もそうですが、被扶養配偶者の変更も伴ってくる場合もありますので、ポイントをきちんと整理し抑えておきましょう。
ポイント1:60歳未満の被扶養配偶者がいる場合には
第2号被保険者とは、厚生年金保険の加入者 または 共済組合の加入者をさしますが、65歳になると老齢年金・厚生年金、退職共済年金などの受給権がある人は第2号被保険者の資格を喪失します。
その為、第2号被保険者の配偶者が65歳に到達したと同時に国民年金第2号被保険者の資格を喪失するため、被扶養配偶者も第3号被保険者の資格を喪失することになります。
この場合、被扶養者である配偶者は住所地の市区町村の役所で第1号被保険者の手続(種別変更)をする必要があります。
ポイント2:65歳以降も厚生年金に加入している場合には
しかし、給与や標準報酬月額に変更があれば厚生年金保険料も変更されます。
被扶養配偶者が第3号被保険者でなくなっても、標準報酬月額に変更がなければ、厚生年金保険料も変更ありません。
厚生年金は条件を満たせば、原則70歳まで加入することが可能です。70歳になっても年金の受給権を取得することができない方には、特例で年金受給権を取得できるまで厚生年金に加入できる制度があります(高齢任意加入)。
会社などで働いている限り、70歳まで厚生年金保険への加入が必要です。
年金は65歳から受給開始となりますが、会社などで働いている限り、厚生年金保険への加入は必要となるので、この場合は、年金の受給を受けながらも給与から厚生年金保険料を支払う、ということになります。
ポイント3:配偶者の医療保険は変更されない
被保険者本人が65歳になると、被保険者は第2号被保険者でなくなります。被保険者の第2号被保険者の資格喪失により、配偶者は第3号被保険者でなくなるため、国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要になります。しかし、医療保険については、そのまま被扶養者として扱われるので、20歳以上60歳未満の配偶者の医療保険については保険料の変更はありません。
■従業員が65歳になり、配偶者が60歳以上の場合
被保険者本人が65歳未満でも、被保険者が65歳以上でも、配偶者が60歳以上になれば、第3号被保険者ではなくなります。したがい、配偶者は国民年金への加入義務は無くなります。しかし、医療保険は、そのまま被扶養者として扱われるので、配偶者の医療保険については変更はされません。
ポイント4:介護保険料の給与から天引きがなくなる
65歳に達した月の分からの介護保険料が給与からの天引き中止となります。
それは、65歳以上になると年金の受給資格が与えられるからです。65歳以上になると、介護保険料は年金より天引きされるので、65歳に到達すると、第1号被保険者として給与からの天引きがされなくなるのです。
ポイント5:給与からではなく年金から介護保険料は天引きされる
しかし、65歳になってすぐは天引きの処理が整わないため、市区町村の役所から送られてくる納付書や口座振替にて納付となります。
介護保険料の年金からの天引きが開始されるのは、65歳到達年度の翌年度の4月・6月・8月・10月からとなります。
65歳以上の従業員の介護保険料とその他の社会保険の変更点とは
しかし、介護保険や社会保険がどの様に変更されるのか、あまり知られていません。
65歳を迎えるにあたり、どんな風に変わるのか見てみましょう。
第1号被保険者へ変わる介護保険
65歳までの第2号被保険者の介護保険料は給与から天引きされますが、65歳以上の第1号被保険者になると、給与からではなく支給される年金から介護保険料を天引きされた形で徴収されます。
第1号被保険者になると、介護保険料の納付は被保険者本人が行うことになります。
とくに変更手続きは必要の無い厚生年金保険
その際、引き続き厚生年金料は給与から天引きされ、標準報酬月額に変更がない限り、65歳以上になっても被保険者が行うべき変更は特にありません。
しかし、65歳前に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている場合があります。
65歳以上になると「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」を従業員本人が日本年金機構へ提出しなければならず、その結果、受け取る年金も老齢基礎年金と老齢厚生年金に変更されます。
老齢基礎年金に変化する国民年金
この時、65歳になった時点で老齢基礎年金の受給資格を得るのに必要な納付年数を満たしていない場合でも、会社勤めを続けることで最長で70歳まで第2号被保険者でいることができます。
65歳を迎えた従業員の被扶養配偶者の変更点とは
65歳を迎えた従業員の被扶養配偶者には、どんな変更点があるのでしょうか。
また、配偶者はいつまで社会的保証が継続されるのか、確認しましょう。
被扶養配偶者が65歳になるまで賄ってもらえる介護保険
健康保険と同じく、被扶養の配偶者が先に65歳以上にならない限り、被保険者が65歳を迎えても介護保険は賄ってもらえます。
第3号被保険者から第1号被保険者に変わる国民年生のワケとは
それまでの保険料は、従業員である第2号被保険者が給与より納める保険料で賄われていましたが、従業員が65歳以上だと、国民年金の被保険者ではなくなるため、60歳未満の配偶者は第1号被保険者へと変更になります。
第1号被保険者になると、自分で保険料を納めなくてはなりません。この場合、住んでいる市区町村の役所にて第1号被保険者への手続(種別変更)を配偶者本人で行う必要があります。
配偶者が75歳になるまで継続される健康保険
被扶養配偶者の保険料は被保険者全体の保険料で賄われているので、配偶者が被保険者より先に75歳にならない限り、従業員が65歳以上でも配偶者の健康保険は75歳まで継続されます。
気をつけておくべき誕生日が「1日」の人の注意点

社会保険では誕生日当日を1日目として起算します。
そのため、「○歳になった日」とは「誕生日の前日」をさします。つまり、「65歳に到達した日」とは「65歳の誕生日の前日」にあたるのです。
月をまたぐ場合は、例えば1日に生まれた人の場合には、誕生日の前日が誕生日とは異なる月になるため、注意が必要です。
健康保険・介護保険・厚生年金保険(国民年金)では、「当月分の給与から前月分の保険料を天引きする」というケースをとります。具体例にて考えてみると、5月1日に65歳の誕生日を迎える人は、前日の4月30日が65歳到達日になると言うことです。
保険料は65歳に到達した月の給与分から天引きされなくなるため、この場合、4月分から保険料の控除がなくなります。一方、5月2日が誕生日の人は65歳到達日は5月1日になり、保険料の控除中止も5月分からと言うことになります。
給付面でも同じです。
老齢年金は「65歳に到達した日」に受給権が発生し、その翌月から実際に支給がスタートします。
ここでも、5月1日生まれの人は4月30日に受給権が発生し、4月から年金の支給が始まるのに対して、5月2日生まれの人は5月1日に受給権が発生し、年金の支給は5月からとなります。
まとめ
65歳になると介護保険もそうですが、社会的制度でも節目の年齢でもあります。
なかなか複雑なシステムですが、これも高齢化を互いに支え合いながらも働いていく術でもあります。
65歳以上になる前に、配偶者の待遇や色々な変更を確認しておくのが良いかもしれません。