介護保険に基づくサービスを提供した場合の文書の保存期間について

介護保険に基づくサービスを提供した場合、関係文書には保存期間があることをご存じですか?文書の保存期間を知らずに古い記録類などを処分してしまうと、施設・事業所がペナルティーを受ける危険性も生じます。今回は介護保険における文書の保存期間について解説していきます。

介護保険の文書の保存期間はどれくらいなのか

介護保険に基づく介護サービスには、文書の保存期間が設定されています


介護保険法という法律や、当該施設・事業所を運営するための基準に定められた文書の保存期間はもちろんのこと、施設・事業所の所在地の市区町村によっては、法律で定められた以上の保存期間を求めているところもあります。

下記で詳しく解説していきます。

介護保険の文書とは何を指すのか

では、介護保険の文書とは具体的にどのような書類を指すのでしょうか?

介護保険の文書(介護保険サービスを提供した際に発生する関係書類)は、実に多くの種類が存在します。

介護保険サービスすべてに共通するような文書もありますし、事業種別やサービス形態で異なる文書もあります。


具体的には次のような書類が「介護保険の文書」であり、原則、法律でその保存期間が定められています。



  • 利用契約書
  • 重要事項説明書
  • ケアプラン(居宅サービス計画書・施設サービス計画書など)
  • 通所介護計画書(デイサービスを運営している事業所)
  • 訪問介護計画書(訪問介護サービスを運営している事業所)
  • サービス提供の記録(介護記録、看護記録など)
  • 事故報告書
  • 苦情処理に関する書類


これ以外にも、介護保険事業においては多くの文書が存在し、保存期間が定まっていることを認識してください。

厚生労働省令に記載されている介護保険文書の保存期間

厚生労働省令では介護保険の文書保存期間は「介護保険サービスが終了してから2年間」と記載されています。


具体的には次のような文書が2年という保存期間で記載されています。


  • 介護計画
  • サービス提供記録
  • 利用者が指示に従わなかった場合の市町村への通知に関する記録
  • 苦情の内容等の記録
  • 事故が発生した場合の事故状況及び事故に際して採った処置についての記録


上記とは反対に、厚生労働省令では保存期間が具体的に定められていない文書もあります。「従業者、設備、備品及び会計に関する諸記録」と厚生労働省令には記載されています。


サービス終了から2年間

介護保険の文書の保存期間の原則は、上述のとおりご利用者様に対する「介護保険サービスが終了してから2年間」となります。

厚生労働省、つまり国が定めた保存期間であるので、これは地域や提供したサービス内容、事業種別問わず介護保険サービス事業者が絶対守らなければいけないものです。

条例によっては保存期間が異なる所もある

介護保険の文書の保存期間は原則「介護保険サービスが終了してから2年間」とご説明しましたが、管轄する行政(事業の指定・指導担当部署など)によっては2年以上の保存期間を求めている地域もあるので、注意が必要です。

条例によっては保存期間が5年の場合もある

介護保険の文書の保存期間の原則は、厚生労働省令に記載されています。

厚生労働省令に記載されているということは、国全体で絶対守るべき最低条件のようなものです。


この絶対条件に付加するように、地域によっては条例として、介護保険の文書の保存期間を5年と定めているところもあります。


つまり、全国一律で保存期間は2年間というわけではなく、地域(自治体)によっては、介護保険の文書の保存期間をサービス事業者に5年間は保存するように求めているところがあるのです。


介護業界の大手企業の人事異動で異なる市区町村で働くことになった人や、転職などによって今まで働いていた市区町村とは異なる地域で働くことになった人は、介護保険の文書の保存期間が当該地域では2年間で大丈夫なのか、それとも5年間とされているのか確認する必要があります。

なぜ5年になったのか

介護保険の文書の保存期間が、地域によっては条例で5年間とされているのか、これには根拠があります。

厚生労働省令に記載されている、基本の保存期間は2年間なのですが、介護保険サービス施設・事業所は、サービスに対する対価としての介護報酬を得るために介護給付費明細書(レセプト)を作成し、毎月定められた期日までに請求作業を行います。


この介護給付費明細書は5年間の保存期間が義務付けられており、介護保険事業を指定・指導する行政機関によっては、厚生労働省令に記載のある本来は2年の保存期間である文書と、この介護給付費明細書の整合性を突合させる場合があります。


そのときに、提供した介護サービスを裏付ける文書が無いと介護保険事業を指定・指導する行政担当者としては困るという実情があります。


これに類似する話ではありますが、介護報酬請求において何らかの請求間違いがあった場合や、指定・指導を行う所管行政の指導による介護報酬返還命令に基づく返還請求は、内容にもよりますが最長5年間遡って請求しなければなりません。


つまり、何らかの介護報酬返還請求が発生した場合は5年間という時効があると考えてください

それを裏付ける(良くも悪くも証拠となる)介護サービス提供に関する文書などが残っていないと、介護報酬返還請求の時効(遡り)5年に対応できない場合があるので、地域の条例よっては(介護保険サービス事業の指定・指導を行う所管)介護保険の文書の保存期間を5年間としているのです。


まとめ

介護保険に基づくサービスを提供した文書の保存期間について解説いたしました。

基本は「介護保険サービスが終了してから2年間」とはなりますが、地域の条例によっては5年間の文書保存を求めているところもあります


介護保険事業に関わる人は、どの地域でも文書保存期間は2年間だと思い込まずに、自分の働いている施設・事業所の地域の条例等を指定・指導を行う行政所管に確認し、文書の保存に努めるようにしてください。






この記事の監修者
谷川 昌平
東京大学の経済学部で金融を学び、その知見を生かし世の中の情報の非対称性をなくすべく、学生時代に株式会社Wizleapを創業。保険*テックのインシュアテックの領域で様々な保険や金融サービスを世に生み出す一歩として、保険相談や選び方のポイントを伝える「ほけんROOM」を運営。2019年にファイナンシャルプランナー取得。

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