年金の学生免除を利用するデメリットとは?追納すべきかどうかを解説

年金の学生免除制度「学生納付特例制度」を利用することで、学生時代の保険料の納付が免除されます。年金の学生免除制度のデメリットは、追納しないと老齢基礎年金の金額が減ってしまうことが挙げられ、メリットは学生の間は国民年金を支払わずに済むこと、もしもの場合に障害年金が受け取れることが挙げられます。

国民年金の学生免除「学生納付特例制度」を利用するデメリットを解説

20歳になると国民年金保険料を納めなくてはいけませんが、学生の間はどうしたら良いのかわからない人も多いと思います。


国民年金保険料は収入関係なく一律のため、支払いできなかったらどうしようと不安になったり、デメリットがないのか気になりますよね。


学生は、学生納付特例制度の手続きをすれば、国民年金保険料の支払いが猶予されます。一見メリットのようですが、実は仕組みをきちんと理解していないとデメリットになる恐れがあるのです。


そこで今回は、学生納付特例制度の仕組みについて、

  • 年金の学生免除を利用するデメリット
  • 学生免除は利用すべきなのか?メリットは?
  • 年金の学生免除を利用した場合は追納すべきか?
以上のことを解説します。

この記事を読めば、学生納付特例制度のメリット・デメリットが理解できるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。

年金の学生免除「学生納付特例制度」とは

学生納付特例制度とは、国民年金保険料の支払いが猶予される制度です。


国民年金は20歳~60歳までの全ての人に加入義務があり、現在(令和2年)保険料はの毎月1万6540円です。


しかし学生にとって毎月1万6540円を支払うのは義務とはいえ大変です。


そこで、年金料を支払う事が困難な学生のために作られたのが年金料の支払いが猶予される「学生納付特例制度」です。

  • 前年後の所得が基準以下
  • 大学、短大、専門学校などに在籍している学生であること
ただ、この制度は年金料を支払わなくても良いという制度ではなく、年金の支払いを猶予する制度ですので後で年金の支払いをしなければ将来受け取る年金額が少なくなります。



年金の学生免除「学生納付特例制度」を利用するデメリット

学生納付特例制度を利用するデメリットは、

  • 追納しないと老齢基礎年金の金額が減ってしまう
と、いうことです。

これは、学生納付特例制度が免除ではなく猶予になるからです。猶予期間の未払い分は、10年以内に後納することが前提となっています。

仮に、20歳から1年間だけ学生納付特例制度の対象となり、以降はきちんと60歳まで国民年金保険料を支払ったとしましょう。

追納しなかった場合、このような計算式が成り立ちます。
  • 780,100円×12ヶ月(1年間)/480ヶ月(40年間)=約20,000円
40年間、国民年金保険料を支払った場合の満額が780,100円ですので、支払わなかった分の1年間を計算すると、約20,000円という計算結果が出ました。

これはつまり、65歳以降もらえる年金額が約20,000円減額されるということです。

学生期間中は免除されるものだと勘違いして追納しなかっただけで、このようなデメリットが起こりうるため注意が必要です。

年金の学生免除「学生納付特例制度」は利用すべき?メリットは?

学生納付特例制度は、学生期間中どうしても国民年金保険料を支払えないという人は利用すべき制度です。


ここでは、年金の学生免除について、

  • 学生の間は国民年金を支払わずに済む
  • 学生納付特例制度の期間も受給資格期間と見なされる
  • もしもの場合に障害年金が受け取れる
以上のメリットについて解説します。

年金の学生免除は社会人とは異なり、安定した収入が見込めない学生のための制度ですので当然メリットがあります。デメリットと併せて、メリットもきちんと理解しておきましょう。

年金の学生免除のメリット①学生の間は国民年金を支払わずに済む

年金の学生免除を利用した場合、学生の間は国民年金保険料を支払わなくても良いですが、納付自体の免除はされていません。


学生納付特例制度の手続きを取ることは、学生期間中の納付が猶予されただけであって、未払い分は10年以内に後納しなくてはいけないのです。


これはつまり、学生免除の期間が長ければ長いほど、社会人になってからの国民年金保険料の支払額がアップするということですね。


そのため、計画的に納付しなければデメリットにつながる恐れがあるでしょう。ある程度お金に余裕があれば、学生時代から納付を開始するのがベストだと言えます。

年金の学生免除のメリット②学生納付特例制度の期間も受給資格期間

老齢基礎年金を受け取るには、以下の条件があります。

  • 保険料の納付済期間等が10年以上必要

学生期間中に学生免除の手続きを取れば、納付しなくても受給資格期間として見なされます。

ただし、気を付けなくてはいけないのが老齢基礎年金の計算対象となる期間には含まれないということです。

将来、老齢基礎年金を満額で受け取るには、追納しなくてはデメリットになるということを忘れないでください。

年金の学生免除のメリット③もしもの場合に障害年金が受け取れる

年金と聞くと、若いころは関係ないと思う人が多いと思います。


しかし、実は学生にとっても重要な制度であり、老齢年金以外にも障害年金遺族年金の3つの保障があるのです。


もし、学生免除をせずにそのまま国民年金保険料を未納した場合、受給資格期間がカウントされません。学生のときに万が一障がい者になったら、障害年金がもらえないというデメリットが発生するのです。


学生のときに保険料が払えない場合は、そのまま未納にしてはいけません。


実際に手続きをせずに、障害年金をもらえなかったというケースは意外に多いと聞きます。万が一のことを考えて、必要であれば必ず学生納付特例制度の手続きを取りましょう。

年金の学生免除「学生納付特例制度」の対象者

学生納付特例の対象者は、 

  • 学生であること
  • 本人の前年所得が基準以下であること 
高校、大学、専門学校など学校に在学している学生で年齢に上限はありません。

また、文部科学省の認可を受けていない学校に在籍している方や留学生でも修業年限1年以上などの条件を満たしていればこの制度を受けられます。 

そして前年所得のめやすは

118万円+扶養親族の数×38万円+社会保険料控除 

で計算した額以下であること。
そのため、稼ぎの多い学生の場合が制度の対象外になります。

年金の学生免除「学生納付特例制度」を利用した場合は追納すべきか?

年金の学生免除を利用しても、免除ではなく猶予であることがわかりました。ですが、デメリットを考えてまで絶対に追納しなくてはいけないのかと疑問に思う人も多いと思います。


ここでは、

  • 学生納付特例制度は納付の猶予が得られる制度であること
  • 追納は義務ではないこと
  • 追納をするメリットとは
以上のことを解説します。

また、参考として追納しなくても任意加入制度で穴埋めができることも解説します。

学生納付特例制度は納付の猶予が得られる制度

年金の学生免除と聞くと、国民年金保険料を納めなくても良いものだと勘違いする人が多くいそうですが、学生納付特例制度は納付が猶予される制度です。


学生で収入がなく国民年金保険料が支払えないという人が、そのまま未納にするのではなく手続きを取ることで、その期間中は未納でも催促を受けることもありません。


また、手続きを取ることで10年以内であれば国民年金保険料の追納ができます。


学生納付特例制度自体が、将来的に社会人になったら追納することが前提となっている制度のため、そのままほったらかしにしてはいけないのです。


追納しないままでいると、老後に老齢基礎年金が満額もらえなくなくなるデメリットがありますので必ず納めましょう。

学生納付特例制度を利用した際の保険料の追納は義務ではない

学生納付特例制度を利用した場合、10年以内であれば追納できます。


しかし、以下の点に気を付けなくてはいけません。

  • 学生納付特例制度の承認を受けた翌年から、3年目以降に追納する場合は、経過期間に応じて納付額に加算額が上乗せされる
つまり、10年間の猶予期間はありますが、納付する時期が遅くなればなるほど国民年金保険料が高くなるというデメリットがあるわけです。

年金の学生免除をした場合、追納は義務ではありませんが、将来のことを考えて早めに納めたほうが良いでしょう。

学生納付特例制度を利用した際の「追納」のメリット

年金の学生免除で猶予された国民年金保険料をきちんと追納すれば、将来受け取る年金額を増やすことができます。


猶予されている期間は督促が無いため、ついうっかり未納しがちですが、そのままにしておけば1年間で約2万円の減額というデメリットがあります。


学生納付特例をそのままにしておけば、利用している期間が長ければ長いほど将来受け取る年金額に大きな差が生じることを理解しておきましょう。


また、社会人になれば社会保険料控除が受けられるため、所得が高くなってから納付したほうが節税になるというメリットもあります。

追納しなくても任意加入制度で穴埋め可能

国民年金の任意加入制度とは、

  • 納付期間を60歳から65歳までの5年間延長することで、65歳から受け取る老齢基礎年金を増やすことができる制度のこと

年金の学生免除をしたあとに追納せず、未納になってしまったという人も、65歳まで納付する任意加入制度の手続きを取ればその分の穴埋めができるという訳です。

ただし、手続きにはご本人の申し出が必要となります。

お住まいになっている市区町村の役所にある、国民年金担当窓口で手続きができますので、一度チェックしてみてください。

学生の年金免除「学生納付特例」の手続き方法

手続きに必要な物は

  1. 年金手帳
  2. マイナンバーカード
  3. 学生証
のコピーが必要です。学生証は念の為両面コピーしておきましょう。 

そして、これらを住んでいる市、区役所、町村役場の国民年金科、または年金事務所に持っていきます。
 
その後は「国民年金保険料免除・ 納付猶予申請書」を渡されるので、その場で記入し手続きは終了です。
 
また、「国民年金保険料免除・ 納付猶予申請書」は日本年金機構のホームページからダウンロードし、郵送で手続きすることもできます。 

郵送で手続きする場合は、1~3のコピーと運転免許証、パスポート、在留カードなどの身元が分かる物のコピーを同封し郵送します。

学生納付特例の手続きが出来る期間は年度ごと(4月~翌年の3月)で、1年に1回申請書を提出しなくてはなりません。  

参考:学生納付特例制度を利用せず保険料を納付するメリット

年金の支払いが難しい学生の場合は、滞納せず学生納付特例制度を利用したほうがいいと言えますが、学生納付特例制度を利用せず保険料を納付すると 

  • 住民税、所得税を軽減できる 
  • 付加年金に加入できる 
というメリットがあります。
保険料を納付するメリットについて詳しく見ていきましょう。

所得税・住民税を軽減できる

国民年金料を親が支払っている場合は、支払いをしている親の社会保険料の控除や所得税、住民税の軽減をすることができます。 


例えば、親が子供の年金保険料を1年間支払った場合 

(国民年金保険料)1万6410円×12ヶ月=19万6920円

19万6920円を所得から差し引き、所得税率が10%(所得によって異なる)、住民税率10%(住民税は一律10%)とすると

19万6820円×20%=3万9384円

約4万円が還元され、実質負担額は約16万円です。


税率と税金の軽減額、保険料の実質負担額、子の年金受給開始からの回収期間は


課税所得所得税税軽減額
195万円以下5%3万円 
195万円~330万円以下10%4万円
330万円~695万円以下20% 6万円
695万円~900万円以下23%6.6万円
900万円~1,800万円以下33% 8.6万円
1800万円~4000万円以下40%10万円
4000万円~45% 11万円


課税所得保険料実質負担額年金受給回収期間
195万円以下16.7万円8.6年
195万円~330万円以下15.7万円 8.1年
330万円~695万円以下 13.7万円 7年 
695万円~900万円以下 13.1万円6.7年 
900万円~1,800万円以下 11.1万円 5.7年 
1800万円~4000万円以下9.7万円5年 
4000万円~ 8.7万円4.4年



付加年金に加入できる

付加保険料とは、定額保険料に月400円プラスして収める事で受給できる年金額を増やせる制度です。

200円×付加年金料納付月

の金額を受け取る事ができます。

例えば、20歳から60歳まで付加保険料を収めると

200×240月(40年)=96,000円 

ですので付加年金支払総額は96,000円。

付加年金の受給年金額は

200円×24ヶ月=4800円


ですので、プラスに収めた金額は2年で元がとれます。

まとめ:年金の学生免除制度は追納しないと老齢基礎年金の金額が減る

年金の学生免除は利用したほうが良いのか、利用することでどんなデメリットがあるのかなどを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。


今回の記事のポイントは、

  • 学生納付特例制度は免除ではなく猶予である
  • 年金の学生免除を利用すれば、学生の間は国民年金を支払わずに済む
  • 年金の学生免除を利用すれば、受給資格期間と見なされる
  • 年金の学生免除を利用すれば、もしもの場合に障害年金が受け取れる
  • 追納は義務ではないが、納付しないと老齢基礎年金が満額もらえないデメリットがある
  • 承認を受けた翌年から3年目以降に追納する場合は、経過期間に応じて納付額に加算額が上乗せされるデメリットがある
  • 追納しなくても任意加入制度で穴埋め可能
以上となります。

年金の学生免除は猶予であって免除ではありません。未納のままでいますと、老齢基礎年金が満額でもらえなくなります。

学生の期間中でも国民年金保険料を支払えるのであれば、わざわざ学生納付特例制度の手続きはしなくても良いでしょう。支払い忘れることで思わぬデメリットに繋がる恐れがありますので気を付けてください。

ほけんROOMでは、他にも読んでおきたい国民年金保険料に関する記事を多数掲載しています。ぜひご覧になってください。

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