介護保険のサービス費用は医療費控除の対象なの?わかりやすく解説!

介護保険サービス費用は、医療費控除の対象として確定申告を行うことができます。申告を行うことで節税効果が期待できます。ただし、介護保険サービス費用の全てが医療費控除の対象となるわけではありません。申告の際には慎重に控除対象となるかどうかを確認する必要があります。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の医療費控除に関する全情報まとめ

介護保険サービス費用は、医療費控除の対象として確定申告を行うことができます。この確定申告を行うことで節税効果が期待できます。

ただし、介護保険サービス費用の全てがその対象となるわけではありません。また、介護保険の支給限度額を超えた自己負担分も対象外です。


今回は、介護サービス費用の医療費控除について解説します。この記事を読めば、医療費控除に関する基本的知識を得ることができるでしょう。




介護サービス費用は医療費控除の対象である

介護サービス費用は、主に介護施設に入居してサービスを受けている方であれば「施設サービス料」、在宅でサービスを受けている方ならば「居宅サービス関係費用」が対象となります。

以下では、医療費控除の対象となる介護関連費用と対象外となる介護関連費用を説明します。

介護保険の医療費控除の対象となる介護関連費用

医療費控除の対象となる介護関連費用は次の通りです。

○施設サービス


  • 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 指定地域密着型介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 指定介護療養型医療施設(療養型病床群等)

○居宅サービス等


  • 居宅サービス:訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーション、短期入所療養介護等
  • 介護予防サービス:介護予防訪問看護、介護予防訪問リハビリテーション、介護予防居宅療養管理指導、介護予防通所リハビリテーション、介護予防短期入所療養介護等
  • 地域密着型サービス:定期巡回・随時対応型訪問介護看護、複合型サービス等
  • 地域密着型介護予防サービス:介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護
  • 事業総合:第1号訪問事業、第1号通所事業

○おむつ代


○交通費

ただし、介護サービスの中でも医療費控除の対象とならないものもある

介護保険居宅サービスの中には医療費控除の対象外ものがあります。次のサービスが控除対象外です。

  • 訪問介護:生活援助中心型
  • 認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホーム等)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 福祉用具貸与
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 複合型サービス:生活援助中心型の訪問介護の部分
  • 地域支援事業の訪問型サービス:生活援助中心のサービスに限る
  • 地域支援事業の通所型サービス:生活援助中心のサービスに限る
  • 地域支援事業の生活支援サービス

医療費控除の対象となる居宅介護サービス費

介護保険の医療費控除の対象となる居宅サービス等は前述した通りですが、こちらでは詳細に対象となる居宅サービス費を説明します。

居宅介護サービスの医療費控除を受けられる3つの条件

介護保険の医療費控除の対象となる居宅サービスには次のような条件があります。

  • 医療費控除の対象は介護保険の支給限度額まで:医療費控除の対象となる居宅サービスであっても、介護保険の支給限度額を超えて利用し全額自己負担分となった場合、医療費控除の対象外となります。
  • 医療系の居宅サービスとセットで利用することが必要:福祉系の居宅介護サービスは、医療系の居宅介護サービスと共に利用することで、医療費控除の対象となるサービスがあります。
  • 特別に医療費控除の対象になるサービスもある:医療費控除の対象外となる居宅サービス等に該当するものは前述しましたが、その中にあっても、介護福祉士等による喀痰吸引等を利用した場合、居宅サービス費用として支払った額の10分の1は医療費控除の対象になります。

医療費控除の対象となる居宅サービス

医療費控除の対象となる居宅サービスには、①医療系居宅サービスとして対象になるものと、②医療系居宅サービスとあわせて利用した場合に控除の対象となる居宅サービスがあります。

①医療系居宅サービス:自己負担額全額が医療費控除の対象


  • 訪問看護 
  • 介護予防訪問看護 
  • 訪問リハビリテーション 
  • 介護予防訪問リハビリテーション 
  • 居宅療養管理指導:医師等による管理・指導
  • 介護予防居宅療養管理指導 
  • 通所リハビリテーション:医療機関でのデイサービス
  • 介護予防通所リハビリテーション 
  • 短期入所療養介護(ショートステイ)
  • 介護予防短期入所療養介護 
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る 
  • 複合型サービス:生活援助中心型の訪問介護の部分を除く

②医療系居宅サービスとあわせて利用した場合の居宅サービス


  • 訪問介護(ホームヘルプサービス):調理、洗濯、掃除等の家事の生活援助を除く
  • 夜間対応型訪問介護 
  • 介護予防訪問介護:平成30年3月末まで
  • 訪問入浴介護 
  • 介護予防訪問入浴介護 
  • 通所介護(デイサービス)
  • 地域密着型通所介護:平成28年4月1日より
  • 認知症対応型通所介護 
  • 小規模多機能型居宅介護 
  • 介護予防通所介護:平成30年3月末まで
  • 介護予防認知症対応型通所介護 
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護 
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 介護予防短期入所生活介護 
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護:一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る
  • 複合型サービス:生活援助中心型の訪問介護の部分を除く 
  • 地域支援事業の訪問型サービス:生活援助中心のサービスを除く
  • 地域支援事業の通所型サービス:生活援助中心のサービスを除く

介護保険の医療費控除の対象となるもの

介護保険の医療費控除には、居宅サービスの他、施設サービス・おむつ代・交通費も対象になります。ただし、一律に自己負担額全額が控除対象になるわけではなく、控除対象となる要件も異なります。

以下では、おむつ代、交通費、施設関連費を取り上げます。

医療費控除の対象となるおむつ代

おむつ代は6ヵ月以上寝たきりの介護保険利用者の紙おむつ、貸しおむつ代の自己負担額が医療費控除の対象となります。

こちらの医療費控除を申告するには、医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要となります。

医療費控除の対象となる交通費

交通費は、通所リハビリテーションまたは短期入所療養介護(ショートステイ)のために、介護老人保健施設・指定介護療養型医療施設等に通う場合に必要となる交通費が該当します。

こちらの医療費控除を申告するには、居宅サービス費の自己負担額について医療費控除の対象となることが必要となります。

医療費控除の対象となる施設関連費

施設関連費は次の場合が控除対象です。

  • 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、指定地域密着型介護老人福祉施設→介護費・食費・居住費として施設に支払ったサービス料:2分の1
  • 介護老人保健施設、指定介護療養型医療施設(療養型病床群等)→介護費・食費・居住費として施設に支払ったサービス料、診療な治療を受けるための個室等(特別室)の使用料

介護保険の医療費控除に関して知っておくべきこと

介護保険の医療費控除の対象になるサービス・対象外のサービスは前述した通りですが、実際に申告するとなると介護保険サービスの区別は難しい面があります。

また、確定申告をするにしても誰が申告をするかで節税効果が違ってきます。こちらでは、医療費控除の際に知っておくべき点を説明します。

確定申告で介護保険の医療費控除を受ける方法

介護保険サービスの区別で医療費控除の対象になるかどうかわからない場合には、指定居宅サービスの事業者等が発行した領収書に、医療費控除の対象となる医療費が記載されています。受け取った領収書を見て判断しましょう。

また、医療費控除の対象になるかどうかは、概ね医師・看護師が関わるサービスは医療費控除の対象となり、逆に医師・看護師が関与しないサービスは対象外となるケースが多いです。

家族のうち誰が医療費控除の申告をすると得なのか

医療費控除の金額は最高で200万円までが対象になります。また、自己負担分が10万円または総所得金額の5%(消費税込)を超える金額が医療費控除の対象となります。

そのため、一般的には家族の内で最も所得税率の高い方が申告をすると有利になります。

医療費控除を申告すれば住民税も安くなる

医療費控除を確定申告すれば、住民税を別に申告する必要がないばかりか、来年度の住民税が減額されます。決められた期間にできるだけ確定申告を行うことをおすすめします。

介護保険料の医療費控除を受ける際の注意点

介護保険料の医療費控除の申告は、どなたでもその申告を行って良いわけではないですし、必ず自己負担分の費用全額が戻ってくるというわけではありません。

こちらでは介護保険料の医療費控除を受ける際の注意点を述べます。

介護保険の支給限度額を超えた自己負担分は控除の対象外

前述したように医療費控除の申告をしても、必ず自己負担分の費用全額が戻ってくるわけではなく、介護保険の支給限度額を超えて支払った自己負担分は控除の対象外です。

介護保険利用者の支給限度額は、要支援・要介護度により異なりますので、しっかりと確認しながら介護保険サービスを利用しましょう。

当人または親族が支払った医療費であること

医療費控除の対象になる家族は、当人(介護保険利用者)と「生計を一にする6親等内の親族および3親等内の姻族」が該当します。

この「生計を一にする」とは、例えば当人と同居している親族でも、収入があるものの、(行政から見て)明かに独立して生活していると判断できる場合には、生計を一にしているとはいえません。


逆に、当人と同居していなくても、常に当人へ生活費等を仕送りしている場合には、生計を一にしていることになります。

確定申告において所得税率が高い人が医療費控除申告する方が節税になる

前述した当人(介護保険利用者)と生計を一にする6親等内の親族および3親等内の姻族の中で、最も所得税率が高い人が合算して医療費控除の申告をすると高い節税効果が得られます。

まとめ

介護保険の医療費控除の対象になるサービス・対象外のサービスの区別は難しい面はありますが、領収書をよく確認する、医療従事者が介護サービスに関与したかどうかで、医療費控除の対象に該当するかどうか判断は可能です。

ランキング