介護保険の過誤請求とはどんなときに起こるの?対処法は?詳細解説!

介護保険の過誤請求とは、保険者から支払われる介護報酬額が決定しているときや、すでに支払いが完了しているものに誤りを発見した場合、その介護保険の請求自体を取り下げ、改めて介護保険を再請求することです。過誤請求には通常過誤請求と同月過誤請求の2種類があります。

監修者
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー証券外務員を取得。

介護保険の過誤請求に関するまとめ

介護保険の過誤請求とは、保険者(市区町村)から支払われる介護報酬額が決定しているときや、すでに支払いが完了しているものに誤りを発見した場合、いったんその介護保険の請求自体を取り下げ、改めて介護保険を請求し直すことです。


今回は、介護保険請求の過誤が発生する原因や、その場合の対処法を説明します。この記事を読めば、実際に過誤を発見しても慌てずに対応することができ、適切な対処方法をとることが期待できます。



介護保険の過誤請求があった場合の対処法を知ろう

こちらでは、介護保険請求の過誤が発生する原因や、過誤請求の種類、過誤調整を行う際の注意点を説明します。

なお、過誤に関する手続きを行う際に、審査等を行う組織が「国民健康保険団体連合会」です。この組織は、保険者である市町村・国民健康保険組合が共同して、事業目的を達成するために設立した公法人です。

過誤調整が発生する原因とは?

過誤調整が発生する原因は、本来請求するべき金額より低く請求したり、逆に高く請求したりした場合や、生活保護者等に対して介護保険分のみを請求して既に支払いを受けた場合、が該当します。この場合には過誤調整の請求をしなければなりません。


また、保険者(市区町村)や税務署の監査で、要件を満たしていない請求や、サービス提供記録に記載されていないものについて指摘を受ける場合があります。


そのため、事業所は日頃から法令に従った処理が行われるように、細心の注意が必要です。

通常過誤請求と同月過誤請求の違いは?

通常過誤請求と同月過誤請求とは次のような過誤請求を言います。


  • 通常過誤請求:審査を通過し支払いが完了した場合に、市区町村と協議した上でいったん取り下げ、過誤が認められた後に介護保険の再請求を行う過誤請求を言います。この再請求を行った翌月の支払額より、過誤額を差し引いた金額が事業所に支払われることになります。
  • 同月過誤請求:毎月の介護報酬請求の締切日より前に提出した請求を取り下げ、同じ締切日までに過誤内容を修正し、介護保険の再請求を行う過誤請求を言います。

介護保険の過誤調整を行う際の注意点

介護保険の過誤調整を行う際には次のようなことに注意しましょう。


  • すべてのサービスが取り下げ対象:過誤調整は、請求明細書単位で処理されるため、複数のサービスが記載されている中で1項目だけ取り下げたくても、同じ請求明細書に記載されているすべてのサービスが取り下げられてしまいます。
  • 過誤請求ができるのは審議の後:誤りを発見したら急いで修正したい所ですが、請求できるのは国民健康保険団体連合会の審議を経てからとなります。毎月の過誤請求の締切日は市区町村によって異なります。事前に担当者と連絡をとりながら進めていきましょう。
  • 差額分は現金支払い:過誤の金額が請求金額を超えてしまった場合、差額分を現金で支払う必要があります。一度に複数の過誤調整をしなければいけないケースでは、この金額が多額に上ることもあります。

過誤申立の同月過誤と通常過誤によって異なる金額の受け取り方法

同月過誤と通常過誤の金額の受け取り方法は次の通りです。

  • 同月過誤申立:国民健康保険団体連合会の審査で、実績取下げおよび介護保険の再請求を同一審査月に併せて行います。その場合、「過誤申立による介護報酬の減額(返金)」と「再請求による介護報酬」を相殺するように計算を行い、過不足額分を、他の介護報酬に加算・減算する方法をとります。
  • 通常過誤申立:実績を取下げ、いったん実績を削除しゼロにする申立で、支払額より、過誤額を差し引いた金額が事業所に支払われる方法をとります。

同月過誤と通常過誤、2つの場合の過誤申立の違いとは?

同月過誤と通常過誤の違いは下表のとおりです。

過誤申立同月過誤通常過誤
特徴①2ヶ月で、過誤申立から給付実績の修正や請求・支払金額の調整まで完了できる。
②過誤・再請求を同時に処理ので、差額のみの調整となり、支払がマイナスになることを避けることができる。
 
介護保険サービス提供月の翌月に連合会へ請求するので、時間的に余裕があり、更に過誤がないかの洗い出し作業が可能となる。
注意点同月過誤を行う月に、事業所が再請求をしないと通常過誤と同じ形となり、支払額の大きな減少や、支払額がマイナスになる場合がある。①過誤申立から給付実績の修正や請求・支払金額の調整まで4ヶ月かかる。
②過誤処理を行った月の過誤金額が、事業所への支払額よりも多くなり、支払がマイナスになるケースが発生することがある。

こちらでは、同月過誤と通常過誤の具体例をあげ、申立から支給までを説明します。


○事例:本来8,000円の請求を9,000円で請求し、支払が決定してしまった。


過誤申立の流れ同月過誤通常過誤
1月事業所(申立を1月25日までに市区町村へ提出)

市区町村(国民健康保険団体連合会へ提出)

国民健康保険団体連合会(2月審査分として処理)
事業所(申立を1月15日までに市区町村へ提出) 
↓ 
市区町村(国民健康保険団体連合会へ提出) 
↓ 
国民健康保険団体連合会(1月審査分として処理)
2月事業所
(2月10日までに再請求:8,000円分を1月利用分と同時に請求) 
↓ 
国民健康保険団体連合会(2月審査分として処理)
国民健康保険団体連合会(10日頃、過誤決定通知)

・市区町村
・事業所(2月末支払分から9,000円が引き去られて支給)
3月国民健康保険団体連合会
(3月末に精算:-9,000円と8,000円の支給、3月末支払分から-1,000円)

事業所
(同月審査となることで、過誤額と本来額が相殺)
事業所 
(3月10日までに再請求:8,000円分を2月利用分と同時に請求) 
 ↓ 
国民健康保険団体連合会(3月審査分として処理)
4月国民健康保険団体連合会 
(4月末に支払:8,000円の支給) 
↓ 
事業所

介護保険の過誤申立をする前に保険者に過誤処理月の確認を行う

介護保険の過誤申立をする前に、まず次の状況を確認する必要があります。

  1. 事業者は国民健康保険団体連合会から、該当する請求が審査決定済みとなっていることを確認します。なお、「返戻」となった場合には、過誤申立をする必要はありません。
  2. その後、過誤申し立てを必要とする事業者は、保険者(市区町村)に対して「介護給付費過誤申立書」を提出します。

○同月過誤の場合→同月過誤申立書提出月の翌月に国保連合会へ再請求を行います。


○通常過誤の場合→申立書提出月の翌月に国民健康保険団体連合会より「介護給付費過誤決定通知書」が通知されます。結果を確認し、必要な場合は当該連合会へ再請求を行います。


過誤申立に関連する給付管理票の修正は処理の翌月以降に提出しよう

過誤調整にあわせて単位数の変更を行う給付管理票の修正の場合は、サービス事業所との連絡調整を行った上で、過誤処理の翌月以降に提出することになります。

 

過誤処理と同一月に給付管理票の修正を行うと、エラー(既に過誤調整を行っている。)になってしまいます。

まとめ

仮に介護保険の請求額を間違えたとしても、通常過誤請求と同月過誤請求の2つの対処方法がありますが、手続きにある程度の時間がかかります。


過誤によって事業経営にも影響が出てくる場合が考えられますので、事業主は事業所内での職員のチェック体制の徹底を図り、日頃から職員の能力向上に心がけるべきでしょう。

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